DNDメディア局の出口です。やっと雨がふりました。恵みの雨と書こうとしたら、ザーザー降りです。いやぁ、雨足がさらに強くなったり、弱まったり、と気まぐれで、いま窓が霞むほどの土砂降り。台風9号の影響ですね。これで日照りで乾いた庭先の花木に生気がよみがえるかもしれません。古く二十四節気によると、今日から大気が冷えて草に露が落ちる、白露という。季節は、ちゃんと時を読む。人にも時があるのでしょうか。
お陰で連日の猛暑は、少し和らぎました。が、民主代表選の熱気は14日のゴールに向けて両陣営火花を散らし激しさを増してきました。与野党の対立よりも一段と緊迫しています。週刊誌はその表紙で、"仁義なき戦い、死闘編"と、煽る。体制、反体制の相克という単純な図式ではなく、体制内の中の反体制、反体制の中の体制という複雑で見えにくい争いを演じている。
作家の村上春樹さんが、以前読売新聞のインタビューで『1Q84』を書いた動機に触れていましたが、民主代表選の争いは、ズバリ村上さんの予言通りの構図となっています。
「仮説の中に現実があり、現実の中に仮説がある。体制のなかに反体制があり、反体制の中に体制がある、というような現代社会システム全体を小説にしたかった」と。その理由はどうであれ、これが現代社会の実相なのかもしれません。確かに、いまの民意は風見鶏のようにくるくる向きを変えるのでまったくとらえどころがない。無視はできないものの、引きづられては混迷を深めるばかりのように思えます。
その結果がこんな風に露見する。今朝の朝日新聞は、この4年続いた首相交代の"魔の9月"に外交日程が押して外務省をやきもきさせている、と伝えていました。自民は3年で3人が交代した。いずれも"9月の変"でした。民主は1年ですでに2人目で、さて、このジンクスは?
この先どうなっていくのか。代表選より、このニッポンの閉塞状況をなんとかせにゃならん、という声が多い。が、個人的な関心事は、実利で異能の政治家、小沢一郎氏の命運です。「政治とカネ」の悪のレッテルを背負って潔く舞台に登場したが、国民のために死ぬ気で頑張る、と訴えたその国民からの評判が芳しくない。いまこの未曾有の国難に殉じようとする小沢氏、そういう覚悟すら受け入れられにくいという時流というのも皮肉です。歴史は、もう小沢氏を必要としていないかのような印象を持ってしまう。
しかし、テレビに出れば、意外と真摯な素顔をのぞかせて好感をもたれていました。発言の中身は一貫してぶれはないし、自信をもって語る実力派の片鱗を存分にうかがわせていました。オーラが漂っています。リーダーの資質とその力量は、一方の市民派で国民的人気がある、とされる菅直人首相を遥かに凌駕しているよう思えます。いつも人の批判や口撃で優位にみせる菅さんから、この悪癖がなくなれば立派なのだが、他人の傷に塩を擦りこむのが巧でうまい。トロイカ+1の4者会談を蹴った理由を後で、密室でポストの要求には応じられない、と突っぱねた風に装って、密室政治の小沢を印象づける企みはまんまとはまった。それをやや遅れて正直者の鳩山さんが、それは事実と違う、ポストの要求は決して言っていないと憤慨して、菅氏のそういった狡すっからい体質を批判していました。
菅さんは、ディベートの達人の、その妙技を随所で発揮してきました。テレビではキャスターからの不利な質問には的を外して交わし、少しも答えになっていない、そのはぐらかしの術は、天性のものかもしれない。せっかくそばに清新で有能な閣僚が、しっかり支えてくれているのだからもうちょっと堂々と、自らの国家観を語ってぶれないでもらいたい。
その点、小沢氏は、東北は岩手のお人よしぶりが際立って損をしている。その隙を突かれているのに、ご本人は気がついていないし、余計な反論もしない。まあ、実力のない輩を権力の座に担ぎあげたらたちまち豹変し、恩のある縁の下の力持ちを歴史の外へ葬り去ってしまう、という醜い闘争劇はよくある話です。日が昇れば、月が消える喩のように、実力派の存在はなにより消し去らないと収まりが付かないものです。小沢氏VS菅氏の凄まじい争いは、悪党と偽善者の争いと揶揄されています。小沢さんは本気度を増すごとに怖い形相になって損ばっかりしているように見えます。国政を賄うといいながら円高株安の閉塞感が覆う日本経済をしり目に、菅さんのあの余裕の笑顔は、若々しいがどこか空々しい。
まあ、力があるからといって総理になれるものではない。が、力がないと早晩行き詰ることは確かですね。「いっちゃん総理になる」の物語への期待は、この代表選で適えられるのか、夢幻に終わるのか。どう思われますか。いやいや、ひょっとして代表選後の第2幕が、まだあるかもしれない。
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ショッキングなニュースは、経済協力開発機構(OECD)が発表した2007年の加盟国各国の国内総生産(GDP)に占める公財政教育支出の割合の結果で、日本は28ケ国中、最下位でした。幼稚園から大学までの教育費全体について調べた結果でした。本日の読売は社会面に掲載されていました。
もう一つは、朝日の1面の独自ダネ(3面に続報)です。
大学や研究所など日本の研究現場に、なんと米軍から提供される研究資金が近年、増加傾向にあることがわかった、という。20枚程度の論文を書くだけで2000万円ほどの資金が提供されている。詳細は、新聞をご覧ください。技術や人材の流出を危惧していたら、米国や中国からシークレットに日本の技術が狙われているのです。北朝鮮のスパイとて、そのターゲットは日本の先端技術情報と、ある著名な軍事アナリストが言い切っていました。
志高いベンチャーが危ない状況にあるのと、技術が海外に流れていくこと、雇用の機会が失われていく事態や、教育や研究に資金が回らない点…それに、高齢者が不明になったり、白骨化した死体が押入れから発見されたり、ひきこもりが急増したり、新入社員が一年未満で離職したり、家族がバラバラに崩壊したり、政治家がぶれたり、ウソをついたり、カネをごまかしたり…これらがひとつひとつ別個の問題として起こっているのじゃなく、それぞれが輪のようにつながって連環しているのです。
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◇「アエラ」をめぐるMichael Jacksonと黒川氏、そして…。
【コラム】黒川清氏の『学術の風』は、「Michael Jacksonとの話題に、城山三郎さんも参加して『AERA』の記事に」です。短めのコラムなので、その全文を掲載します。黒川先生が30数年前に邸宅を購入して移り住んだ、ロスアンゼルス郊外の高級住宅街のエンシノで、なんとあのking of popのMichael Jacksonとご近所同士の間柄で、マイケルの一周忌に合わせてその追憶の秘話を語ったというストーリーが、8月30日発売の週刊「アエラ」で紹介されました。書いたのは、何を隠そう、この私でした。その点に、黒川氏は、こう紹介されています。
「今年の6月26日にMichael Jackson(MJ)の1周忌に『Michael Jacksonと私』のことをお話しました。これを読んで、私の友人の出口さんが、そこにあった「Cul de Sac」を「キーワード」として使ってすばらしい話を作って、これが9月6日号のAERAに「マイケル招いた飛翔への交錯:マイケル・ジャクソン一周忌追憶秘話」 というタイトルで掲載されました。」と。
続けて、黒川氏は、「人生には、多くの人の出会いがあり、何が起こるかわからない。だからいつも前向きに、人が見ていてもいなくても、真剣に考え、まじめに自分の考えをすすめていくことが大事だと思います」と前向きなメッセージをいつものように発信されています。
※このアエラ取材に伴う「Michael Jackson取材メモ」は、次週のメルマガでじっくり腰を据えて紹介いたします。今週と思いましたが、行数が長くて次週回しにしました。「アエラ」の編集部みたいですね。わかる人はわかる!
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◇新たな稼ぎ手が育つ総合的な成長戦略で空洞化を阻止
【連載】経済産業省商務情報政策局長の石黒憲彦氏『志本主義のすすめ』は第149回「産業空洞化と雇用創出産業立地補助金」です。原稿にさらっと目を通して、すぐモノづくりの工場を経営する知人らにメールで送りました。まさにタイトルが示す、いま緊急に必要な処方を提示し、その切り札を解説しているのです。そのエッセンスを一部紹介すると〜。
「今緊急に必要なことは、キャッシュを貯め込んで果敢な設備投資をしない弱気な経営者の尻を叩く(笑)、よく言えば慎重な経営者の姿勢を変え、設備投資意欲をかき立てるような政策を打つことです。その切り札が低炭素型雇用創出産業立地補助金です。これはリチウムイオン電池やLED などこれから必ず大きく成長する産業分野の積極的な設備投資や国内立地を通じた雇用創出を促すことを目的として、一定規模以上の雇用創出と4年間の維持を条件に、設備投資費用の一部(大企業3分の1上限、中小企業2分の1上限)を補助するものです。」という。
そして、この低炭素型雇用創出産業立地補助金は、昨年12月の緊急経済対策の中で2次補正予算に300億円計上され、3月末に、雇用創出効果や集積効果などについての第三者委員会の審査を経て42件の補助を行った、とその成果を紹介しています。
石黒氏は、それでは米国をはじめ海外はどうか、と各国の動向に触れ、「いわば世界中で成長産業であるグリーン産業の囲い込み競争が行われる『新・重商主義の時代』になっている」と喝破し、具体的な投資額なども明示しています。
また先般、ご自身が大分で「情報経済革新戦略」と題して講演した際の参加者とのやり取りは、中小企業経営者の苦悩ぶりをリアルに描いていましたし、「大企業補助金はけいしからん」という批判に答えて、「大企業が国内に立地しなくては中小企業もまた国内に踏みとどまることはできないのです」と説得していたそうです。
加えて産業空洞化を防ぐためにはどうすればいいか、と自問しながら、法人税減税等事業環境整備、スマートコミュニティなどのグリーンイノベーション、医療・介護関連サービス産業の振興を通じたライフイノベーションなど、まさしく成長戦略が総合的に効果を発揮して始めて新たな稼ぎ手が育ち空洞化は止まります。そのための成長戦略です、と言い切っています。
どうぞ、DNDサイト右上の石黒氏のページから詳細をご覧になってください。サイトのトップページにもアップしています。
◇米国特許弁護士が語る「はやぶさ」の感動
【連載】米国特許弁護士の服部健一氏『米国特許最前線』の第55回は、「はやぶさの感動」です。米国在住の服部氏が、どんな思いでこの「はやぶさ」の快挙を綴ったのか。服部氏の丁寧な解説と感動の一端をお読みください。
まず命名、いくつかの根拠となった経緯を説明しながら、ここに「はやぶさ」を作った研究者達のロマンと決心と英知が染み込んだ名前となった、といい、小惑星「イトカワ」の由来と糸川英夫博士に触れて、「故糸川英夫博士は、『逆転の発想』というベストセラーを出版した博士で、技術開発する以上は世界一、世界唯一にならなければならない、諸外国が液体燃料なら日本は固体燃料で行くという、世界の常識を破って成功した」と技術者としての意気込みの一端を紹介していました。
そして、「イトカワ」の命名に関して、こんな記述が新鮮でした。
〜小惑星は、分かりやすく言うと、あのサンテグジュペリの「星の王子さま」がちょこんと乗っている小さな惑星である。しかし、小惑星イトカワは、最初からそう命名されていたわけではない。発見者はアメリカのMITの地球接近小惑星研究プロジェクト(LINEAR)で、仮符号は1998 SF36で、正式名は発見者のLINEARが付けられることになっていた。そこで宇宙科学研究所が、2003年5月5月9日に「はやぶさ」の打ち上げに成功したので、LINEARにイトカワという名を要請したところ、LINEARは故糸川博士の名声、プロジェクトの素晴らしさから、2003年8月6日に許可をしたのである。このアメリカのLINEARの懐の深さに感謝すべきだろう〜。
最後に、〜私は本当はウーメラ砂漠でカプセルの落下を見たかった。しかし、もしそこに行っていれば、見上げるのはカプセルでなく、「はやぶさ」の燃えカスが散る大空の方を見ていたであろう〜と万感の思いを短い文章に託していました。私も同感です。
※参考文献として、以下の三冊を挙げています。
『小惑星探査機 はやぶさの大冒険』 山根 一眞 (著)>
『はやぶさ―不死身の探査機と宇宙研の物語』 吉田 武 (著)
『はやぶさと宇宙の果てを探る』 二間瀬 敏史 (著)
◇米国政府のフォーカスの流儀と官のリーダーシップ
【連載】氏家豊氏の『大学発ベンチャーの底力』は第3回「政策当局のリーダーシップ」です。シリコンバレーを知悉し、実際現在も日本と米国を行き来するベンチャーのコンサルタントとしての専門性を存分に発揮した内容です。
注目の第一は、シリコンバレー発祥の地であるPalo Altoとは、スペイン語で「高い柱(木)」という意味、その「高い木のある街」で、現に、スタンフォード大学の入り口近辺に当時その木があったという、そんなエピソードを紹介しながら、「テーマ(キーワード)が常に一つ」という点を強調し、こんな解説を加えていきます。
見過ごしがちですが、と前置きし、「全土、全産業界の均等な発展を使命とするはずの政府にしては、8年ごとに政権党が変わるごとに、新しい一つのキーワードを打ち出してきます。戦略的でありフォーカス主義です。つまり、米国流の『官のリーダーシップ』の基本は、全米政府も州ベースでも、当面の政策的に大きく振興しようとするテーマ領域を一つに絞って、ないし絞った形にして提示し、かつそれを大々的に、しかも内外にキャンペーンするという点です。限られた財源、資源をなるべく絞り込んで、尖がった、その分高いポールを立てて、より多くの人に見えるような旗を掲げる」というフォーカスの流儀に言及し、以下のような全米政府の動きを整理してくれています。
・クリントン・ゴア政権 - 全米光ファイバー構想、IT産業振興 (1993年-)
・ブッシュ政権 - バイオ、セキュリティー産業振興 (2001年-)
・オバマ政権 - 環境・エネルギー政策 (2009年-)
一方、カリフォルニア州の場合の施策内容は以下の通りです。全米ベースより数年ずつ早い。
・ITクラスター形成期 (90年代前半-)
・バイオ産業振興 (90年代後半-)
・太陽光発電の振興プロジェクト ( 2000年代後半-)
氏家さんは、シリコンバレーに官の役割がみえてこない、官が活動していないのではないか、といえばまったくそうじゃないという。
で、氏家さんが最初、98年に下見に行ったとき、州政府の日本企業担当からマンツーマンで現地を案内してもらった。そして曰く、「この地もIT領域で州政府としてやれることはもうほとんどない。完全に一人立ちしている。いま州としてバイオに力を入れている」、と。そして2001年、ブッシュ政権が誕生し、ご存知のとおり、バイオ分野は全米のフォーカステーマになった、という。
再生エネルギー分野でもそうだ、という。州政府2006年秋にCalifornia Solar Initiative (CSI)という法案を通して、全米政府(共和党)の意向から距離を置きながら、独自で太陽光発電分野に奨励金を出し始めました。そして、2008年にオバマ政権になって、この再生エネルギー分野はやはり全米テーマになっています。このように、全米政府は、技術主導の産業政策ではなお更のこと、シリコンバレーに代表されるカリフォルニア州政府が数年前から取り組んできた知見と経験ベースに重きを置いてきました。具体的には、全米政府における中長期な戦略技術・事業領域の方針決定に、UC(カリフォルニア大学)バークレー校やスタンフォード大学、さらにシリコンバレーの代表的VCも大きく絡んできています、とその背景を詳しく述べています。ご興味のある方は、その全編をお読みください。
◇魅惑の山梨県の産業振興策を描く
【連載】東京大学産学連携本部副本部長の山城宗久氏『一隅を照らすの記』は第27回「フルーツフルな一日」です。山城さんが山梨県の産業振興ビジョン策定の委員に選抜され、その委員会出席のために山梨県を訪れるところから書き始めます。山梨、フルーツフルといえば…。
案内された果樹試験場の葡萄棚で、新品種として育成されてきたシャインマスカットを試食しながら、葡萄市場の話を聞く。果樹試験場と工業技術センターとが協力して、夜間にLED照明で数時間照射することにより果粒を大きくすることができることを発見し、特許出願中という地場の踏ん張りを紹介していました。
午後は、甲州市に移動し、マンズワインの工場見学です。マンズとは、親会社のキッコーマンの社名の'man'と、聖書に記されているラテン語で、天から授かった食物を意味する'manne'の双方に由来している、という。その後、県ワインセンター、次いで、工業技術センターへ。ここで行われているめのうの加工は、伝統的な山梨県の産業なのだそうだ。鮮やかな桃色が地色の白色に混じり合っためのうは、惚れ惚れするような美しさ、と表現されていました。そうか、県の産業振興を練るには、やはり地場の産業をしらないといけないわけです。役得ですね。
が、日帰りだったのです。山梨か!ゴルフに1回お邪魔したが、いまだ未踏の県の一つだわ。
◇小型風力発電の「ゼファー」本社をカリブ諸国の代表ら訪問視察
【DND一押し情報】小型風力発電の開発・製造のクローバルトップ企業として注目される「ゼファー」(榎本康一社長)のニュースリリースです。
「第2回日・カリコム外相会議」で来日中のカリコムの代表団が3日、外務省の案内でゼファー本社を訪問し、ゼファー小型風力発電機「エアドルフィン」の説明を聞き、さらに屋上で実際の風車を見学しました。
カリコムとは、カリブ共同体加盟国14カ国及び1地域で構成され、豊かな自然に恵まれていますその多くは小島嶼国で、幾たびのハリケーンや海面上昇、及び土壌の浸食に脅かされるなど、深刻な環境問題に直面しています。訪問した代表の皆様は、非常用の独立電源(バッテリーシステム)としても使用できる「エアドルフィン」に興味を持たれ、「エアドルフィン」の価格や実績などに関して多くの質問をいただきました。
※カリブ海諸国が経済統合、外交政策調整、保健医療・教育等に関する機能的協力促進を目指して1973年に設立した地域共同体。現在の加盟国は14か国1地域。(アンティグア・バーブーダ、ガイアナ、グレナダ、ジャマイカ、スリナム、セントクリストファー・ネーヴィス、セントビンセント、セントルシア、ドミニカ国、トリニダード・トバゴ、ハイチ、バハマ、バルバドス、ベリーズー。
凄いですね。どのメディアもフォローしなかったのでしょうか。このリリースは、DNDのトップページの大学発ベンチャー情報で紹介したものです。