DNDメディア局の出口です。いやあ、袋小路の米軍普天間飛行場の移設問題、「5月末決着断念」の活字を見たって別に驚きはしないが、誰かが責任をとらないと世論の雲行きは収まりそうもありません。田原総一郎さんの独断によると、平野官房長官が全部ひっかぶる、というが、さてこれも憶測の域をでません。
しかし、ヘリ訓練の移設先に上がる鹿児島県の徳之島、断固反対で町民と一緒に結束を固める三人の町長のスキを突く格好で、平野さんらが町議に手を伸ばし始め、今夜、徳之島入りするという。議員は議員仲間に頼る。その町議会を籠絡すれば、それを既成事実化し町民や町長がなんと言おうと地元の理解が得られたとする"証文"にすり替えようという魂胆かしら。沖縄の名護市辺野古へは、特措法など強制収用などに乗り込む懸念も囁かれます。
いやあ、民意とはなんでしょう。このやり方は、大国が小国を欺く侵略の構図に似ていませんか。いやあ、奇怪この上ない。「決着」という見せかけのメンツのために「権力」でゴリ押ししたら、どうなると思いますか。が、所詮、政治とはそんなもんなのですね。淡い「友愛」では政治はできない、ということの裏返しかもしれません。いつも切羽詰まると無節操な嘘にでる傾向が強い一部の団塊の世代。この内閣もそんな悪あがきにみえてしまいます。
NHKは、連日の報道の中で、結局、(普天間移設問題を)鳩山総理自らが政治最大の課題に押し上げ混迷の度合いを深めていく、と語り、骨太のキャスター、大越健介さんは、こんなコメント発しています。この短いメッセージの中で普天間問題に対応する政府の危うさの核心を突いていました。
「5月末決着とはいったいなんだったのか、その定義がどんどんあいまいなものにされていきます。総理自身は、5月末という期限を設けてアメリカ、地元、そして連立与党が同じ合意に達することを合意としていたハズです。それが不可能とみるや、政府与党から出てくる声は、決着点をぼかし、期限を遅らせようとするものばかりです。なるほと、不完全燃焼の案では決着を急いでいても摩擦は大きくなるばかり、という事情は理解できます。しかし、決着先延ばしの合唱が大きくなればなるほど、政治の責任は希薄になり、政治家が発した言葉が軽くなります」。
ほんと、大越さんのご指摘の通りです。言葉の軽さと言うが、あいまいな表現はさておいて、できもしないことをやるといって選挙民を誘導するのは公約違反だし、やるといってやらないのは詐欺とはいわないが、ウソになります。言葉が軽い‐では済まされない。政治家は、久月の人形じゃないのだから顔が命じゃないでしょう、なにより言葉に命をかけて欲しい。
拾えばきりがないが、つい最近だって「最低でも県外移設」と言ったのは「党の公約でなく、党首としての発言」という鳩山さんの言い訳だって、「首相の資質を疑わせる発言だ」と、読売の社説にありました。党首の発言は、公約より重い、とは国民新党の下地幹郎さんでした。これらのあいまいさと危うさは、それもこれも降ってわいた一時的のものではない。政権発足前夜から、これまで日本の安全保障問題や日米同盟に関して、東大教授の藤原帰一さんや外交評論家の岡本行夫さん、拓殖大学大学院教授の森本敏さん、元外務審議官の田中均さん、代議士の江田憲司さんら大勢の識者が、これまで何度も警告してきました。それで残念ながらその通りのことが現実に頻発しているのです。いまとなっては取り返しのつかない危機的状況を招いているのです。
その一番の原因は、鳩山さんの資質でしょうか。その流儀というか、強いて言えばその性癖はいまさらどうにもなるものではない。が、深刻なのは現政権の定見から抜け落ちているわが国の安全保障の議論が、いまだに宙ズリ状態なのです。
この5月10日夕、鳩山さんは「合意」について、移設先にかかわりのある国民の皆さん、アメリカの方々、連立与党の皆さんが「こういう方向で行こう」とまとまることを私は「合意」と呼ぶと述べたが、目指す決着は「方向」性の一致にとどめる、との考え方に軌道修正した、と読売は伝えていました。 沖縄県民、移転先の地元、アメリカ、連立という次元の違うこれらがまとまる、というのはどういう筋書きを描いているか。青と緑、それに赤と黄色を混ぜ合わせるようなものでしょう。一緒にまとめてそれぞれが発色するとは考えられません。優先順位からすれば、連立への対応は内輪のことだから後回しでよい。それを調整のトップに据えるからおかしくなるのです。
まあ、考えが甘い、ということです。読売紙面で、雑誌の時流を読み解く『思潮』の4月のコーナーは、『「普天間」方程式 解法は』の見出しで、タイムリーなテーマを扱っていました。少し紹介しましょう。主張に説得力がある外交評論家の岡本行夫氏の「ねじれた方程式『普天間返還』をすべて解く」(『文藝春秋』)では、岡本氏が(米軍に)それでも撤退を望むのであれば、相当の覚悟をしなければならないとして、「日本が後、5〜8兆円を負担して自前の防衛力を増強するのなら、問題はほとんど解決する。普天間飛行場もいらなくなるだろう」と述べ、在日米軍経費(思いやり予算)の2000億円があっても、日本が「超軽負担」で済んできたことを指摘している、と。
普天間基地移設で鳩山政権の真剣さを疑うのが、防衛問題の現実的処方を示す論客、衆院議員の江田憲司氏と人気の藤原帰一・東大教授の対談「なぜ日本は普天間問題を解けないのか」(『SIGHT』)。いやあ、これは必読です。
読売の文化部記者、植田滋さんの解説によると、普天間返還の日米合意を成立させた橋本首相の秘書官だった江田氏は、橋本氏が総理になる前から何度も沖縄へ行き、慰霊や遺骨収集に熱心に取り組んでいたことを紹介、「沖縄の心をわしづかみ」にしていた、という。この時期、政府担当者として奔走した岡本氏についても、「53回も沖縄に行って、場末のバーにまで入って、とにかく沖縄の人たちの話を聞いて、どんどん信頼を勝ち得ていった」と江田氏が岡本氏を評しているのだという。付け焼刃でない沖縄への共感、粘り強い対話があって初めて、事態は動くということだろう、と植田記者は感想を述べていました。
その点、鳩山政権は、考えてみればなんという失態を犯してしまったのだろう。危険な普天間基地の移設という難題に、心血を注いだかれらの努力を「最低でも県外」という甘〜いひとことで水泡に帰してしまった。これは罪深い話です。覆水盆に返らず、その後の混乱は識者が指摘し続けてきたことです。
岡本さんらは、じゃ辺野古を止めてどこにどうやろうと、しているのかさっぱりわからない、とNHKの日曜討論では、民主幹部を相手に日米同盟の意義や、海兵隊の抑止力の重要性について口を酸っぱくして警告していました。選挙戦で「最低でも県外」と訴えて票を稼いだのだから、それが実行できないなら、「ウソでした」と謝るか、普天間基地の返還の代償にそっくり取った票を県民に返すべきです。つまり鳩山さんは辞任し内閣総辞職すべきということです。
考えてみれば、お母さまから毎月1500万円の脱税まがいの"手当"をもらい続け総額ざっと12億円を超える巨額を知らなかったという鳩山さん。その使い道も知らないというのも信じられない話。秘書らが、億を超える金を勝手に持ち出すということがあるのだろうか。はやり鳩山さんの周辺にそんな不信がついて回ります。このまま棚上げしていいわけありません。しかし、大丈夫かしら。何って?いやいや、その毎日、記者のぶら下がり会見での鳩山さんの表情が気になります。顔に生気が失せ、眼は虚ろでどこかぼんやり〜。閣僚のほぼ全員が「5月末決着不可能」を臭わせているのに、鳩山さんお一人が「5月末決着」に執着しているように見えます。
「5月末決着」の文字をじっと眺めていると、いつの間にか、セロのマジックにかかったみたいに「5月未決着」に変わっている〜。
さて、もう少しその鳩山さんって、どんな人物か、そのところの研究が必要だと思います。昨年夏の衆院選前に発行した月刊『文藝春秋』9月号に詳しい記事が掲載されていました。『誰も知らない民主党研究』「右(前原)から左(菅)まで民主党の人々」と題したレポートで、評論家で拓殖大学大学院教授の遠藤浩一氏の分析が鋭い。なんといっても政権交代前の人物評であり、ある意味、陰陽の占いにも通じており、その見方がことごとく一致するから驚きです。
鳩山さんの評価です。「この人からして実態が掴みにくい。まさに民主党という政党を体現しているといっていい」と言い切り、この党首には「軸」が存在しない。よくいえば、環境の変化に柔軟に対応するタイプ、悪く言えば節操がない、という。ご本人は、「ニューリベラル」の立場からの現実的な提言としているが、保守なのかリベラルなのかよくわからない、と遠藤教授。
鳩山さんは、憲法問題には比較的踏み込んだ発言をするが、野党という立場から与党の反応をうかがいつつ自己主張する傾向がみられる。当時の「消費税論議は4年間封印する」という発言にも同じ事が言えるが、麻生首相のブレが自分を見失うことによって生じているのだとするならば、鳩山代表の場合は、「環境や状況によってどのようにでもブレることができ、そのことに痛痒を感じない政治家と言えるだろうか」と、容赦ない批評です。この分析通りじゃありませんか。
鳩山さんの特質が色濃く出たのが、ワシントンにおけるオバマ米大統領との非公式会談でした。
「双方の関心がすれ違い、停滞する日米関係をかえって印象づける結果となった‐と4月14日の読売は解説していました。日本側が頼んでやっと実現したその会談、約10分間の短い中で、鳩山さんは普天間決着に向けた努力を提案として大統領に伝えたと胸を張ったが、米側は、「検討に値する提案ではない」と反応は冷ややかでした。日本から提案があれば慎重に検討するが、今の時点で提案はない。提案とは、政治面と軍事運用面で安定して持続できるものでなければならない」と米政府高官の指摘を待つまでもなく、いったい、どんな体裁で"提案"としたのだろうか。
"Can you follow through?"
その読売が4日後の18日、1面トップでこの会談の続報を報じ、縦に「米大統領が疑念」、横に「きちんと実現できるのか」という大見出しの下に、英文でそんな文章を付け加えていました。
その前後の文脈を拾うと、鳩山さんが「日米同盟は大変大事だ。その考え方の中で今努力している。5月末までに決着する。大統領にもご協力を願いたい」と言った。すると、オバマ大統領は、「(昨年11月の日米首脳会談で)あなたは「私を信じてほしい(Trust me)と言った。しかし、何も進んでいないではないか。きちんと最後まで実現できるのか(Can you follow through?)。
鳩山さんは、それに対して「岡田外相とルース駐日米大使との間で交渉している。沖縄の負担軽減が、日米同盟の持続的発展にも必要だ」と答えたのだそうだ。米政府は、4月中に行うとしていたキャンベル国務次官補の訪日を見送る方針を固めたのは、今、次官補が訪日すれば、鳩山政権に誤解される恐れがあるからで、いまのままでは日本政府と協議する考えがない事を強調した、と読売の記事にありました。うかつに近寄ると、それが都合よく喧伝されてどんな影響をもたらすかわからない、という不信感が渦巻いているように感じられました。
どうして日米関係がこんな風にこじれてしまったのか。やはり『文藝春秋』11月号を参考にします。ここで引用するのは、『「懸案先送り」鳩山外交に警告する』−米国内に超党派で広がる「鳩山包囲網」の正体‐というタイトルの「ワシントン報告」で、筆者は、産経新聞ワシントン駐在編集特別委員の古森義久氏です。
昨年の9月23日の日米首脳会談。この時期、日本の新政権に対するオバマ政権の意図は明白で、日米同盟の変化を(日本が)求めてきても、その結果、起こりうる対立や摩擦を表面化させることは当面、避けよう、という趣旨だったと内情を語る。米側が超党派で強く支持する日本のインド洋の給油活動についても、同じ態度だった。だが、本音の部分では、オバマ政権側に鳩山政権の対米姿勢への強い懸念や不満があることは隠せない。オバマ政権に近い議会民主党外交関係者も、日本との「円滑」や「協調」にも限度がある、と語った、という。そしてその意味するところは、こうでした。
鳩山政権がこれまでに表明した対米姿勢でも、インド洋からの自衛隊の撤退や在日米軍地位協定の改定、核密約問題、さらには日米同盟を否定しかねない東アジア共同体構想ぐらいまでは、オバマ政権も代替案やレトリックで対立を何とか隠せるかもしれない。だが、普天間基地の沖縄県外移転の要求に対しては米側に妥協の余地はない―と断じているのです。
古森さんのレポートからもう6ケ月以上、時間が過ぎました。最近発売の『文藝春秋』6月号は、ジャーナリスト、浦上隆&チーム・キャピトルによるワシントン深層ルポ「鳩山民主『批判の核心』」です。そのタイトルは、「爾後、鳩山政権ヲ対手トセズ」で、ホワイトハウスの中枢4人組はついに鳩山政権を見放したーとセンセーショナルに扱っています。なぜ、外交ルートはここまで断絶し、オバマの鳩山への不信感は極限まで募ったのか、とある。
そのショックングな記述を紹介すると、オバマ訪日が1ケ月後に迫った10月、外務省は機能不全に陥っていた。混乱に拍車をかけたのは、鳩山の「非公式ルート」の乱用と断じ、米国務次官補のキャンベルが日本にやってきて政府高官に「ハトヤマには4人の外交ブレーンがいるそうだな?」と語りかけて、指を折って順に名前をあげたことを明かしていました。
その4人。駐米大使にも取りざたされた朝日新聞主筆の船橋洋一、日本総合研究所会長の寺島実郎、首席秘書官に就任した佐野忠克、そして民主党政調部会長から内閣官房専門調査員に転じて鳩山の外交演説づくりを手がける須川清司の4人だ、として、「この中に外交・安全保障のプロフェッショナルは一人もいない」というのです。鳩山政権を見放すに至る人模様と経緯の内幕が、リアルに暴露されています。
普天間で米政府が日本と協議し、合意できる条件はたった一つ、としてその具体的な方策を明示しています。ふ〜む、これを読むと、鳩山さんの指摘する「合意」が、いかに困難なものかが分かります。アメリカが最大のハードルとは驚きました。大使のルースさんは、いつも物静かでクールな表情をしているので、鳩山政権のアプローチに快く応じてくれるハズと思っていたのですが、そうじゃないのですね。鳩山さんの発言、この人の言葉には根拠がないことを平気で言うことが理解できればもう迷うことはないのです。
しかし、わが国の安全保障はどうするのよ、鳩山さんを選んだ責任は誰にあるのですか?普天間基地移設をめぐる鳩山政権の混迷は、次の手を誤ると、取り返しのつかない事態を招く恐れを感じます。「日本崩壊」の文字が脳裏をかすめます。次回も引き続き「普天間基地移設」はフォローしていきます。
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■'Weak' is not the correct word , rather it is 'paralyzed'
【学術の風】このところ厳しい論説を発信している、黒川清氏のコラム「学術の風」は、ギリシャが債務超過になり、ついでスペイン、ポルトガルも債務過剰になりそうでユーロ価値の危機を捉えて、日本の危機的状況に警告を発しています。
「日本の偉い人たちなどが、日本には国民の貯金その他で1,400兆円ほどあるから、国全体としては債務過剰ではないから大丈夫、などといっていましたが、さすがにそんな発言は、最近は不思議に減っているように感じませんか?なぜでしょう」と問題を提起し、今年1月末に格付け機関「Standard and Poor's 」が日本の国の信用を1ランク下げたことに触れています。
続けて、「本当はどうなのでしょう」と一拍置いて、「確かに日本の借金は返済不可能で、国の信用は低下していくでしょう、経済成長もなかなか難しそうです。来年度は日本が発行する国債が国内だけでは売れさばけず海外に購入してもらうより仕方ありません。このときは金利が4-5%程度には上がる、借金の返済はさらに苦しくなり、国の借金は急速に増え、インフレになり、国民の生活はさらに苦しくなる」という見通しを述べていました。
衝撃のフレーズは、英語版で一層如実でした。
Internationally speaking, reputation of Japan has dropped sharply, and I even sense the air of 'not wanting to get involved with' feelings sneaking into the minds of people outside of Japan. 'Weak' is not the correct word to describe Japanese economy of today, rather it is 'paralyzed'
世界では日本への信頼はガタ落ちで、できれば相手にしたくないという雰囲気も出始めていますね。日本経済は「弱い」のではなく「麻痺している」のです。
■特許庁の「次世代web検索技術のイノベーション」
【連載】特許庁審査業務部長、橋本正洋氏の『イノベーション戦略と知財』の第19回は「次世代web検索技術のイノベーション」です。東京大学工学系研究科イノベーション政策研究センターから、松尾豊准教授、助教の森純一郎氏を特許庁にお招きしての、「次世代web検索技術の最新動向と特許・商標・意匠検索への応用」という講演会の模様を伝えてもらいました。
出願された商標が、世の中でどれほど知られているか、その著名性を調べるのにwebの検索が「強力なツールになる」という。ふ〜む、それまではどうしていたか、そこは本文をお読みください。次世代webの検索と特許審査の現場が、これほど近い関係にあるとは、知りませんでした。
森氏は、web検索エンジンの仕組みやランキングについてご説明されたようです。例えば、「イノベーション」をGoogleで検索すると、約260万件ヒットします。その中で「イノベーション・ジャパン」は11位と健闘、「イノベーション戦略」をヤフーで検索すると、橋本さんのこの「イノベーション戦略と知財」が1ページの9番目という上位にランクされているという。
松尾氏は、「現在の検索からセマンティック(意味論)技術へ」という人工知能的な意味検索に進化した最新の動向に言及されたそうです。
著作権法等の改革が進んで、特許庁の知財データベースや検索システムが今後さらに使いやすく便利になることを期待しましょう。
橋本さんにいわせると、私はこういう風貌でも意外と「web検索技術」に詳しい、と名誉ある紹介をしてくださっています(笑)。
追記:15日は東大本郷キャンパスで開催の「情報知識学会年次総会」の記念シンポが予定されています。「科学技術コモンズと情報知識学の挑戦」と題し、東大の岩田修一教授、国立国会図書館の長尾真館長らが登壇します。橋本さんが、パネル討論のモデレータを務めることになっています。どうぞ、ご興味のある方はご参加ください、と橋本さんは呼び掛けています。詳細は、本文からどうぞ。
■EM技術による食品の保存と品質の向上
【連載】名城大学教授の比嘉照夫氏『緊急提言、甦れ!食と健康と地球環境』の第26回「EM技術による食品の保存と品質の向上」です。まあ、残念なことにEM技術への不確かなバッシングが一部あるようで、これも有名税と見過ごせない事情があるのでしょう。その辺を比嘉先生は冒頭、きっちり具体的に反論しております。科学における再現性の検証は必要不可欠の条件と言い切り、しかし、生命の不可思議な微細の世界においては、「増殖や環境条件によって過去は消滅し、外部の条件によって全く逆のことが次々と起こってくる」とし、そのEM技術の優位性とその確かなメカニズムに言及しています。
そして、本題へ。内容は、喫緊の課題といわれる食料の自給率向上について、詳細なデータを駆使してその処方を提言されています。それにしても食品廃棄の実態、それに食品添加物の摂取の実情は驚愕でした。EM技術は、これらに対して「いずれもその代替技術となりえるもので、食と健康という観点からさまざまな応用が試みられ、ほとんどの分野で満足すべき結果が得られるようになってきた」とその目覚ましい普及状況を紹介しています。
■ドイツの歴史博物館に学ぶ
【連載】東京大学産学連携本部副本部長、山城宗久氏の『一隅を照らすの記』の第20回「歴史に学ぶ」です。このGW中、大学時代の旧友を訪ねてドイツへ足を運んだ時のお話です。ニュルンベルクという都市、そこのドク・ツェントルムと呼ぶ、ナチスに関する展示博物館での感慨は強烈だったようです。
ナチスの台頭・独裁・破滅に至る一連の歴史の軌跡に触れて、「戦慄を覚えながら見続けました」とあります。ユダヤ人をはじめ、多くの無実の人々をランク分けし、差別し、ついにはせん滅する。「人間とは本当に恐ろしいものだと深く思わざるをえなかった」と述懐されています。
日本でも歴史教育の充実が必要である、と語り、「いま大学でも国際化が言われているが、まず母国のことを知ることが国際化の大前提じゃないか」と訴えておられます。
以上