◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2009/07/01 http://dndi.jp/

村上春樹流「瓶と蓋のジレンマ」

・麻生降ろし、総裁選前倒しの論理
・政権交代後の手薄なシミュレーション
・石黒憲彦氏の連載は「大転換の潮目」
・「イーベック」土井尚人社長の京都報告

DNDメディア局の出口です。うっとうしく空気が重い日が続きます。朝のニ ュースは、九州北部、東海の広い範囲での局地的な雨による災害の影響を伝え、 浸水の被害が及ぶ福岡や飯塚の街の映像を流していました。大丈夫でしょうか。 要警戒ですね。また、連日、メディアをにぎわしているのが、自民党内に吹き 荒れる麻生降ろしと、解散・総選挙をにらんだ動乱の政局ネタです。


さて、もう7月に入りました。この梅雨が明けると、一気に夏を迎えます。 が、いつもの年と様子が違って見えませんか。焦点の政権交代が迫る解散・総 選挙が、いよいよ現実味を帯びてきているからでしょうか。どこか空気が妙に 変だ、どこかよそよそしいのです。う〜む、何が理由なのでしょうか。考えて も、それがなんだかよくつかめません。


本日アップのDND連載「志本主義のススメ」の筆者、経済産業省の石黒憲彦 さんの最新のコラムのタイトルが「大転換の潮目」で指摘の「今や歴史的転換 期の胎動が始まったという認識を持つ必要がある」というのは達見で、その辺 に答えが潜んでいるのかも知れません。


じゃあ、それを村上春樹さん流にいえば、こうなります。  〜私がおかしいのか、世界がおかしくなっているのか、そのどちらかだ。ど ちらかはわからない。瓶と蓋の大きさがあわない。それは瓶のせいかもしれな いし、蓋のせいかもしれない。いずれにせよ、サイズがあっていないという事 実は動かしようがない(『1Q84』第9章(青豆)「風景が変わり、ルールが変 わった」から)。


そんな埋められないままのジレンマが、随所に仕掛けられて抜け道のない幾 層もの迷路に入り込んでしまったようなのです。たぶん、メディアも、自民党 も、私も…。


不思議ですね。冷静に考えれば、一般の有権者からどう映るのか、産経新聞 は、自民内戦状態と書いていましたが、どうみても醜い内ゲバとしか、見えな いのです。なぜ、政治家さんは、あんなにエネルギッシュなのでしょうか。ど ん底の支持率急落にあえぐ麻生政権を支えるならば、ある若手の代議士も訴え ていましたが、まず一致団結してこの難局に立ち向かう方が得策です。


が、ドロ舟の麻生政権と心中はご免こうむりたいという逃げの一手で、自分 の延命を図る、という論理なのか。しかし、麻生さんにしてみれば、なんだか よくその辺の動きの真意が読めない。誰が味方で敵なのかが、判然としないか ら、判断が遅れたり迷ったりする。これじゃあ、表情から笑みが消えるのもし ょうがありません。少しの釈明もしないところは、ご立派。格の違いを感じさ せるが、なんだか歯がゆいし、ぎこちない。きっと腹の中は相当煮えくりかえ っているに違いありません。


だって、「オレ、なにかとんでもない事しでかしたかい、ちょっと聞いてみ るけど、あるなら教えてよ!」っていうボヤキが聞こえてきそうなのです。そ れこそ、瓶と蓋があわないのは、どちらのせいなのよ〜といいたいのではない か。


何事も考えたようには、うまく事が運ばない。麻生降ろしに総裁選前倒し、 宮崎県の東国原知事の入閣が取り沙汰され、党人事刷新では現職幹部から怒り や不満が漏れてきます。先ほどのラジオのニュースは、党人事には手をつけな い、と麻生さんが明言した、と。まあ、あの東国原さんを大臣に据えたら、あ るいは比例名簿の第1位に載せたから、って、自民に風が吹くか、逆風が止ま るか。そんなものじゃない気がするのだけど…。返って、これまで自民を支え てきた保守本流の支持層に軋みが入っては本末転倒ですね。


選挙の当落に敏感なのが、票の移動です。自民支持層から民主候補への移動 が、その選挙区で数%でも起これば、その影響は少なくない。直接、当落に響 くから、です。日本政治総合研究所の所長で教授の白鳥令氏の最近の調査デー タには、その辺の予測が見事にシミュレーションされていました。だから、選 挙の要諦は、内部を固める、ということになるのですね。


自民がなぜ、いま魅力がないのか。そこの原因は、ほんとうにわかるのだろ うか。村上春樹さんの「瓶と蓋のジレンマ」をここでも感じざるを得ません。 麻生さんにどんな問題があるのか。それより、民意は、ともかく「政権交代」 に流れているのです。勢い民主に期待しているのでもなく、「政権交代」の先 に、漠然としながらも、なにか局面打開があるのではないか、と淡い期待を抱 いているような気がしてならない。


その民主。故人献金の迷走は、正直、参りました。これも鳩山代表の説明で は、腑に落ちないところが多すぎます。そこから新たな事実が発覚すると、こ れはまたもや「金と政治」のスキャンダルになる可能性も否定できません。


そして担当の公設秘書を解任した、と言うのだが、解任された秘書も気の毒 です。民主の代表の公設秘書は、なんだか嫌なイメージがついてしまいました。 秘書だって、家族もあれば人権もある。秘書を大事に扱わない政治家は、まあ、 私の考えでは失格です。


本日の新聞は、その鳩山代表の記者会見の様子を伝えています。次期衆院選 で政権交代した場合、2009年度の補正予算は、「かなりの部分は、予算を執行 する必要がない」との判断で、「予算凍結」を示し、7月1日の本日政府が閣議 了解する10年度予算案の概算要求基準について「組み替えなければならない」 と語った、という。


えらいこっちゃ、政権交代による効果や影響、その全体がまだ少しもみえな いのですが、こんなような驚くべきことが連続して起こるのだろうか。自民や 与党側は、政権交代の余波、影響をどんな風に予測しているのか。その見通し を直接、ある自民の代議士に質問してみると、日米の安全保障、北朝鮮の暴発 に伴う問題など安全保障について、いくつかの疑問を指摘していました。政権 交代後の、日本の舵取り、まだその影響がどの程度、どう及ぶのか、そこを注 意深く研究している、という風には感じられませんでした。が、これはその専 門の部局で綿密に分析しているハズですよね。


さて、その風雲急の自民。今や四分五裂の"内戦"状態に陥り、その緊迫の行 方は、まったく五里霧中です。こんなことやっていては選挙に逆効果じゃない か、と心配するのですが、どうも政治家の論理は、一筋縄じゃないようです。 それぞれの信念に基づいているから、ややこしい。素人にはうかがいしれない、 もう一段別の次元になんらかの動機があるようです。そして、このまんまあっ さり下野するわけにはいかない、ということは理解できます。これからの政局、 夏の陣、いまその1章が始まったばかりなのですね。まだひと波乱、ふた波乱 の胸騒ぎがしてきます。


次期衆院選は、政権交代を賭けた、自民・公明の与党VS民主・社民党・国民 新党、そして共産の野党のガチンコ勝負と思って各選挙区の動向をながめてい たら、なんだか自民党内の雲行きが怪しくなってきて、突如、総裁選前倒しを 引っさげてメディアに登場した自民の山本拓代議士の行動が、あれよあれよと いう間に、反麻生の急先鋒となって、その動きが台風の目になっているのです。 山本代議士といえば、私の知人も多い福井県鯖江市などが地盤で、あの聡明な 高市早苗代議士の旦那だったと知って驚きました。総裁選前倒しの賛同を支持 する声は、いまや都議選開票の翌日13日に開催を求めている両院議員総会で、 多数を占める勢いなのだという。自民党の総理と内閣の総裁を分ける総・総分 離論。が、誰がやるか、より多くの有権者は何をやるか、に期待を持つわけで すが、どんな総裁候補の顔ぶれが登場するのか、そっちも興味がないわけでは ない。


そして、この騒動は、解散・総選挙のその後も引き続くことでしょう。政治 の論点が乱れ空疎な時間が流れてきます。脱官僚に脱政党、個人献金に故人献 金、なんとか降ろしに前倒し、似て非なるこのパラドックス、いずこも浮足立 って軸足が定まらないのは、やはり、石黒さんが指摘するように「大転換の潮 目」なのか、それとも村上流の「瓶と蓋のジレンマ」なのか、私にはなんだか 見当も尽きません。


先月の26日、東京・市ヶ谷の「グランドヒル市ヶ谷」で、毎日新聞元論説委 員で政治ジャーナリスト、大学教授の肩書を持つ仮野忠男さんが主宰する「市 民塾・22世紀」に知人の紹介で足を運んできました。月1回の定例会で、2001 年夏から回を重ねて94回。その日のゲストは、自民の山本代議士でした。この 忙しい時に、よくまあ、この手の勉強会に出席してくれたものだ、と感心しま した。山本代議士は、政権交代の争点となる、年金、農業、環境など問題につ いて、民主党が掲げる政権公約をばっさり切って、その勢いで、総裁選の前倒 しの正当性を述べながら、これまで賛同者の数が110人を超え、両院議員総会 の開催に必要な党所属国会議員の3分の1以上は、「目標を達した」と明言しま した。


その中で、今日の政治状況について、わが国の将来をどうするか、「何をや ってもまとまりません」と政治合意の難しさを強調し、昔は夫婦や家族のコミ ュニティが取れて全部票にすることができたが、今はそれぞれ独立して、1票 がまちまちなのです、と訴え、地元・福井の選挙区で積み重ねた後援会名簿が 4万人、そこへ後援会の会報を送るにも資金がかかる、と民主主義のコストに 触れ、「何をしてもタダで動くのは地震だけ」と会場を沸かせていました。


総裁選へ前倒しの"奇策"は、当初、いささか突飛に感じましたがいまや政局 の本流になり、山本代議士のメディアの露出も連日です。が、そばで見てその 言動は、意外とざっくばらんで、気さくな人柄がにじんでいました。


仮野さんからは、本日集まった会員は、いずれも首都圏在住で、オフレコを 守る私の知り合いの方々なのでご安心をーという説明がありましたが、山本代 議士は、「ここだけの話というのが、一番危ない」と笑い、いつもしゃべって いることだし、これから記者会見で話すことなので、心配いりませんーと余裕 を見せていました。という理由で、本来、オフレコの「市民塾」の様子をこの 場で紹介させてもらいました。


その後は、仮野さんを囲んでのビール懇談会になるのですが、議論はもっぱ ら、日本の安全保障問題に集中していました。企業経営者らに混じって、一般 のご婦人らが、積極的に普段考えていることや疑問を持ちかけると、仮野さん はそれに丁寧に答え、そしてじっくり聞いているのです。とても新鮮にうつり ました。「市民塾」の参加費は2000円、毎回、錚々たるゲストを招きます。市 民が現実に目を向けて政治を監視する、そんな気概に満ちていました。


さて、その26日、偶然かどうか、その日を境に麻生降ろしが一気に火を噴き 出します。中川秀直元幹事長が、函館で「自分の政権が終わっても、自民党政 権が続く『名誉ある決断』を麻生総理はする時だ」と「退陣勧告」を突き付け れば、反麻生のもう一人の旗頭、武部勤元幹事長も「新しい総裁を選んで新し い政策を掲げ、信を問うべきだ」と「麻生降ろし」を宣言した、と27日(土) の朝日はそう伝えていました。その一面のトップの見出しは「解散 最終攻防 へ、首相の党人事焦点」でした。


なぜ、こんなに反麻生の動きが加速しているのでしょうか。団塊の世代の先 輩諸氏に聞くと、10人中10人が「政権交代」を口にします。もう圧倒的な印象 です。まず、ここは民主党に一度政権を任せてみるのもいいじゃないか、とい う。しかし、そこに脱政党の動きがチラチラ感じるのです。脱官僚を叫ぶ政治 家に対して、暗黙裡に脱政党に流れているのです。


その是非は別にして、もう組織の論理は、一般的に通用しなくなっているの かもしれません。そこで誕生してくるのが、自民VS民主の構図に対して、どち らも組みしない、いわば新たな無所属層の存在です。その特性を読むとすれば、 まず他人との距離感があり、争うことを嫌う。「批判」はしない代わり、政治 的こだわりも主張も目立たない。だから、政治に距離を保ち、かといって選挙 の時は投票所には足を運ぶのです。彼らの投票行動の一番は、政策や理念では なく(その手のものにはウソが多い、と知っている)、人物への共感というの ですが、さて、それらをどう捉えればいいのか。政治不信によるのか、戦後の 日本の利権あさりの悪弊は、勿論、官僚より悪しき政治家によってもたらされ たのではないか。


この4月以降、各地で首長の選挙が目白押しで、ミニ統一選の様相です。6月 は、前市長の逮捕、辞職に伴う千葉市長選は、民主党が推薦した前市議の熊谷 俊人氏が、自民、公明両党推薦の元副市長を破って初当選しました。31歳の最 年少市長の誕生でした。


政治にも潮目がある、というのが素直な実感でした。すると、今度は、先日 の28日投開票の神奈川県横須賀市長選では、33歳の前市議、吉田雄人氏が、な んと自民、民主、公明各党から支援を受けた現職を破り、初当選したのです。 これらの結果を、誰が予測したでしょうか。いまあっちこっちで、これまでの 経験則では思いもよらない結果が次々と起きているのです。横須賀は、小泉純 一郎元首相のひざ元で、自民、民主相乗りの候補が敗れた事実を、その所以を 分析することは、とても大事な作業に思えます。これも新たな始まりなのです。


そして7月。この5日の日曜日は静岡、兵庫両県知事選があります。朝日の選 挙情勢では、自民・公明推薦の候補が民主候補と接戦を演じているそうです。 それに3日告示の首都決戦は東京都議選。焦点は、かつて鈴木俊一元知事が初 当選を果たした1979年(昭和54年)以来続く自民・公明両党による過半数維持 がどうなるか。消費税の導入をめぐって議会が揺れた当時、12議席から39議席 へと大躍進した社会党の旋風が、今度は民主に吹くか。


定数が127だから、過半数は64議席。その道の選挙通によると、手硬い公明 は、その鈴木都政以降、これまでperfectの「全員当選」を継続中で、今回も 「23」は死守するでしょう、という。となれば、自民が41議席を獲得できるか、 にかかっています。いくつかメディア関係者に取材すると、「自公は絶対絶 命」という。確かに千代田の多選で70歳の自民現職に26歳の民主新人という構 図では、流れからして現職に逆風です。が、なんだか私にはそんな風には思え ないのです。自公の過半数は、ぎりぎりだが、選挙後の無所属からの当選者の 取り込み次第で、なんとか過半数はクリアするのではないか。自民は、意外と 土壇場になれば地盤の強みを発揮する、とみているのです。その根拠は、あり ません。かつての都政記者のカンです。


いつも国政の政局に左右され、あるいは国政選挙に影響を与えることから、 その前哨戦といわれる東京都議選。都政の担当記者から数えて25年、もうすっ かり馴染みの議員さんは、引退したり、鬼籍に入られたりと顔ぶれは様変わり です。ただ、杉並の山田宏区長、荒川の西川太一郎区長、足立の近藤やよい区 長、世田谷の熊本哲之区長、江東区の山附F明区長らは、都議や代議士からの 転身で、新宿の中山弘子区長、千代田区の石川雅巳区長らは、都庁の局長OBで す。もうすっかりご無沙汰しておりますが、都議選となれば、よくご自宅に足 を運んで、選挙の情勢をお聞きしたものです。それらが私にとって数少ない 「マイタウン東京」の肖像です。



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◆【連載】は、経済産業省の石黒憲彦さんの『志本主義のススメ』の第137回 は、「大転換の潮目」です。いいタイトルをおつけになりました。今回も、そ のメディアの安易な報道姿勢にこう切り込んでいるのです。
 〜今回これほど市場が暴走した際の振幅の激しさが明白になったにもかかわ らず未だに政策金融機関をなくすという流れが基本的に正しいと思い込んで頭 が切り替わらないところにマスメディアに「歴史観」「大局観」の欠如を感じ るのです。この20年こそ資本主義、市場原理、自由主義の価値を過信した「特 異な時代」ではなかったか。その破綻が今の危機ではないのか。今や歴史的転 換期の胎動が始まったという認識を持つ必要があるのではないか。まっ、あれ だけ「構造改革」を煽っていたのですから趣旨替えするのも無責任の極みです が〜と。
 今回もおおいに勉強になります。それも137回を数え、経済政策の立案者の 立場から、問題解決にむけた現実的な施策とそのプロセスにいたる論理的背景 を整理し、経済産業省が今後、どういう考えで何を意図しているかなどをわか りやすく解説してくれています。石黒さんの原稿は、論理的でそして実践的な ので、多くの大学の研究者や学生ばかりではなく大手メーカーの技術者からも 人気があるのですが、それも大いに頷けます。
◆『第8回産学官連携推進会議』報告  (株)「ヒューマン・キャピタル・マネジメント」社長で、北海道大学発ベ ンチャーの(株)「イーベック」(札幌市)社長を兼ねる土井尚人さんに、お 願いした報告が届きましたので、ご紹介します。土井さんは、「元気は大学・ 中小企業・ベンチャーが牽引する地域活性化」の分科会にパネラーとして参加 しました。また、ドイツのメガファーマとのアライアンスで素晴らしい成果 を出すことに成功し、産学連携功労賞では、北大の遺伝子病制御研究所の高田 賢蔵教授(現イーベック代表取締役会長)らとともに、科学技術担当大臣賞を 受賞しました。

  【産学連携推進会議を終えて】
1.パネル(ヒューマン・キャピタル・マネジメント社長として私が参加した 分科会X)
産学連携の現場で実際に活動するメンバーによるパネルディスカッションなの で、意義のある会議でした。産学、官民、大企業と中小企業、地域間、国際的 なものまで様々な連携について議論でき、とても良かったと思います。

オープンイノベーションが一つのテーマとなる中で、産学連携の有効性はます ます上がってくると感じています。

私の行うインキュベーションは優れた「学」の「知」に「経営技術」を加える ことで「事業」にしていくことです。大学等の「知」に産業として必要な要素 「安全性、標準化、コンプライアンス、データの再現性など」を加えると事業 になります。優れた技術があれば事業にするのも有利で、イーベックも高田先 生の優れた技術があったからこそドイツの製薬会社BI(ベーリンガー・インゲ ルハイム)とのアライアンスが実現しました。大学にある「知」「技術」は奥 が深く、まだまだ可能性があると感じています。

提携にはいくつかのルールがあります。提携の上手な(オープンイノベーショ ンを実践している)企業の多くは、大学、ベンチャー企業との取引でもそれぞ れの「立ち位置」「役割」「権限」を明確にしてくれます。

会場からの質問で「インキュベーションや産学連携のコーディネートは民間で 事業としてできないのか?」という質問が出ました。ヒューマン・キャピタ ル・マネジメントは純民間のインキュベーション会社なので、私からは「イン キュベーションを生業とすることは可能である。」と答えました。

会社を作ったとき高橋はるみ北海道知事(当時北海道経済産業局長)から「あ なたたち、官業圧迫よ。あなたたち民間でできるものはどんどん奪って行って 頑張ってください。」とエールをおくってもらいました。

我々は民間でできることは民間で、しかし、民間でできないことは官主導でや るべきだと思っております。インキュベーション部門でも生業としてインキュ ベーションを行う我々のような企業と官主導のインキュベーションの連携も重 要であると感じています。我々はインフラを作れません。ここは官との連携が 有効なのです。


2. 表彰(イーベック社長として)
このたびは内閣府科学技術政策担当大臣賞を頂き、ありがとうございます。 産学連携の世界に飛び込み約7年間、このような賞を頂いてとても光栄に思っ ております。

北海道大学、産総研北海道センターと一緒に受賞しましたが、北海道に移住し て3年目という早期から大学や産総研など優れた機関と連携でき、このような 場に一緒に立たせて頂くことができたことをうれしく思っています。

インキュベーションを本業としている私は自分自身の受賞というよりは、高田 先生の技術が表彰され、高田先生が受賞している瞬間の方が嬉しかったです。 良い先生や技術に巡り合えたことを感謝しております。

大企業と大学や研究所の連携は早期に技術が世に出ることからますます連携が 拡大していってほしいと思います。同時に我々のように「技術」を先生自らが 起業して「顧客創造」につなげていく動き、つまり大学発ベンチャーも重要で あると信じて事業を行っております。大学発ベンチャーの成果がこのような形 で表彰されたことに対し、感謝するとともに、国の期待を裏切らないようにま すますしっかりとした経営、技術革新を継続していきたいと思います。

◆【一押しイベント】京都大学「イノベーション・マネージメント・サイエンス研究部門」シンポジウム。

ご案内は、京都大学産官学連携センター教授の木谷哲夫さんからのご案内です。 ベンチャーが、その成長のために外部のマネジメント能力や開発リソースをど う活用するか−を狙いにした実践的で、しかも先進的な内容のシンポジウム 「地域発・グローバルベンチャーの可能性」。登壇者の顔ぶれも多彩です。ど うぞ、ご参加ください。

■日時:7月17日午後13時から17時30
■場所:京都大学 百周年時計台記念館「百周年記念ホール」。
■主催:京都大学産官学連携センター、日本ベンチャー学会
■参加費:無料 (ただし、懇親会に参加の方は2000円)
■シンポジウム詳細
http://ims.icc.kyoto-u.ac.jp/?page_id=169
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