◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2009/04/15 http://dndi.jp/

痴漢「冤罪」事件、逆転無罪の教訓

 ・「3対2」:天国と地獄のきわどい現実
 ・Yahoo!「朝読むメルマガ」の充実度
 ・JSTの研究情報検索「J-GLOBAL」開始
 ・張輝氏:「東大教授、松島克守氏の最後の講義」
 ・連載は比嘉照夫教授、HVC業界レポート
 ・横林寛昭氏の新刊「増益のしかけ」を祝う会

DNDメディア局の出口です。夜来の雨で、しっとり空気が洗われて、朝から夏空が広がっています。やっと咲いた庭のチューリップ一輪、その紅色の花を すぼめて雨風をしのいだようです。朝日に向かって、再び微笑むように少しずつ開き始めていました。春の草花は、愛しいほど健気ですね。NHKラジオによる と東京の湿度は39%、窓からの風が、なんとも気持ちがいい。


さて、普段、情報の窓をいくつお持ちですか。新聞や雑誌、書籍、テレビという既存のメディアに加えて、Webやmobileの進化が著しく次から次とさまざま な情報の配信サービスが登場しています。この多メディア時代の情報をいかに処理するか、それは情報を発信する側の問題でもあり、一抹の不安とある種 の限界を感じています。錯そうする問題の糸が複雑に絡んで、それを解きほぐすのが難しくなっているからです。そのために種々、多面的に言葉を多用しない とならなくなり、すると、今度は問題の本質がぼやけてしまいかねないのです。ワンフレーズで、片づけられないまどろっこしさがついて回るのです。


今朝の新聞社会面を開いてみましょう。最高裁の上告審判決で痴漢の逆転無罪となった防衛医科大学教授の名倉正博さん(63)の談話と写真が大きく掲載 されています。


「他にも犯罪者の汚名を着せられている人がいる。有頂天にはなれません」と笑顔はありません。が、陰で支え続けた妻に質問が及ぶと、にわかに表情が 崩れて涙声で、「家内も涙がにじんで何もいえず、ありがとう、とだけ言いました」という。逮捕、起訴から丸3年、家族は、どんな思いで過ごしたのでし ょうか。


この問題の根は深い。痴漢行為を軽微な罪とは思いませんが、例えば強制わいせつ罪で逮捕され、一審、二審判決で有罪となると、どうなるか。ご本人の 職場や地域、その社会的信用を失墜し、妻や子、親といった家族の精神的苦痛やダメージは、はかり知れません。それが身に覚えのない冤罪だったとしたら、 その怒りをどこにむければいいのか、想像しただけでも背筋が凍る思いです。


そして、この冤罪の後遺症は、晴れて無罪となったからといってそれで癒えるものではないのです。その名誉の回復は、誰の手によって行われるのか、そ もそもそんなこと可能かどうか、わかりません。痴漢を訴えた女子高校生の微妙な立場と相まって、事の真相をめぐっては、これからも繰り返し問題視され 続ける懸念があるからです。毎日新聞1面の「解説」で銭場裕司記者が、「当然の判決とも言えるが、3対2という際どい判断だった点に問題解決の困難さが 投影されている」と指摘していた通りだと思います。


これまで繰り返し指摘されているように、事実確認や証拠、目撃者の存在はともかく、満員電車内で「この人痴漢です!」とひと度、女性から声を上げら れると、そこでアウトになってしまう公算が大きいのです。一切の弁明も聞き入れられず警察に突き出されるわけです。


名倉さんのケースは、教授に昇進したばかりの06年4月、通勤中に突然、女子高校生からネクタイをつかまれ「痴漢をしたでしょう」と言われ、逮捕され てしまいました。そして強制わいせつ罪で起訴され、勾留は30日間に及んだ、という。それから3年、法廷闘争が続くのです。「証拠がないのに、当たり前 のことをどうしてわかってくれないのか」と名倉さんの司法への不信が募ったーと朝日新聞は伝えていました。


怖いですね。電車通勤という都会のごく平凡な日常に、恐ろしい罠が潜んでいる、ということを考えなければならない、ということでしょうか。大学教授 という肩書がニュースバリューを生んで、メディアが警察の発表のまま実名で報道する。私の周辺にもその犠牲に堕ちた人がいます。和解や示談で済ませて も、その汚名はぬぐいされないのです。


痴漢の冤罪をめぐっては、二審で無罪が確定した都内の会社員がまとめた「お父さんはやっていない」(太田出版)や、これをヒントに制作された周防 正行監督の映画「それでもボクはやっていない」が、世論を動かす力になったように思います。戦前の横暴な官憲の悪夢が甦ってくるようです。これは夢じ ゃなく、毎日、都会のどこかで同じようなことが起こっている、これが現実です。


警視庁が08年で掌握した電車内の痴漢件数は1845件、名倉さんの弁護団によると、痴漢事件では98年以降、各地の下級審で30件以上の無罪判決が出ている、 という。「冤罪で泣く」、そんなむごいことがあってはならないし、見過ごすべきじゃありません。が、その不条理な犠牲に、いつ誰でもおとしめられる危 険があるということを自覚しなくてはならないということでしょうか。万引きも、うっかりレジを通さず出口に向かって歩いていくと、「御用」となって新 聞に書かれてしまうことになるのです。危うい話です。だから、満員電車には乗らない、乗っても手荷物を左右に持つ、あるいは両手を吊革に預ける、とい う風にするのも自己防衛の一つでしょう。夜遅く、酔って電車になんか乗っちゃいけないのです。


さて、メディアの糾弾、暴走を始めるネット―映画「誰も守ってくれない」(君塚良一監督)は、犯罪者を生んだ家族をリアルに捉え、この社会が抱える 矛盾を描いていました。「誰かを守るということは、他者の痛みを感じること、それが生きていくということです」と、傷ついて世間に怯える、犯罪者の妹に 対して、刑事役の佐藤浩市のこんな言葉が印象的でした。存在感のある役者だけに、その重みがありました。ドラマとはいえ、刑事さんにもこの辺を少し徹 底して理解してもらいたい。


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さて、有益な情報の窓、このところ重宝しているのがYahoo!モバイルの「朝読むメルマガ」。Yahoo!が配信する携帯用の情報サービスです。登録は 無料で、毎朝、こちらが指定した時間に配信されます。新着ニュース、最新ニュースなどは、社会、政治、経済、海外、スポーツ、エンタメをカバーし、ア クセスのランキングも表示されます。


ニュース源は主に毎日新聞や共同通信で、刻々と変わるニュースが随時更新されます。例えば、石川遼選手(17)の出場や片山晋呉選手(36)の単独4位 の成績で沸いた米国のゴルフの祭典「マスターズ」の最終日、そのプレーオフの決着を最後までテレビ中継で確認しないまま、朝の8時半過ぎに家を出たの ですが、駅に向かう途中、試しにYahoo!モバイル「朝読むメルマガ」をチェックすると、ほぼリアルに優勝のニュースが流れていました。


毎月84円の受信料で読んでいる読売新聞の携帯端末向けの配信サービスより、内容も深く速かったことを記憶しています。まあ、読売の情報量は、英文もあ りその比じゃありませんが、Yahooがマイクロソフトから切り替えた毎日新聞との提携で、その優位性を生かしているようです。
http://mobile.yahoo.co.jp


さしずめ、総合アクセスランキングの1位は、「朝ズバッ!」生放送で承諾なく撮影、TBS側が敗訴、2位が旧広島市民球場で球審にボールを運ぶベース ボール犬のミッキーが8日死すーでした。


はやり毎朝夕、無料でPCに配信する河北新報社の情報サービス「コルネット」が有益です。これは原則として新聞休刊の日を除く毎日配信されます。河 北新報は、宮城県の仙台をベースに東北6県をカバーするブロック紙なので、ニュースのヘッドラインをながめるだけで、東北のどこで何が起こっているか、 が手にとるようにわかるのです。


例えば、15日のコンテンツを見ると、宮城県では「タクシー券問題で仙台市長の出席を議会が要請」とあり、そのすぐ下に「仙台市長選、投票率向上へ企 画4件採用」と並んでいるので、ひょっとして市長選をめぐって火花が散っているのだろうか、と憶測してしまいました。


青森県では、「全国2位の風力発電出力、企業誘致に追い風」とあります。風力が追い風となる、ふ〜む。また華やかで見ごたえのある弘前城のさくらま つりに関して、「露店など18日から前倒し」とあるので、さくらの開花、さくらまつり開幕のひとあし早く、露店が店開きする、ということでしょうか。い やあ、満開のさくら、今年も弘前にいってみたいなあ〜と思いました。


秋田県では、というと、先日の秋田知事選に絡んで、「小沢代表、西松建設の影響を否定」という記事があり、その下に、「秋田県知事選、投票所の管理 職員が職務中に漫画を読んでいた」というのが指摘されていました。取材記者が、その様子を望遠でパチリ激写したのでしょうか。確かに悪いとは思うが、 新聞記事にするほどのものではない、と思いますね。なんでも書けばいいというものじゃない。


山形県では、女子プロレスの五輪メダリスト、浜口京子さんが「やまがたの食のサポーター」に就任というのんびりした記事がありました。ローカル色満 載でしょう。
https://jyoho.kahoku.co.jp/kolcgi-bin/kolmem.cgi/auth?mode=1


こういう記事のヘッドラインをチェックしながら、地方の動向をうかがっているのです。それで何か役立てる、ということでもないのです。ただ、漠然と 眺めているだけなのですが、皆様もいかがですか。


その他、JST(独立行政法人科学技術振興機構)が先月30日にリリースした「J-GLOBAL」。これは、JSTが持っている研究者情報、文献情報、研究課題情 報の他に特許庁の特許情報がまとめて検索できる無料サイトです。
http://jglobal.jst.go.jp/footer.php?page=aboutus


例えば、個人的な関心から、一般住宅に関した「断熱 発泡剤」と入力すると文献 6件、 特許 142件、 研究課題 3件、のヒットが確認されました。日々 更新され、その先端技術のナビゲーションとしての機能は、これからさらに充実していくことでしょうから、最新の技術、特許、論文に関しては、「J-GLOB AL」が大いに役に立ちそうです。


【業界レポート】さて、本日は、北海道ベンチャーキャピタル社長の松田一敬氏から、バイオに関した業界レポートのVOL.3が届きました。「純血主義のメルク、シェリン グ・プラウを買収」。


メガファーマの買収への意欲と動向、その目まぐるしい動きをフォローしています。これまでの基礎研究や開発意欲が削がれ、世界中の研究者から悲鳴が 漏れてきそうですが、その一方で「パートナリングの重要性」が高まっており、大学発のバイオベンチャーや独自技術を持つ中堅の製薬会社にとってはチャン ス増大、と見ているのです。


ところで、松田さんといえば、先週の9日の日経新聞終面「好遊抄」に寄稿されていました。人気のコラムなので視聴率は高かったのではないか。その見 出しが、「起業家生む校風」で、松田さんの母校、名門の武蔵中・高で、そこのOBで創る起業を支援する「卵を育てる会」があるそうで、その会場で偶然、 鉢合わせした人物が、大学発ベンチャーの先導的立場にある、アンジェスMGの創業者で大阪大学教授の森下竜一さん、だったということに触れ、「森下教授 の名前は耳にしていたが不覚にも同級生だとは…」とその驚きを述懐されていました。いまから8年前のことだという。面白いエピソードです。


実は、その新聞掲載の9日午前、都内で大学発ベンチャーに関するクローズドの会合があり、委員の1人として姿を見せた松田さんに、「新聞みましたよ」 と伝えると、「多くの人からメールをもらいました」と照れていました。 武蔵の伝統的校風は、「自ら調べ自ら考える」にあるのだそうで、校則や制 服がなく自由で起業家を育む土壌が根付いているらしい。OBにベンチャー支援のネットエイジ(現ngiグループ)の創業者、西川潔氏がいる、と名前を挙げ ていました。


【連載】張輝氏の「中国のイノベーション」25回目は「松島先生とビジネスモデル・イノベーション」です。本日15時過ぎに、駆け込みで原稿が入りまし た。いつもなら、翌週回しになるのですが、内容がなんとなんと、実質的なDNDの提唱者で、そしてビジネスモデル学会会長、東大では教授でイノベーショ ン政策研究センター長の松島克守先生を取り上げているので、急ぎ、原稿を拝見して取り込むことにいたしました。


これは私の不覚なのですが、松島先生の「最後の講義」に参加できなかったのです。恩のある先生の講義を聞いておきたかった、と後で知人から聞いてと ても残念に思いました。その講義で、DNDのことにも触れてくださった、とお聞きし、なおさらでした。それを張さんが、今回、連載のエクストラとして報 告してくださいました。涙が出るほどうれしい。そして最後の講義に参加できなかった人に朗報とあり、4月22日に神奈川県で第3回KSPフォーラムは、「今 こそ、オープンイノベーションの時代」をテーマに松島先生がご講演されるというのです。このイベントの概要は、DNDの産学連携情報に掲載しております。 NEDOの企画調整部長の橋本正洋さんもパネラーとして登壇されます。


張さんの原稿の書き出しは、こうでした。3月18日午後2時過ぎ、筆者(張さん)は急いで東京大学に直行した。松島克守教授の最終講義「俯瞰工学 のはじめと展開―技術経営学、地域クラスター、知の構造化」を聴講するためである。開演直前に入ったこともあり、筆者はさまざまな年齢層の方々で埋め 尽くされた会場の全体を見渡しやすいように後ろの方の席に着き、ゆっくりとカバンからカメラを出し、周囲の人々と同じようにステージの講壇に視線を集 中し、松島先生の登壇を待った…。


どうぞ、続きは本文をお読みください。 


【連載】名桜大学教授でEM技術の開発者、比嘉照夫氏の「甦れ!食と健康と地球環境」の第6回「中南米のEM普及拠点となったアース大学」です。サイトの トップに写真付きで掲載しました。


アース大学は創設20年ぐらいの若い大学で、今では中南米のNo,1の国際農業大学です。この大学は、中南米はもとより熱帯の湿潤地の農業が不振な のは、農業現場に額に汗して働く若い専門の指導員が不足しているからであり、その目的を達成するために徹底した現場教育を行うために設立された大学、と 説明し、この大学の実質的な創設者は元コスタリカ大統領で1986年にノーベル平和賞を受賞したオスカル・アリアス氏であることを明らかにしています。


教授の一人が、今後の農業の方向性として有機農業を重視し、EMの併用で化学肥料や農薬中心の現在の農業を超えることが可能であることをバナナの実 験を通して説明してくれた、という。 バナナ園は300ha以上、農地の余力が1000haもある農業大学です。比嘉先生は、「私もこのような農業大学を 作りたいと考えていましたが、すでに出来上がっているこのアース大学を全面的に支援します。EMで自立出来るようにノウハウを伝授します。」と伝えた のだそうです。やはりスケール感が違いますね。そういう話をお聞きすると、またすぐに行ってみたくなるのですね。


【横林先生の出版記念】さて、本日は、DNDメディア塾の1期生でニッポー社長の若槻憲一さんが幹事役として準備してきた、経営コンサルタントでベンチ ャーキャピタリストの横林寛昭氏の出版を祝う会が予定されています。私も参加します。横林先生は、「5社の社外取締役、20社の顧問、17社の株式上場…" 増益経営"を指導させたら超一流と言われている日本一の実力コンサルタント」と評され、紹介記事にトステム取締役時代、新規事業開発・M&A・企業 内VC事業であの経営の神様・P.Fドラッカーから高い評価を受ける、と書かれていました。どんな方か、とても楽しみです。今回出版されたのは「増益 のしかけ」(東洋経済新報社刊)で、記念のお祝いの発起人に、イー・モバイル会長の千本倖生氏、一橋大学の米倉誠一郎教授らが名を連ねています。若槻 さんは、経営面では、横林門下、文章塾では私のお弟子さんということになります。少し体調を崩されているので、若槻さん、大丈夫かどうか、気になって おります。


また、先日ご紹介した毎日新聞主催の国立トレチャコフ美術館展「忘れえぬロシア」が開催中の、東京・渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで、 ロシア文学研究の第一人者で東京外国語大学長の亀山郁夫先生のご講演が夕刻から予定されています。こちらもぜひ、と意気込んでいるので、本日は綱渡り になりそうです。


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