DNDメディア局の出口です。蒸し暑いですね、朝の電車はサウナ状態で、汗 っかきの額から玉の汗が流れていました。いやあ、鬱陶しいのは、湿度が高い ためばかりではないようです。こんな時期は、さわやかな風が吹いてくるよう な題材にしたいのですが、その前にちょっと一言。
【それを居酒屋タクシーって呼ぶのですか?】
居酒屋タクシーって、きっと流行語大賞にノミネートされるほどの、分かり
やすさというか、官僚らを皮肉って蔑むには適度のパンチが効いて、いつもは
ふわっと聞き流すハズの一般の多くの人の耳目を集めることに成功した、ネー
ミングの妙といえるでしょう。ちょっと前までは、申し訳なさそうに" "がつ
いていました。まあ、いわばという意味か、あえて言えばという感じで使って
いたようですが、もうその爪が消えて格上げになってしまっています。このま
まどんどん、ひとり歩きするのでしょうね。
仕掛けは、燃える男の憎い夕刊フジの記者のスクープで、ミスター年金で大 活躍の民主党の長妻議員らの懸命の調査の成果でもあるようです。その努力に は拍手をおくりたい。
でも、居酒屋タクシーという表現は、これはいくらなんでも、違うでしょう。 ちょいといい過ぎではないか。
缶ビールひとつ差し出されて居酒屋って呼ぶのですか。居酒屋って、焼き鳥 におでん、中落ちに新物のらっきょ、今の季節なら冷奴に冷やしトマトなどが 定番で、その品数の豊富さが売りで仕上げは香ばしい焼きおにぎりか、茶そば でしょう。が、薄暗い深夜の個人タクシーに揺られ、なんだか調子ばかりよく って誠実さが足りないにやけた運転手相手に飲んで、さてそれがなんの得にな るのでしょう。お金をもらったって、ご免こうむりたい、というのが普通じゃ ないのかなあ。
柿の種がある、といって居酒屋と呼び、それをつまみに官僚を嗤いの種にす るかのようだ。それで公費の無駄遣いキャンペーンになる、と考えているので しょうか。金品の授受は、これは犯罪ですから厳しく罰しないといけません。 それを誘いかけるタクシーの方も容疑が問われるでしょう。営業上の努力とは いえ、金品を与えて次の利用を期待するわけですから。しかし、一部メディア のこうした欺瞞というか、レトリックというか、それは今のメディアの暴走 モードの裏返しで、テレビも参戦して沸き返っているのだから、血祭り騒ぎな のである。ひと呼んで、魔女狩り、もうだれも押さえられないし、これはもう、 危険な状態なのである。
気の弱い官僚が、疲れてタクシーに乗ってたまたま、お客さんどうですか、 よく冷えてますよ!って缶ビールを差し出されて、まあ、人がいいから断るの も面倒だから、えぇ、すみません、ってつい手が出てしまう。そしたら、そこ に柿の種があります、どうぞ〜。う〜む、それで居酒屋タクシー、その官僚は、 ビールを飲んだか、どうかーのアンケートで、YESと答えて…処分になるのか なあ。変でしょう。
これは官僚の釈明をしているのではありません。昨今の霞が関批判の無節操 な大合唱は、いずれ、極めて深刻な問題としてメディア側から問題提起される と信じているからです。その行き過ぎによる被害が取り返しのつかないうちに、 この悪しき流れをどこかで止めてください、って異を唱えているわけです。
先日の1面トップの厚生省調査のニュース、これも産経のスクープでしたで しょうか。厚生労働省の職員が勤務中に、パソコンを使って業務と関係のない 掲示板やゲーム関連のサイトを閲覧していたことが指摘されました。
舛添厚労相は「きちんとルールを作る」とおっしゃり、町村官房長官は「不 適切な実態があれば処分も検討する」と語っていたと伝えられていました。職 務怠慢と決めつけられてしまったのでしょうか。これも考えたら奇妙な話です。
これは厚労省が行った一斉調査で、閲覧されたサイト約1000万件を分析して みると、業務と関係なさそうな閲覧は約12万2千件あった、というのが発端で した。それはヒット件数か、ページビューか、その辺がよくわからないがいず れにしても果たしてその数が多いのか、どうか、わずか1.2%、されど1.2%で したし、業務と関係ないと本当に言えるか、どうか。う〜む、こんなので処分 されたら、たまりません。
掲示板やチャットの閲覧が、そのうち7万5千件で最も多く、ゲーム関連が約 4万1千件、演芸やアニメが約6000件と朝日は伝えていました。掲示板を見るの は、業務外にあたるのだろうか、こまかく情報をチェックする、というのは1 億総ネット時代、WWWは蜘蛛の巣状態だから、ここまで業務、それ以外は業務 外って分けられますか。みんなつながっているのです。「検索」すれば、それ こそ種々雑多の情報がスレッドで並ぶでしょう。広い集められた情報を業務と 業務外に分けよ、というのは不可能じゃないか。
例えば、評判のMSN産経のサイトを開いて、エンタメのコーナーをクリック すれば、東電提供のエコマンガが公開中ですし、下の段に進めば、ゲーム、コ ミックに関係した情報にあたる。東電の環境マンガは、どうなるの?マンガだ から業務外という感覚が、古いのではないの?これも居酒屋タクシー同様、気 の弱いお役人さんは、今度は安易にネットで検索すら腰が引けてしまう〜。
これを、ネットカフェ役人(産経)、隠れネットカフェ(朝日)という風に 見出しを付けて、もうひとつの居酒屋タクシーに仕立てようという魂胆でしょ うか。
あれもダメ、これもダメ〜監視の目を光らせて、官僚と名がつけば、なんで もかんでも問題にする。これはホント、いかがなものか、物事に浅深があり、 軽重もある。そこを個別に検証して、これは▲、これは×、○とか、これは白、 黒、グレーなどと区別して問題視すべきでしょう。
ちょっと気に入らないと、むきになって批判する。いくらか欠けても重大な 事件のように騒いで、訴える。もう、人を許容する、そういう寛容な精神は、 みんなどこかに捨ててしまったようだ。野暮ですね。時代のせいなのか、教育 のせいなのか、みんな我が国のあらゆるものに自虐的な批判を繰り返して、地 域を社会を組織を、木っ端みじんに壊してしまうのでしょうか。
立ち入り禁止の札の立つ、奥日光の湿原は、高山植物の宝庫です。例えば、 周辺の植物を根こそぎ掘って持ち帰る不届き者と、うっかり柵に踏み込んで写 真を撮ったアマチュアカメラマンとを一緒にしないでしょう。いまの霞が関批 判は、それらを一緒に扱っているのと同じことのように感じます。その物事の 急所がわからないらしい。わかってやっているのかもしれませんが…。
【映画「西の魔女が死んだ」のやさしい旋律】
さて、気分を変えて、いまお気に入りは、映画「西の魔女が死んだ」の主題
歌、手嶌(てじま)葵さんが歌う「虹」という静かな曲です。福岡へ出張の際、
帰りの飛行機の待ち時間を使って、その映画をみました。
学校が嫌になった女子中学生が、自然と暮らす祖母の家に預けられることに なる、そこで、魔女の修業に励みながら日々、心豊かに成長していく、という ストーリーでした。まあ、そう単純じゃないのだけれど、無条件で受け入れる 祖母の豊かな心が、美しい旋律に溶け込んでスクリーンいっぱいに映し出され ていました。全編、美しい時間が流れていきます。そして魔女の死に接して、 初めて気がつくことがある…その主題歌を聞けば、その時の心にしみる感動が、 再び甦るのです。あなたにとっての守るべき、かけがえのないものって、なん ですか?と、映画は繰り返し問い続けているようでした。
原作は、児童文学でファンタジー大賞などの受賞作がある、梨木香歩さんの 同名のミリオンセラーの小説です。監督は、長崎俊一さん、構成も映像も、そ れにナチュラルな役者さんらのセリフが、とってもいい。少女役に高橋真悠さ ん、その母親役にクール・ビューティーのりょうさん、そのパパに実力派の大 森南朋さん、なんといってもおばあちゃんが、米国生まれのサチ・パーカーさ ん、この人の美しい日本語の響きにはとても癒されました。
「草や木が光に向って伸びていくように、魂は成長したがっているんです」 という魔女のささやきは、生命の息吹さえ感じさせてくれていました。
〜丘に咲く 野の花 足もとで揺れた 雨のあと 光が 心まで届いた… 空には 生きている 叶える 虹が微笑む 胸には かけがえのないもの守る こと…(虹より)
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□連載は、この11日付で経済産業省の経済産業政策局担当の審議官に就任され た石黒憲彦さんの「志本主義のススメ」は第113回「日本経済の行方」という、 いま最もホットなテーマで、今日の現状を分析し将来の展望につなげています。 どうぞ、経済産業省きっての論客の日本経済論をどうぞ。
□コラムは、アンジェスMG創設者の森下竜一さんのブログ「世迷い独り言」から「アンチエージングセミナー」。目玉は、フィトテラピー(植物療法)の魅力で、講師の熊谷千津先生をご紹介されていました。最古の香水、う〜む、どんな強い匂いなのでしょうか、そして何に効果があるのでしょう。いろいろご活躍です。