◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2008/02/20 http://dndi.jp/

不祥事連鎖の不気味な兆し

 〜最新鋭のイージス艦は、誰の盾になるのか〜

DNDメディア局の出口です。高性能レーダーを備えた海上自衛隊のイージス艦 が、夜明け前、視界がよく波静かな海で、千葉県勝浦市の漁協に所属するマグロ はえ縄漁船と衝突し、海に投げ出されて行方不明の船員の親子ふたりの安否が気 遣われています。最新鋭のイージス艦がなぜ衝突を回避できなかったのか、ブリ ッジの見張り役は適切に動いたのか、強張った表情であいまいな説明に終始する 幕僚監部、怒りの声をあげる漁師仲間…海上保安本部が業務上過失往来危険の疑 いで艦内を強制捜査するなど異例の素早い動きを見せていますが、冬の海は泳ぎ が不慣れな23歳の孝行息子に非情です。


最新鋭のイージス艦がなぜ、乗員は海上自衛隊の中でも優秀なエリートぞろい というのになぜ、だからこんな事故が起こるなんて「信じられない」という。が、 それらがまるで逆説的に聞こえてならない。懸念は、現場を軽んじる風潮と責任 感の欠如、それに強い立場の人たちの傲慢ぶり。


メディアは一斉にその辺を問題にしています。今朝の新聞を読み比べてみれば、 朝日の「天声人語」がこの事故の本質を喝破していました。その一部を抜粋しま す。


▼はるか上空から海面、水中までも見通す「全能の目」の持ち主も、平時には 小舟一つに気づき遅れるものなのか。(略)ちゃんと見張っていれば起こりえな い事故に思えてならない。
 ▼あたごは1400億円を投じた最新鋭艦で、自衛隊でも最強の一隻といえる。 国民を守るべき高価な盾が、同胞に災厄を及ぼしては悲しすぎる。機械の目と、 乗員の目。自衛隊は大急ぎで磨き直すべきだ。
 ▼現場海域は東京湾に近く、多くの漁船や貨物船が行き交う。逃げも隠れもし ない漁船を避けるのに、最新鋭の探知システムなどはいらない。わが巨体の周囲 には民間の船がいるだろうという想像と、「弱者」を見逃すまいとする海の守り 手の責任感。それで足りる。


このコラムの前段では、「ギリシャ神話の主神ゼウスは娘の女神アテナに、あ らゆる邪悪と災厄から身を守る盾を授ける」、として、盾の名は「アイギス」、 英語の「イージス」である、とその由来を説く。イージスが、小舟を蹴散らして 自分たちの名誉と保身に使われては情けない。国を守る盾とは、漆黒の冬の海で わが同胞の漁船の灯が見えたら、漁師らの生活の安寧に思いを馳せることから始 めなければならない。23歳の彼ならイージス艦の見張り役で、衝突の危機回避 の対応ができたのではないか、十分に役に立ったことだろうと推測します。が、 イージス艦のこんな見張り役では、漁船の網の繕いもままならないのではないか、 と思う。


事故が起こった午前4時すぎは、見張り役交代の監視が行き届かない魔の時間 帯だったという。遠くハワイから帰還して、横須賀港まであと少し。緊張の糸が 緩むころでしょう。僕の疑問は、高性能のレーダーを積んだイージス艦だから、 あえてブリッジでの見張り役なんかはいらないではないか、という乗員の慢心、 その心のスキがはびこっていなかったかどうか、またどんな立場の人が見張り役 についていたか、ということです。


見張り役が手薄で実はちゃんとついていなかった、そんなわけないでしょうが、 誰がどこの時点で漁船に気付いて、それからどう伝達し行動に移ったのか、その 辺の捜査の焦点はまもなく解明されていくことでしょうが、こういう場合とんで もない失態が潜んでいる可能性がある、って僕の勝手な妄想はどんどん膨らんで きます。どうも、幕僚監部の挙動や説明が、怪しい。


見張り役って、そもそもなんのために立つのか、その意味がちゃんと伝わって いない、と疑わざるを得ない。時計見てきて、って言われて、見て戻ってきて 「ちゃんと時計あったよ」というのはお笑いの世界だけにしてもらいたい。が、 そういう笑うに笑えない話が、このところいっぱい起きているのは、何かのシグ ナルなのかもしれません。ご体験ありませんか。


羽田発福岡行きJALの機内、午前10時半のフライトなのに一向に動く気配 がない。時計はすでに11時を回っている。若い女性乗務員に、この飛行機のフ ライトは何時でしたか?と聞くと、10時半です、とにこやかに答えるから、い ま何時ですかと再び聞くと、「11時です」という。表情は相変わらずにこやか で、それが何か?という風なのである。遅れていることのアナウンスもなければ、 聞かれてもその意味すら理解できない。


知人が友達と奥日光に遊びに行く、という日曜の朝、テレビは行楽シーズンの 特集、いまから行くことができる源泉かけ流しの温泉、日帰りの宿という番組で、 たまたま奥日光中禅寺湖畔の洋風のホテルを紹介していました。午後13時から 18時まで、日帰り客をお迎えする、というのでそのホテルの情報を知人に伝え ると、行ってみます、という。が、実際に行って、テレビで見たのでと申し出た ものの、ホテルのフロント係から日帰り客は扱っていない、と門前払いにされた という電話があったので、しばらくしてこちらからホテルに電話を入れると、や はり「本日は日曜なのでやっていない」という。


いささか腹が立って、テレビの番組担当にその旨を伝えたら、「それはホテル の事情ですから、こちらではなんとも、一応聞いてみますが…」とニベもない。 番組で紹介したら客が殺到するかどうかは別にして、その後のフォローにも責任 を持つべきだが、そういうことにお構いなしの態度でした。ああ、情けない。


どうもイージス艦の事故を生む背景と、これらのことが同じベクトルの上に起 きているような気がしてきます。中途半端で、無責任なご都合主義がいま日本中 に蔓延しています。昨日の夕刊、これも朝日で恐縮ですが、題字下の名物コラム 「素粒子」には納得し、思わずうなずいてしまいました。


今度は住居侵入。女子中学生暴行事件後も沖縄で米海兵隊員の犯罪後を絶たず。 福田首相「米軍もどうなっちゃたんですかね」。
  ×               ×
今度は衝突事故。前次官が汚職、3佐が情報漏洩と不祥事が続く。首相に聞きた い。「自衛隊もどうなっちゃたんですかね」。
  ×               ×
今度は冷凍サバ。昔からサバの生き腐れといわれるが、酢じゃなくて殺虫剤でし めてみた中国式の新製品じゃなかったんですよね。


笑うに笑えない。勝手に続ければ、今度はニラ肉マン、となりましょうか。数 えてわずか12行の文脈に少々毒を含んでいるのが寸鉄の鋭さであり、味というも のです。指摘通り、「今度は…」、「今度は…」といつまで、どこまで繰り返さ れるのでしょうか、これら不祥事の複合的連鎖は、何か別の大惨事の前触れでな ければいいのですが、それを否定する一つの材料も持ちあわせていないところが、 最大の懸念材料です。


自滅の危機に立つ人類、その衝撃の「狂ったサル」の書の警告が、いまごろに なって再び脳裡をかすめてきます。


※さて、連載は、塩沢文朗さんの「原点回帰の旅」24回は、「日本の漢字をめ ぐるいろいろな話」、アメリカ特許弁護士の服部健一さんの37回は、「日本は大 国か、小国か」−です。Japan bashingから passing、あるいはnothingまで飛 び出す始末のニッポンの現実、大変読み応えのある一押しコラムです。どうぞ、 ご感想などもお寄せくださることを希望します。


※さて、今回こそ、「神奈川県の大学発ベンチャー創出、県NO.1の秘策」を配 信しようかと思っていたのですが、今回も見送りました。これで3週連続の背信 ですね。前口上ばかりで申し訳ありません。こういう海難事故で世間が荒れてい る時は、どうも気分がのらない、どうしたものでしょうか、次回は、きっと…。


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