◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2007/06/15 http://dndi.jp/

DNDの出口さんへ(コムスンについて)

さすが電光石火の出口さん、今問題噴火中のコムスン介護問題に即反応しましたね、但し小生の見立てではちょっと綺麗事過ぎる感じで仁坂和歌山県知事の明快でさわやかなお裁きに乗せられている感じがしました。昨今の価値観の異なる多種多様な社会情勢の中、正義という言葉すら疑う必要ありです、確かに現在の法に触れることは不正ですが、むしろ法の方が変遷する現場の実態に合わない場合もありえます。一番大事なことは現場最前線の介護者と要介護者の正常な現場の流れを止めないで問題事業所、現場を特定して対策を講ずることです。そもそも介護保険、介護実施体制は地域によっていろいろ議論があったところで全国一律体制で出発したとしても何が正かは実施状況を見て模索してゆこうとのことでした。要介護老人65000人という事ですが国民の社会介護慣れもあって大分想定以上とのこと、またケアーマネ、ヘルパーさんも最近の一般景気回復のため低賃金、ハード労働を嫌気して人員不足とのこと、要員の確保には介護企業は大苦労とのこと、これらの事は監督官庁である労働厚生省は充分理解している筈です。


新規事業分野は状況は刻々変わります。民間企業の介護事業への参入についても海図なき混乱期の初期段階をやっと過ぎてようやく2大勢力たるコムスン、ニチイ学館を車の両輪に育て上げてきたのではないのかな、確かにグッドウィルグループ、コムスンはトップ経営者も感じが派手だし、5〜6年前の参入時の急拡大と派手な宣伝、その直後の半減リストラ、何やってんのかな?と感じた事を覚えています。


その後世間が外部介護慣れして地道に拡大成長してきたのかなと思ってました。当然都道府県も含め監督官庁は公益事業である以上いくら民間に任せたといっても現場事業所の指導監督義務はあるわけですから個別指導をやってる筈です。この分野の事業形態は物を扱うのではなく百人百様の人間を扱う難しい分野でまだ懸命に模索しているのが実態ではないか。若し法に触れる問題があれば各事業所単位、自治体単位で先ず改善命令を出し、改善されなければ個別に退場させる、優秀な成績を上げている事業所は表彰するなりインセンティブを付ける、この手順が本筋であって数箇所の不正?を採りあげて一気に来年から全事業所撤退しなさい、それまでは完璧にやりなさい、こんな現場の現実、問題はあっても必至に積み重ねてきた現場の努力を無視するような正に中央官僚の現場を知らない独善的な大号令です。それに関係者全員が振り回され、それにマスコミが付和雷同的に載せられ、最後に大迷惑するのは現場の老人とその家族、ケアーマネ、ヘルパーさんたちです。コムスンの現場で苦労してきた天使たちが一気に社会的掣肘を受けるこんな理不尽なことが許されるのでしょうか。


そもそもイエローカードも無しに一気に連座制で全員退場、こんな現実無視の法律こそ糾弾されなければなりません。コムスンの経営体制に問題あれば経営者に代わってもらえばよいことで現場まで外から崩壊させる事は下策中の下です。金融庁の改善命令の方がまだ筋が通っています。


報道等によれば同業のニチイ学館に事業譲渡が最有力とのことですが2大勢力が統合されれば正に官の指導の下に巨大事業会社が現出するわけで介護保険発足の理念(競争原理)からみても理不尽な政策と考えられます。コムスンも変な小細工を弄したため「事業認定取り消し逃れ」「同一グループ別会社に事業譲渡は欺瞞」と現場とは関係ない矮小化された感情論で一般世論から糾弾されていますが本筋から言えばコムスン自ら会長辞任も含めた「経営体制の抜本的刷新」「問題事業所の抜本的改革」の上での「新コムスンで全国事業継続」を願い出、参入以来のコムスンの当事業にかけた熱意、成果、問題点を赤裸々に国民に理解を訴える事がポイントでしょう。


倒産もしてないで同業他社に完全事業譲渡など大体譲渡価格で折り合うはずがない、無理に高値で折り合えば譲渡先での事業継続なぞおぼつきません。労働厚生省から来年4月の指定取り消しまで完璧な事業体制実行を命令されていますがやめさせるものに完璧にやりなさいもおかしいしそれが出来るならコムスン事業継続でなんら問題ないはずです。どうも事前の両者の下話で法に触れないグループ内別会社での事業継続で話が出来ていた感ありですね、それが表面に出て世論の反発を食らったので慌てたのが実態ではないですか。コムスン側は事業譲渡は厚労省の指示を受け来年4月以降といってますし譲渡先が法令順守、介護能力が適正か外部専門家による監査委員会を立ち上げるとこれまたお縄頂戴の身でありながらおかしな構造です。来年3月までまだ何があるかわからないのが実態でしょう。早く現実重視の本筋の議論に戻して現場の利用者、介護関連関係者の不安を払拭する事が求められます。


ところで日本の官僚組織は戦後以来長年の官主導の経済発展の成功に胡坐をかいて冷戦崩壊後の世界市場のダイナミックな変化に対応できず、また国内においても政治サイドからの小さな政府指向への抵抗勢力と位置図けられ、最近では長年の間にたまった不祥事等ありすべての面で叩かれすぎと思われるくらい叩かれて自信を失ってるのではないか。特に民間との過去の過剰癒着構造の反省から民間との交流に怯え現場感覚を身につけるチャンスを失ってる感深しです。


特に霞ヶ関官僚の政策・行政はこれから日本経済の一翼を担うサービス業現場の実態を知らな過ぎます。今回の社会保険庁の個人データ未統合問題なぞ官内部の直轄業務すら問題把握がされず長年放置されるという民間ではありえない事態です。民間から入った永瀬長官はこの3年何をやっていたのですかね、競争激しい製造業では考えられない事です。ともかくバブル崩壊以後日本経済再生のため国が大いに振興を奨励してきた新事業分野のITなりヴェンチャー、金融投資、サービス経済、福祉介護の各分野は成功率千三つといわれる難関に挑戦し、混乱する揺籃期をやっと乗り越えトップ集団が形成されようとしているときに中央官庁が法に触れたとして伝家の宝刀を一気に抜いて現場まで全面退場を迫る、事態を知らないマスコミはこれで商売になるといっせいに囃したて今まで成功者と持ち上げておいて今度は諸悪の根源とたたき、現場に関係ない国民は嫉妬心もあって溜飲を下げる。検察も含め中央官僚は国民受け、マスコミ受けしそうなネタをリークして国民に政府は何をやって居るかと追及させ権力復権を企む、これでは現場で汗を流している国民は救われませんね。


結論、変遷極まりない新規事業分野はやはりイエローカードで事前警告、レッドカードで退場というサッカー方式でフェアーに行きたいものですね。以上雑駁悪文失礼


平成19年6月15日北澤 仁


-経歴-
元新日鉄新規事業会社社長
元新日鉄釜石ラグビー部長

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