◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2007/06/06 http://dndi.jp/

さわやか王子とわがままオヤジの陰影

DND事務局の出口です。熱がこもる観衆の眼差しを浴びながら、なんという 度胸なのでしょう。初夏の風のようにさわやかです。すっと半歩前に進んで少し 照れながら、ひと呼吸置いて、胸を張ってのスピーチは見事なものでした。今ど きの若者は、堂々たるものです。彼らが新しいイノベーティブな時代の扉を開い ていく牽引になればいい。きっとその吉兆なのかもしれません。


Vの余韻に酔う早稲田大学、その優勝パレードの後の祝賀のステージで、1年 生で挨拶に立ったヒーローの斉藤佑樹投手は、周辺を埋め尽くしたファンをすっ かり魅了していました。聞き惚れて目頭を押さえるご婦人の姿も印象的でしたね。 孫みたいで可愛いって…。人気のハンカチ王子の登場で、東京六大学野球は観客 の動員など空前の盛り上がりをみせていました。


神宮に大勢の観客を呼びたい、という運営側の夢をたったひとりのヒーローが 叶えてくれた、と喜んでいました。3万6千人、チケットは即日完売、う〜む。た しか、きょう6月6日は彼の19歳の誕生日のはずです。斉藤投手と甲子園を沸かし た楽天の新人、田中将大投手はひと足早くプロの世界で活躍中ですが、そのマー 君もエールを送っていました。みんな素直です。


そして人気急上昇といえば、男子のゴルフ。並いる強豪と競って最年少で優勝 した杉並学院高校1年、15歳の石川遼君の人気も実力も凄い。何といっても笑顔 がいいですね。ハニカミ王子なんて呼ぶメディアのネーミングもしゃれています が、この4日から開幕した関東アマ選手権、いつもは60人程度なのに初日は異例 の1900人、優勝トーナメントを賭けた昨日はその倍の3800人を超えるギャラリー が詰めかけていた、という。


ひと振り、ドライバーの飛距離が驚異の300ヤード、スイングの速さを測るト ップスピードが50を超え、バンカーからのチップインはなんだか狙って入れたよ うな高いレベルの技術力を感じさせていました。これはどうだか疑問ですが、世 界のタイガー・ウッズの再来、という声も上がっています。


いまこのふたりに熱狂するおばさまたちが急増中という今週の特集(週刊朝 日)で、有名人に熱をあげる中高年女性の心理や背景を分析した『ロマンチック ウイルス―ときめき感染症の女たち』(集英社刊)の著者の島村麻里さんは、こ んな解説をしていました。


「ふたりとも、端正な顔立ちで礼儀正しく、家族思い。いい意味での『古臭 さ』が、中高年女性の心をわしづかみにするのでしょう」。


なんだか彼らの両親がテレビに映し出されていましたが、気取りも気構えも感 じさせない、どこの家庭にでもみられる一般的な親のようでした。当然のことで すが、兄弟ケンカもすれば反抗期もある、という。平凡で普通の親というのがと てもいい。王子ブームがまだまだ続きそうです。


女子プロブームを巻き起こした宮里藍ちゃんや横峰さくらちゃん、最近では20 歳の上田桃子ちゃんらが優勝しギャラリーを沸かしていますが、男女ともに若い 世代の台頭がそのきっかけとなっています。フィギュアの女子、浅田真央ちゃん は16歳だったでしょうか。


周辺を見回すと、若い世代の活躍ぶりは、スポーツの世界に限ったことではあ りませんね。ゲームやアニメ、マンガという日本が誇る三種の神器の分野は、こ れは彼らの得意領域ですから当然として、映画「バベル」に出演した菊地凛子さ んがアカディミー賞助演女優賞にノミネートされて一躍、ハリウッドの注目を浴 びました。そして、今年のミス・ユニバースに輝いたのは20歳の森理世さんで、 68年ぶりの快挙だそうです。まあ、容姿は勿論、知的でしかも社会貢献ができる、 というのが選考の条件というが、どこからみても日本人離れした恵まれたスタイ ルでしたね。どこかの新聞だって写真を間違えるくらいでした。あるいは、音楽 や演劇、それに芥川賞などの文学界にも若い人がどんどん登場しています。そし てIT分野などでのベンチャー起業家ではすでに珍しいことではなくなりました。 賢く懸命に、そして仲間を選びながら夢の実現に突き進む若者の存在は未来の希 望です。素晴らしいことです。


が、その反面、大人ってどうなっちゃったのでしょう。おっかけは、とてもマ ナーが悪い。ゴルフのフエアウェーは遠慮なく走るし、選手のスイング中に構わ ず携帯のシャッターはきるし、しゃべるし、笑うし、食べた弁当箱は投げ捨てる し、そしてキャアキャア―の大騒ぎ…。おばちゃん、いいかげんにしいやぁ。ま あ、あれもこれも、我慢の限界、みのもんたさんじゃないけれど、もう放ってお けねぇ〜。


なんだか偉ぶったオジサンらが談合などの不正や既得権益の悪用で御用となる 連日の新聞記事を見ると、人間、年を重ねると醜く歪んでくる、という風に勘違 いしてしまいそうです。勘違いならいいのですが、事件で捕まるのは、定年近い 団塊の世代と思っていたら、どうやら最近は、同年代の50代前半も目立って多い。


今朝のTBS系列のみのもんたさんが司会の「朝ズバッ!」で社会保険庁のず さんな年金記録漏れを取り上げていました。もう4年前からずっとそこを糾弾す る姿勢は、「報道のTBS」の真骨頂というところでしょうか、一貫しています。


番組で、中年男性が、年金記録が10年も不明ということで保険事務所に行って みると、名前も誕生日もはっきりしているのに年金番号が違う、という理由で認 めてくれないって怒っていました。それは怒るでしょう。アホですね。現場の担 当者の機転で解決できるレベルの案件が相当ある、ということかもしれません。 それにしても、こんな融通の利かない連中を税金で賄っている、と思うと情けな さを越して怒りを憶えるのは、この男性のような特別利害のある人ばかりではな く、もう普通の感覚、一般の庶民感情ということでしょうか。


誰が悪い?それはみんな関係者が悪いに違いない訳で、いくら選挙が近いとい ったってそれを政争の具に仕立てて責任をなすりつけている場合じゃないのに、 そのことすらいまだに気がついていないとすれば、なんというか、火の見矢倉の 半鐘ですなあ、まあ、これ以上は慎みますが…。後手に回っているから、無党派 のつむじ風が、なんだか不気味な動きを企てているように感じます。こういう時 は、どういうことをやっているか、早く手を打ってちゃんとわかってもらうこと です。人と金、それは目いっぱいつぎ込まないといけなくなるでしょう。


みのさんが、次に問題にしたのが茨城県は鹿島灘、そこの立ち入り禁止の防波 堤に堂々と合い鍵を使って入る釣り人らの姿を映し、そこの不法侵入を徹底的に えぐり出していました。もうずっとこんな無法状態が野放しされているようです。 以前も同様の映像を見ました。まだ同じことを許していたんですね。海上保安庁 が巡視船上から、そこは入っちゃいけません〜ってのんびり拡声器で呼びかけて いましたが、退去は一時的、船が見えなくなるとまたぞろ釣り人が群がっていま した。


県当局は、こう説明していました。「鍵を変更するんだが、いつの間にか再び 合い鍵が出回って…」とお手上げ状態だという。が、一斉排除の実力行動にでる 気配は微塵も感じられませんでした。合い鍵は一本1500円前後で取引されている、 というから驚きです。そこは危険地帯、この38年間で64人が波にのまれて溺死し ている、という。即刻、取締りに出向くべきです。何をやっているのでしょう。


同じ問題に東京や大阪の河川敷での、これも目に余るゴルフの練習風景があり ます。何度言ってもやめようとしない。これもイタチの追いかけっこ状態です。 釣りもゴルフも、腹のでっぱった醜いオヤジばかりです。みんな勝手ですね。い つからこうなったのでしょうか、戦後世代が中年オヤジになってからでしょう。 法に触れず、得するもんなら、なんでもやってしまうという、こんな大人が跋扈 していることは事実ですね。ひと昔は、そんなズル賢いオヤジはいなかった。や んちゃな若者らを叱りつける職人気質の厳格なオヤジがいて、いつも街中に目を 光らせていましたから、それなりに秩序が保たれていたような気がします。こう 書けば、ズル賢いオヤジは他人事のようにこの手の話をあたかも自分が思ってい るかのような物言いで人前で言うんですね(笑い)。


もうひとつ、身近で危険を感じているのが、そうです、歩きタバコです。右手 に火のついたタバコを前後に振って歩く。危険です。そばを、赤ちゃんを乗せた 乳母車が通る、タバコの火が赤ちゃんの顔をかすめている、まあ、なんとその男 は左手で携帯を持って話に夢中です〜。オイ!って注意しても指摘されている意 味がわからない。困ったもんです。


大人って、なんだか時代の進むべき針を逆回転させているのではないか。若者 の目線からすれば、どんな風に映っているのでしょうか。彼らは、表だって他人 を口に出して批判をしませんが、不潔で忌まわしい存在であることは否定しよう がありません。まあ、今回は、そういう大人のひとりとして自戒しなくてはなら ない、ということです。


さて、新連載はきょうから、塩沢文朗さんの「原点回帰の旅」というエッセイ 風の企画がスタートしました。塩沢さんの略歴にありますように、経済産業省出 身で、ご専門がリスクマネージメントです。昨年までは内閣府の大臣官房審議官 の科学技術政策担当という立場で、第5回産学官連携推進会議の企画・運営、そ れに司会などを務めていました。僕と同年代です。塩沢さんには、お役所の世界 を少し離れた視点で、社会を、時代を、そして人間の本質にかかわるようなテー マを掘り下げてもらえれば、と思っております。


初回の「連載にあたって」は、「妻の声、昔ときめき、今動悸」というなにや ら意味深長な書き出しで、将来の伴侶となる奥様との出会いの場面から始まって います。さて、原点回帰のどんな旅に誘ってくれることでしょう、どうぞ、ご期 待ください。そして忌憚のないご意見をお待ちしています。


6月は産学官連携のメッカ、京都の国際会議場で16日、17日の2日間の日程で 第6回の産学官連携推進会議が開催されます。本年もDND連載企画を担当され ている東京農工大学大学院教授の古川勇二さんが、「地域から世界を目指す地域 クラスターの強化」をテーマにした分科会の座長を務めます。きっと、パネリス トの意見を聴きながらパソコンに要点を打ちこんで、分科会終了後には、見事な レジメが仕上がっていることでしょう。


「イノベーション」の分科会には、東大教授でイノベーション25戦略会議の メンバーの坂村健さんが座長を務めます。パネリストには、JST理事の北澤宏 一さん、東大先端研教授で秋葉原クロスフィールドで活躍の妹尾堅一郎さんらが 登場します。懸案の「第2期を迎える大学の知的財産戦略」の分科会は、東大国 際・産学共同研究センター長で教授の渡部俊也さんが座長で、山口大学の看板教 授で副学長の三木俊克さんらがTLOの役割や地域連携などの課題を掘り下げる ようです。


もうひとつ、「求められる高度理工系人材」という次代を担うイノベーション 創出人材の具体的姿を描き出す、という。座長に富士通総研常務の吉川誠一さん、 モバイル・インターネットキャピタル代表の西岡郁夫さん、理系白書などで人気 のブログや講演等引っ張りだこの毎日新聞記者、元村有希子さんらが登壇します。 元村さんからは、その新聞記者感覚を生かした現場からのリアルな声を十分に反 映させてくれるでしょう、期待したいものですね。さて、当日は僕もVECのサ ポートを戴いて出展、参加となります。総合的なテーマは、「イノベーションの 創出」ということでしょうか。


イノベーション25戦略会議の最終報告がまとまり、閣議決定されました。詳 細は、「首相官邸のイノベーション25」でご覧になれます。特に座長の黒川清 さんが内閣府特命担当大臣、高市早苗さんに提出した3枚の要旨、「最終とりま とめ」にあたっての以下は重要です。


「一人ひとりの意識の中にある見えないタテの壁、そして大学、企業、府省 等々どこの組織にもあるタテの壁を取り払うこと、そして既存の状況に満足する ことなく、常に、柔軟に、積極的に革新を続けることが重要である」


「つまり、イノベーション25は科学技術や技術革新を超えて、政策イノベー ションを阻害する既得権益、既存社会的要因を徹底して排除し、力強く推進する という趣旨であり、社会に存在する変化を拒む様々な壁と抵抗を撥ね退けてイノ ベーションを起こしやすい仕組みを開発しようというシステム的、実践的、政策 的アプローチを提唱しているのである。そして、10年―20年を見据えれば、すべ ては人つくりなのである」。


全文は、http://www.kantei.go.jp/jp/innovation/saishu/070525/zachou.pdf から読み取れます。気分のスカッとするメッセージです。とりあえず、ここの肝 心な理念と方向性を押さえておけば、まあいいかもしれません。


さて、その黒川さん、どこに行っているかと思ったら、なんと、先月末からス イスのSt GalenにあるSt Galen大学で第37回のSt Galen Symposiumに参加してい ました。世界のビジネス界のリーダー400人ほどが参加しているそうです。その 様子は、「学術の風」のコラムでご覧なれます。で、油断していたら、今度は、 なんとロシアのサンクト・ペテルブルグに移動されていらっしゃいました。先生 の行った先々から丁寧なコラムが写真付きで届くので、一緒に海外に出ているよ うな気分させてくれます。


6月4日の最新のコラムは「St Petersburg、そして出口さんから、ドンキホー テへ」というタイトルで、タイトルに僕の名前が書いてあり、DNDメルマガに もコミットしてくれていました。嬉しいやら、恥ずかしいやら…。どうぞ、これ も「学術の風」に本日アップしました。ここでもイノベーションをテーマにした 国際会議が開催されているのですね。今頃、そろそろ始まるのでしょうか。


コラムに写真が8枚、とくにエルミタージュ美術館前の宮殿広場に立つ、ジー ンズに白のジャケット姿の黒川さんは、とてもナイスでした。いやあ、知性世界 を飛ぶ、という感じです。そういえば、東北大学教授で総合科学技術会議議員の 原山優子さんは、新緑のマロニエの街路樹が映えるパリでしたね。


黒川さんの日本でのイノベーション25戦略に関するご講演は、以下で拝聴する ことができます。前にもご紹介しましたが、今月29日午後、東京・大手町の経団 連会館で開催されます。当日、モデレーターを務める一橋大学大学院教授の石倉 洋子さんから、GIES2007シンポジウムの概要が届きました。石倉さんは、こ んなコメントを寄せています。


「このシンポジウムでは、イノベーションが皆さんにとってどんな意味を持つ か、皆さんもイノベーションの主役になれるか、日本は本当に創造力に欠け、起 業家は育たない国なのか、について、海外の専門家を交えて、考えます。


イノベーションとは何かをもう少し知りたい、海外では何が起こっているのか、 日本はどこに位置しているのか、誰もがイノベーションに関与できるためには、 皆さんの働く組織や地域・都市がもっとイノベーティブな場になるためには何が 必要か、本当にイノベーションによって、環境問題や経済発展が両立させられる のか、そのためには何をしたら良いのか、を知りたいという方々のための会議で す。ぜひ参加して、海外の動きと日本のイノベーション25戦略会議の概要を自分 の目で見、耳で聞いてください。そして、実践から生じた課題、その解決法、い かに、他人の失敗から学び、ゼロベースで考え、一気に飛躍するか、を考えまし ょう」。


シンポジウムは6月29日(金)午後2時から6時、経団連ホールで入場無料です。 参加登録はウェブサイト http://www.gies2007.com/から手続き可能です。当日 は、再びロシアを訪問しその朝に成田に到着し、その足で参加することになりそ うです。


さて、お知らせがあります。DNDはご存知のようにこの4月から、経済産業 省からの委託期間が終了し、(株)デジタルニューディール研究所が責任運営し、 (財)ベンチャーエンタープライズセンターが後援、という形でスタートしてお ります。これからは、有料広告の掲載や協賛企業の募集、あるいは独自のオピニ オンページの開設、アンケート調査、ブログサービスの実施なども視野に入って くることになります。どうぞ、これらの運営について皆様のご意見をお寄せくだ さい。これで3回目となり、少ししつこいようですが、これも手続きの流れでご ざいますのでご理解いただきたいと思います。電話でも受け付けます。рO3− 5822−9820、DND事務局、出口まで。


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