◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2007/02/14 http://dndi.jp/

AKIBA実証フィールドのイノベーション


DND事務局の出口です。真ん中に深紅の日の丸、それを囲む渦が世界へ跳ねる ダイナミズムを象徴し、遠目に引いてよく見れば、う〜む、小文字のaが浮かび 上がってきます。それは、「ABC〜」の「a」で、「あいうえお〜」の「あ」をイ メージする、万物の始まりの意味だという。しかし、やはり、AKIBAのaであるこ とに疑う余地はない。


それにしても、なんとまあ、斬新なのでしょうか。シンボルカラーは、エネル ギッシュなこの街をイメージした赤。その鮮やかさは、東北三大祭の雄・ねぶた の津軽錦の金魚ようですね。この愛らしいデザインは、日本の先端をリードする、 世界のAKIBAにもうすぐ、お目見えするという。


賑わう東京・JR秋葉原駅は、電気街口正面にそびえる秋葉原ダイビル5階、少 し広めのカンファレンスフロアーの突き当たりの会議室。数えるともう40人を 越えるメディア関係者が詰めかけていました。こんなに大勢の記者会見はそんな にみあたりません。


世に溢れる科学技術をいかに社会に役立てるか。その「実証」を試みる場を 「常設化」する、わが国初の産官学協力体制による「秋葉原先端技術実証フィー ル推進協議会」の4月の正式発足を控えて、この2月2日に記者会見が開かれて いました。その鮮烈なデザインが、この協議会実証マークでこの日初めてお披露 目となりました。今月からこの趣旨に賛同する産業界、研究機関、個人の幅広い 参加の募集を開始し、すでに国内外から熱い視線が集まっている、という。案内 は、以下のURLからご覧になれます。


http://www.akibatechnopark.jp


協議会設立の中心は、新生・秋葉原をプロデュースする妹尾堅一郎さん、少し 触れましょう。東京大学先端技術研究センターの特任教授で、NPO産学連携推進 機構理事長です。アキバの守護神のようです。


この日は、首のギブス姿が少し痛々しい感じでした。が、マイクを持つその声 はよく響いていました。昔から、秋葉原は「理工系の心のふるさと」が持論で、 ご自身の学生の頃の姿を重ねて見ているのでしょうか、秋葉原への思いは人一倍 強い印象を受けます。先端技術を扱うから、といっても腰は低く地元の商店主、 警察や消防といった町内のコミュニティを大切にし、気配りを忘れません。だか らでしょうか、皆さんが進んで協力を申し出るのでしょうか。街の新たなプロジ ェクトの会見の場に、なんと万世橋署から生活安全課長の小田中時幸さん、千代田区から地域経営担当課長の鈴木豊さんらが同席していました。


妹尾さんには、夢を実現する力がありますね。動員記録を塗り替えた昨年秋の ロボット運動会や、つくばとアキバを結ぶ技術の産直などのアイディアが冴え、 話題の「萌え」や「フィギュア」の若者の街の一角に、今度は、次世代の新技術 を試す「テストベッド」、顧客の反応を見る「テストマーケッティング」の環境 を常設していく、という。


いわば、秋葉原を新たなイノベーション創出の「場」と「機会」を提供する 「実証フィールド」という位置付けで、先端技術の事業化を「より効率的に、効 果的に推進する」のが狙いで、その企画・運営の受け皿が「秋葉原先端技術実証 フィールド協議会」になるわけです。


妹尾さんが、優しい語り口で説明を続けていました。が、その内容は、先端技 術の抱える深刻な問題点をズバリ指摘していました。〜ナレッジが技術に至らな い研究では困りますね、その技術開発が、製品やサービスに届かないケースも少 なくないし、せっかくの製品やサービスといってもそれが事業として立ち上がら ない、また市場が生まれてこなければ意味がありません。もっと重要なのは、そ の事業戦略がどうなるか、成功するかどうか−ではないでしょうか〜と熱っぽい。


しかし、現在は、ずっと周辺を見渡してこのようなリアルな「実証」が行なえ る「場」があったでしょうか。実証の「機会」を得ようとしても、地域のコンセ ンサスや法的措置がクリアできるでしょうか、そのためにいままでは、多大な労 力と時間がかかっていました。


製品が出来たが、それが本当に動くのですか、ちゃんと作動しますか、お客の 反応はどうですか、価格は適切ですか〜。それなら街やお店の人らに承諾を得て、 実際にユーザーに使ってもらうことはできないだろうか〜そういう趣旨から「テ ストベッド」、「テストマーケッティング」が可能な状況を作って、先端技術や 次世代技術をいかに社会に役立てるか、そこに実証フィールドの発想の原点があ るんです〜と妹尾さんは力説していました。


秋葉原の街を選んだ理由として、科学技術への神話性、それに地域性の2つを 上げていました。明確な区域がある、アクセスの利便性、適度に複雑化した町並 み、企業と大学に馴染みが深く、そして住民、働く人、それに訪問者の3者のバ ランスが取れて、「これ以上の街はない」と確信し、平成16年から種々検討を重 ね準備してきて「ようやく機が熟した」という。


設立発起人を紹介します。川上潤三さん(日立製作所執行役専務、研究開発本 部長)、保科剛さん(日本ユニシスCTO)、村上光雄さん(NTTコミュニ ケーションズ取締役)、中島秀之さん(公立はこだて未来大学学長)、廣瀬通孝 さん(東大先端研教授)、池田靖史さん(慶応大学環境情報学部助教授)、関口 智嗣さん(産総研グリッド研究センター長)、矢入郁子さん(情報通信研究機構 研究マネージャー)そして妹尾堅一郎さんの10人です。


この協議会に運営に協力するオブザーバーには、秋葉原電気街振興会、警察庁、 経済産業省、警視庁、国土交通省、総務省、千代田区、東京消防庁神田消防署、 文部科学省(資料の表記順)などです。


2月2日現在まで決定している評議員は以下の通りです。(五十音順)。
石井威望さん(東京大学名誉教授)、井深丹氏(タマティーエルオー社長)、大 橋欣治さん(鹿島建設専務執行役員)、岡本英彌さん(田中金属工業社長)、小 玉喜三郎さん(産総研副理事長)、佐々木元さん(日本電気会長)、清水愼一さ ん(JTB常務取締役)、下光秀二郎さん(東芝常務執行役員)、杉井清昌さん (セコム執行役員)、竹内寛さん(日本電波工業社長)、柘植綾夫さん(三菱重 工特別顧問、前総合科学技術会議議員)、中島秀之さん(公立はこだて未来大学 学長)、納谷寛美さん(明治大学学長)、西島信竹さん(みずほ銀行常務執行役 員)、早川浩さん(早川書房社長)、原島文雄さん(東京電機大学学長)ほか、 主に関連した業界を中心に多彩な顔ぶれが名を連ねています。ああ、全部書いて しまった。フウッ〜。


予定では、3月14日(水)に設立総会、3月31日に第一次会員募集締切り、4月1 日(日)に協議会設立ということになっています。会員は法人会員、個人などが あり、年会費は学術、自治体会員の無料から、理事会員の300万円、法人会員の6 0万円、法人の情報会員1万2千円、個人の情報会員の3600円まであってそれぞれ の立場、目的に応じて参画しやすいスタイルをとっています。僕も参加しようか なあ〜。


では、ここでどんな実証実験がスタートするのでしょうか、その一例。防犯、 防災の近未来型の街づくりのプロジェクトでは、特殊な電子ペーパーと高度な検 出センサー、それにネットワーク技術を応用し、まるで三大噺みたい(妹尾さ ん)なトーンなのですが、皆さんでしたら、これらの先端技術を使って膨らむイ メージはどんなものになるでしょうか〜これを地震対策に応用しよう、という試 みを紹介していました。


地震の揺れは、場所、フロアーによって一応ではありません、そこで場所ごと の揺れの違いをセンサーがキャッチし、防犯表示に役立てられるデジタルペー パーには、安全な場所に誘導する表示「→こっちに逃げろ!」(これは僕の想像 です〜)のサインが出て、それを頼りに動けばいい−という仕掛で、この表示も 多国籍語で行なえば、外国からの訪問者にも安全が確保されるーという考えで、 4月からその実証実験がスタートする予定です。


皆さんなら、どんな実証のプロジェクトをお考えでしょうか。う〜む、腕を組 んでしばし黙考、ひらめきは、こんなものでした。まず、ロボットのテストベッ ド、電脳都市・AKIBAはロボットが動く街になる〜お店の商品説明、レジの対応、 荷物の上げ下ろし、ご老人や体の不自由な方へのお手伝い〜。


映像都市・アキバは、街がそっくり映画のスクリーンに変身〜まあ、名作・ニ ューシネマパラダイスのように、ビルの壁がいたるところで映画を上演、音声は 無線で、携帯から聴こえてくる〜。


ショップナビ・あきばは、携帯で欲しいメニューや価格を飛ばすと、そのエリ アを知らせてくれて、欲しい商品の場所までナビゲートする〜。


健康ウエルネスゾーンの設定、ここを通り抜けるだけで貴方の健康を診断し、 適切な処方を致します〜。


地球温暖化博覧会の電気街構想とは、街の隅々まであらゆるエネルギーを燃料 電池や新エネルギーで設計し、組み込んでそっくりその街全体を次世代技術の博 覧会会場に仕組む、世界の街からこんにちは〜。これは経済産業省の新エネル ギー課長の安藤晴彦さんに未来都市の設計をお願いした方がいいかもしれません ね。こんな風にアイディアを出し合っていくのでしょうか〜。


発想がちょっと弱いかなあ。しかし、黒川清さんが座長のイノベーション25 戦略会議って、社会がどうなる、という予測より一歩進んで、こうしよう、こう しなくっちゃ〜というような施策が求められているかもしれません。先生、期待 していますよ。それには、それらを実現しようとする人材の確保が重要ですね。 イノベーション25戦略会議と秋葉原の実証フィールドは、同じベクトル上にあ るような気がしてきます。


さて、秋葉原の一日の集客は14万から15万人で、外国からの観光客はというと 年間39万人と推定されています。訪日外国人総数614万人の6.3%(2004年度JN TO調査)。年間来店訪問者数は3000万人、外国人が100万人−というのは千代 田区の観光情報でした。若干数字が違いますが、まあ、いいでしょう‥。


記者会見では、参画する関係者からこんな意見がでていました。日立製作所の 研究アライアンス室担当部長の新谷洋一さんは、「安心安全の社会をどう創るか、 実現するか、この問題解決を電子ペーパー、燃料電池、無線などの技術を駆使し て実験していきたい」とその趣旨は明確でしたね。


協議会の重鎮、日本ユニシスCTOの保科さんは、IT技術の変遷を述べなが ら、企業のIT化が1960年から70年、個人のIT化はそれに続く1980年から90年に起 り、そして2000年以降、ユビキタス社会の到来、社会のIT化が進む−と語り、 「ユーザー主導でこのプロジェクトに期待するところが多い」と積極的でした。


津島淳さん(NTTコミュニケーションズ金融イノベーションシステム部門 マーケッティング部門長)は、「テーマパーク構想以来のメンバーです。秋葉原 というホットスポットは、魅力的な街と認識しております。(実証実験に)適切 なテーマがあれば、グループに声をかけて使っていきたい」という。


武山政直さん(慶応大学経済学部助教授)は、都市の経済とITの研究がご専 門で、企業のビジネスマンや地域の市民という知らないもの同士が、新しい技術 を探っていく、あるいは街の中に情報技術が埋め込められていく、というITの デザイン、都市のデザインというイノベーション創出の実証の必要性を感じてい ます」という意味の発言をされていました。


さて、4月以降、どんなイノベーティブな産業創出がこの実証フィールドで展 開されるか、受付で忙しく動き回っていた事務局で主任研究員の福原哲哉さん (37)にお聞きすると、楽しみにしていてください〜と微笑み返し。どうも、そ の実験内容はシークレットのようです。


彼との初対面は2年前でしたね、もうすっかり逞しくなって、追加取材の対応 はお見事でした。このメルマガも少しですけれど、気持ちよく取材に応じてくれ た福原さんのお蔭です。いいプロジェクトは知らぬ間に、人材がどんどん育って いくものなのですね。


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