DND事務局の出口です。雲ひとつない青空が広がって、首都は冬晴れです。新 しい年を迎えた正月2日の夜が「初夢」で、江戸の人は、いい夢を見るため枕の 下に「宝船」をあしらった紙を置いて寝た、というから、それはなんとも平穏で、 ほほえましい。「初夢」は、どうでしたか。今年こそ、その「夢」が適って、皆 様に幸せがいっぱい舞い込むことを心からお祈り申し上げます。
さて、DNDユーザー登録が、まもなく9000人の大台を突破しそうです。記念の 登録者は、誰になるのでしょう。案外、こういうのも楽しみのひとつで、とても わくわくしてきます。もう5年前のDNDスタート前からご一緒の経済産業省の石黒 憲彦さんからは、もうすぐ9000人ですね、1万人目指して頑張りましょう〜って、 励まし風の最後のムチが入りました(笑い)。
それらは、有り難くも真摯な皆様、お一人お一人の積み重ねによる、まあ、夢 の金字塔のようです。が、その分、責任の重みをこれまで以上にズシッと強く感 じております。メルマガ長いぞ〜というご指摘もあり、その辺は心して臨む覚悟 でございますので、本年もどうぞ、よろしくお願いいたします。
本日は、新年最初のメルマガですので、嬉しいご報告をひとつ。サイトをご覧 ください。わが国の科学技術政策をリードする内閣特別顧問の黒川清さんを取り 囲んで、「イノベーション25戦略にモノ申す」という緊急提言の英語版が、本日 から一部スタートしました。まあ、テーマがイノベーションなのですから、世界 へ発信せよ!というのはミッションとして必然でしょうね。が、正月返上の突貫 工事ということもあって、ところどころ不具合や未整備が目立ちますが、走りな がら修正、追加していきますので、ご容赦ください。
さっそくNEDO企画調整部長の橋本正洋さんから、「出口さん、やりましたね。 とてもクールです。これも、日本語より英語の方が速く出てきてしまう黒川先生 のお蔭というということでしょうか?NEDOは国際協力が柱の一つですし、最近、 欧米の政府機関から問い合わせが多いので、このDNDサイトは強力な媒体のひと つになりそうです」とのコメントがあって‥ふ〜む、欧米か!
DNDサイトは、客観的に見ると、英語版がよく似合います。デザインは、杉山 モトムさん、もう彼とは20年近く一緒に仕事を続けていますが、英語版の顔が並 んだ看板の白い余白のセンス、筆者のページに入ってグレーとオレンジの配色が マッチしたタイトルや顔写真の装丁が、とても感じがいい。このデザインを目に した途端、嬉しくて涙が出そうでした。翻訳は、医学系研究者のTさん、きっち り仕事をこなすプロです。おふたりとも正月返上だったようです。僕の長〜いメ ルマガには随分、時間を費やされたようでした。
こいつは、春から縁起がいい。それともうひとつのお知らせは、【DNDお年玉 プレゼント】です。文末にご案内します。EM総合ネットの宮澤敏夫さん提供の無 農薬のお米が当たる!って告知すれば、何かにつけて、お米お米って、なんだか JAの回し者のような印象を与えてしまいかねませんが、このお米、本当に美味し い。その他、毎日新聞社提供の興味をそそる各種展覧会のご招待チケット、なぜ か日光東照宮提供の温泉地1泊ペア宿泊券もご用意しました。なんだあ、みんな 出口さんの仲間じゃないの〜って言わないで、素直なご応募をお待ちしています。
ここで終われば、すっきりしていいのかもしれません(笑い)。が、そうはい かないところがDNDメルマガなんですね。題材は、う〜む、困って悩んで頭を抱 えて、それで、実は、まだ焦点が絞りきれません。が、年頭にあたって、これら は是非、書き留めておきたい。
財政破綻の夕張市、そこは僕の故郷ですが、若者91人が参加した手作りの成人 祭は、感動的でしたね。みのもんたさんらがTBS早朝の朝ズバッ!の番組などで、 温かく繰り返し応援してくれた効果もあったのでしょうか、全国から激励や応援 が届けられて、涙、涙、そして涙‥の共感の輪が広がっていましたね。実行委員 のひとりの女性は、健気に「生まれ育った夕張を離れずに、これからご恩返しし ていきます」って、目を赤くはらしていました。やはり若い力は、地域の希望で すね。凍てついた地中から、氷雪を割って黄色い花の福寿草が芽を吹いてくるん です。
その成人の日の8日夜は、NHKが、夢に向って働く若者らにスポットをあててい ました。番組は、月曜夜10時からの「プレミアム10」。舞台は、東京の高速道 路の工事現場でした。鳶鍛冶(とびかじ)の親方に憧れる、高校中退の18歳は、こ こで初めて尊敬できる大人と出会った、という。やはり高校を中退していた彼の 小学校からの同級生も最近、この世界に飛び込んで、厳しく叱られながらも「必 ず、彼(同級生)に追いついて追い越す」と懸命でした。
溶接の青白い火花が勢いよく四方に飛んで危険だし、高く組んだ鉄骨の足場は 目がくらみそうでした。その誰もが嫌がって、迷惑がる工事現場なのですが、そ こに学歴も年齢も関係ない職人として一歩踏み出した若者らの、「夢」を追う姿 が描かれていました。
「あなたにとって仕事とは?」の質問に、カメラの前ではにかみながらボード にマジックで書いた文字は、「金」もあれば、「将来の家族のため」というのも あって、そして「親孝行」という泣かせるセリフも目にとまりました。NHKのウ ェブ上の番組紹介では、「日本の若者たちを、そして未来の日本を応援していき ます」と宣言していました。晴れやかですね。
職人さん、といえば、昨年暮れは埼玉県の伊奈町にある瓦屋根の葺替工事を専 門にする、親方の家に知人の紹介で呼ばれていました。広い築山のある庭に板を 敷いて、蕎麦打ちと餅つきに興じていました。そこに20代後半から30歳の瓦職人 12人と同席しました。いやあ、食べっぷりがいい。
最初は、髪を染め、眉毛を細く剃って、なんだか近寄りがたい印象でしたが、 味噌仕立てのモツの煮込みをふうふうしながらお代わりしてあげたり、つき立て を辛味餅にして取り分けたりしているうちに打解けてくれましたね。笑顔がとび っきり弾けていました。みんないい奴です。出口さんはゲストだから、こちらの 客間でどうぞ、って誘われていたのですが、寒い戸外だって火の番をしている方 が、楽しいし、落ち着きましたね。で、親方の指名で〆の挨拶に立ったのですが、 酔った勢いで、「いつまでも雇われじゃいけない。しっかり技を磨いて、経理や 仕入れや原価計算も貪欲に覚えて、独立して、親孝行してください、おじさんみ たいに‥」って言うと、頷いてニヤッと口元を緩めて、少しだけど拍手をもして くれていました。日本は大丈夫だ〜。
朝日新聞の新年1面の企画「ロストジェネレーション」は、記事の出来具合と しては、各社の企画を遥かに凌駕する筆力を感じました。「第2の敗戦」と呼ば れたバブル崩壊を少年期に迎え、「失われた10年」に大人になった若者たち。さ まよう2000万人。踏み台世代、転身世代、反乱世代、仮面世代、離婚世代、消耗 世代、起業世代、シリーズ9回目は、「若きエリートが官僚機構から、敷かれた レールから降りている」脱レール世代‥よく、まあ、そこまで世代の特徴を浮き 上がらせたものです。感服しました。
が、「25〜35歳」を「ロスト〜」って括るのは、それが偽りのない現実の断面 なのだから連載企画として十分に成立するのでしょうけれど、どこか気分がよく ありません。そのタイトルの響きが滅入ります。なんだか罪だなあ〜。「ドリー ムジェネレーション」だって、いいじゃない、と思う。
「先生に夢を」は、同じ朝日の社会面の連載企画でした。学力、いじめ−。〜 こんな時代。先生たちはいまも志を保てるだろうか。ドラマや映画の先生にあこ がれた夢の続きを、現場でみた−というシリーズは、読ませました。
新聞は社会の窓、という。取材現場には、表も裏もあり、光も影もついて回る ものです。最近の痛ましい歯科医一家の凄惨な妹殺しの事件は、これもメディア スクラムというのでしょうか、新聞が競って被害女性の周辺の事件の本質と関係 のないどうでもいいことや、福島の実家まで飛んで書き急いでいるように映りま す。この報道の本質は何でしょうか。
「あなたには夢がない」の言葉で起きたといわれる兄妹の悪夢の惨劇、そして 残された家族の苦衷。メデイアの、この一連の過熱報道ぶりは、こういう題材を 餌食にしているとしか思えないくらい、異常に映ります。他人の痛みをわかって あげて、ご両親や、その将来ある大学生を守ってあげる気持ちを少しでも持って 欲しいものです。
明治以後の代表する新聞記者に長谷川如是閑がいました。明治8年、東京・深 川で大工の棟梁の家に生まれ、浅草で過ごし、本名は山本萬次郎で、長谷川は祖 父母の姓、という。実兄は、東京朝日の社会部長を歴任し、兄弟で東西の社会部 長というのも珍しい。当時の新聞「日本」から大阪朝日に28歳で入社、ロンドン 特派員や社会部長を歴任し、後に退社して雑誌創刊などにかかわる、まあ、ジ ャーナリストの大先達です。
昭和26年5月6日号に「週刊朝日」に掲載された「クツみがき」という彼の小文 があります。その年の東京新聞の元旦に載った「日本断じて亡びずの根拠」とい う「年頭小言」の後日談を、元産経新聞編集局長で筑波大学教授の故・青木彰さ んが、著作の「新聞力」(東京新聞出版局)の冒頭で紹介しています。
〜戦後の混乱期に、如是閑はお茶の水橋のたもとで、若い靴磨きに靴を磨かせ ようとした。ところが、若者は、「持っている靴墨の質が悪いので、いい靴墨を 持っている人にやってもらってください」と磨くのを断った。如是閑は「いいか らそれでやりなさい」と何度言っても彼は、「靴磨きが、人の靴を台無しにして は申し訳がない」と聞き入れない。仕方なく小さい紙幣を渡して行こうとしたが、 彼はそれも受け取らない。ついに如是閑は紙幣を投げ出して、その場から駆け去 った。
「年頭小言」はいう。
「涙に頬をぬらしながら逃げていく私を、往来の人は何と思ったことだろう。私 は立ち止まって頬を拭いながら頭の中で叫んだ『日本は亡びない』‥‥万人のた めに万人に踏まれながら生きている街頭の砂利のような人たちのうちに、このよ うな『人間』をたった一人見出して‥‥上層の日本はどうあろうとも、その下層 の街頭の砂利が、人間というコンクリートで堅固に舗装されていたら、その上を 行く日本は断じてひっくり返ることはない」。
そして、この新聞が出て数日後、鎌倉の如是閑邸に「お茶の水の靴磨きです」 と名乗る青年が訪れた。彼は、実は早稲田大の学生で、そのときは新宿駅周辺で 10人近い男女と並んで靴磨きのアルバイトを続けていた。彼以外はみな本職であ る。彼は「年頭小言」の載っている新聞を同業の人の数だけ買い、みんなに読ま せた。そしてこういった。
「われわれはこの往来の砂利となって人々にふまれながら、日本の行く道を固め る人間になろうじゃないか」。
みんなは汚れた手で、その新聞を強く握り締めながら泣いた、という。
青木さんは、靴磨きを下層の街頭の砂利とは毛頭思わないが、如是閑の心の高 ぶりには共感を示しながら、「当時の新聞と読者・国民との濃密な結びつき、と りわけ新聞の重みとでもいったものに心を打たれる」といいつつ、それにしても、 「今の新聞は軽すぎはしないか、新聞人に気の緩みというか、時代をリードする 気概の欠如が感じられてならない」と言い残していました。
その本の出版の日付が2003年12月12日、その4日後の16日に青木さんは、肺が んのため逝去されました。遺作となった「新聞力」は、病床で最後の力をふり絞 って何度も書き加えては削る、という校正を続けていたようです。
さて、本日午後16時から東京・大手町のサンケイ会館で、科学技術振興機構(J ST)の新春の集いです。12日は、墨田区内で一橋大学の関満博教授を囲む、新春 大新年会ですね。昨日夜は、新年会が2件、そのひとつフューチャーラボの橋本 さんからお声かけいただいた秋葉原ダイビルでの産学官連携の新年会、残念なが ら、仕事が終わったのが夜11時で、行きそびれてしまいました。
13日(土)は、これは田町のキャンパス・イノベーションセンターで、東京農工 大学大学院技術経営研究科(MOT) の第3回入試説明会が午後14時から開かれます。 DND馴染みの古川勇二教授が概要説明に立ち、模擬講義も行われます。ご関心の ある方は、当日でも大丈夫ですので足を運んで見てください。
あ〜あ、新年早々、長くなってしまいましたね。
【DNDお年玉プレゼント】
日光東照宮賞:
1本【日光東照宮晃陽苑ペア1泊宿泊券】
※日光東照宮の稲葉久雄宮司さんからのご好意です。現在改装中で、2上旬から4
月中旬までのご利用、1泊2食、ヒノキの温泉が楽しめます。
シントロピー賞:
5本【EM無農薬お米5キロ】
※名古屋に本社がある(株)シントロピーの宮澤敏夫社長からのご好意です。僕
も投資している会社です。
チケットプレゼント:
1、7組【漆器界の巨匠、人間国宝「松田権六」の世界のペア招待チケット】
※東京・千代田区の北の丸公園の東京国立近代美術館工芸館(2月25日まで)
2、7組【世界遺産からのSOS[写真・映像]展〜
アジア危機遺産からのメッセージ】
※アジアを中心に幅広く活躍するフォトジャーナリストや専門家からの報道写真
ごNHKハイビジョン映像によって構成、アフガンの「バーミヤン遺跡」、イラン
の「アルゲ・バム城砦」などを取り上げて、「何をしなければならないのか」を
メッセージとして訴えています。場所:東京・西武池袋本店イルムス館2F.で、
1月23日まで。これは、期間が迫っていますね。
3、7組【布が伝える和のこころ展〜着物・ふろしき・百徳・古袱紗〜】
※東京・渋谷の東急本店7階特設会場(2月22日から28日まで)。
4、3組【北斎の宇宙、葛飾北斎×プラネタリウム】
※世界最高峰のプラネタリウムが映す満天の星と北斎の世界。総合演出、宮本亜
門氏、プラネタリウム創造、大平貴之氏。場所:日本橋HD DVDプラネタリウ
ム。東京・中央区日本橋室町2−2−1三井第3別館跡地。(6月30日まで)
【応募要領】
欲しいプレゼント名と名前を記入し、dndmail@dndi.jpまでお送りください。
当選者には、追って送り先をご確認させてもらいます。応募の締め切りは、来週
の16日(火)午後5時まで。お問い合わせは、電話03-5822-9820まで。なお、こ
のプレゼントは、VEC並びに後援の経済産業省とは関わりありません。運営の
(株)デジタルニューディル研究所の責任で行うものでございます。