DND事務局の出口です。予告通り、前回のメルマガ「元気を発信する若者力」 の後半を報告します。う〜む、やや長めです。
九州大学のVBL助教授で(株)トランスサイエンス上席執行役員の五十嵐伸吾 さんが主宰する情報交換のML「WINWIN」主催のシンポジウムに11日夕刻、ひとっ 走り、オレンジのイルミネーションで彩られた東京駅前の丸の内ビル7Fの東京 21cクラブに行ってきました。
そのプロデューサーの五十嵐さん、文字通り、師走〜。福岡に拠点を置きなが ら、その少し前は北海道へ飛んで、そしてこの日は東京でシンポだから、その奮 闘ぶりには、毎度、頭が下がります。
大学で質の高い授業をこなし、優秀な人材を輩出し、そして兼業の承認を受け てキャピタリストとしてのパフォーマンスもあげていらっしゃる。同じ会場で同 じ時期にシンポを開催していましたから、あれからちょうど1年ですね。昨年の 12月のメルマガでも報告した通りです。
冒頭、五十嵐さんもこの1年の起業家周辺の環境の変化に触れて挨拶に立って いました。良い会場ですね。マイクの音質も良好で、パネラーやゲストのみなさ んはとても気分良さそうでした。せっかくだから、もう少し大勢の人に聞いて欲 しかったですね。
で、出色だったのは、ゲストスピーカーのひとり、1976年生まれで進化するWe b2.0超えに挑む、注目のナナロク世代を代表して登壇した、(株)はてな取締役 副社長の川崎裕一さん(30)でした。
テーマは「ナナロク世代がはてなを選んだ理由」でした。「はてな」というと、 そうですね、『ウェブ進化論』の著者、梅田望夫さんが2005年3月に「はてな」 の取締役に就任し、その「なぜ、はてなを選んだか?」の詳細が、以前も紹介し た『シリコンバレー精神』に書かれていました。その「生はてな」の印象は、普 通の青年、その川崎さん、ひと通り、今日の足跡を早足でたどって、「はてな」 の経営理念や手法をザザッと語っていました。持ち時間は10分程度でした。し かし、やがて僕の体に衝撃が走り、その興奮は抑えきれませんでした。そのメモ から〜。
「金儲けはちゃんとしないといけないが、金儲けのみに基盤を置いている企業 の限界を見ていますから、ユーザーにとってどんな価値があるかが、我々の価値 観であり、安全、高速、簡単−に勝るプロモーションはない」。
「アイディアに価値はないと思っています。ビジネスモデル特許といってもそ れは一瞬にして世界で5万人が同じ事を思いついているハズですから、最速か最 高か、と問えば、どこよりも早く動く、その最速という点に軸足を置いています。 最速が適えられなければ、最高というところを求めねばならないわけですから」。
いやあ、聞いていて腰を抜かしそうでした。僕は53歳、息子と年齢が近い川 崎さんの講演を聴きながら、「これは聴いているのではない。学んでいる、確か に教えてもらっている」って正直、思いましたね。何か、琴線にピーンとくる物 があって、もうこれ以上聞いてしまうと頭が壊れるーっていう感じでした。その 衝撃が覚めないうちに、脳からエッセンスがこぼれないように、抜き足でこっそ り会場を出てオフィスに戻り、その余韻を日記に書きとめていました。
思えば、新聞社での経営会議で、数年前まで社長を務めていた元上司の口ぐせ が「すぐやれ!」つまり「最速」でした。それで、「アイディアなんて思いつい たらその瞬間に2、3人が同じ事を考えている、と思った方がいい」でした。そ れを川崎さんは、一瞬に同じ事を考えているのが5万人というからそのスケール には、脱帽です。川崎さんの講演の前に登場したのが、ネットエイジキャピタル 社長の小池聡さんでした。川崎さんは、小池さんらがBitValleyムーブメントを 起した当時から出入りしていて、「ネットエイジで丁稚奉公していた」ともいう から、ごく親しい間柄でした。小池さんは、いつも通りのダンディズムでしたね。 この度の上場は、おめでとうございます。こんなところで失礼ですが‥。
シンポのパネラーには、日本経済新聞産業部編集員兼論説委員の関口和一さん が名前を連ねていました。9月上旬から日経夕刊で連載した「Web2.0革命の旗手 たち」のドキュメントは、見事なルポでした。登場人物の顔ぶれが秀逸でしたね。 この辺は、日経新聞の、というより関口さんの真骨頂なのでしょうか。切り抜い て繰り返し読んでいます。それは本になるかなあ〜。
その連載は、BitValleyで一度は溺れた?小池さんやネットエイジグループ代 表の西川潔さんらが、教訓を生かして、どんな風に文字通り「ネットエイジ」を 再構築し、そこで何人の起業家を育てたのか、その親密なネットワークの確かさ が行間に見え隠れしていました。ネットバブル崩壊、それからの起死回生のチャ ンスをどう引き戻したか、そこはもうひとつのドラマかもしれません。
この連載の7回目には、はてなの社長、近藤淳也さん(30)が登場します。彼 が会社を興した2001年にもうひとつ、京都にベンチャー企業が生まれた、と紹介 して、「近藤と同じ京都大学出身の内藤裕紀(28)が社長を務めるブログ技術会 社のドリコムで、今年2月、会社設立から4年余りで東証マザーズに上場し、話 題を呼んだ」という。
その内藤さんの背中を押したのが、勉強会で出会ったネット広告大手、サイ バーエージェントの社長、藤田晋氏(33)で、自分と同じく若くして起業した内 藤さんに「上場はタイミングが大事だ」と忠告していた、という。
優秀な人材が、それぞれに日々技術を磨き、ひとりが抜け出れば、2人、3人 と続いて、俺も、僕もって連鎖していくのでしょうか。成功体験が仲間に希望を 与え、さらに続く次代の若者を取り込んでいく〜そういうベンチャー創出の生態 系が形成されつつあるように感じました。というわけで途中退席してしまいまし たが、その辺の起業環境の変化について、その後のパネルで議論されたのかもし れません。
さて、そのサイバーエージェントの藤田さんの名前は、先週、ひょんなことか ら耳にすることになります。
この夏に鯖江の地域活性化を推進する若者中心のLLC「鯖乃家合同会社」が立 ち上がったと思ったら、その勢いで「鯖乃家IT座談会」が先週の8日、鯖江市の ホールで150人を集めて開催されていました。
鯖乃家の主要メンバーは、システムエンジニアの古田一生さん(こうだ・かず なり、35)、福井高専発ITベンチャー(株)jig.jp代表の福野泰介さん(27)、 ラジオ番組のレギュラーからロックバンドでギター&ボーカルを担当し、全国に 手広く162箇所のPC教室や教育コンテンツ配信などを展開する(株)ウォンツ代 表の、どんまゐ鈴木さん(34)、それに僕がずっと個人的に応援している、元産 官学連携コーディネータでインキュベーションマネージャーの出水孝明さん(3 9)、彼がそこの代表です。
この座談会には、鈴木さんも加わってやはり地域活性化を目指す「あばさけLL P」から、頑固な職人道の(株)シアターハウス代表の吉村明高さん、レアなニ ューモデルのメガネが自慢で仕事振りが評判の三和メッキ工業(株)代表の清水 栄次さん、それに紅一点のPOSY&POSYの木村佳美さんら4人。「あばさけ」は福井弁で「やんちゃ」の意味だそうだ。東京からはモノづくりプロデュサーで数々の実績の(株)新産業文化創出研究所の内田研一さん、有能で声の渋いキャピタリストのASTEC代表の若林拓朗さん、CNETの編集の永井美智子さん、内閣官房は地域再生推進室の早田吉伸さん。みんな若い。あれっ!こんな調子でやっていたら、紙面が続かない。
でも、ここで名前を外したら、怒られる‥そうそう、(株)フューチャーラボ ラトリー代表の橋本昌隆さん、彼は京都から岐阜から大阪から、知り合いに多数 声をかけての参加でした。180aを超える長身を折り曲げてあっちこっちで気 配りを見せていました。まあ、いろんな人を、それも若い人を紹介してくれまし たね。京都の丸山伸さん、印象的でした。思い起こせば、コテコテの関西弁が耳 に響いてきます。
1部のセッションは、地元の牧野百男市長も参加し最後までいました。地元、 鯖江市の活性化策について、みんなアイディアを出していました。どんまゐさん は、どうせならメガネ市にして、メガネ市漆器町羽二重って地名を出せばどうで しょう、というから、会場の隅で、僕は、そのアイディアに思わず、昼はメガネ 市で、夜になったら鯖江市に戻せばいい、だって夜になって寝る時は、メガネを 外すから‥それで、夜と昼のコンタクトはナシよ、って心の中で洒落て見たけど、 つい黙っていられなくて、誰かにしゃべってしまっていました。
市長の牧野さんは、ゲストのパネラーから鯖江活性化のアイディアを頂いて感 激した様子で、「素晴らしい会合を開いてもらって、本当に感激です。このよう な座談会を定例化してはどうでしょう」と極まっていました。
2部は、どんまゐさんらウォンツのメンバーで結成したドラム、ベース、それ にギター3人編成のロックバンド「VibraSlap」のライブ。これが素晴らしい。新 作の4曲を鈴木さんがシャウトしていました。2曲目の「黒い霧の夢」、3曲目の 「恋の行為」なんて、う〜む、ノルウェーの森を超えている!3月11日のどんま ゐさんの35歳の誕生日には東京でライブをやるそうです。いやあ、これは何とか して、芸能プロダクションのアミューズの知り合いにでもご紹介したい。ミュー ジックもいいが、曲の合間のしゃべりがこれまたノリがいい。アミューズより、 吉本系かなあ、カルテット?なんでもできそうでした。
で、3部は僕もパネラーに出て、どんまゐさんがモデレータで、わーっと〜。 顔が、態度が大きいから、目立たないようにって控えめにしていたつもりが、 わーっと〜。情報発信の裏技、決め技を披露して、それなりに喜んでくれた、よ うです。その勢いで、夜の宴会までなだれ込んでいきましたね。フェアな会費制 でした。
感心したもうひとつは、3部のパネルの途中で、地元の元気な学生がそれぞれ、 地域活性化をテーマにビジネスに取組む実情をプレゼンしていました。これも凄 い。何が凄いかといえば、その会社設立やビジネスへの挑戦が、おおよそ「地域 を良くしたい」という純粋な動機だったという点でした。
福井大学や福井県立大学、それに福井高専の学生らのビジネス活動を中心に全 部で5題でした。トップは、携帯電話向けFlashゲーム・カスタマイズサー ビスを手がける泣cmバイト社長の宮川栄一さん、宮川さんはjig.jp福野さんの 親友、という触れ込みで、20代前半と若い。福井高専からは「JAVA同好会」 を代表して、青野有花さん。青野さんは「鯖乃家」のメンバーで、キャッチは" 鯖江の元気の素"という。
学生ベンチャー研究室「VOLENTE(ボランチ)」からは、福井大学大学 院1年の坂本一真さん(23)。ボランチは福井県立大学、福井大学、仁愛大学ら の学生ら24、25人で組織し、フリーペーパー「are(アレ)」を創刊、最 新の2号では、「メガネブームに喝ッ!」、「メガネに恋‥しちゃいました」、 「めがねっ娘」など、市長や地元の業界が喜びそうなメガネ特集にページをさい ていました。「鯖江メガネ党」を起し、「学生発で福井の若者を元気に、地域を 元気に」というから涙がでてきそうな取組姿勢でした。偉〜い。頑張れ、阪本君、 編集担当で、実家がそば屋の加藤真生君、斉藤佑美さん、就職おめでとう。阪本 君、マスコミ目指せ!
という具合で、メディアの関心も高く、それでは、本気で、僕が「鯖江メデ ィア塾」でもやろうか〜っていったら、福野君や、どんまゐさん、それに「鯖乃 家」代表で、僕を鯖江に引っ張る、出水さんが、新年早々、その塾をわーっと人 を集めてやりますーという。これも最速だあ。
メディア論は、そんなものはふっ飛ばして、実践的な課題、ネットワークをど う広げる、どんな原稿が売れるか、割付や整理の読みやすいテクニック、もっと も重要な協賛金や広告の押し付けにならない集め方、それに役に立つ通年特集の 設定、3年経ったら出版できるプランなどをテーマにしながら、とことんやって みたい。個別の原稿の添削もサービスしよっかなあ。
みんな若い、心が純粋です。大人になって醜くなるのは避けて欲しいですよね。 鯖江を、福井をどうにかして住みやすい街にしたい、というそんな熱意に胸が打 たれましたね。
しかし、僕は、それらの若者に水を差す様に、「自分たちがどうしたいか、そ こを徹底的に掘り下げなさい。今、この地域のことなんか考えなくてもいい。そ のために議員や市長がいるんだから〜。君たちの活躍の出番は、これからだから、 もっとわがままになって自分の夢を実現してください」って伝えました。
しかし、地域を背負う、というのは、ビハインドですけれど逆に元気がでて くるんですね。若者が地域のために頑張る、こんな尊い姿はありませんね。ああ、 破綻の夕張、僕の故郷を思うと胸が痛みます。若い人に光を当てていくところに、 未来が開けてくるのでしょうか。
今回の座談会は、出水さんもどんまゐさんも福野さん、そして牧野市長もみん なブログで、その様子を書いているんです。出水さんは、駅前でへしこを買う僕 の写真をアップしていました。横から、それも屈んだところを写すから、頭の髪 が少し乱れてみえるじゃないですかね〜。さて、講演してブログを書く若い起業 家、これは新しい姿と思います。サイーバーエージェントの藤田さんは、鯖江出 身で、市長のブログにそういうPRが表示されていました。福野君やどんまゐさん の出会いも、昨年10月の福井新聞主催のフォーラムでの藤田さんを囲んでのパ ネル討論がきっかけだったようです。ネットワークを繋ぐ、藤田さんの存在は、 若者の希望となっているようでした。
さて、福井といえばカニ、福井はその越前カニの漁が本番を迎えていました。 鯖江にはついカニに釣られてやってきました。そこで食したのは、小ぶりのメス のせいこガニ、ルビー色した赤い内子に絡む味噌、ねっとりと濃厚で美味でした ね。左の爪の第1間接付近に黄色いタグが、越前の印という。
出水さんのお母さんが、僕にその土産を持たせてくれました。感謝です。その 出水さんには待望の赤ちゃんが〜来年はパパになってもっと踏ん張りましょう、 ね。