◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2006/07/26 http://dndi.jp/

My Favorite(お気に入り)

〜中村由利子さん、長谷川真理子さん、それにINSの皆さん〜

DND事務局の出口です。そっと夢の時へ〜。楽しげな語らいを周辺にふりま いているのですね、いつものように。そろそろ、お目覚めでしょうか。昨晩から 祈るような気持ちで、朝を迎えました。なにもかもうまくオペレートされている ことでしょう。久々に青空が広がって九州は梅雨が明けたそうです。


《中村由利子さんの癒しのコンサート》  お気に入りの曲は、癒しのピアニスト、中村由利子さんとトワエモアの白鳥英 美子さんの初のジョイントコンサート会場で購入したCD、中村由利子ソロベス ト「Dear Green Field」です。子供の頃遊んだ、陽だまりの公園、旅で出会 った風景、10年ぶりに再会した、学友の笑顔、忘れられない映画の一場面、気 がつくと、ふとその中で安らぐ自分がいる、そんな心の中のGreen Fieldから、 このメロディーが生まれた‐と、中村さんはそのタイトルの意味をそう綴ってい ました。


 中村さんのピアノに都留教博さんのバイオリンが重なる「Whispering Eye s」、中村さんのソロの「School Days」、甘美で心地いいその旋律を病床の恩 師に届けてあげられないものだろうか。東京・亀有のリリオホール。アンコール の拍手で再び、ステージに登場した中村さんらは、やっと緊張がほぐれたようで した。


 そのアンコール曲は、中村さんが作曲し、白鳥さんが詞を付けた、その日の演 奏が初披露だったようです。曲名が「Heat」、急いで書き留めたから、少し 間違っているかもしれません。その歌詞の2番〜。


〜例えば 風に吹き流されて 見知らぬ遠くに迷い込んでも
 あなたの足元に ひと筋の光を照らすように 私がそばにいる


 元気だって、孤独な伴侶の行く末を案じると、悲しみが誘う。お気に入りの曲 を贈りたいその人は、笑顔で付き添って献身的にお世話しているに違いない。


《長谷川真理子さんの見識》


 新聞のコラムから、すっごく感心した話題をひとつ。


 タンザニアでチンパンジー、英ケンブリッジ大学でシカの生態や繁殖などを研 究し、わが国の動物行動学の第一人者で総合研究大学院大学教授の長谷川真理子 さんが、産経新聞朝刊2面のインタビュー欄「話の肖像画」で、研究者としての 半生を振り返りながら、動物研究の知見から人間という傲慢でやっかいな動物の 生態に鋭く迫っていました。今月14日から連続6回のシリーズでした。第1回の その冒頭を紹介しましょう。


 ―村上ファンドやライブドア事件で、"ひとり勝ち"した人が自滅しましたが、 生物学的には必然とか。


 長谷川 ええ。ああいう他者を食い物にするだけでやっていくというのは、最 初は繁栄するのですが、やがてだめになるんです。コンピューターでシミュレー ションすると、"何か得たら相手にもお返しして‥"という集団が一番あとまで残 るんです。


―どうしてですか。
 長谷川 他者をだましたり裏切って食い物にして自分の利益をどんどん増やし ていく者は、そういう者同士でだまし合って自滅してしまうのです。一方、もら って、お返しして‥とお互いにやっている集団は、双方がプラスになっているの でどんどん繁栄します。


 うむ〜。進化生物学者の見識に驚嘆です。こぼれるように伝わってくる数々の 薀蓄は、生存から繁栄、あるいは滅亡へと突き進む、哀れな人間存在の不条理を 見抜きながら、現代社会の病理をも浮き彫りにしているようでした。


もう少し、紹介しましょう。


―ところで「人間」とは?
長谷川  人間は「愛する動物」だと思います。人間は脳が大きい。こんな大き な脳を育て上げるのはとても大変です。その産物として、人間は複雑なことがで きるようになるのだけれど、その前段階として、子育てには大変なエネルギーが 必要。そこにコミットさせるのが「愛情」です。子供の方も、子育てへの努力を 親から確実に引き出さねば育たないし、双方の密接な愛情が不可欠です。人間ほ ど感情が細やかな生物はいないと思います。


   長谷川さんの、気負いのない語り、それに、身近で切実な現実問題をもふわっ と包み込んで、その処方を明確に示してくれていました。写真から華奢な印象を 受けますが、実に軸のぶれない凄い人のようです。このコラムでファンになって しまいました。


 有能なエリートや起業家が拝金主義に躓いて舞台から退場する道筋や、どんな 理由があるにせよ、橋から娘を落として殺す母親の事情も、長谷川さんの根源的 な動物行動学からみれば、読み解ける容易な問題なのかもしれない。


《パワフルな魅惑の「 "06年度INSin東京・墨田」》
 もう一点、元気が出るネットワークの潜入ルポです。
 さ〜て、いつでも、どこでもみんな懸命です。頑張っているから、もっともっ と良くなる、と思います。それは、まもなく確信に。先週の22日(土)は、隅 田川沿いにある東京・墨田区役所の「すみだリバーサイドホール」へ足を運んで いました。産学官連携ネットワークのモデルとなる岩手ネットワークシステム (INS)の恒例の東京イベント「 "06年度INSin東京・墨田」が開催され ていました。


 (財)大阪市都市型産業振興センター扇町インキュベーションプラザ所長で、 岩手をお手本に関西ネットワークシステム(KNS)を立ち上げている堂野智史 さんからの熱烈なお誘いがあったからでした。その堂野さんを紹介してくれたの が、コーディネーターで福井・鯖江で起業家支援のLLC「鯖乃家合同会社」の 設立に奔走する出水孝明さんでした。


 その前夜、出水さんがDNDオフィスに顔をみせて、そこに堂野さん、そして ふらっと現れた香川大学発IT系ベンチャーの「スペースタグ」取締役の水野喜 永さんが加わって意気投合していました。水野さんは、翌日のINSのイベント に僕と一緒でした。みんな若い。


 テーマは、「これからの起業者・後継者育成〜地域における人財をどう育成す るか〜」。岩手大学工学部教授でINS運営委員長、おおらかな風格の大石好行 さん、やはり岩手大学工学部教授でINS事務局長の小川智さん、また岩手大学 の地域連携推進センター長特別補佐で国際連携・技術移転室長の教授、要的存在 の小野寺純治さん、実績を誇るもはや伝説のコーディネーターで花巻市起業化支 援センターの看板統括、佐藤利雄さんら、現場主義で実力派の重鎮が顔を揃えて いました。


 以前も岩手県民の人柄に触れましたが、その印象をさらに鮮明にさせてくれま した。初対面ながら、相手を包み込むような優しさを感じました。居心地がとっ てもいい。気配りを随所にみせながら、それぞれが200人近い参加者の表に裏に 回って声を張り上げていました。こういう率先して一歩前にでる、そんな姿勢が INSの強さの秘訣なのかもしれません。でも、佐藤さんの話を聞いていると、 実は、いいモノとそうでないモノを峻別する、そういう動物的な勘も冴えている、 と感じました。


 さて、そのINS、その歴史は古く、岩手大学工学部を中心として岩手県の科 学技術、研究開発に関わる産官学、それに民を加えたネットワーク組織で、昭和 62年ごろから活動を開始し、平成4年に会則を決めて正式な会として発足しまし た。会員数は、1000人を突破し、そのうち法人会員数が134社と活発です。京都 で開催の産学官連携推進会議で産学官連携の模範例として表彰され、経済産業省 が推進する産業クラスターの成功事例としても評価されています。産学官連携の 関係者で、INSを知らない人は少ない。INS、その文字をひねって、「い (I)つもの(N)んで騒(S)ぐ会」?と思っていたら、それは表向きで、狙 いは、「いつかノーベル賞をさらう会」のようです。洒落が効いていて、いい感 じです。


 そのINS、信頼のコミュニティーを形成して地域活性化に大きな成果をあげ ている、とは聞いていましたが、その岩手のネットワークがいま全国に増殖中で、 その岩手モデルが続々と産声をあげていました。


 関西に飛び火してKNSが生まれ、その中心者の一人、堂野さんはINSの関 西支部も兼ねながら、花巻の佐藤さんを師匠と呼んではばからない。強い絆で結 ばれているんです。


 すると、茨城県のひたちなか市に「なかネットワークシステム」(NNS)  がこの4月に発足し、挨拶に立った会長役の茨城高専電子制御工学科教授の金子 紀夫さん、ユーモアを交えながらモノづくりを基本にして「エネルギッシュに走 りながら考える」とNNSの取り組みを紹介していました。12月の7、8日の 両日は、東京の大田区産業プラザを会場に(財)日立地区産業支援センターが中 心となって「ひたちテクノフェアin東京2006」を開催しま〜す、と地元の地域全 体のPRも忘れませんでした。DNDでも告知しますね。


 今回会場を提供し一連のイベント開催の世話役を買ってでていた墨田区役所地 域振興部商工担当部長の小川幸男さんらは、墨田区の中小企業経営者を育成する 「すみだフロンティア塾」を立ち上げ、それらネットワークと同一の歩みを始め ているようでした。墨田区が風力、太陽光、太陽熱の自然エネルギーを利用した 「マルチマイクロ発電機」(MMD)を早稲田大学との産学官連携事業のひとつ として開発し、区内の公園などに設置し、新たな最先端技術活用のマーケットを うかがっていました。企業経営革新支援事業と称した中小企業の活性化策にも本 腰を入れていました。西の東大阪に呼応して、モノづくりのメッカ・東の東東京 と目指しています。頑張れ!って思います。休日なのに船やら、酒やら、サンド イッチやら‥ゴミの片づけまでやりきっていました。偉い!って関心しました。


 ちょっと触れると、岩手大学は、日本初の金型・鋳造工学専攻をこの4月に開 設していました。そのパンフレット、「型にハマってみないか?」とイメージキ ャラのがんちゃんが声を上げていました。花巻市起業化支援センターの佐藤さん は、起業家大学で900人受講し90人が起業という活発な成果を強調しながら、 岩手県花巻地方振興局との連携もスムースで新たに花巻信用金庫が参画して、 「花巻ブランド」構想を粛々と進めており、岩手大学の教官を企業に派遣する 「夢・企業家塾」の活動も順調、という紹介がありました。しかし、その一連の ネーミングにはそそられますね。10月14、15日の両日は、花巻市総合体育 館で、「テクノフェアはなまき2006」が開かれます。新・花巻発ひとづくりもの づくり〜うむ、これも上手い!


 そうそう、肝心の堂野さん、彼は「異なる人同士がフラットな関係で知り合う 場を提供し、そこで視野を広げ競い、己を磨くところに人が育つ」と現場で得た 確信に近い持論を展開、「KNSは信頼を作り出せる場、コミュニティーを目指 している」と短い時間内に要点をしっかり抑えていました。ここは、入会がちょ っと厳しいぞ〜。僕ももう一回、会合に参加して資格をとって、それでさらに二 人の紹介者が必要です。もう少し‥。


 で、人から人へ。神戸市須磨区役所の地域活動係長の平山知明さんを紹介して くれました。精悍でさっぱり、生き生きして気分がいい。で、11月25日(土)開 催の神戸でのKNSのイベントに協力することになりました。動きが早い、無駄 がない。このスピード感が勢いにつながるんでしょうね。さっそく平山さんから メールが入っていました。いやあ、もっと書きたいけれど、紙面が‥。


 でも、書いちゃいましょう。九州で梅雨が明けたし‥。


 北は北海道江別市、南は北九州市、富山県の高岡市、島根県の松江市などから 参加していたキャリアな女性陣も素敵でした。三鷹市の図書館館長になられた関 幸子さんもすっかりみなさんと溶け込んでいらっしゃいました。名刺に、「もっ と図書館をビジネス支援に‥」のメッセージが刷り込まれていました。ご活躍な んですね。


 ふ〜む、なんか目眩がしそうでしょう。そして奥が深い。ネットワークがコミ ュニティーに転換し、それぞれが、それぞれに重なる〜。その全国縦横に張り巡 らされた健全な地域起しのネットワーク、そこで活躍する人のなんと元気なこと、 その種明かしは、こんなところにありました。



《地域おこしの伝道師、関満博教授の希望と勇気》
 「人びと」と「その思い」を繋いで、そこに「希望と勇気」を吹き込む地域デ ザインの仕掛け人、一橋大学大学院商学研究科の教授で、行動する経済学者、関 満博さん。野太く響く声、飾らない普段着のスタイル、そして一環して全国の地 域の、中小企業の、その経営と後継者育成の現場から目をそらさない姿勢を貫い ているようです。地域の人材発掘への功績は大きいと、指摘する人もいます。I NSの応援団長として多くのファンに慕われているようです。


 さて、その関さんが、この日、富山県立大学特別研究員の澤泉重一さんのSer endipityに関する学識的な講演に続いて、「現場主義からの後継者育成」と題し て何をどう語ったか、そこは、まあ、ジャーナリストの看板を一方で掲げる立場 の僕としては、宝の山でした。少ない紙面では紹介しきれませんので、別の機会 にとっておきましょう。一点、関さんのスピーチの中で、関さんが関わっている 地域を紹介していました。岩手・北上市、新潟・柏崎市、東京・墨田区、富山・ 高岡市、島根・東出雲市、岡山・津山市、瀬戸内市、玉野市、それに中小企業経 営者育成のりそな総合研究所との連携事業、少人数の人材育成に専心されていま した。で、それらがまたシナジー効果を生んで、INSなどとも連動して、地域 産業育成の関ワールドを築いているようです。


 最近の共著のひとつ「地域ブランドと産業振興」(新評論)を手にとって、静 かに読みながら、関満博研究に本腰を入れるつもりです〜。関ゼミの学生も闊達 でした。


 隅田川沿いにみんなで歩いて、どんどん進んだ先が、両国の国技館前の水辺ラ インの船着場でした。あ〜なんと、両国橋を渡るとわがDNDの秘密基地です。 で、会費を払って乗船、一行140人規模の貸切船は、両国から隅田川を上ってお 台場へ、そこからぐるっと周遊して戻る‐という2時間コース、下船したらちゃ んこ鍋が用意されていました。乾杯して、にわかに会話が弾んでヒートアップ、 それぞれに意気投合していました。


 元気に、励ましあって、地域を伝え、自分を語る‥噂に聞いていましたが、み んなエネルギッシュでしたね。参加者の顔ぶれには、内閣府や経済産業省のキャ リアの方々も普段着で参加していました。親しくなったのは、宇都宮大学客員教 授の市田侑三さん、不思議な人です。奥様のご実家が川治温泉のホテル経営、宇 都宮にも都市ホテルを構え、六本木には焼き鳥店も経営していました。個人的な ことですが産経新聞記者の振り出しの赴任地が日光エリア、当時、川治プリンス ホテルの大火災があったり、川治温泉振興の霧の彫刻と川治太鼓のイベントがあ ったりと、随分取材に走り回っていましたが、市田さんとは、その時の同じ話題 で盛り上がっていました。ひょっとして、再会?かも。


 人の縁は不思議です。福井の出水さんを鯖江の商工会議所に引っ張った当時の 専務理事が、初対面で僕が出水さんに紹介した水野さんの叔父だったり‥といや あ、世間は案外狭いものなんですね。


 明日もきっと天気だと思います。あ〜大切な先生の手術は無事、終えたことで しょう。このメルマガを打ちながら、一時も先生のことが頭から離れませんでし た。


 追伸:DND企画の「もっと!関西」は本日、15回の連載で千秋楽を迎えまし た。近畿経済局地域部長の山城宗久さん、ありがとうございました。なお、経済 産業省大臣官房審議官の石黒憲彦さんが担当する好評の「志本主義のススメ」は 今回で60回、次回23日以降は、これまでの毎週から隔週になりますのでよろしく お願いします。



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