◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2006/07/05 http://dndi.jp/

ニュース速報の現場から

DND事務局の出口です。万が一のその事態に備えて、というか、偶然なのです が、案外、そういう突発的緊急時の初動は、勘が冴えてその一歩の踏み出しが、 いつも早い。騒ぎがどんなに大きくても自然と気が鎮まって、次ぎの妙手、その 智恵がグルグル回るから、自分でいうのもなんですが、昔からそれなりに使い勝 手がいい。


 いつも深夜帰りなのにその日に限って自宅で、あの9・11同時テロのリアル な映像をテレビで見て、その瞬間、編集局デスクに電話を入れ、関係の専務、常 務、役員、局長、それに社長の自宅まで連絡をし、部下を全員招集し、その足で 会社に飛び、インターネットでの情報配信を明け方まで没頭していました。まる でひとり舞台、ジャーナリストなら、当然の事なのですが、しかし、その事件の 意味がわからない幹部も少なくない。


 「(原稿の)締め切り、終わっているじゃない」って、顔を赤くして渋々社に 上がった役員が、そんな場面で新人の部下に酒を買いに走らせるから、「そんな 場合じゃ、ないべや、目を覚ましてください」と。すると、無言の引きつった顔 で、僕を睨んでいました。しょうがないよね、今、戦争が始まっているんですか ら‥。緊急時には、その人の本質が意外と、透けて見えてくるから面白いですよ。 さて、今回は、その現場でどんなことが起こっていたでしょうか。


 イントロが長くなって、余計なことまで書いてしまいましたが、本題は、北朝 鮮のミサイル発射のニュース速報のテロップでした。メルマガ出稿の前夜は、こ んなのでも作業が深夜に及び、翌朝はゆっくり時間を取るのが日常になっていま す。もう4年近く、こんな生活なのですが、W杯決勝トーナメント準決勝、イタ リア対ドイツの中継を見ようと早めの就寝、目覚ましを4時にセットして熟睡、 そして定刻にすっきり起きて、茶の間のテレビをNHK総合に合わせて観戦して前 半が0対0で終了し、休憩の後、後半に入ってどのくらいたっただろうか、突然 「ニュース速報」のテロップが入り、地震速報?大雨警報?と何気にみていたら、 「北朝鮮ミサイル発射」、「日本海に着弾確認」の一報が流れ、続いて2発目が 北海道稚内の西方500キロ付近に着弾という。


 NHKはサッカーのライブが災いして、番組編成の切り換えに戸惑いが感じられ ましたね。直ぐに、速報体勢に入れませんでした。民放各局は、早朝の情報番組 をいち早くミサイル発射事件の特番に切り替えて、刻々と動く緊迫した状況を伝 えていました。


 5発目を確認、いや未確認ですが6発目も発射された、と。TBS系のみのもん たさん司会の朝ズバッ!は、ゲストコメンテーターの毎日新聞特別編集員の岸井 成格さんらが、北朝鮮は沿岸にミサイルを装備してその数、180基あると推測さ れていますから、日本の水域内に着弾すれば、単なる脅しではなくなる、という 意味のコメントを伝え、いつになく厳しい表情でした。


 みのさんは、怒り爆発。しかし、これってミサイルを打ち込まれて黙って見て いるしか手がないんですかね、万が一、これで被害が出たらどうするの?と表情 を変えていました。民放は各局一斉に特別番組に対応していました。官邸が動き、 防衛庁が情報を集めるなど、緊急の番組づくりにテンヤワンヤの感じでした。政 府首脳から北朝鮮へのあらゆる制裁措置を取る、といってもミサイル発射はまだ 続いていて、みのさんの指摘の通り、いまミサイルが日本に向けて飛んできてい るのに、それが第1発目の3時30分から6発目の8時20分に到る、5時間近い間、日 本は無抵抗のまま、これが国際的な良識ある判断とはいえ、北朝鮮のミサイル発 射の脅威をテレビでただ傍観するしか、何もできない状態だったということは、 いささか腑におちない。


 そんなバカな〜。ここで怒っては北朝鮮の挑発に乗ってしまうだけだから、冷 静にしなければ、というコメントもありましたが、しかし、無防備なままの怖い 現実を実感してしまったことは否めない。


 北海道の利尻島、着弾した時間帯には、280隻の漁船が沿岸でコンブ漁を営ん でおり、青森の日本海付近ではイカ釣り漁船50隻がいたというから、ホント、被 弾という万が一の不安が拭い去れません。母方の実家が、北海道・小樽、水族館 や海水浴場があり、にしん御殿を見上げる、小さな漁村ですが、いまなお親戚の 多くが漁業に従事していることもあって切実で、他人事ではない。


 すぐに攻撃準備という短絡的な考えも問題だが、しかし少なくても高度なレー ダーなんか駆使してミサイルの動きは掴んでくださいな、せめて沿岸周辺に警備 態勢を敷いて住民の不安を和らげて欲しい、自衛隊25万人のうち、なんらかの動 きを見せてもいいじゃないか、と思います。だから、米国がテポドン発射を目論 んで、なんらかの取引材料の計略がその裏にある、というそれら、一部軍事専門 家の論評がまことしやかに流れるのかもしれません。


 それで、初動の対応、個人的には、この緊迫をメルマガで伝える、まずそうい うことでしょうか。初めて経験する、こんな国難を前に何をすればいいのか、い ざとなれば、実際、手も足もでませんし、頭も回りません。こんな風なミサイル 攻撃の不安にさらされながら、普通の顔で、W杯の観戦というのも間が抜けた話 しです。


 といいつつも、チャンネルをNHKに戻すと、白いユニフォームのドイツ選手ら がピッチでヒザを抱えてうなだれていました。イタリアが延長線の後半に先制し、 ロスタイム終了の間際に留めのゴールを決め2−0でドイツを突き放し、決勝進 出を決めた、らしい。肝心の決定的な場面を見落としていました。あ〜あ、テポ ドンのニャロメ、北朝鮮、悪い奴だ、許せん!


 ニュース速報といえば、今週こんなこともありました〜。ミサイル発射の緊急 事態が襲わなかったら、実は、ここから書き出すつもりでした。


 「脅されて、不倫写真との引き換えに1000万円持参すると、3000万円に要求額 を吊り上げてきたから、これでは何度も相手から脅される、と思い、ついカッ〜 となって刺してしまった」〜この容疑者のこんな自供に、その若い検事は、大き な目を見開いて相手をジッと見つめたまま、それでもまだ納得した様子はない。 う〜む、と、しばし考えあぐねて、で、ひとつわかんないだけど、なんでカッと なったの?と、その核心を突く〜。


 穏やかな海辺が続く山口県の小さな村、そこで起きた殺人事件の容疑者が、村 人の信頼を集める地元の有力企業の専務、中井貴一さん扮する容疑者の滝田だっ たから、ひと騒動となっていました。あっさり容疑を認めるのですが、その背景 や動機には口を閉ざしたままでした。


 慎重な取調べが続き、その容疑者の心の奥に潜む、重く閉ざした扉を徐々に開 いていく、いやあ、その検事は、その真実の解明に少しの妥協も許さない。そこ が、また魅力なんです。


 毎回30%を越える人気ドラマ「HERO」。月9(ゲック)、この言葉を知ってい たらかなりの通です。月曜夜9時枠のフジテレビ系の番組で、毎週クギ付けだっ た5年前の同名の連続ドラマを、今回138分に拡大したスペシャル版が3日の月曜 日に放映されました。その視聴率30.9%とスポーツ中継を除けば、今年の最高視 聴率となったようです。確かに面白い。事件の仕立てやストーリーの構成もよく、 出演する役者の顔ぶれも華やかで、人数も半端じゃない。


 主演はお馴染みSMAPの木村拓哉さん、渋みを増して異端の敏腕検事、久利生の 役柄をナチュラルに、実にさらりと演じていました。番組のキャッチコピーが 「眼差しは、真実を見るためにある」。時代はまさにヒルズ族への強制捜査に踏 み込んだ東京地検の動きとややだぶって、なにやら制作がフジテレビというのも 意味深で、巨悪を断つ正義の人に最大のエールを送った感じがしてきます。まあ、 「面白ければ、フジテレビです」から。


 う〜む。「あるよ!」のマスターは健在で笑えたし、タバコの吸殻を海辺に捨 てる行為を許せず殺意に走る、というその動機にも説得力がありました。その胸 の内を絞りだすように吐露する容疑者役の中井さん、その語りと表情、これまた 秀逸でしたね。


 泣かせるのは、キムタク演じる久利生検事が堅物の事務官役の堤真一さんに、 海辺で生い立ちを語る場面でした。「俺、中学しかでてねーよ」と語り、それで 検事になった理由を、不良だった中学の頃、犯罪に巻き込まれて捕まるのだが、 その担当の検事の人柄、偏見で人間を判断しない、その対応に触れて、「俺もあ のような検事になりたい」と決意し、高卒並の学力を認定し各種採用試験が受け られる大検を通って、司法試験に合格する、という設定でした。


 その番組のスタート直後、テレビ画面に流れた、そのニュース速報のテロップ が、もうひとりのHERO 、サッカーの日本代表、中田英寿選手が現役を引退する ‐というものでした。ふたつのニュース速報、それをテレビで同時に見ているの ですから、テレビっ子の本領発揮というところでしょうか。


 中田英寿さん、29歳。W杯1次リーグ予選のブラジル戦で敗退した後の、ひとり ピッチ中央で、仰向けのまま動こうとしない孤独な姿が、いまだ目に焼きついて います。あれはW杯の終焉と同時に、自らのサッカー人生にピリオドを打つ、そ の選手生活の最後の姿だったのかもしれません。


 昨日4日の各紙朝刊は、破格の1面トップ扱いで、朝日は「個」貫いた時代の 先駆者‐との見出しで、「中田英寿はプロ化とW杯出場で飛躍的に注目度が上が った90年代以降の日本のサッカーを象徴する選手だった」と称え、「これだけ大 きな存在が欠けた時、どれだけの空虚が残るか。本当にその意味がわかるまでに は、少し時間がかかるかもしれない」と記者の忠鉢信一さんは書いていました。


 彼の引退声明を出したHP「nakata.net」は、空前のヒット数らしい。タイトル が、「人生とは旅であり、旅とは人生である」。人生を旅に譬えて、「みんなの 声を胸に、誇りを失わずに生きていく。そう思えばこそ、この先の新たな旅でど んな困難があろうと乗り越えていけると信じられる。新しい旅はこれから始まる 〜」と、新たな一歩を踏み出す勇気を示しながら、ファンへの感謝の気持ちを伝 えていました。


 最近、露出の多い中田さんが登場するキャノンのデジカメ「IXY」のCM、その コピーは、「広がる、自由へ。」でした。「〜旅は続いている。道は待っている。 さあ、いこう。次へと、走りだそう。走り始めたあの日のように。もっと鮮やか な青空の下で、もっと自由な自分に、出逢うために。」と次への一歩を予感させ ていましたね。


 そしてスポーツ新聞は、将来はビジネス界の司令塔として、電撃的な第2の人 生は、将来は公認会計士になることを夢に描いており、MBA(経営学修士)取得 ため、米国大学の留学に踏み出す考えがあることを伝えていました。大学への進 学は、ご本人がいろんな媒体で何度か口にしている事実らしいですね。国際的な 一流のアスリートが、別の分野で再び自らのキャリアをデザインする、これも新 しい生き方かもしれません。


 もう一度、大学へ、大学院へ。そういう第2の人生を志向し、自らのキャリア アップの動きが加速し、大学側も一応に社会人やシニアの受け入れを積極的に捉 え、懇切丁寧な対応を心がけているようです。僕も〜大学院へ入って、メディア 論でもやってみようかなあ、先週のメルマガでは、医学部でもいきたいなあ〜っ て書きましたが、ともかく知識の欲求というか、もう一度、体系的にしっかり学 んでみたい、と思うのは、そんな時代の欲求なのでしょうか。


 東京・首都圏、それを東西に貫くJR中央線沿いは、数多くの大学が集積してい ます。そのひとつ、その中央から西方、東京農工大学は、東小金井駅からすぐの ところにありました。武蔵野の面影を残す、静寂で広大な小金井キャンパス、う っそうたるケヤキ並木が続いていました。そこで、先日1日の土曜の午後、古川 勇二教授を中心とした農工大専門職大学院(MOT)の第1回入試説明会に足を運ん でみました。どんな社会人が、どのような教授陣に、何を学ぶのか?その触りを 掴んでみたい、と思って、古川先生には内緒で、こっそり潜入していました。


 8月下旬の第1回募集から、11月下旬、翌年1月下旬と3回に分けて募集し、 募集人員はそれぞれ、10人から15人、トータルで50人ほどになる、という。正門 付近の11号館5階は多目的室。見渡すと、ざっと40人以上の入学希望者が席を埋 め、熱心にメモを取っていました。社会人の姿も多く見受けられました。


 何を専攻するか、どういう先生についたらいいか、入学前に同大学院のMOT事 務局に問い合わせれば、いつでもフェイスTOフェイスでの対応が可能で、入学前 後から管理アドバイザーが個別の希望を聞き入れ、指導教官を紹介する、入学後、 教官が目指す研究と合わない場合には、途中からでも別の教官を選択できるなど、 オーダーメードのきめ細かいアドバイスを心がけているようでした。企業や官公 庁、独立行政法人などで3年以上の実務経験があり、大学時代の成績や勤務先の 上司の推薦などによっては、比較的有利な社会人特別選抜の出願資格も与えられ る、という。


 一応、僕もここの客員教授を仰せつかっておりますが、講義のお誘いを受けま したので、古川さんに「学生は好きですから、積極的に授業を受け持ちます」と 返すと、古川さんから「学生が好きというより、学生から好かれなければなりま せんよ」と打ち返されました。なるほどねぇ〜ここにユーザビリティの本質が見 え隠れしているんだ、とMOTの奥の深さを再認識いたしました。


 こんな質問がありました、


 授業が夕刻18時15分の第1回の講義に間に合わないがどうしたらいいか?(e ラーニングでも可能、授業は選択できるし、2年で習得すればいい)、会社での 事故を経験し、それのリスクマネージメントを学ぶつもりで希望しているが、ど の先生に付いたらいいか?(個別に納得いくまで相談に応じます)、倍率はどの くらいか(1・3から1・4程度)、1次募集から3次募集まであるが何回も受 けられるか?(何回でも受けられます)などなど。


 説明会の司会は、「安全とリスク」でこの日、模擬講義をされた教授の中村昌 允さん、民間からの転身で、「これまで現場で培ってきた知見、ノウハウのすべ てを次世代の学生らに伝えたい、そんな思いです」と迸るような熱意を感じさせ ていました。同僚の教授で、大手企業で知財戦略を長年担当してきた鶴見隆さん の知財戦略、マネージメントに関する現実的な講義も実にわかりやすい。しばし、 学生気分に浸ってメモをとっていました。こういう気持ちのいい実力派の教授な ら、頼もしいし、何でも相談できそうです。


 同大学院技術経営研究科は、先端機械産業分野、情報産業分野、バイオ産業分 野、それに環境・材料の4つの分野にまたがる技術リスクマネージメントを専攻 とし、経営戦略やプロジェクト研究において、技術開発学や事業化プロセス学、 マーケティング戦略論、ベンチャービジネス戦略論、企業組織論、経営戦略論、 そして、技術経営のフィールドスタディー、ケーススタディー、それにビジネス プランの構築など専門的で実践的なテーマが目白押しでした。


 いやあ、流石、技術リスクマネージメントの専攻では、わが国一番の定評通り の充実のプログラムが用意されており、国立大学法人だから年間の授業料も比較 的安価、社会人のために小金井キャンパスのほか、都心のJR田町駅から至近のキ ャンパス・イノベーション・センター東京(CIC)の中に教室も用意し、小金井、 田町のいずれでも同等のスキルを磨くことが可能という。


 eラーニングによる教育システムも完備し、受講できなかった講義を自宅やオ フィス、出張先でも学ぶことができるし、そのためか、16年度の開講で、来年度 の入学で3回目、年々応募が増え、特に社会人が6対4の割合で増えてきている、 という。


 講師には、ゴーン会長の下で改革の現場を指揮した日産自動車の副会長、伊佐 山建志氏、厚生年金基金理事長の加藤丈夫氏、日刊工業新聞元社長の溝口勲夫氏 ら特別招聘の客員教授から、大手の民間で財務や知財戦略を手がけてきた実務経 験が豊富な教授陣をずらっと揃えていました。


 修業年限2年で、学位取得は、技術経営修士、技術経営の知識を兼ね備えた経 営人材、コンサル、知財管理、経営企画などのエキスパートを養成していく、と いう。


 MOT講座は全国で95講座に増え、文部科学省が認定した技術経営研究科は、ス タートが早かった芝浦工業大学を始め、東京農工大学、早稲田大学、東京工業大 学、九州大学など10大学を数えています。経済産業省でも技術経営の人材輩出 に年間10000人を目標に取り組みを進めてきています。MOT人材の輩出は、い ま最もホットでキャリアな専門職のようです。


 どうぞ、彼方ももう一度、自らのキャリアを描いてみませんか。きっと、そこ から新たなストーリーが生まれると思います。舞い上がれ空高く、次は、あなた がHEROです。



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