◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2006/4/12 http://dndi.jp/

DNDリニュアル宣言

DND事務局の出口です。都心のビル群は、遠く煙のように霞んで、背景に白 い幕を垂らしたようです。静寂な細雨。その冷気と露で、ベランダに置いた鉢植 えのクレマチスが初開花し、ラベンダーブルーに可憐な弁がフリルのように揺ら いでいます。その種名、ウィル・グッドウイン、人名としたら、なんて素敵な命 名なのでしょう。


 春4月。DNDリニュアル宣言。一押しは、連載企画の執筆陣に加わった、国 立大学法人東京農工大学大学院技術経営研究科長で教授の古川勇二さんを紹介し ないわけにはいきません。


 いやあ、その華麗で濃密な経歴と職歴、それに国内外の活動、文部科学省、経 済産業省、内閣府、それらの関連機関での各種委員会は数知れず、精密工学会会 長や日本学術会議会員、産業クラスターのお手本とされる(社)首都圏産業活性 化協会(TAMA協会)会長等、その要職での活躍も光ります。


 そんな大きな要職をいくつも兼務しながら、さらに前向きに八面六臂の活躍を 続ける、古川さんは、ご存知の通り、DND登録8000人目の記念のユーザーで、 昨年秋のイノベーション・ジャパンで開催の東京MOT6大学連合のシンポ会場 で初めて挨拶し、以来、個人的なお付き合いをさせていただいていました。とっ ても気さくで偉ぶったところが微塵もない、そんな周辺に気を遣わせない人柄が 内外の評判となっているのかもしれません。


 で、連載のテーマは、ミスターMOTにふさわしく、ご専門の技術経営(MO T)をメーンに据えていらっしゃいます。タイトルの決定にはあれこれ、悩んで 熟慮されていました。


 「僕も、お堅くは『技術経営立国論』と行きたかったのですが、これは重い。 『技術経営立国あれこれ』ですと、ある人の論調になりかねない。『技術経営立 国への戦略』なら、そんなこと書ききれないし、まあ、『技術経営立国への指 標』としましょう」という具合でした。


 本日は、その「技術経営立国への指標」の第1回は、「世界の技術経営プログ ラム」の序章、「テクノナショナリズムの時代」を17世紀の産業革命前夜から書 き下ろし、現下の地球環境保護時代の陰に「日本の一人勝ちに過ぎると、またも やテクノナショナリズムが台頭しかねない」と、学者としての見識の一端を披瀝 していました。今後展開する、本の見出しのような項目の一部が届いていて、ワ クワクするような構成になっております。これは、「DND技術経営講座」の趣 です。さて、いよいよ、「古川講座」の開講です。


 先輩格の経済産業省大臣官房総務課長の石黒憲彦さんに続いて、経済産業省か ら産業技術環境局大学連携推進課長の中西宏典さんが「大学発ベンチャーの光と 影」。光が強くあたれば、影はますます濃くなるのは道理です。大学発ベンチ ャー1000社達成の局面を受けてさらに大学発ベンチャーの成長支援をけん引する 立場から、その現場の最前線の報告を期待しています。


 検索のグーグルからグーグルアラートの配信サービスで「大学発ベンチャー」 をチェックしていますが、日増しにそのニュースが増加傾向にあります。大学発 ベンチャーに関する記事、トピックスは、もう一般化しているようです。


 「原稿を‥」と数度、督促してしまいました。「いまもうすぐ‥」と中西さん、 いつもの明るい声、いやあ、なんとも不思議な魅力があります。締め切りぎりぎ りの出稿でしたから、この時点で、まだ原稿を見ていません。なんとリアルでス リリングな展開なのでしょう。記者時代の夕刊締め切りを思い起こします。「お 〜い、まだ〜あ」。原稿は、正午過ぎにちゃんと届きました。


 もう一人は、近畿経済産業局の地域経済部長、山城宗久さん。山城さんもお書 きになっていますが、本年1月下旬の福井大学主催のフォーラムで初対面してか ら、間髪入れずに「一本釣り」しました。


 テーマは、山城さん自身が申し入れた「もっと!関西」。関西発の情報が少な い、それなら関西、近畿、北陸、さらに西日本をカバーするような、そういうつ もりで「関西の魅力」を綴ってくれることになりました。もっと!は、技術経営 のMOTを引っ掛けています。


 中西さん、山城さん、セミナー&シンポに数多く登場する、全国行脚のお二人 が、ふだん何を考えているのか、スピーチと違ってどんな筆使いをされるのか、 そこがまた興味のあるところです。どうぞ、ご感想をお寄せください。


 さて、経済産業省の論客、石黒さんは昨年春から毎週1回のペースを維持して 今回で47回目、よく続いています。皆勤賞は天晴れです。DNDユーザーから 「大変な筆力ですね、毎回勉強させていただいています」、「霞ヶ関という一般 に馴染みの薄い世界の一端を垣間見る思いで楽しみにしています」という声が届 いております。まるで「石黒講座」で、個人的に繰り返し読んで勉強しています。


 で、今回は、「ケインズとシュンペーター」。このよく知られた二人の経済学 者を題材に、いや、それらを舞台回しに、筆者(石黒さん)が抱く幾つかの難題 を両学者の学説から探し出し、「現場主義の経済学」という金鉱を探し当てた感 動を伝えています。それが見事に「経済学入門」に昇華していました。


 しっかり「現場現物現実」を素直に見て、そこから得られた結果から「創造的 な理論を構築していく努力」に期待を寄せながら「経済学の新しい地平を拓く」 ための処方も明確に示していました。しかし、現実抜きの、学説に現実を重ね合 わせていく、そんな学問がいまだに生き延びている、というのも経済学らしい。 「これも『正統派』経済学に無知な輩ゆえの素人考えなのでしょうね」という微 妙な言い回しは、含蓄があります。そして、奥が深い。


 石黒さんなら、もっと高邁に経済学を語る資質を持ち合わせているハズなのに、 目線を低く下げて、自らの実感を素直に語っているところに好感がもてます。47 回目で、石黒さんは新境地を開いたようです。


 「講座」といえば、「産学連携講座〜現場からのレポート」を担当する東北大 学教授の原山優子さん。本日は、その14回目、「産学連携に新風を」というメッ セージ性の強い内容で、「そこでひしひしと感じるのが、社会変革の誘発要因た る『産学連携』の底力です」と明快です。


 「産学連携の底力」は、いい響きですから、流行るかもしれません。続いて、 原山さんは、「産学連携のインパクト」というキーワードも書き記しています。 なんという、言葉名人、造語の達人なのでしょうか。それだけで読みたくなって きませんか?つい先ごろ3月末にパリで開催された産学連携のミーティングで議 論されたキーイシューを5つ箇条書きで紹介しています。関係者必読です。


 そして、「イノベーティブな産学官連携を模索する場」として産学官連携推進 会議を活用し、裏技として「DNDの浸透力を活用してオンラインでアイディア を収集する手もある」と提案しつつ、「連携」を語る、フェイス・トゥ・フェイ スの場が欲しい、と訴えています。是非、是非、原山提案に賛成です。


 どうも自分でもストーリーが出来すぎているようで、ちょっと気が引けるので すが、毎年6月京都で開催の、その産学官連携推進会議は今年で5回を数えます。 全体を統括し、運営を担う内閣府大臣官房審議官、塩沢文朗さんの担当から連絡が入り、今年の開催が6月10日(土)、11日(日)と決まり、内外の有識者による特別講演、分科会、産学官連携の成功事例についての発表など従来の流れを踏襲しながら、一段と掘り下げた内容に進化しつつあるようです。詳細は、14日にDNDのトップページでご案内する予定です。


 が、少し、プログラムに触れますと、松田岩男・科学技術政策担当大臣、御手 洗冨士夫・日本経済団体連合会副会長、フランスから教育研究省局長、イギリス からケンブリッジ大学(人選中)を招く予定で、それぞれ講演します。注目は分 科会、ひとつ増えて5つ。全部は書き切れませんので、そのタイトルと座長(主 査)名、一部パネラーを紹介いたします。


 分科会1「国際的産学官連携の新展開」(主査・東京工業大学学長の相澤益男 さん)。解説によると、イノベーションの創出や科学技術システムの国際化の推 進に向け、国境を越えた産学官連携の新展開などの産学官連携の新フェーズの重 要問題について、今後の方向性を展望する‐という。そのテーマに産学官連携の 今後の方向性を、新たにグローバルで先端的な課題に総力を挙げよう‐と主張す る相澤学長の仕切りで、どんな課題が飛び出すか、楽しみです。パネラーの一人 にデフタ・パートナーズ会長の原丈人さんら5人。


 分科会2「地域・中小企業における産学官連携の新展開」(主査・東京農工大 学大学院技術経営研究科長、首都圏産業活性化協会会長の古川勇二さん)。なん と、ここにDNDデヴューの古川さん、地域クラスターにおける成果事例、地域 間の連携事例、国際的広がりを見せる産学官連携の注目すべき事例などいま、も っともホットな地域、重要な中小企業を題材にする、という。事例が満載ですか ら、是非、その紹介のレジメが欲しい。しかし、古川さんとは、内閣府も目が肥 えていらっしゃる‐と思っていましたら、「5回の開催のうち、通算4回目」(古 川さん)というから、もう重鎮です。パネラーも人気の堀場雅夫さん、松浦機械 製作所社長の松浦正則さん、小樽商科大学大学院のOBらで立ち上げた大学発ベ ンチャーのヒューマン・キャピタル・マネージメント社社長の土井尚人さんら5 人。


 分科会3「イノベーションの創出に向けた産学官連携の推進と人材の育成」 (主査・味の素顧問、山野井昭雄さん)。産学官連携に対応できる人材育成とイ ノベーション指向の研究人材の育成の課題と今後の方向性を探る‐という。パネ ラーに大阪大学大学院教授でアンジェスMG創業者の森下竜一さん、山口大学大 学院教授の三木俊克さんら6人。


 分科会4「知的財産を軸とする産学官連携の新展開」(主査・内閣官房知的財 産戦略推進事務局長の荒井寿光さん)。大学の知財戦略の方向性を探り、大学知 財本部とTLOの連携の在り方、それに5月にとりまとめ予定の知財専門調査会 提言の主な内容の取り組みなどについても議論するーという。荒井さんが座長に 回り、パネラーからどんな発言を引き出すか、ここが注目ですね。パネラーに九 州大学助教授の高田仁さんに加え、弁護士、弁理士ら6人。三菱電機会長の野間 口有さんの特別講演が予定されています。


 そして、5番目の分科会「データから見る産学官連携の現状と課題」は、主査 が、先ほど紹介しましたDND連載の原山優子さん。肩書きが、東北大学教授に 加えて、総合科学技術会議議員となっていました。忙しい方なのに、もう目一杯 の活躍ですね。この分科会は、従来とひと味違います。産学官連携に関する調査 研究の成果発表を通じ、問題点を探り、推進方策に関する共通理解を深め、関係 者間の交流促進を図る‐という。う〜む、これも原山さんの持論が見え隠れして きます。ここは、パネラーではなく、発表者という位置づけで、「産学連携の実 証分析」(仮題)を東京大学先端科学技術研究センター教授の馬場靖憲さん、 「産学技術移転の現状」(仮題)を東京大学国際・産学協同研究センター副セン ター長の渡部俊也さん、渡部さん、ちょっとポジションが変った?「産学連携に おけるハイテクベンチャーの重要性」を東京大学先端科学技術研究センター助教 授の元橋一之さん、「米国の多様な産学連携から学ぶべきこと」を富士通総研主 任研究員の西尾好司さん、あと一人は、「国立大学の産学連携と公的研究活動等 の産業への寄与」を文部科学省技術政策研究所の桑原輝隆さんら5人です。


 いやあ、ここは分科会というより、拡大パネルで別途、時間をずらして欲しか ったなあ。この5つの分科会、いずれもパラレルセッションですから、どうしよ うかな〜と迷う参加者がいるかもしれません。


 内容で選ぶか、座長やパネラーの顔で選ぶか、う〜む。荒井さんや原山さんに は個人的に義理があるし、相澤さんはJSTのジャーナルで新春座談会でお世話 になったし、この4月から僕が東京農工大学大学院技術経営研究科の客員教授を 拝命した関係で、古川先生はボス的存在でもあるし‥「困った、困った」と言い ながら、なんかウキウキしているのは、なぜでしょうか。


 「ウィル・グッドウイン」。この言葉の響きを感じて一歩前に進みましょう。 リニュアルしたサイトも、どうぞご欄ください。



記憶を記録に!DNDメディア塾
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