◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2006/3/08 http://dndi.jp/

冴え返りつつ、春なかば…

DND事務局の出口です。少しずつ、しっかりと花の季節に歩みを進めている ようです。ゆれる光の波に淡い陰影を刻む隅田川は、やや霞んで、春うらら。


 寒さが戻る、のを冴え返るという。行きつ戻りつは、経営も同じで前に三つ進 んで後に一つ下がる、前三後一のこの用心の譬えは、あるいは人生の極意かもし れません。立春が過ぎて寒が明けても油断がならないのは、しばしば寒波が訪れ るからです。


 この年度が押してくると、なんとなく落ち着かない。年の暮れより年度末の方 が慌しいはずなのに、周辺は一押しの企画、イベントが花盛りです。この猛烈な 勢いをなんと表現すればいいのでしょう。人が集結し、知を統合し、時の難題を 解決する、いくつものメッセージが発信されています。


 東京・大手町の経団連会館9階室町の間。昨日の午後は、そこで(社)先端技 術産業調査会の農業・ライフ部会研究会が始まろうとしていました。テーマが 「WTO・FTA交渉を生き抜く農政改革」で、農水省出身でOECD農業委員 会副議長のキャリアがある、(独)経済産業研究所上席研究員の山下一仁さんの 講演が予定されていました。


 その会場前のロビーにいると、なんと隣の部屋から飛び出してきたのが、秋葉 原の産学連携をプロデュースする、今や「アキバ仕掛け人」として評判の東京大 学先端科学技術研究センター特任教授の妹尾堅一郎さんでした。


 赤らんだ妹尾さんの魅力的な顔は、いつ、どこで、何回会っても、懐かしい感 じがしてきます。「ああ〜」といって、「なんで‥これで‥」と早口で言葉を交 わして、何をしゃべっているのか良く分からなくても(笑い)、気持ちが通じる から凄いもんです。


 「ちょっと待ってください」と言い残して、再び飛んで戻って、手にしていた 封筒の中味が、秋葉原クロスフィールド産学連携機能1周年記念と銘打った「ア キバテクノショーケース2006」の開催の案内状でした。本日8日から9日の両日、 アキバテクノクラブ20法人の活動紹介、大学発ベンチャー、つくば関連ベンチ ャー、それに本物のベンチャーキャピタリスト養成も手がける熱血の村口和孝さ ん率いる日本テクノロジーベンチャーパートナーズが登場する、パネル展示から プレゼン、オープンハウスと名付けたセミナーを連続開催しています。参加には ネットからの事前登録が必要です。


 妹尾さんの、この企画にかけるコンセプトがいい。合い言葉が「1年経ったよ! 全員集合!」。8時じゃないんだ〜。そそりますね。そして、各メンバーのネッ トワークをお互いに繋げあう場を設定した、といい、「シュレーグの第二法則」 を持ち出して、ネットワークの価値を高める方法は、ネットワークをお互いに結 ぶこと、つまり親同士のつきあいから家族ぐるみに発展させよう‐という狙いが あるようです。


 いやあ、確かな人的ネットワークがたった1年でうらやむほどのコミュニテ ィーを作り上げてしまった感じがします。やっぱ人かなあ、妹尾さん、なかなか、 やるもんだ〜。


 その東京大学先端研といえば、これまた明日9日、東京大学駒場リサーチキャ ンパスの総合研究実験棟などを会場に、「第三回先端研フォーラム」を開催しま す。


 所長の橋本和仁さんによると、2001年度から取組んできた戦略的研究拠点育成 事業の「人間と社会へ向かう先端科学技術オープンラボ」プロジェクトがこの3 月で完了、そのミッションの実現に邁進し、断行したシステム改革の成果などを シンポジウムやパネル展示などで紹介し、今後の課題や期待について議論を深め ていく、という。


 より開かれた大学、より流動性の高い組織への転換、全国に先駆けて特任教員 制度の導入、国内外から優秀な人材招聘の門戸を開いた‐という功績は大きく、 さすが先端研といわれる所以でもあるようです。


 しっかりした先端研の女性の広報担当から、開催案内と一緒に贈呈された「挑 戦続く東大先端研」(宮本喜一著、日経BP社)。帯に「一流の研究者はなぜ集結 するのか。法人化後の国立大は追いつけるか」とあり、そして大きく「役者はそ ろった!」の文字。


 名古屋工業大学の前学長の柳田博明さんはここの2代目のセンター長(現所 長)でした。前センター長で画期的な非同期プロセッサ研究の南谷崇教授、知的 財産法の玉井克哉教授、このお二人の知的財産の権利化をめぐるやり取りは、こ の本の冒頭に面白いエピソードとして紹介されていました。


 シンポジウムには、日本学術会議会長の黒川清さんが先端研の客員教授という 立場で講演をされるほか、多彩な顔ぶれのパネル討論が予定されています。
http://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/ja/research/forum/003/symposium/


 1987年の設立以来、「流動性」、「学際性」、「国際性」、「公開性」と いう4つの研究理念を掲げて環境、組織の改革を進めてきた、という。もう20年 前のその改革理念がいささかも斬新さを失わないのは、なぜでしょう。この本に 登場する研究者らが凄い。「モノより知的資産の先覚者・渡部俊也」、「日本の TLOの三冠王CASTI/リクルートから転身した山本貴史」など、その名前を追うだ けでも圧倒されます。1991年には、現在VEC(ベンチャー・エンタープライ ズ・センター)を通じてお世話いただいている、多摩大学教授の那野比古さんが 「東大先端研」(NTT出版)を出していたんですね。これも新鮮な驚きでした。 いやあ、知らないことばかりです。


 やはり9日は、関東地域産学官連携推進フォーラム「ベンチャー成長における 人的ネットワークの役割」が東京の世界貿易センタービルコンファレンスセン ター3階で。日本MITエンタープライズ・フォーラム理事長の綾尾慎治さんが米国 MITなどの大学を中心としたコミュニティー活動の事例を紹介します。 


 パネラーには、日本半導体ベンチャー協会を立ち上げたザインエレクトロニク ス社長の飯塚哲哉さん、ネットベンチャー草分けのアジアングルーヴ代表の孫泰 蔵さん、飲食店検索サイト「ぐるなび」会長の瀧久雄さんらが登場し、モデレー タはベンチャー創出マネージメントなどに詳しい早稲田大学アジア太平洋研究セ ンター助教授の東出浩教さん。なかなかの顔ぶれです。


 そしてユニークな連携イベントは、東西4大学産学官連携フォーラムです。10 日午後13時から東京・大手町の経団連会館ホール。慶應義塾大学、早稲田大学、 立命館大学、同志社大学が「産学官の芯・真・新」の新たな枠組みを目指して 「知財の社会還元を推進する」という。大日本印刷社長の北島義俊さんが基調講 演に立ち、日本経済新聞社の科学技術部長の滝順一さんをコーディネーターに、 山野井昭雄さん(味の素顧問)、関谷憲一さん(ディスコ会長)、清水啓助さん (慶応大学知的資産センター長)、和田元さん(同志社大学リエゾンオフィス所 長)、川村貞夫さん(立命館大学副学長)、村岡洋一さん(早稲田大学副総長) らが、産学官連携の効果的な推進を通じて「ナショナル・イノベーション・シス テム構築に必要な方策を探り、社会や産業界からの大学への期待にどう応えてい くか」などをテーマとしていく、という。


 関西では。略称・KISS(関西インターネットソリューションサプライヤーコン ベンション)は、14、15の両日、大阪産業創造館3階4階で開催。入場料が前売 券1日券1500円、(当日2000円)、同2日間通し券2800円(同3500円)。関西の デジタルコンテンツ分野を軸とした全く新しい「業際」の展示会で、話題のWEB2. 0、装着のウエラブルコンピュータなどに議論を深めビジネスモデルを探る、と いう。14日の初日にはデジタルハリウッド大学・大学院学長の杉山知之さんが 基調講演に立ち、またIT関連企業の有能な起業家らが顔を揃えます。


 さて、うかうかしていられません。西に東に産学の、ベンチャーの息吹が一斉 に芽を吹き始めてきているようです。DNDは、サイトのリニュアルを含めて、連 載企画の充実に新たな講師陣を招く調整に入っています。こちらも鮮烈なメッ セージを発信していきますので、4月からの新企画にご期待ください。




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