DND事務局の出口です。あくせくするのは、もう十分。人生の折り返し点を 過ぎ、第2の人生は、好きなことをして暮らしたい‐「新しい大人の暮らし」を テーマにした「AERA mature」の臨時増刊(10月15日号)をペラペラめくって 見ると、ありのままの素の自分を取り戻した人たちの、気の合うパートナーや仲 間らとの、生き生きした姿が紹介されていました。
飾らない、気取らない、それでいてこれまでの経験を社会に役立てたい‐と願 う人のなんと多いことでしょう。副編集長の南雲隆さんが、タイトルの意に触れ て、「シニア」でも「熟年」でもない、もちろん、「シルバー」でもない。「ma ture」(マチュア)‐「熟した」とか、「円熟した」といった意味合いの言葉で す‐と述べ、願いを込めて、「これからの中高年は、ちょっとおしゃれに、こう 呼びたい」と編集後記に書いていました。
いわゆる団塊の世代(1947年〜49年生まれ)が、会社員なら間もなく定年、現役 リタイアの時期にさしかかっています。人口の5%を占める、この人たちの動向 は、経済的にも政治的にも社会的にも、今後の日本の行方に少なからず影響を及 ぼすでしょう‐と南雲さん。
で、ずらっと並ぶ第2の人生を踏み出した50人のそれぞれのルポ‥長年の夢を 実現した人、仕事で身につけた技術で独立した人、まったく未知の世界に飛び込 んだ人‐晴れやかで、満面の笑みが、紙面からこぼれ落ちてきそうです。
主婦の水野恵子さん(54)は、犬も入れるバリアフリーの喫茶店「カフェ ドッ グウッド」を経営、夫の晴之さん(59)はオープンから半年後に銀行を早期退職 してマスターに。「仕事人間だった夫と、こんな夫婦共有の時間が持てるなんて、 うれしいというか、想像もしていませんでした」(恵子さん)。
鉄鋼会社員からプロボーラーに転進の竪本幸作さん(56)、三菱商事から作家、 NPOスタッフになった布施克彦さん(57)、NTTを50歳で辞めて無農薬料理店を経営する田崎彰子さん(53)は、「音楽家が音で伝えるように、料理で心に響く何かを伝えたい。キザですが、くつろぎ、慈悲、癒し、そうしたすべてのメッセージです」と語っていました。いい話です。
起業への挑戦も少なくありません。子育ても一段落したし、また仕事を始めよ うと思ったのがきっかけの、貞末タミ子さん(56)は主婦から、シャツ製造販売会 社副社長へ。20歳の時、一世を風靡したVANヂャケットに入社、夫は同僚の良 夫さん(64)、社名の「シャツ鎌倉」は良夫さんのアイディアを生かした会社でし た。年商は創業時の30倍の12億円。
ゼネコンの大林組社員から環境ベンチャー社長の石川文雄さん(67)は札幌在住、 札幌グランドホテルや札幌駅の「JRタワー」などと契約し、生ごみ処理、循環 型の農業を実践しています。ハワイ移住の老後の設計を変更して、退職金3000万 円をつぎ込んでの起業です。「この仕事のためにいままでがあった。天命と思っ ています」と石川さん、実は、知らぬ関係ではありません。もう、いい意味での 世話役さん、他人のことを放って置けない性格で、いつも自分のことを後回しに するから、ある日、「自立しなくちゃ駄目です」と忠告したら、「同じことを妻 (彰子さん)から言われている」と、茶目っ気を見せていました。
NPO関係へ進むのは、最近の目だった傾向かもしれません。富山赤十字病院 の看護師から介護を手がけるNPO法人理事長になった惣万佳代子さん(54)、ハローワーク職員からやはりNPO法人「WING21」の理事長になり、働 く女性の転職、就職支援を続ける小澤佳代子さん(55)、同名ですね。そういえ ば、「たぬき村」を運営する静岡県・静岡市のNPO法人「とこは生涯学習支援セ ンター」の代表、池田庭子さんも主婦から社会人学生へ、それからの転進でした。 来春には、もう一歩駒を進めて、起業に挑戦します‐とのメールがありました。
いやはや、団塊の世代、すでに気概が薄れてその存在が小さくなってきた‐と 思いきや、どっこいしぶとい。その名付け親の堺屋太一さんが解説を加えていま した。870万人いる団塊の世代のうち、300万人がここ4〜5年で退職するため、7 9兆円の退職負担金がでると、日本経済に悲観的な観測がされています。しかし、 そうはならないでしょう‐と前置きして、その理由のひとつに、「今後は60代の 高齢マーケットが爆発的に広がる。それに伴い、高齢市場に供給する職場が大幅 に増える」と予測していました。
続けて、職場を離れ、楽しみを通じた仲間を集め、「好縁社会」をつくるこ と。何事でも10年間努力すれば、一応の専門家になれる。すると、自然と同じ専 門的嗜好を持った仲間が集まり、面白い情報交換ができる。そこに需要が生まれ、 やがては自らが供給者になれる。高くないかもしれないが、収入がえられる。年 金と併用しながら、高齢者が職業を得るという、他の先進国に先駆けた社会モデ ルを日本が確立すれば、世界のトップランナーになれるーと期待を寄せていまし た。
「好縁社会」ですか、いい得て妙です。ひとつのネーミングが、今日の社会の 様子をくっきり浮き彫りにする−この辺は、さすが、堺屋さんの真骨頂でしょう か。
定年を迎えても知力、体力は健在です。60歳、まだまだ、花なら蕾。会社、あ るいは組織からの呪縛を解き放って、蓄積した自らの知恵をどう、次に生かして いくか?それは、それぞれが、それまでどのような生き方をしてきたのか‐の裏 返しであり、もうひとつの人生の証かもしれません。
さて、いよいよ師走。産学連携周辺に活躍する大学の先生らは、走るというよ り、まさに激走のようです。DNDの「産学連携情報」欄に掲載の行事予定をざっ と見ると、もう、ため息がでそうなくらいのラッシュで、全国津々浦々、日々、 連続しています。紹介します。産学連携情報の情報をのぞいてくだされば、以下 は、読む必要はありませんが‥。
12月1日、この日に限っても10本と目白押しです。札幌では、「産学官連携 による北海道経済活性化の方策」、東大名誉教授の月尾嘉男さん、全国から引っ 張りダコの荒井寿光さん、もう知財戦略の伝道師のようです。小樽商科大学の瀬 戸篤さん、コーディネータは地元、北海道大学の荒磯恒久さん、小生もコメン テーターとして末席を汚すことになっています。ちょうど、このメールが配信さ れている時間帯ですね。
東京・千代田区ではNPO法人「産業技術活用センター設立」の記念講演会、早 稲田大学教授の松田修一さんが「技術ベンチャーと大学の役割」と題して講演、 東京・一ツ橋の学術センターでは産業技術総合研究所主催の「ハイテク・スター トアップス創出のフレームワーク」を開催し、早稲田大学総長の白井克彦さんが 来賓挨拶、ケース・ウェスタン・リサーブ大学のスコット・シェーン教授が「ア カデミック・アントレプレナーシップ」をテーマに講演されます。群馬・前橋市 では、産学官フェアIN群馬を開催し、メイド・イン東大阪の人工衛星打ち上げに 燃える(株)アオキ代表取締役社長、青木豊彦さんが「夢の実現、職人魂で宇宙を 拓く」と題して講演、群馬大学の地域共同研究センター教授の須齋豊さんらがパ ネルデッカションに。
広島では「中国地域産学官コラボレーションシンポ」、山口大学工学部長の三 木俊克さんが産学官連携のグランドデザインを報告し、デッスカッションには、 基調講演に続いて山形大学教授の城戸淳二さんが登場、同席者の顔ぶれに、経済 産業省大学連携課の中西宏典課長も。
秋田市では「あきた産学連携推進フォーラム2004」、岩手大学教授の岩渕 明さんが「地域産業おこしに燃える」と題した講演を。ウ〜ム、こういうタイト ルは興味がそそられます。
飛んで、九州・佐世保工業高等専門学校では、「佐世保・産学官民出会いフ ォーラム2004」、同校の井上雅弘校長の挨拶のあと、九州大学大学院教授の 八坂哲夫さんが「容易なる宇宙へのアクセス」と題して講演、いわゆる高専、NH Kのロボットコンテストも回を重ねて年々、質の高いロボットが目立っています し、ベンチャー起業も動き出しているようですから、熱気が感じられます。
いやぁ〜書き切れません、でも続けます。4日は、盛岡市で県立岩手大学長の 西澤潤一さんが出席する「テラヘルツ応用研究会設立」のキックオフセミナー、野 村證券法人サポート室の平尾敏らと参加します。九州・博多では「第7回日本ベ ンチャー学会全国大会」、会長で法政大学総長の清成忠男さんは、存在感があり ます。
6日も盛りだくさん。日本バイオベンチャー推進協会(JABDA)の設立3周年記念 のバイオフォーラムが東京大学医学部教育研究棟の14階鉄門記念講堂で開かれま す。「大学発1000社」の構想を打ち上げた当時の経済産業大臣、平沼赳夫さんが 来賓で挨拶を予定しています。慶応義塾大学の三田キャンパスでは、デジタルメ ディア・コンテンツ統合研究機構開設シンポ、日本画家の千住博さんが講演、e ラーニング、ユビキタス、シネマなど慶応義塾のコンテンツを紹介したあと、デ ィスカッションへ。司会は、塾長の安西祐一郎さん、パネリストには、再び荒井 寿光さん、スタンフォード日本センター研究所長の中村伊知哉さん、情報セキュ リティ大学院大学副学長の林紘一郎さん、法科大学院教授の小泉直樹さんらが登 壇します。
また、同日、文部科学省と東京農工大学の主催で、産学官連携ビジネス交流会 が東京・一ツ橋の学術総合センターで開催、関東地域の国立、私立大学が17大学、 それに19機関が一堂に会します。「産業界と大学との知的財産アライアンスへの 期待」がテーマ、大学発ベンチャー企業の経営者らが顔を揃えるのも楽しみな企 画です。単独の開催から、まさに大学間のコラボという新しい流れがでてきまし た。9日は、「新産業創出と大学間連携」と銘打った関東・関西8私大産学連携 フォーラムが明治大学駿河台校舎、アカデミーコモンで開催されます。
8私大は、パネリストとして登場し、産官学連携の成功事例と推進計画をテー マに、日本大学の後藤晴男さん、中央大学の関口勲さん、東京電機大学の藤田聡 明さん、明治大学の山元洋さん、関西大学の大場謙吉さん、関西学院大学の佐野 直克さん、同志社大学の和田元さん、立命館大学の牧川方昭さん、そしてモデ レーターは東京電機大学の山名昌男さん、いずれも知的財産、産学官交流セン ター、産学官支援センター、リエゾンオフィスなど現場のトップランナーですか ら、紹介される事例にはそれこそ、いくつものアイディアや知恵が数多く散りば められているに違いありません。要チェックです。
産学官連携のウエーブは、上げ潮のようです。西に東に、会場から会場へ、先 生でなくても走り回らなければ、追いつきません。これはひょっとして、もう大 ブレークといっても過言ではないかもしれません。