DND事務局の出口です。産学官連携を意図するNPO(特定非営利活動法人)の設立、 周辺で加速しています。縦から横への展開が、線から面となって広がり、大学、地域、そし て海外へ。そのNPOが相互に連携し、そして行政や関係機関が表から裏から、結びつい てくる‐新しいけれど当然の、もう、そんな流れが、日常になっていることを実感します。
民間研究所のユーザーの方から、昨日、大学発NPOに関する情報の問い合わせがあ り、タイミングよく、調べ始めていたところでしたから、調査の趣旨を尋ねると、新規事 業を展開するにあたり、大学発NPOとパートナーを組むことが最適-との仮説をもと に調査をしている、ということでした。
動き出した、ちょっとした傾向を見逃さない、あえてその現状の将来の見通しから、調 査し、分析して新たなビジネスの可能性を探る-う〜ん、空から鳥瞰するような視覚、あ るいは草木を掻き分けるような臭覚、民間のシンクタンクの目の冴えに感心させられま した。
そうなんですね、いわゆる大学発NPO法人の関係には、有能なキャリアや学者、それ に、世話好きなコーディネーターや労をいとわないプロデューサー的な存在が少なくあ りません。イメージすれば、そのNPOと民間企業、研究機関が手を結ぶ余地は、大いに あります。
最近、設立、あるいは認証を受けた大学発的なNPOをいくつか紹介します。茨城県の 筑波大学関係の特定非営利活動法人「つむぎつくば」、先月、NPOの認証が下り、来週22 日(月)午後から「つくば支援センター」で総会、そして記念のシンポジウムを予定してい ます。講演は、現在、産学連携・ベンチャー支援で人気の小樽商科大学ビジネススクール の瀬戸篤助教授が行います。
発起人のひとりとして、当日駆けつける予定です。理事長は、筑波大学の前副学長で教 授の高木英明さん、副理事長は、DNDでビジネスマッチングのサービスを提供してくださ っています(株)ベンチャーラボ代表の山中唯義さん、その舞台を支えているのが、前 茨城県商工労働部長で現内閣府沖縄振興局参事官の滝本徹さん‥。
趣旨に、NPO「つむぎつくば」は、個人、グループ、団体、地域を結び、つくばのイノベー ション創出へ向けたコミュニティーの形成を目指す-といい、知的特区の県北エリアと つくばエクスプレス沿線地域間の連携、東京からのビジネス応援団の結集などを求め、1 0年、20年のレンジでつくばクラスターを国際的なトップクラスターに押し上げていく ‐と言う。文字通り、産と学と官を紡ぐ、人と人を繋ぐ、そして地域活性化への動きが具 体的な成果を出していくことを期待していますし、民間企業からの参画は、極めて大事 な要素になると思います。
偶然にも連続していました。もう一件は、任意団体の「産学連携学会」に、やはりこの10 月、新たにNPO法人の認証が下り、今週の19日(金)に記念の総会、秋季学術シンポジウ ムが多摩大学のルネッサンスセンターで開催されます。
この5月から手続きの申請作業に入り、桜美林大学の教授で法務担当理事の大塚誠さ んが、東奔西走、なにせ会長の湯本長伯さんが九州大学教授、副会長の荒磯恒久さんが北 海道大学教授という距離間が災いして、申請書類の印鑑を用意するのに、朝一番で札幌 に飛び、ハンと署名をもらって帰京するにも折からの台風で飛行機は欠航し、キャンセ ル待ちのとんだハプニングが続出していました。端から見ていて、ハラハラ、ドキドキ‥。 しかし、大塚さんのような方が、いらっしゃるから何事もなかったかのように事がス ムーズに運ぶんですね。
さて、当日のシンポ。テーマは「産学連携学確立の道筋」。その荒磯さんが学術委員長の 立場から、基調講演を行います。
パネルデスカッションには、経済産業省の大学連携推進課長の中西宏典さん、東北大 学教授の原山優子さん、東京大学教授の渡部俊也さんらが顔を揃える予定です。僕も理 事のひとりとして参加します。この日がNPO法人のスタートとなるわけですが、ただ、 会費、賛助会員、活動方針等々、事業計画などの細目を決めなければなりません。民間企 業と連携は、要になるような気がしてなりません。ご関心があれば、繋ぎます。
こんな記事が目に留まりました。日本経済新聞夕刊(13日付)には、東京理科大MOT (技術経営)の社会人学生らが、NPO「日本モノづくり学会」を設立した‐ことを大きく 取り上げていました。現在、認証の申請手続きに入っているようです。
埋もれているユニークな技術・製品を掘り起こし、企業とともに商品開発や販売の戦 略を練る、という実に重要なポイントを目標にしていて、頼もしい限りです。メンバーは エンジニア、ベンチャー経営者、商社マン、それに教授ら十数人での旗揚げです。会長に は、前花王会長で東京理科大客員教授の常盤文克さん、その大御所の就任によって、まさ にMOTの実践道場となるかもしれません。参加者のひとり、大手電機メーカーのエン ジニアでもある島崇さん(38)は、「過去の成功事例を本で読むだけでなく、商品開発や販 売戦略づくりに関わってモノづくり現場の面白さや苦労を学びたい」と話しています。 こういう経験を積んで、島さんのような若手から、起業が相次いでくるかもしれない-と 勝手に思いこんでしまいます。
同会には、北九州市立大教授の村田朋美さんら他の大学からも協力の申し出があり、 「各地に拠点を置き、全国の中小企業と交流できれば‥」(日経新聞より)と話していまし た。モノづくりという視点、大学と中小企業というテーマ性などから見ても、確かな一歩 を踏み出しているように思います。今度、伺ってみようかな〜。
そんな風にして、大学発NPO周辺を探索していると、密なDNDユーザーで元電通マン の塩澤宏宣さんから、昨日夜、「参加してきました」とのメールが入りました。なんと、そ れもNPO法人「日中産学官交流機構」の旗揚げを記念したフォーラムで、東京・渋谷の国 際連合大学ウタント国際会議場で開かれていました。
中国、そして日本、その連携の動きが急を告げていますが、このNPO法人は規模や参 加している顔ぶれは、横綱級でした。両国の産学官の英知によって、医療、福祉、都市、環 境、農業、情報通信、材料、ロボット、知的財産‥等の課題の解決を図っていく‐と言う趣 旨で、会長に新日本製鐵会長の千速晃さん、理事長に元通産省事務次官で電通顧問の福 川伸次さん、理事に日立製作所会長の金井務さん、日本電気会長の佐々木元さん、トヨタ 自動車社長の張冨士夫さん、松下電器産業会長の森下洋一さんら財界の重鎮がズラリ、 学からは慶應義塾大学塾長の安西祐一郎さん、早稲田大学総長の白井克彦さん、前東北 大学総長の阿部博之さん、ノーベル賞受賞者で理化学研究所理事長の野依良治さんらも 名を連ねていました。
基調講演には、岩手県立大学長で日本工学アカディミー会長の西澤潤一さんが「日中 の産学官交流の課題と将来展望」をテーマに登壇していました。惜しいことに聞き逃し てしまいました。
余談になりますが、西澤先生には、昨年12月のDNDフォーラムで基調講演をいた だいた関係から、それ以降、公私ともにご指導いただいています。12月4日は、産学官連携 のスキームで「テラヘルツ応用研究会」の設立に伴う「キックオフセミナー」(盛岡市のホ テルメトロポリタン盛岡で)に参加し、久々に、世界のニシザワ節を拝聴する予定です。 来春は新たな東京都立の首都大学の総長にご就任予定ですから、より身近になります。
さて、大学発NPO、ざっと全国に10以上の法人が活発な活動をしているようです。今 のうちから、情報を整理していた方がいいかも知れません。大学発ベンチャーやNPO 法人‥まだまだ、大学発の別形態の法人設立の可能性があるようです。