◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2004/ 11/ 10 http://dndi.jp/

大学発ベンチャー900社突破

DND事務局の出口です。自発、能動、そして起業‥。そりゃ、言われてやるより、自ら決め て動くのがずっといい。リスクを負うから、知恵も湧く、夢を描いているから若々しいし、 思いを共有する確かな仲間がついてきてくれる、その存在が、なにより嬉しい。

規制に次ぐ規制の公害の時代から、自らの社会性を問う環境へのパラダイムの転換は ‐ある意味で人をして、You should からI willへの脱却を迫った、というある官僚の指 摘は、至言。今、その言葉がズシリと重い。相次ぐ大学発ベンチャー設立の背景から、「知 の創造」から「知の活用」を目指す研究者らの、懸命で、ひたむきな強い意志が伝わってき ます。


大学発ベンチャーの企業設立が900社突破-正確には916社(8月末現在)のニュースは、 新聞の扱いは地味ながら、その調査データから、大学発ベンチャーの存在が、大学改革 の牽引的役割を果たし、あるいは、新たな産業創出のモデルとして地域に定着し、多くの 期待が寄せられていることを実感します。

公表された調査結果には見当たりませんでしたが、それぞれの事業内容を細かく集計 すれば、雇用創出や経済波及効果、新採用者の転職の動向、社員の平均年齢、IPO動向など が浮かび上がるに違いありません。数も大事ですが、その中味、またその社会的意義も重 要です。大学発ベンチャー特有の技術シーズの分類、戦略、それに対して逆に抱える課 題も数々あるようですから、ある時点での総括が必要です。


産業技術総合研究所など政府系の研究機関からのベンチャー設立も80社(前年度47社) と健闘していて、そのうち14社が大学発ベンチャーと重複するため、それらを合算する と982社となっていました。


調査は、文部科学省の「21世紀型産学官連携手法の構築に係るモデルプログラム」の一 環としてのもので、今回で5回目。日本経済新聞(5日付)によると、設立のペースは年々上 がっており、今年に入っての設立が172社、昨年度の8月末と比較すると302社(49.2%) 増えたことになります。残りの130社は、新たに判明したり、追加報告があった数字でし た。設立の情報が、どこかで一元化されていればいいのですが、アンケートの回収状況 やら、タイムラグやらでズバッと行かないのが実情のようです。


内容を見ると、目だって多いのは、国立大学法人からの起業で、87校のうち66校に及び、 なんと75.9%、その数は564社と大半を占め、私立大学の69校、12.7%、354社をリードして いました。が、私立は文科系が多いことが背景にあるようです。


上位10校-1位早稲田大学65(50)、2位大阪大学46(28)、3位慶應義塾大学43(34)、4位京都 大学37(21)、5位東京大学33(21)、6位筑波大学30(14)、7位日本大学29(13)、8位東北大学2 7(18)、9位北海道大学26(13)、10位九州工業大学24(13)の順でした。( )内は前年度の数 です。


全大学の一覧から、10位以下を拾うと、11位22社が九州大学・東京工業大学・神戸大学、1 4位21社が高知工科大学、15位19社が東京農工大学、16位17社が龍谷大学、17位14社が広 島大学・山口大学、19位13社が立命館大学・会津大学でした。11社は名古屋大学・名古屋工 業大学・徳島大学・東京理科大学、10社が小樽商科大学・東海大学・近畿大学でした。大学 名を記述しているとあの先生、あのベンチャーが思い起こされます。


早稲田が俄然、トップを走り、バイオ系の優良なベンチャーに定評の大阪大、それに京 都大、東大、日大、筑波大、北大などに勢いが感じられます。米国では、大学発ベンチャー2 500社が活動しているといわれていますから、経済規模からすると日本の1000社は米国 並み‐との評価も一部にあるようです。


3年間で1000社の大学発ベンチャー創出計画は、いわゆる「平沼プラン」、それにしても1 000社という数値目標は、なかなか鋭いというか、際どい設定でした。この計画の策定に 関わっていた経済産業省の石黒憲彦さん(大臣官房総務課長)の当時のエピソードによ ると、「達成できなければ、頭を丸める」という覚悟だったらしい。


そして、すでに第4コーナーを回り、目標期限の16年度末までに残すところ5ケ月を切り ました。昨年度に続き、経済産業省の大学連携推進課では、最終決着の調査を開始してい ます。同課の昨年度の調査では、799社という結果でした。残り後、201社。


なんとしても1000社突破を‐せっかく設立しているのに、カウントされていなかった- という愚は、避けなければなりません。996、997、998、999‥とくに来年3月末の設立の動 向は、カウントダウンに入ります。緊張しながら注視するようですから、駆け込みでも、 見込みでも、是非、大学発ベンチャー設立に関する情報がありましたら、ご一報ください。


西から東から‥三重大学医学部の珠玖洋教授らが10月にバイオベンチャー「イミュノ フロンティア」(菱田忠士社長)を設立すれば、11月に入って帯広畜産大学が植物バイオ 技術を活用し、新たな園芸植物を開発するベンチャー企業「バイオ・フローラ」(市川裕 章社長)を設立したばかりでした。昨日、東京・丸の内にある(独)産業技術総合研究所の ベンチャー開発戦略研究センターにスタートアップ・アドバイザーの渡辺純一さんを訪 ねると、肩書きの通り、技術シーズの評価からビジネスモデルの策定、そして資金調達、 経営人材の確保など一連の起業回りをサポートし、「近く某国立大学発のベンチャーが 誕生します」と耳打ちしてくれました。


分野やモデル、その狙いなどに違いありますが、大学発ベンチャー起業、そのひとつひ とつに、さまざまなジャンルのプロが大勢、参画し、語りきれないほどの苦節のドラマ が見え隠れしています。


1000社実現‥戦後60年、その歴史的な節目の金字塔といえば、大袈裟かもしれませんが、 日本のある意味での転換期における象徴的な事象になりそうです。

調査にあたった筑波大学の菊本虔教授の新聞の談話を読むと、大学発ベンチャーも量 より質の段階に入る‐とは、鋭意、大学発ベンチャー1000社実現に取り組む、経済産業省 の大学連携推進課の中西宏典課長らの認識と一緒で、次は、大学発ベンチャーIPO100社 の計画をいち早く打ち出し、さらに大学発ベンチャー支援に向けた新しい施策について も、現場からのヒヤリング調査、分析を基に綿密に検討しているようです。


※予告の通り、DNDメルマガの「人名索引」に続いて、「企業・団体名索引」をアップしまし た。ざっと402項目に及び、100回のメルマガで登場回数の多いベスト3は、1位経済産業 省18回、2位日本経済新聞17回、3位東京大学16回‐でした。「索引」は、引き続き、書籍、音 楽、映画などのジャンルについても準備しています。


記憶を記録に!DNDメディア塾
http://dndi.jp/media/index.html

このコラムへのご意見や、感想は以下のメールアドレスまでご連絡をお願いします。
DND(デジタルニューディール事務局)メルマガ担当 dndmail@dndi.jp