DND事務局の出口です。またひとつ輝かしい歴史の1ページを刻んだようです。時代を揺り動かすのは、ひとりひとりの英知とエネルギーなのかもしれません。首都・東京は今、ビッグイベントが真っ盛り、堂々と、そして誇らしげな顔、顔、顔‥。
産学連携Take off!そして、大学発ベンチャー1000社達成へのファンファーレが鳴り響いてくるようです。名づけて、「イノベーション・ウィーク」。
東京・有楽町の国際フォーラムでは「イノベーション・ジャパン2004」、東京・品川の新高輪プリンスホテルでは「BioJapan2004」がそれぞれ昨日開幕(〜30日)、続いて東京・有明の東京ビッグサイトでは、「日経ナノテク・ビジネスフェア2004」と「2004産学官技術交流フェア」(日刊工業新聞社主催)がスタートしました。いずれも10月1日まで。
文字通り、「動け!日本」。急いで回れば、行けないことはありません。ふぅ〜ため息がでそうなくらいの出展数、講演数、それに動員数。それぞれの会場は、宝の山、厳選された最先端シーズが溢れかえっていました。
報告は、DND事務局が(財)ベンチャーエンタープライズセンターの名前で大学発ベンチャー支援ゾーンに出展している「イノベーション・ジャパン」を取り上げます。
会場入り口は、ドーンと共催の(独)産業技術総合研究所のブース、実演の人間型ロボット「HRP−2」には幾重にも取り囲むほどで一番人気でした。その奥に、(独)科学技術振興機構、大看板のキャッチに、「大学の皆様へ 大学の特許出願、研究開発はJSTが支援します」、その横には、「起業の皆様 大学等の研究成果の実用化開発をJSTは支援します」とあり、そして、「最新の科学技術情報(DB)はJSTにお任せください」と、やる気満々。
そして、DNDブースの隣は、本イベントを協賛している野村證券グループ、ビデオを駆使してのプレゼンは、戦略的知財のポートフォリオ・マネージメントのツールとして本邦初公開の「テクノロジー・ヒートマップ」。それぞれの会社や大学が保有する特許、論文を文書解析し、研究開発分野の優劣や強弱を画像で見せるソフトの紹介です。ガラス塔内4階のセミナー会場に足を運ぶと、詳細にそのコンテンツを解説していました。研究開発投資とその効率や効果をそれによって再評価し、自社の経営戦略、事業買収、競合企業の分析など企業戦略全般に役立てられる‐というから、う〜む、これは優れものです。
ついでに聞くともなく耳にしていたら、「知的資産と金融ビジネス」をテーマに野村資本市場研究所の浜田隆徳さんが、上場・公開企業の都道府県別のデータを紹介していました。東京都、上場1157件、店頭462件、新興市場128件、大阪府、上場420件、店頭57件、新興市場24件、愛知県、上場174件、店頭50件、新興市場5件‐との参考資料を示して、上場・公開企業が上記の3都府県で67%、東京、神奈川で52.8%を占めているという現実、さらに1990年以降、新規公開会社が10社未満が25県あり、新規公開5件未満の県は、青森(3)、岩手(3)、秋田(3)、奈良(3)、和歌山(3)、島根(2)、徳島(3)、佐賀(1)、長崎(4)、宮崎(3)、沖縄(4)という数字を見ると、すでにIPOにおける地域の選定や絞込みが行われている感じがします。ですから、逆に地域からの大学発ベンチャー創出、そしてIPOへの期待が必然的に起きてくる‐と、まあ、そんなことも考えさせられました。
ざっと、会場周辺を見回すと、全国の大学、研究機関を中心に出展数は232件、うなぎの寝床のようなブースの配列は、人の動きが身近に感じられて、ほどよい距離間を保っていました。
産学連携を目的とした展示会としては国内最大級であり、大学発の技術、特許、知財を一堂に紹介する初の試みは、産学連携への一連の上げ潮ムードに乗って、初日10000人の動員を数え、トヨタ自動車副社長の渡辺捷昭さん(28日)、ソニー副社長兼COOの久多良木健さん(29日)の基調講演、大学総長と経営者らによるパネルデッスカッションなどには、定員800席を越え立ち見がでるほどでした。
出展ブース。環境はグリーン、医療・バイオはオレンジ、情報・ITはブルーと色分けされた各ゾーンでは、いつも表情の硬い感じの大学教官らがにわかセールスマン役を買ってでて、ひっきりなしに訪れる来場者らを相手にしていました。
「超臨界水による廃棄物処理技術」は静岡大学工学部、「次世代モバイルインターネット端末の開発」は東北大学の電気通信研究所、「人工衛星電波を使った大気状態のリモートセンシング技術」は鹿児島大学理学部、「マグネシウム合金およびアルミニウム合金の新しい半溶融鋳造」は千葉工業大学工学部、「魚類冷水病に対する実用的なワクチンの開発」は高知大学など、これらはその一部ですが、研究テーマに全国の地域色が反映されています。信州大学や岡山大学、広島大学、北海道大学、徳島大学発の各ブースに前には、産学連携学会の理事メンバーの懐かしい顔もあり、お互いテレながら「いたの?」、「元気?」‥記念撮影したり、近況を語りあったりと、どこか祭り気分のほんわかムードに包まれていました。
恒例の交流会。大変なパーティーでした。その雰囲気から、このイノベーション・ジャパンの成功の手応えが充分に伝わってきます。いつもさっそうした日本学術会議会長の黒川清さん、「元気がいいのはいい。すっかり大学も変わってきたね」と、いつも辛口のコメントを控えながら、人の輪の中心に。傍に、もう、ベンチャーの草分け的存在で重鎮の堀場雅夫さん、グレーのシルクスーツがお似合いで、胸に明るいブルーのチーフ、その洗練された色彩のコーディネートは、おしゃれでした。その堀場さん、長身の黒川さんの肩に手を回して、記念撮影に応じたあと、東京大学教授で、このイベントの仕掛け人の松島克守さんに、しみじみ、「すごい!以前なら、信じられへん。確かに、変わってきた」とその柔和な目を細めていらっしゃいました。
振り返れば、昨年の夏、経済産業省大臣官房総務課の課長補佐の吉本豊さんとご一緒したのが、東京大学の松島さんの研究室でした。オールドファッションといえば聞こえはいいのですが、暑い。その松島さんは、それ以上に熱っぽく語り続けていました。
内閣府への提言、「動け!日本」のプロジェクトのビジョン策定の中心メンバーのひとりとして、「生活を大切にする」という視点から、生活者の潜在的ニーズをつかまえないと日本の経済が進まない‐との確信を得ていたらしく、「それにふさわしいベーションの創出のために、大学や研究機関にそのポテンシャルがある。だから、そこに眠る技術シーズを民間企業に移転する、あるいは活用する必要がある。が、大学の先生がどこで、何をしているか、それがわからない」という理由から、ついて出た言葉が「大学EXPO」をやりたい、やらなきゃならない‐と訴え、協力を打診していました。
会場に、吉本さん、「とうとう、やりきりましたね」と松島さんの腕力とその資質に敬意を表していましたし、ご本人の松島さん、「経済団体や学術会議の皆さんの力ですよ。それに、時代だね〜産学官連携の時代が来ているんですよ」と話していました。2004は2005へ。新たな伝説が生まれようとしています。会期は、明日まで、参加は無料です。