DND事務局の出口です。いつの日から、それほど意味もない敵対的な批判の矢を一方的に向けていくようになったのでしょうか?対立や相克を超えて、もうそろそろ確かな連携や共感にコミットした方が有益です。誰彼を攻撃していくより、誰彼を支持していく‐実際、そのような動きの芽も出てきています。
無から有を生む‐というのを社会的価値として評価すれば、「練り上げる」、「作り上げる」、そして「立ち上げる」、それらを担うクリエイティブな人たちを応援し、そしてその輪を広げていきたい。
ということで、何か教訓めいた前振りで恐縮ですが、舞台は福岡市の西日本新聞社16階の福岡国際ホールで開催の「産学連携学会第2回大会」(11日から12日)。
そのハイライトのレポートです。初日の基調講演は、時の人、荒井寿光さん。内閣官房の知的財産戦略推進事務局長で元特許庁長官というのは、ご承知の通りキャリアをみれば、いたって官僚そのものの人生ですが、長身、痩躯ながら、柔和で懐が深い。「知財計画2004−産学連携・ベンチャーへの期待−」との演題は、知的財産立国への道筋を政府の戦略から一通り説明したあと、「つまり、産学連携学会の皆様のような存在が重要で、全国の大学教官らはみんなこの学会に入ったほうがいい。湯本会長、荒磯副会長らのご努力に敬意を表したい」と、学会設立に奔走し、400人余りの陣容に広げた彼らの労をねぎらうやさしさを忘れていません。おおらかな人柄らしく、懇親会でも気さくに記念撮影に応じていらっしゃいました。
名刺交換。その際に、DNDのリーフレットを手渡すと、ほぅ〜と感心した様子で、「あっ!服部君も書いているの?あっ原山さんも‥」とDNDの連載企画の紹介文に目を留めていました。「先生も是非、お願いします。日本の知財立国への道しるべをお示しください‥」との咄嗟の依頼に、少々照れながら、「いいよ」とさっぱり同意してくださいました。
しかし、余談になりますが、上京してその様子を、東北大学教授のDNDで「産学連携講座」を担当していただいている原山優子さんにメールすると、仙台からもかなりの人が参加したようですが‥と前置きして「荒井さんとは、先週お会いしたばかりですから、荒井さんの頭に私の名前が強く印象づけられていたのかもしれません!京都でも好きなことを言ってください‐とのことなのでいつものペースでお話することにします。では、京都で」との返事がありました。京都とは、19日から開催の第3回産学官連携推進会議の分科会のシンポのことです。その原山さんについて、荒井さんから、彼女のホームページは参考になりますよ‐との講演でのご紹介に、間髪入れず、会長で湯本長伯・九州大学教授から、原山さんは当学会のアカデミックアドバイザリボードのメンバーとしてすでに、法政大学の清成総長、経済産業省の中川昭一大臣らと一緒に名を連ねていることを明らかにしていました。えっへん、湯本さん、地 元九州での盛会に気をよくしてか、幾分、胸を張っての説明でした。
余談は続きます。荒井さんとご一緒の時、つかつかと寄ってきて、名刺を差し出した地元RKB毎日放送テレビ編成局のライツ業務部長、倉富清文さん。「メルマガを見て荒井さんの話を聞きにきました」と、殊勲な挨拶。いやあ、小生にとって、これほど気分のいい展開は、ありません。ねえっ、先生っ、先生(荒井さん)どうです?と、メルマガ自慢。先生に同意をせがむ無邪気な小学生みたいだったかもしれません。一分会えば、もう友人並みの親しさに溶け込んでしまうあたり、もう少し自嘲したほうがいいかも‥と反省。
縁は不思議。倉富さんから、昨日メールが入り、DNDのご紹介は、確か舟橋さんだったと思いますーとあってまた「サプライズ!」。その舟橋正浩さん、FunahaSI.comの代表で、愛知県安城市を拠点に、北海道札幌、旭川あたりでは、システムエンジニアとしてつとに有名、小生がDNDの電子会議室でハンドリングしている「環境技術・食・健康・安全」のプラットフォームの相棒でかつ、DND親善大使のような恩人のひとり。
「倉富さんですが、お世話なりっぱなしの私の恩人です。恩人同士がであって、また新しいことが起きるかと思うと、面白そうで期待しています」とのメールが舟橋さんから届きました。なんか、余談ばかりで、一向に報告がすすみませんから、本題へ。
基調講演は続いて、ベンチャーキャピタリストとしていまや世界的に活躍の原丈人(はら・じょうじ)さん。経歴は華麗です。慶応義塾大学法学部卒後、スタンフォード大学経営学大学院を経て、同工学部大学院修了。現在、米・英・イスラエルを拠点とする技術持株会社デフタ・グループを統括。米国の有数のIT企業をいくつも育成、公開させており、IBMやスイス銀行が提携を申し入れるなど、業績はトップクラス‐と当日配布の資料にそう記述がありました。
その実績を紹介するだけで、メルマガ3回分でも書ききれない。講演の内容は、後日、産学連携学会から詳細を電子データでいただいて、サイト上にアップしますから割愛しますが、その経歴ばかりか、小柄ながら、知的で美的な紳士です。同年齢なはずなのに、このように端整というより、綺麗な顔の人は見かけません。一点、これは、配布資料の中央公論での対談、「次世代産業は日本がリードする‐米国の後を追うような愚をやめよ」でも論破しているのですが、
「今日本にとって千載一遇のチャンスだと思います。21世紀の基幹産業はITですが、その核となる技術はコンピュータから通信技術に移行しています」と現状を分析して、専門的にいえば、パソコン中心のITから、ここが注目なのですが、PUC、つまりパーペイシブ・ユビキタス・コミュニケーションズ・プラットフォーム技術、完璧なコミュニケーションという人間の究極の欲望をかなえる技術で、それを実現できるのはハード・ソフト両方の産業が成立している韓国と日本など少数です‐とその技術のコンセプトを解説しながら、「どなたか、このシステム構築に挑戦してみませんか?資金提供は惜しみません」と軽く、言い切っていました。
いやはや、これにも「サプライズ!」でした。起業家マインドの実践やら、日本の企業との接点で「決定が遅いというより、年々、物事の決定するマネージャーが少なくなってきています。駄目ですね」との厳しい指摘もありました。さて、原さんとの懇談で、何とかDNDへのアプローチは、原さんが書きためたものを構成して連載する‐方向で了解していただきました。
ハイライトの圧巻は2日目の「大学長シンポジウム」。九州・西中国エリアから9人の学長が顔をそろえました。前回、北海道での学長シンポに続くもので産学連携学会の定番行事になっています。コーディネーター役は、もうこの手の司会・進行にその才能を発揮する北海道大学教授の荒磯恒久さん、相方は、研究発表3本、座長の切り回しなど終日フル回転の広島大学教授、山口佳和さん。その山口さん、経済産業省へまもなくご帰還の予定ですから、大学研究の最後の締めくくりになったかもしれません。
登場は、その広島大学・牟田泰三学長、山口大学・加藤紘学長、九州工業大学・下村輝夫学長、九州大学・小寺山亘副学長、九州産業大学・宇田川宣人学長、福岡工業大学・青木和夫学長、宮崎大学・住吉昭信学長、大分大学・羽野忠副学長、そして鹿児島大学・永田行博学長の面々。3時間に及ぶ討論は、会場からの質問を荒磯さんが取りまとめて、大学の経営、学生と産学連携、知財戦略、そして地域への貢献などとどんどん深まりを見せていました。中でも、産学連携担当で知財本部長の九州大学、小寺山さんは、「産学連携で大学の文化を変える、一変させなくては‥」の思いは、強烈な意思を感じました。
産学連携学会の存在についての最後の質問は、どなたの仕掛けか知りませんが、9人の登壇者から、絶賛の嵐が沸いていました。来年は徳島を中心に四国・中国と舞台を移します。
大会を終えて、ホッとするとどうも幹事役の地元担当者が「病院行き」というジンクスがあるらしい。手弁当で、しかも周辺からそれほど歓迎されない産学連携ワークの現状に、限りないエールを送ります。
18日から京都に入ります。第3回産学官連携推進会議。DNDの出展ブースでお待ちしていますね。