◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2004/ 1/14 http://dndi.jp

大学の新しい連携の風

DND事務局の出口です。東京から名古屋、そして大阪、その行き来は、新幹線。それも行きの片道だけは、いくらかの自腹を切ってグリーン車に乗ることにしています。瞑想という名の居眠りばかりか、思考、思索の空間としては、極めて快適な「走る書斎」となるからです。


楽しみは、お持ち帰り自由の雑誌「WEDGE」(ウェッジ)。JR車内機関誌とおもいきや、最近は結構、「そこまで書く?」と思わせるシビアな論調も目立ちます。そうそう、WEDGEは東海道新幹線の先頭車両のイメージであり、そして、英語で「くさび」、「V字型」、あるいは「発端」を意味する―と巻末に小さく1行の説明書きがありました。


今回は、文字通り、その1月号が「発端」です。ページをめくって2枚目の巻頭言は、アサヒビール社長の池田弘一さん。右手を前に柔和な表情のポーズ写真。見出しは2本つけられていました。「新鮮な感動とショック」、「失敗をチャンスに変えろ」。人生七転び八起き。会社人生38年で本社経験は僅か5年という不遇、あるいは逆境からの抜擢人事は、それこそ新鮮な感動を与えてくれました。が、その記事のなかに、アサヒビールの戦略として描き出されていたのが、01年のニッカウヰスキーとの営業統合を皮切りに、02年の協和発酵、旭化成の酒類事業の買収など、矢継ぎ早に池田さんが指揮をとる「総合化戦略」、そのフレーズは、それ以上に新鮮でした。


大学の新たな風−それは、いったいそれらの一連の流れや動きを、どうひとくくりに説明したら分かりやすいのだろうか?と、この数日ずっと、呻吟し続けていたからでした。具体的には、以下のような記事を、連続して見たからです。いずれも日経新聞からです。


【事例1】(法科大学院教材を共有、早慶などタッグ、20大学連携)
今春開設する法科大学院。その大学の間で、授業に使う教材を共有化する動きが進んでいる。名古屋大学が呼びかけて、これまでに鹿児島、早稲田、慶応、岡山の4大学が参加を決め、2年間で20校程度を目標にグループ化、相互に教材を自由に使える体制を徐々に整えていく―という。1月12日付。
【事例2】(ワクチン開発へ産学官が結集)
国内の産学官の研究機関が共同で、重症急性呼吸器症候群(SARS=サーズ)ワクチンの開発を進める。研究チームは、松島綱治・東大教授が中心となり、化学及血清療法研究所(化血研)、東京都臨床医学研究所(臨床研)、国立感染症研究所など公的研究機関と、北海道大学、長崎大学の研究員が参加。民間からはポストゲノム研究所(東京・文京区)が加わり、バイオ技術を提供する。天然痘ワクチンは化血研が唯一国内で保有する。長崎大のサーズ表面抗原に関するデーターベースや、SARSウイルスの毒性を殺さずにワクチン内に組み込む北大の特許技術を持ち寄り、臨床研がワクチンを試作、長崎大が動物実験で安全性などを実証し、治験を始める―という。1月10日付。
【事例3】(知財売り込み30大学結束、全国組織設立)
東京工業大学など理学系の学部を持つ30大学が4月にも所有技術を産業界に売り込むための全国組織を発足させる。設立する「大学知財管理・技術移転協議会」には、東工大をはじめ、東京大学、京都大学、大阪大学、九州大学など主要な国立大学のほか、慶応義塾大学をなど私立大学も参加する予定で今後他大学にも呼びかける。協議会は企業の知的財産部門出身者を招き、大学の若手職員らを対象に知的財産を拡販できる人材を育成。大学の成果を活用したい産業界との調整役になり、企業の情報を共有し単独の大学では難しい多様なニーズに対応する―という。1月11日付。

さて、どうでしょうか。タッグを組むとか、結集するとか、結束する―というようなくくり方もあります。これらの動向は、課題やテーマ別に新たな連帯を志向する「総合化戦略」と表現してみてはどうでしょうか。えっ、違います?別な捉え方があるのでしょうか。いずれにしても、大学に新しい連帯の風が吹きはじめたようです。そして、本日の新聞では、大学発等ベンチャー企業の設立が、昨年8月までに「654社」(公的研究機関発を含める)と、筑波大学、横浜国立大、神戸大が文部省との合同の調査で明らかになりました。目標1000社は着実に推移しているようです。


さぁーて。本日から九州へ。キヤノン社長の御手洗冨士夫さんの特別講演、広瀬勝貞大分県知事、山中巌大分大学長らを招いた九州地域産学官連携シンポジウム、昨年秋に茨城県つくば市での開催に続く、「全国産学官連携コーディネータ会議」がそれぞれ別府市で開催されます。現在時刻8時40分。では、行ってきま〜す。


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