HVC(北海道ベンチャーキャピタル)業界レポート

メッセージ
 HVCは2000年の大学発ベンチャー第1号以来9年間にわたって、バイオベンチャーに関ってきた実績と社内外の研究などで培った業界動向の先読み、将来が期待される製品群、求められる開発の方向性や直近の統計データなどをまとめ、それを公表し、多くの大学発ベンチャーの経営者や支援関係の方々のお役に立てばとの思いでHVC業界レポートをスタートします。

代表 松田一敬



◆業界レポートvol.5 09/09/16
バイオベンチャー企業要覧-2008-(上場企業編)(1) (PDF750KB)

バイオベンチャー企業要覧-2008-(上場企業編)(2) (PDF514KB)

 9月17日、当社投資先でもある株式会社キャンバスが東京証券取引所マザーズ市場に株式上場します。これで当社投資先のバイオベンチャーの株式上場はアンジェスMG株式会社、株式会社総医研ホールディングズ、株式会社免疫生物研究所に続き4社目となります。

 当社では、ここであらためて日本のバイオベンチャーの全体像を理解するために、2008年までに上場したバイオベンチャー企業要覧を作ってみました。上場バイオベンチャー26社(かつて上場していた企業3社を含む)の概要ならびに現況説明となっています。ぜひ、皆様のお手元においていただき、参考にしていただければと思います。

 なお、今回の概要作成に当たり、シンガポール国立大学MBAに在籍している杉山君にサマーインターンシップの活動の一環として執筆に参加してもらいました。当社では、日本への外国人留学生もしくは日本から海外に留学している学生等のサマーインターンシップを受け入れてきました。いつも忙しくてなかなかまとめられないデータ収集、業界分析などにおいて、インターンシップの活用は企業にとっても学生にとっても非常に有益だと考えています。



【ビジネスレポート】vol.3 09/06/15
「オープン・イノベーション」実現のためのベンチャー投資(3)
ビジネスモデルとベンチャーキャピタルの重要性 
 (PDF892KB)

 米国ベンチャーキャピタル協会によれば、2008年、米国において株式公開している企業の内、VCの投資を受けた企業による雇用は1,200万人、売上は3兆ドル(米国GDPの21%に相当)に達するするそうです。いかにVCの活動が米国の成長にとって重要であったかがわかります。チェスブロー教授も指摘しているように、オープン・イノベーションではベンチャー企業とVCはその重要な担い手です。大企業のビジネスモデルも非常に重要になってきます。
 翻ってわが国のVCの投資残高、投資額は、米国の10分の1以下です。しかし、産学連携を始めとするオープン・イノベーションを推進するのであれば、VCの強化・レベルアップは不可欠です。VC業界も、年金等を含む機関投資家や金融機関も、そしてベンチャー企業とパートナーシップを組むべき大企業も、世界に負けないように変わっていかなくてはなりません。



【ビジネスレポート】vol.1 09/06/05
「オープン・イノベーション」実現のためのベンチャー投資(1)
オープン・イノベーションへの期待 
 (PDF515KB)

【ビジネスレポート】vol.2 09/06/05
 「オープン・イノベーション」実現のためのベンチャー投資(2)
欧米企業のオープン・イノベーションへの取組 
 (PDF1,240KB)

 1990年代は、日本では失われた10年ですが、アメリカでは復活の10年といわれています。
 わが国では彼の地の産学連携をお手本にしていますが、その実現には、アカデミアの研究成果の事業化、そしてその研究成果が競争力の源泉となる仕組みが必要です。日本の産学連携は、アカデミアからネタを出すことに一生懸命になっていても、事業化には手がついていません。
 アメリカやヨーロッパ等は、この20年、オープン・イノベーション、つまり、「社外にある技術でも優れたものは社内にあると同等に扱い、積極的に導入する」ことを進めたが故に、大企業の競争力は増し、またこれはベンチャーにとっても、大学にとっても活性化の源泉となっています。翻って日本は内製化にこだわり、外の新しい技術に余り重点をおいてきませんでした。例えば、日本の製薬企業が圏外にいるのも、これが大きな理由の1つと思われます。
 こうした取り組みに対する姿勢の違いが経済成長の差につながっただけではなく、わが国のベンチャーが成長しない大きな理由のひとつではないでしょうか。大学の研究成果が効率よく活用されない理由でもあります。科学技術立国を目指すわが国の競争力強化のためには、オープン・イノベーションの重要性を今一度、認識する必要があると思います。そのような趣旨でHVCとしてもオープン・イノベーションについてまとめました。



◆業界レポートvol.4 09/05/13
「米国新薬承認分析‐2008年」 (PDF350KB)

 今回の業界レポートのテーマは米国FDAにおける「米国新薬承認分析」です。最近、ブロックバスターの承認が難しくなったのではないか、承認そのものが遅くなったのではないかなどといわれていますが、このあたりについて触れています。そしてもう1つのポイントがドラッグラグ、欧米で承認されている薬が日本で承認されていないという現実です。本レポートでも記載されているエルトロンボバグ(eltrombopag)もまだ日本では承認されていない薬剤の一つです。
 ドラッグラグのために日本の患者さんは最高の医療を受けられない状況にある、また日本の承認が遅いため国内の製薬やベンチャーですら海外での臨床試験を優先するという事態が発生しています。これは患者さんにとっても、日本の医療産業や製薬企業にとっても由々しき問題です。ちなみに、医薬品、医療機器の開発で一番お金がかかるのは臨床試験。この部分を海外に持っていかれれば経済的な損失も非常に大きく、なんとももったいない限りです。



◆業界レポートvol.3 09/04/15
「純血主義のメルク、シェリング・プラウを買収」 (PDF274KB)

 ファイザー社は日本の中央研究所を閉鎖した一方でワイス社の買収(680億ドル)を発表。メルク社は子会社の万有製薬株式会社の筑波研究所を閉鎖した一方でシェリング・プラウ社買収(411億ドル)を発表。いずれもなりふり構わず、規模とパイプラインを拡大したいという意向が見えています。リリー社もイムクローン社買収にとどまらず、さらに150億ドル程度の買収を計画していると明言。メガファーマの買収への意欲は、相手がビッグファーマであろうがバイオベンチャーであろうが衰えるところを知らず、日本勢もこの動きに何とかついていこうとしています。
 そうした中、ファーマでの基礎研究や初期の開発は一気に後退し、科学者も居場所がなくなると世界中で悲鳴が上がっています。翻って、パートナリングの重要性は日増しに高まっており、大学、バイオベンチャー、独自技術を持つ中堅中小製薬にはチャンス増大でもあります。これからもメガの動きからは目が離せません。



◆業界レポートvol.2 09/03/17
「期待される新薬(1)フェブキソスタット」 (PDF961KB)

 米国FDAは45年ぶりに痛風の新薬を承認しました。これは帝人ファーマ(現)が開発したもので、武田薬品が米国で承認にこぎつけました。これは日本にとって快挙です。一方、この薬は2008年4月、フランスのイプセンが欧州で承認を取得。米国ではこれに遅れること1年でやっと承認。一方、開発した本国である日本では再度フェーズIIIを帝人ファーマが行っている状況で承認はさらに2年後になりそう。
 フェグキソスタットはいい薬との評判であるにもかかわらず、日本での承認が一番遅いことは問題です。アステラス製薬が米国バイオベンチャーへの買収を価格競争から断念したことからも分かるように、各社はネタ探しに必死になっています。その一方ですぐれた新薬候補の承認に日本で時間がかかっているようでは、製薬企業にとってもバイオベンチャーにとっても死活問題です。
 今回の承認の遅れが厚生労働省の承認手続きにあるのか、申請者である製薬企業にあるのかは分かりませんが、早急な改善は必須です。



◆業界レポートvol.1 09/02/13
「ファイザー社のワイス社買収を考える」 (PDF489KB)

 さて、注目の第1回は、「ファイザー社のワイス社買収を考える」で、最近相次ぐ大手製薬企業のM&Aの動向を捉えています。アメリカでの最近の統計によると、2008年のVCbackNのIPOは6件とひとケタまで激減し、史上最低の水準でした。さしずめ、07年は86件を数えました。時代はM&A、事業部門の売却といった方向です。特許切れを控えた製薬大手がネタ探しに必死になっている現在、バイオベンチャーにとっては大きなビジネスチャンスなので参考にしていただきたい、とそのレポートの趣旨を説明しています。どうぞ、ご意見やご感想もお待ちしています。


著者紹介
松田一敬氏  (株)HVC代表取締役
慶応大学経済学部卒業後、山一證券、北海道未来総合研究所を経て、1999年に北海道ベンチャーキャピタル(現HVC)を設立。地域密着型ベンチャーキャピタルの草分け的存在として、サッポロバレーの推進、北海道におけるバイオクラスターの形成促進等に携わるほか、技術移転、インキュベーションに力を入れる。INSEAD(仏)にてMBA取得、小樽商科大学大学院商学研究科修士課程修了(修士(商学))、北海道大学大学院医学研究科博士課程修了(医学博士)。

伊藤勝彦氏  北海道ベンチャーキャピタル(株)投資マネージャー
東京理科大学院薬学研究科終了後、吉富製薬(現田辺三菱製薬)で創薬研究に12年間従事。仏ソシエテジェネラル証券会社、ドイツ証券でアナリスト業務、日興アントファクトリーでベンチャー企業への投資を経験する。2004年バイオベンチャーである免疫生物研究所の株式公開の責任者を務め、2007年上場を果たす。現在、北海道ベンチャーキャピタル所属。免疫生物研究所顧問。薬学博士。

株式会社HVC
http://www.hokkaido-vc.com/
ベンチャービジネスを発掘、育成し経済を活性化する企業 HVCグループ