■ 価格3分の1に
この方針転換は、「(合成受託の)ビジネスが一番伸びた時期だった」(林社長)にもかかわらず行ったものだった。しかし、トレンドの波に乗り切れない企業が次々とつぶれていくのに対し、この思い切った転換は見事に成功。今や大手製薬会社や大学の多くを顧客に抱え、売り上げの8割を装置販売が占めている。
その同社は今年、早くも第2の方針転換を図ろうとしている。キーワードは「パーソナル化」(林社長)。同時合成できるDNAの数は少なくても、小型かつ低価格で、使用する試薬の量が少ない装置を開発するのがねらいだ。
実は、ひも状をしたDNAには長いものと短いものがあり、創薬に結びつくのはほとんどが長いタイプ。このDNAは短いものより合成に手間がかかるため、製薬会社や大学の多くはいまだに作業を外部委託している。しかし、それではコストが高くついてしまうし、何より企業秘密の漏洩(ろうえい)につながる恐れがある。
そのため同社は昨年暮れ、8本のDNAを同時合成できる装置を従来の3分の1の価格で発売した。さらに今年中には、8〜10本の処理能力を持つ100万円程度の小型装置投入も視野に入れている。これを機に市場規模が日本(年間10億〜20億円)の2倍以上ある米国に進出する計画で、今年は忙しい年になりそうだ。
業界のトレンドをいち早く見抜く洞察力と、ベンチャー企業ならではの機動力を武器に、同社は大企業顔負けのたくましさで競争の激しい業界を生き抜いている。
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