■マザー牧場でキャンプ
千葉県のマザー牧場で、この8月23日から小学3年生から中学2年生による2泊3日の「早稲田V−kidsキャンプ」が開かれる。すでに10回目となり、マザー牧場には専用の教育施設もできた。このキャンプでは、参加者が複数のグループに分かれて会社≠設立。事業計画書の作成や資金調達、商品の企画や製造、広告宣伝、販売などを実践して、最終日には決算報告書の発表会を開くといったスケジュールをこなすことで、会社経営の基礎知識を体験学習する。
キャンプを終えて、子供たちはどう変わるか。「これを見ていただければ、わかります」と平井社長は、前回の活動報告書を差し出した。「人にモノを売るのは大変だとわかった」「もっと魅力のある商品をつくりたい」「今度は計画をキチンとたてたい」など、プログラム終了後のアンケートは子供たちの感想でいっぱいだ。「役割分担で自分の仕事を達成することで、自信が生まれる。また、売ることの難しさを知り、挫折感を味わうことも重要なこと」と平井社長は語る。
平井社長は、以前に勤めていた外資系企業で教育コンテンツの買い付けを担当していた。その時、興味を覚えたのが、米国の教育現場で目にした遠隔地教育と、お金を中心にした世の中の動きを教える経済教育だ。その後、早稲田大学の大江教授のもとで、大学院生として起業家教育の研究に没頭。大江教授が開発した早期起業家教育プログラムを事業の主体にしたベンチャー、セルフウイングを立ち上げた。
|
▲起業家教育講座の様子。ビジネスのおもしろさ、苦労を擬似体験しながら、子供たちの独創性や自立心をのばす
|
■ 子供と真剣勝負
同社の教育プログラムは、社会人向けに作成した本格的な研修内容をベースにしている。「子供の将来を担うかもしれないと思うと、いつも真剣勝負」と平井社長はいう。「例えば、先生が『ドラえもん』を配布物にプリントすると、著作権侵害になりかねない。子供がそれを当り前と思ってしまうと危険。これからの時代、教える側の資質も問われる」と訴える。
市町村や商工会議所などとパートナーを組み、起業家教育の講座を全国で開催することで、ノウハウの蓄積とともに、評価も高まってきた。学習塾やデザイン専門学校との連携、農村と共同での自然体験教育事業、自営業の後継者向け講座など、カリキュラムも増えてきている。また、大学や企業向けの研修プログラムに組み込まれるケースも多くなってきており、事業として採算ベースに乗り始めた。
近く販売会社を設立して、営業面での足場を固める計画だ。また、9月からは平井社長自身が早稲田大学の博士課程に入学して、起業家教育の研究を進めるとともに、第一人者としてハク≠つける。「産業構造が劇的に変化するなか、起業家精神をもった人材の輩出が強く望まれている。起業家教育は、確実に経済の活性化につながる」との信念が平井社長の原動力。「教えた子供たちが成人になる2010年までは、この仕事を続けたい」という。
|