トランプ政権早くもレイムダックか
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◆時候のご挨拶◆
梅雨に入りましたので当たり前ですが、天気は不安定です。前回からかなり時間が経ってしまいました。 一部の方々から、体は大丈夫かと心配頂きましたが元気です。なんとなく英国の総選挙とフランスの総選挙の結果を見てから書きたいな、という意識で間が空いてしまいました。そして、新たに連載「俯瞰学のすすめ」を始めました。
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・トランプ政権早くもレイムダックか
・想定外の英国の混迷
・安倍内閣に変調が
・東大俯瞰経営学ゼミの進捗
・中目黒の街づくりを見学してきました
・俯瞰サロン“「日本」を世界に届ける落語家”
・腕相撲 70代と40代どちらが強い
・俯瞰のクッキング“和風アクアパッツァ”
・俯瞰学のすすめ1
・編集後記
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◆トランプ政権早くもレイムダックか◆
トランプ大統領は相変わらずの悪ガキぶりです。国内ではメディアと情報機関と決定的な対立関係になっています。司法当局は特別検察官を任命して、ロシアゲートを捜査しています。ともかく選挙公約であった、オバマ政権の政策の否定をしつこくやろうとしていますが、どこまでやれるかは疑問です。オバマケアは議会の反対で、移民禁止は司法当局の反対で頓挫しています。今度またキューバ経済制裁を再び強化するようですが、これは大統領の権限で出来るのでしょう。
サウジアラビアを振り出しにヨーロッパに行きましたが、結果はさんざんです。ヨーロッパの首脳、特にドイツのメルケル首相とフランスのマクロン大統領とは信頼ではなく、不信の関係になりました。メルケル首相は「米英はもう頼りにできない」と不信感をあらわにしました。ミュンヘンで大ジョッキでビールを飲みながらの話ですが、酔ったついでというわけではなさそうです。
パリ条約脱退では、ローマ法王や英国のメイ首相の助言すら聞き入れず、国内の経営者の大半が反対しているにもかかわらず、石炭の労働者を守るという理由で脱退を表明しました。
NATOの首脳会議でも集団自衛権の順守を確約せずに、加盟国に軍事予算の拡大を声高に要求しました。これについては、トランプ大統領の理屈もわからないわけではありません。ロシアに対する防衛を、まだアメリカの負担でやってくれとは、ある意味虫のいい話です。これを真面目に受け取れば、メルケル首相は徴兵制の復活を考えるかもしれません。既にスウェーデンは徴兵制を復活しています。
国内でも、このようなトラブル大統領の行動は問題視され、支持率も史上最低です。しかしアメリカ人も忖度の習慣があるようで、閣僚はトランプ大統領を褒めちぎっています。というか、そういう人間を周りに配置したのでしょう。
問題は、このような状態では、国内においてリーダーシップは取れず、早くもレイムダック(死に体)になり、アメリカの経済も変調をきたします。国際関係はアメリカ第一主義で、リーダーシップを取らないと宣言したと同じです。これからは地域大国のアメリカ、中国、ロシア、 EUそして日本が個別問題で個別に交渉するという、まさにG0の世界になりました。北朝鮮問題も日本はアメリカ頼りではなく、主体的に解決する努力が必要です。
全てが振り出しに戻ったトランプ大統領の欧州訪問
http://www.huffingtonpost.jp/michito-tsuruoka/trump-europa-polarize_b_16860552.html
トランプ氏のこと
http://trump-no-sekai.com/category/about-mr-trump/
米英はもう頼りにできない、メルケル独首相が警告
http://www.afpbb.com/articles/-/3129921
まるで踏み絵!閣僚全員がトランプを礼賛 米史上最も醜悪な閣議
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/06/post-7793.php
トランプ氏「自身が捜査の対象」、ロシア疑惑で
https://jp.reuters.com/article/usa-trump-russia-witch-hunt-idJPKBN1972ND
トランプ陣営のロシア疑惑捜査「十分根拠ある」=前CIA長官
http://www.bbc.com/japanese/40024419
◆想定外の英国の混迷◆
英国の保守党がまさかの大敗で、英国が混迷しています。自信満々で総選挙に打って出たメイ首相ですが結果は散々です。 運悪く選挙中にマンチェスターのテロが起こり、加えてロンドンの大火災があり、その火がメイ首相に飛び火して火だるまのようです。
EU離脱の国民投票に打って出たキャメロン首相と同じ結果です。 2人ともエリート中のエリートですから、国民一般の意識からずれて、驕りとうぬぼれがあったのではないでしょうか。
メイ首相が進めようとしたEUからの強硬的なEU離脱「ハードブレグジット」という方針は、難しくなりました。どの政党と連携しようとも、これを望んでいませんから。一方、ドイツとフランスを中心としたEUは、毅然とした態度で交渉に臨むと思いますから、時間切れで極めて不完全な、そして英国にとって不利な状況になる可能性が高くなりました。場合によっては、EU離脱の決定を覆す可能性もあるようです。もともとメイ首相は離脱反対でしたが、保守党内の風向きを感じて直前で豹変した前科がありますから。
一方、フランスのマクロン大統領は総選挙に大勝し、ドイツのメルケル首相も秋の総選挙で第1党を確保する予想ですから、この2人の強い連携はEUを引き締め、安易な離脱は許さないでしょう。この英国抜きの強い連携は、EUの意思決定を速めることになるでしょうか、日本とのEPA交渉も進みました。
もしメイ首相が辞任するようなことがあれば、新首相は早い段階でもう一度総選挙に打って出る可能性もあります。いずれにしても英国は混迷を深めていくのでしょう。
メイ首相辞任求める声広がる
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/06/post-7783.php
保守党大敗の英国総選挙。「歩く屍」と英紙で酷評されたメイ首相の行く末
http://news.livedoor.com/article/detail/13199397/
英高層住宅火災メイ首相に批判 「政治的命取り」の報道
https://mainichi.jp/articles/20170618/k00/00m/030/033000c
メイ英政権、EUと初交渉で譲歩 離脱撤回シナリオも
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201706/CK2017062102000133.html
外相と農水相、EU側と会談調整 日欧EPA交渉
http://www.asahi.com/articles/ASK6P3QF6K6PULFA007.html
◆安倍内閣に変調が◆
安倍内閣も何か変調をきたしているような感じがします。強権的で安倍首相に忖度しすぎて、官邸が政治の混乱を引き起こしています。加計学園の問題にしても、文部省の文書を存在しない、怪文書などと決めつけ、前川前次官が確かにあったと記者会見で表明してもそれを認めず、読売新聞を使って援助交際の記事を書かせて印象操作をしました。
さすがに与党の公明党もこれでは国民に説明できないし、国民が納得しないから再調査をしてくれと安倍首相にねじ込んで、再調査が行われました。見苦しいドタバタ劇です。たとえ文書が存在しても安倍首相が直接指示したわけではなく、官邸の忖度ですから、そうだと言ってしまえば済んだはずです。
この問題は見方を変えると、50年以上も獣医学部の増設を認可しなかったという文科省の岩盤規制こそが咎められるべきで、加計学園が安倍首相のお友達でなければ、岩盤規制を破った自慢すべき成果です。しかも民主党政権時代からの話ですから、姑息な手を使わずにあっさり処理した方がずっと良かったと思います。しかし、他大学を締め出すような公正を欠く処理ですから、やはり厳しく咎められるべきです。
何でもできると言う官邸の驕りとうぬぼれが、策士策に溺れると揶揄される結果をもたらし、政権の信用を落としました。菅官房長官ももう少し温和な顔で記者会見した方がいいと思います。
結果、内閣支持率の大幅下落で、これに慌てて安倍首相が記者会見して、謝罪気味の発言をしましたが、都議選への影響は避けられませんね。党内の求心力も落ちてくるでしょう。内閣改造で締め付けるようですが。
文科省も開き直ったか、霞が関官僚の宿敵、高級官僚人事を握る萩生田光一副長官の発言文書を公開しました。逆襲です。
それにしても日本のメディアはひどい状態です。政権に対して忖度が過ぎるというのが国際的な評価で、報道の自由度ランキングでは72位、G7では最下位です。
NHKのニュースも、この4月から大幅に変更されましたが、ことさらニュースを明るく軽く扱っているような印象です。会長が変わって、少し政権に対する忖度が変化するかと思いましたが。
準強姦逮捕状の「安倍総理」お抱え記者、取材メールを内閣情報官に転送? アッキーも“いいね!”の官邸フォロー
https://www.dailyshincho.jp/article/2017/05260800/?all=1
新潮が「安倍ベッタリの暴行記者」を追撃、さらなる問題も?
http://biz-journal.jp/2017/05/post_19134.html
報道の自由度ランキング、日本は72位 G7で最下位に
http://www.huffingtonpost.jp/2017/04/26/story_n_16276730.html
◆東大の俯瞰経営学のゼミの進捗◆
4月に開講した俯瞰経営学のゼミも6月に入りました。例年ですが、ここまでくると学生がぐっと知的腕力をつけてきたことを感じます。この手応えは教師冥利に尽きます。
オリエンテーション、グループの研究対象企業の分析、マーケティング、マーケティング3.0 、会計経理、企業価値の算定、 M&A 、リーダーシップ、人事管理と課題をこなし、今週はブルーレイディスクの開発をケースに仕立てた技術開発戦略です。そして来週はIoT 、その後は経営戦略、経営学と続きます。
何度もこのメルマガで紹介していますが、今の学生は私たちの頃と全く違います。すくなくとも私の授業に参加している学生は明るく前向きです。なにしろ、目の前の学生と私とは50歳の年齢差があります。生まれ育った環境や価値観が全く違います。高度成長期をキャリアの出発点にした我々の年代も明るいですが。授業参観可。
◆中目黒の街づくりを見学してきました◆
二子玉川で街づくりのプロジェクトをご一緒した東急電鉄の都市開発グループの方々と、中目黒と自由が丘、そして二子玉川を見て回りました。渋谷と二子玉川そして自由が丘の三角形の地域をプラチナトライアングルと私が名付けて、面として質の高い街を作ろうと言う試みをしていますから、最近の状況を見て回ったわけです。
中目黒のガード下を再開発して、新しい街が出現していました。以前にもガード下にお店がありましたが、すっかり再開発されています。
駅前にはまずTSUTAYAが進出して、その他のカフェやレストランが開業していました。さらに目黒川を渡った先には、入り口がほとんどわからない高級レストランが開業していました。ずっと奥の代官山に近いところに秘密の入り口がありました。
中目黒から祐天寺のほうに歩いていくと、左側のガード下に、毎日行列ができるような飲食店が軒を並べています。ガード下の右側は元から飲食店が並ぶ街でしたから、ガード下を飲食店で埋めて、両側に飲食店が並ぶ新しい街ができました。中にあるおでん屋さんは毎日行列で、一日の売り上げが50万円くらいがあるらしいです。年商にするとすごいですね。
飲食店に向かない先のほうは、スタートアップ企業のオフィスになっています。街作りと言うと何か広い土地に新しくショッピングセンターやタワーマンションを作ることが多いですが、ガード下という空間を利用し、今ある街と共生する街づくりは素晴らしいと思いました。よかったら尋ねてみてはいかがですか。
中目黒は、わざわざ人々が飲食を求めて来る街です。何より中目黒は交通の便が最高です。東横線一本で横浜元町の中華街までいきますし、反対方向は新宿と池袋まで一本です。そして地下鉄の日比谷線に乗れば、六本木、日比谷、銀座、築地、秋葉原に行きます。東京に新しく住まいを構える人には、中目黒が一番だと薦めています。
◆俯瞰サロン◆
「日本」を世界に届ける落語家
桂三輝さんに聞く 海外から見た日本の文化
カナダ出身の落語家・桂三輝(カツラ サンシャイン)さんは、5年にわたって世界各国で落語を演じ、「日本の文化」を広めてきました。その活動の中で得た「本当のところ日本はどう見られているの?」「通じること、通じないことは何?」をお聞かせいただきます。
また、クラウドファンディングの仕組みを使って、今年9月からのロンドン、ニューヨークでのロングラン上演資金の一部調達を進めています。その取り組みについても伺います(https://www.countdown-x.com/ja/project/F7731209)。
日 時: 2017年6月27日(火)18:30-20:00 (18:15 受付開始)
主 催: 俯瞰工学研究所
★会場: 俯瞰工学研究所セミナールーム
東京都港区港南2丁目14番14号
品川インターシティフロント 6
★参加費:講演会のみ 1,000円★
定 員: 40名程度
懇親会: 講演終了後に懇親会を開催します。
参加費用は、別途 3000円程度。
※会場準備の都合上、懇親会への参加の有無もご提示ください。
お申込み:https://www.fukan.jp/俯瞰サロン/
日程・内容は予告なく変更されることがありますのでご容赦ください。
◆腕相撲 70代と40代どちらが強い◆
東京大学工学系研究科の環境海洋専攻の先輩教授だった大坪英臣教授が、真義館の「武術としての空手」を教える道場を東京で開いています。私も入門していますが、大変独特な空手です。ぜひ下記のURLの動画をご覧下さい。武術の本質が判ります。そして興味を持たれたら、入門いかがですか。
腕相撲
https://youtu.be/zLD-J3OZoD8
真義館の活人空手の解明
https://www.youtube.com/watch?v=vExDFuRUmZ4
真義館
http://shingikan-karate.jp/
◆俯瞰のクッキング “和風アクアパッツァ◆
アクアパッツァはよく作る料理ですが、なんとなく和風アクアパッツァという言葉が頭に浮かび、なんとなく作ってみました。似たレシピはあるでしょうが、ともかくなんとなく作った料理です。
なぜか今年は天然の真鯛が安いので、よくこれを使いますが、今回もこれを使いました。魚屋で3枚におろしてもらって、アラも一緒にもらってきます。浅利も買ってきました。
まずアラから出汁を取りました。アラに熱湯をかけ、流水で汚れをとり、ネギと生姜を入れてアクを取りながら30分ほど煮て濾しておきます。
鯛の身には軽く塩を振っておきます。 30分ほど置いてから紙タオルで水分を拭います。皮の方からフライパンで焼いて、焼き色をつけます。この時、皮が焼ける前に動かすと皮が剥がれますので、いじらずに焼きます。そっとひっくり返して皮を上にして、ひたひたに先に取っておいた鯛の出汁を入れます。旨味を足すために浅利を入れて口が開いたら塩麹を入れます。鯛の身にも塩気があり、浅利からも塩分が出ていますから味を見ながら少しずつ入れます。
スープと一緒に皿にもりつけて、ベランダのハーブの葉を上に乗せると立派な料理になりました。残った出汁は、何か実を入れてスープとして食します。その日はキノコでした。3人分以上ありますが、わが家は2人なので、 2人で一匹の真鯛を食べ尽くしました。
◆俯瞰学のすすめ1◆
今回から12回にわたって俯瞰学のすすめを連載します。これは「産業新潮」に連載したものです。文体は原文のままです。
【俯瞰学のすすめ1 なぜ俯瞰学か】
なぜ、今、俯瞰学か。1995年以降パソコンが普及し、それがネットワークにつながることによって、発信される情報が爆発的に増えた。そしてその情報がさらに新たなる情報発信を亢進する。加えてスマートフォンに代表される携帯情報端末はさらに情報の爆発と共有を革命的に加速させている。ツイッターやフェイスブックで発信され、共有される情報の全体は、まさに銀河系のように巨大で全貌は誰も把握できない。また書籍、記事、研究論文のような論理的に構造化された情報も爆発的に増加している。
個人的な経験であるが、書籍や雑誌の記事は、かつては原稿用紙に万年筆で書いていた。雑誌の記事として、原稿用紙20枚を仕上げるのにたっぷり一晩かかった。研究論文も何本も書いたが、手書きし、タイプする。タイプミスをするとその部分に白いペイントを塗って上書で修正した。この作業は根気のいる、時間の掛る作業であるので、手書きの原稿の段階で推敲を重ねて、完全な原稿に仕上げなければならない、これも長い時間を要した。そしてやっと完成すると航空便で学会の査読者に送る。何週間か経つと査読者から修正に関するコメントが航空便で届き、その修正を加えた原稿を、またタイプをし直して航空便で送るという、今では考えられないような長い時間がかかった。
それがパソコンによるワードプロセッシングで修正を繰り返し、インターネットのメールでファイルを送る、という現在のプロセスは、参考論文の検索・入手を考えると、100分の1以上の生産性向上を実現した。
結果として学術論文の数が90年代後半から爆発的に増えた。例えば燃料電池および太陽光電池に関する論文発行を見ると、90年代後半までは年間の発行数が300本くらいであったのが2000年代になると1,000 2,000 3,000と爆発的に増えている。年間300本くらいまでであればその分野の研究者は、学会のプロシーディングをパラパラ斜め読みすることでその分野の研究の進捗を把握できたが、 1,000を超すとこれは不可能になる。という事は特定の専門領域でさえ全貌を認識している研究者いない。さらに研究の進捗は専門分野の深化となり、専門分野は細分化される。細分化された専門分野の研究成果はその細分化された専門家以外は知ることも、評価することも難しくなる。加えて論文の生産性向上はすなわち研究のスピードアップになり、その進歩に付いていく事は細分化された専門分野の研究者でさえ容易ではない。
一方社会的な課題、すなわち環境、エネルギー、安全、高齢化、食料、健康、は多分野の知識を活用したイノベーションが必要で、高度の専門知識はこのイノベーションの現場で活かされなければならないが、イノベーションの現場が多岐にわたる関連分野の科学知識を、直接利用することは極めて困難である。従って貴重な科学知識は社会的課題を解決するために有効に役立ってはいない。
このジレンマを早くから指摘していた人は、私の恩師である、元東大総長の吉川弘之先生である。「専門分野が深化していくと蛸壺状態になるが、社会に研究成果を還元するためには、全体を俯瞰して見ている人が必要だ」であった。
時を経て1999年私は東京大学に帰任することになった。そこで出会った人が「科学的知識をイノベーションに生かすには“知の構造化”が必要だ」と主張していた。その人とは当時の工学系研究科長であった小宮山宏先生である。そして私は俯瞰工学の研究室を立ち上げることになった。
俯瞰学の始めは「動け!日本」という知の構造化プロジェクトである。「動け!日本」というプロジェクトは、内閣府経済諮問会議の依頼による日本経済再生の政策提案のプロジェクトであった。バブル崩壊後の経済の低迷が続く中で、いくら財政出動してもいっこうにデフレ脱却は出来ない状態であった。その中で、「アメリカが製造業の不振で苦しんでいる時に、 MITの“Made in America”というプロジェクトが製造業再生の道筋を示したように、東大工学部でも同じようなことができないか」という打診が小宮山研究科長に有った。受けるべきかどうかという相談を受けた私は、 「 MITで出来た事が東大工学部はできない、とは言えませんね。ましてや東大は国立大学ですから国の政策に協力する責務もあります。リスクはあります。」と答えた。そしてこのプロジェクトの事務方を担当することになってしまった。
東京大学の理系といっても研究室は数百以上のあり、構造化はおろか、組織化もされていない。この状態で理系の衆智を集めて意味のある提案をするという、途方もないプロジェクトであった。“知の構造化”の挑戦であった。その後の経緯は割愛するが、そのプロジェクトの提案は「動け!日本」としてまとめ、日経BP社から出版することが出来た。
この時、知識を俯瞰的に認識し、構造化する必要性を強く認識し、俯瞰工学の技法を研究することになった。次回以降、手探りで研究してきた俯瞰学の技法と事例を紹介したい。
◆編集後記◆
・トランプ大統領のアメリカ第一主義で、いよいよGゼロの世界になった。日本も地域大国として自立していかなければならないが、国民の意識改革が必要だ。憲法論議の前にこれを議論すべきだ。憲法改正は追及するものではなく、ついてくるものだ。
・英国のメイ首相は、サッチャー元首相のような鉄の女ではなかった。張り子のトラか。選挙中まともに選挙活動をしなかったとか。直接国民に呼びかけることなく、ただ保守党の党員集会で演説しただけとは、驕りと自惚れには気を付けないと。
・フランスとドイツの連携が強化されEUが安定すると、世界も安定度を増す。マクロン大統領の技量は未知数だが。ただ国防相と国交省がスキャンダルがらみで相次いで辞任しているので、政権の基盤がまだ弱い。
・「李下に冠を正さず」これが出来ずに、森友学園、加計学園と泥んこになって、安倍政権は国民の信頼を失った。国会中継を見ているのは、家にいるシニアだけだ。そしてシニア民主主義の時代、若い世代も「李下に冠を正さず」を知らなくても、オカシイとだれでも思うはずだ。
・小池知事は本来の東京都知事の仕事をしているのだろうか。政治家として活動は目につくが、行政府のトップとしてすべき仕事は山ほどあるはずだ。石原知事の責任の執拗な追求には私恨を感じさせる。「女は怖い」といえばセクハラになるが。
・全部とは言わないが、日本のメディアのニュース番組の水準があまりにも低い。ABC、CNN,BBCのニュースと比べると差があり過ぎる。自由度の前に資質も自己評価したほうがいいかもしれない。
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◆俯瞰 MAIL 0069号(2017年6月21日)
発行元: 一般社団法人 俯瞰工学研究所
発行人: 松島克守
編集長: 松島克守
URL: http://fukan.jp
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※本記事は松島克守氏の許諾を得て、再録したものです。
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