厳しい評価の安倍首相


◆このメールマガジンは、松島克守が、東京大学教授、そして(社)俯瞰工学研究所 の代表としてこれまでに名刺交換やメール交換をさせて頂いた方々に送らせて頂いて おります。またこのようなメールマガジンはメールボックスのご迷惑と感じられる方 もあるかと思います。ご遠慮なく不要のお申し出を下さるようお願いします。また、 内容等についてもご遠慮なくご意見を頂ければ幸いです。 過去の俯瞰メールは俯瞰工学研究所のHPの「俯瞰メールのアーカイブ」にあります。 http://www.fukan.jp/ また、ご友人、ご家族に転送して頂くことは大歓迎です。このマガジンは長いので添 付のpdfファイルを保存しておいてタブレット等でゆっくりお読み頂くこともできます。




皆様

◆時候ご挨拶◆
大雪で東京や山梨県そして秩父などで交通の混乱と集落の孤立で大変な2月でしたがやっと春の兆しも感じられます。いずれも過去になかった大雪で想定外という事ですが、現在、すでに地球の温暖化の影響で気象は全く過去とは違っていることを認識すべきです。厳しい暑さと寒さ、大型の台風、豪雨は毎年起こると想定しなければいけないと思います。北極海の氷の減少を見れば解ります。想定を変えることはビジネスや農業でも必要でしょう。

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・厳しい評価の安倍首相
・新たな冷戦時代になったのか
・対岸の火事では済まされないPM2.5
・ビジネスモデル学会 春季大会
・ビジネスモデル学会 イブニングセッションのご案内
・頭のよくなるクッキング24
・デジタル書斎の構築30
・「オリバーストーンのもう一つのアメリカ史」
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◆厳しい評価の安倍首相◆

安倍内閣が発足して 1 年経ちました。支持率は依然高い水準を保っていますが、評価は厳 しくなっています。 安倍政権への国民の期待は、日本経済新聞の世論調査で、安倍晋三首相が優先すべき政策 課題を聞いたところ、3割超の支持を集めたのが社会保障改革(38%)と規制改革(30%)。 社会保障改革は女性の 42%、男性の 33%と男女ともに最も多かったとあります。規制改革 は女性 32%、男性 28%が優先課題に挙げたが、安保政策は6%です。


ただ安倍首相は外交と安保政策に力を入れているようですが、そこのところは皮肉にも評 価は厳しいところです。 安倍首相には緊密な関係にあるナショナリストが影響力を持っているようです。ただあま り質が良いとは思われません。 NHK の会長と経営委員は安倍首相の強い意向で決められ たと思いますが、あの会長の発言あるいは経営委員の発言を見るとなぜこんな人を選んだ のかと言わざるをえませんが、結局あのような人々の影響を受けて外交や安保政策に関す る発言をしているのではないでしょうか。


あの靖国神社参拝にしても日米関係にこれほどのインパクトがあるという認識がなかった ようです。アメリカが失望という言葉を使ったことが注目されていますが、私は安倍首相 の政治的資質に対し失望したのではないかと思います。党内の保守派へのコミットメント があったような話もありますが、国益とのバランスが取れていません。さらにダボス会議 でも自分がナショナリストであることをアピールするような失言をしています。


集団的自衛権や教育改革では公明党のリベラルに助けられ、失政をなんとか免れました。 選挙で選ばれた首長が教育行政の絶対的な指揮権を持つようなとんでもない話がありまし たが、教育は長期的に一貫した価値観に基づいて行われるべきであって、時々の首長が軽 率な指導するものではありません。名前は挙げませんがおかしな人格の人が時々当選する 衆愚な世界ですから。


アベノミクスも海外では厳しい論調が目立ちます。日本でもアベノミクスではなくアベノ マジックとも揶揄されています。 なんといっても第 3 の矢である成長戦略が見えませんし実現していません。賃上げを熱心 に経済界に要請していますが、これが成長戦略とは言えません。成長戦略に必須の規制緩 和も TPPもリーダーシップを発揮できていません。 アベノミクスの評価については下にあるノア・スミス 「アベノミクスの教訓」が良い解説 をしています。


安倍政権の課題は

「政権の広報機関化」が加速するNHK

教委改革を盛り込んだ地方教育行政法改正案

「日米関係傷つけた」…首相の靖国参拝で米議会

靖国参拝、米「失望」表明の舞台裏

なぜダボス会議の安倍発言は物議を醸したか

[FT]待望した安倍首相を今は悔やむ米政府

アベノミクスはアベマジックだったのか?

[FT]アベノミクス、内部分裂で最大の試練

ノア・スミス 「アベノミクスの教訓」



◆新たな冷戦時代になったのか◆

ウクライナの最近の政治的な混乱を見るとまさにかつての冷戦構造を思い出させます。ソ 連が無くなって民主化が進んだ東ヨーロッパは EU とロシアという二大勢力の代理戦争の 感があります。このままいけばウクライナは EU よりの国と、ロシアよりの国に分裂する 可能性すらあります。ロシアの軍事力の行使は決定的な冷戦構造を生み出す恐れがありま す。アジアではアメリカと中国の間で東南アジアの小国が双方との距離感に悩んでいます。 ベトナム、ラオス、ミャンマー、タイなどです。インドは対中国に対しては強硬な立場を とっていますが。


いずれにせよ超大国であったアメリカが、その力を失った今、世界各地の情勢は流動化し ヨーロッパではロシアと EU、アジアではアメリカと中国という冷戦構造が固まってくるの かもしれません。その意味では日本での安全保障政策はもっと議論されるべきですが、そ れをナショナリストに委ねてはいけないと思います。もっと国民的な議論が必要ですが国 民はあまり関心がないようです。


ウクライナ、危機感強める

ウクライナで親欧米政権始動 親ロ派、地方政府占拠

インド次期首相有力候補のモディ氏、領土問題で中国に警告



◆対岸の火事では済まされないPM2.5◆

中国の大気汚染が深刻です。この状態が続けば国民の間でパニックが起こり、共産党政権 の存続すら危機に瀕するでしょう。さらに日本にとっても対岸の火事では済まされません。 すでに日本にも pm 2.5が飛来しています。観測体制を強化するといっても所詮飛来を防ぐ ことはできませんから、マスクの着用など必要になってくるかもしれません。


pm 2.5 は強烈な発ガン物質です。大気汚染の影響でしょうが、なんと世界の癌死亡者の 3 分の 1 以上が中国人です。加えて水質汚染や土壌汚染が深刻ですから、中国の国民も黙っ て我慢する限界を超えています。という事は中国の政治に大きな不安定要素があることに なります。無論経済的な影響も深刻でしょう。例えば自動車の販売も規制されれば自動車 産業の成長にも影響が出ます。鉄鋼や化学プラントはすでに設備過剰ですから思い切って 老朽化した設備を廃棄するでしょう。 という事は想定しなかったような中国の変化があり得ることを頭に入れて企業も行動する 必要がありますね。


中国で大気汚染とめどなし―57都市でPM2.5が「最悪レベル」

この冬最悪の大気汚染 北京周辺、越境懸念も

越境する大気汚染物質の衛星観測

がん発症、中国が突出 肺がんは世界の36%



◆ビジネスモデル学会 春季大会◆

一日で半年分の勉強ができるビジネスモデル学会春季大会のご案内です。まだ参加のご経 験のない方は是非これを実感し下さい。

テーマ: 目から鱗のビジネスモデル
日時: 2014年3月15日(土) 10時-18時 交流会18時-20時
場所: 東京大学本郷キャンパス工学部新2号館 (アクセス)


2014年の春季大会のテーマは「目から鱗のビジネスモデル」です。
今回の春季大会では、一つの社会的課題から捉えるのではなく、学会の原点である「ビジ ネスモデル」そのものに焦点を当てて、多様な分野で活躍されている経営者や専門家に登 壇いただき、各人が取り組む「ビジネスモデル」を紹介していただきます。この結果、参 加者の皆様が、今の「旬な」ビジネスモデルや、「先端的」ビジネスモデルから刺激を受けて、今後のビジネスモデルの進化の姿を思い描く、貴重な機会となることを願っておりま す。


また今大会では、昨年に発足した「日本ビジネスモデル大賞」の第二回受賞企業の発表・ 表彰を行います。ここで、受賞企業の「独自性」「事業性」「共感性」に卓越したビジネス モデルを、経営者の記念講演として、直にご紹介する場を提供いたします。 さらに、ネットベンチャーの若手経営者による「パネル討議」や「アートとテクノロジー」 を駆使する、先端クリエーター経営者との対談など、今までになかった新たな試みにも挑 戦しています。 「旬な全体感」と「先端的刺激」をキーワードに、ビジネスモデル学会の「新しい」形を 皆様と共有できることを大変楽しみにしております。


3 月 15 日、東大本郷の工学部 2 号館ホールで、ビジネスや研究分野で活躍されている多様 な方々にお会いできることを願っております。


http://www.biz-model.org/




◆ビジネスモデル学会 イブニングセッションのご案内◆

3月3日(月) 第14回イブニングセッション開催のご案内

成功のビジネスモデルは人の脳と心抜きには語れない
 ―ハイパフォーマーを応用スポーツ心理学に基づき育てる―
講師:辻 秀一 氏
スポーツドクター、株式会社エミネクロス代表
オフィシャルサイト:http://www.doctor-tsuji.com/
日時:3月3日(月) 19:00-21:30
場所:霞ヶ関ナレッジスクエア エキスパート倶楽部

(講演要旨)
ビジネスにおける戦略はさまざま存在する。しかし、どんな戦略もそれを実行するのは人 そのものである。その戦略を遂行するための人材づくりは普遍的テーマであり、それこそ が成功のビジネスモデルでもあると考える。パフォーマンスを最高に発揮するための心づ くり、人づくりをスポーツ心理学、フロー理論などを交えながら実際の事例を踏まえてス ポーツドクターとして紹介する。柔軟でしなやかで強い心のための脳の使い方・鍛え方の ヒントを述べる。スポーツもビジネスもその強化モデルがあれば、個人としても組織とし ても常勝できるはずである。


3月3日(月) 第14回イブニングセッション開催のご案内




◆頭のよくなるクッキング24◆

和食が世界無形文化遺産に登録されました。和食とは何か色々な定義があると思いますが、 基本は出汁と呼ばれる旨味を使った料理ではないでしょうか。ということで和食の出汁に ついていろいろ勉強しました。きっかけは TSUTAYA でたまたま「だしと日本人」という ムックを見つけて読んだことです。Umamiは、今は 5番目の基本味として世界が認知して いる国際語です。 明治時代に昆布の旨味はグルタミン酸であることが発見され、大正時代に鰹節の旨味がイ ノシン酸であることが発見されさらに昭和になってシイタケの旨味がグアニル酸であるこ とが発見されました。したがってダシの主な素材は昆布、鰹節、干し椎茸です。煮干しも 素材です。


昆布にはいくつかの種類がありますが一番旨味成分が多いのは羅臼昆布です。次に真昆布 で利尻昆布そして日高昆布が続きますが、 1番安い日高昆布は旨味が極端に少ないですね。 羅臼昆布は高価ですが出汁を取った後も柔らかく煮物にも使えます。 鰹節は縄文時代から食用にされてきたと言われていますが九州から千葉にかけての太平洋 岸の産物ですから、その他の地域ではイワシの煮干を使ったり、トビウオを使ったりして います。


昆布だしの取り方は色々言われていますが科学的な研究の結果、60 度のお湯で 1 時間浸す のが 1 番良いようです。一般には水から昆布を入れ沸騰寸前に取り出すとありますが、試 してみると 60度くらいで 1時間ぐらいじっくり煮出した方がずっとうま味が出ます。高温 にすると旨味成分以外が溶け出して雑味が出るわけです。


そして昆布を引き上げたあと鰹節を入れ一気に煮上げてこして造るのが「一番だし」です。 色々試しましたがこれがやはり最高の出汁でした。


煮干は頭とワタとって水に浸しておきこれを煮出すと美味しい出汁が出ます。味噌汁に向 きます。アゴと呼ばれるトビウオも同じような味です。また煮干ではなく青森地方には「焼 干し」というイワシのダシがあります。煮干しは字のごとくイワシを一旦煮てから干すた めこの段階である程度旨味が失われますが、「焼き干し」は直接イワシを焼いて乾燥させも ので煮干より美味しいと言われていますが、かなり高価です。


干し椎茸は水で戻しますが、煮出す時に一気に 60 ないし 70 度くらいに温度を上げる必要 があるとのことです。何故ならば旨味成分であるグアニル酸を分解する酵素が 45ないし 50 度で最大なためです。 さらに旨味は足し算、掛け算の効果がありますので複数の素材で強い旨味を出すことが出 来ます。以上はムックから学んだことです。 ということで色々な昆布を買って試してみました。ムックに紹介されていた福井県の「奥 井海生堂」から通販で買いました。ここでは昆布を何年か蔵で寝かせて味わいに深みを出 しているとのことです。利尻の切り落としという徳用品を主に使っています。


鰹節もこのムックで紹介されている静岡県の田子の「カネサダ商店」から本枯節を取寄せ ました。鰹節は高価なようですが実は鰹節そのものを買って自宅で削るとリーズナブルなコストなります。考えてみれば子供の頃はどの家にも鰹節を削る道具があり、私もそれで 鰹節を削っていました。何十年も忘れていましたがやってみました。ところがなかなかう まく削れません。みんな粉なってしまうのです。どうも鰹節が乾燥しすぎていると粉にな ることと、削る方向にも寄ることがわかりました。回転式の安全な鰹節削機もあります。


出汁は毎日使う物ですからコストが気になります。小さなパックになった削り節は非常に 高価です。 1グラム当たり 26円になります。鰹節を削れば 1グラム当たり 10円です。煮 干は 1 グラム当たり 5 円くらいです。ダシ用として大きな袋で売られている削り節は意外 と安くて 1グラム当たり 5円くらいです。


結論からいうと先に紹介した昆布と鰹節の出汁がコストから見ても味から見ても最高です。 いろいろなだしの実験をしているとつくづく昆布という食材がすごい食材であることが分 かってきました。基本的には日本人しか食用しませんからまさに和食の基本です。北海道 でしか取れない昆布ですが沖縄でも大量に食されているという事から、日本海の海運ルー トのすごさも判ります。誰がつけたか知りませんが裏日本とはひどい日本語ですね。 麦茶を冷やすような容器にミネラルウォーターと昆布を入れておくと昆布水ができます。 これを飲用すると体に良いということも言われています。


昆布については「奇跡の昆布革命」という本があります。昆布水の作り方は水 1 リットル に 10グラムの昆布をハサミで細切りにしていれ一晩冷蔵庫に置くだけです。冷蔵庫では 10 日間は持つそうです。このほかにもたくさんの昆布レシピが紹介されています。


和食、世界無形文化遺産に登録

「だしと日本人」 NTS 2012
むつ市のうまいは日本一!「焼き干し」

奥井海生堂

カネサダ商店


◆デジタル書斎の構築30◆

日本と米国の IT 企業の格差があまりにもひどすぎます。アメリカの IT 産業はものすごい 変化を起こし続けています。GoogleやAppleは自動車産業さえも読み込もうとしています。
そして膨大な現金を持っており、これで“新しい世界”の積極的な投資をしています。と もかく上位 6社で 37兆円もの現金を積み上げています。
その米国でも時代の変化に付いていけなかったマイクロソフトの凋落が著しいですね。なかなか決まらなかった次の CEOも結局内部昇格でなんとか決まりましたが、またビル・ゲ イツがアドバイザーで新CEOを助けるそうですから時代に付いていけるとは思いませんね。 日本でも LINEが渋谷で頑張っていますが、この企業は韓国の NAVERの子会社です。 スマートフォンの半導体でも日本企業は世界の業界に付いていけず脱落です。任天堂もス マートフォンという大きな波に乗り遅れて見る影もありません。過去の成功体験にとらわ れて時代の流れに置いていかれる、教科書的なケースです。
なぜか日本人はソニーが大好きなようです。したがってソニーの苦境に心を痛め、復活へ の期待が強いですね。ただこの好景気の中で、次々と発表されるリストラや、赤字決算は 何が根本的な原因なのでしょう。私がたまたまたくさんのソニーのエンジニア、その OB とお話する機会があります。そこで感じるのはもう一度初心に帰って出直すしかない、で す。その初心とは「真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして 愉快なる理想工場の建設」ではないでしょうか。現在のソニーの経営はこれを失ったこと にあると思います。
それにしても日本と米国の IT企業の格差があまりにもひどすぎます。復活ではなく新しい 企業として生まれ変わるしか日本の IT産業の生きる道はありません。


アップル・テスラとソニー・楽天 広がる革新格差

孫氏も狙うLINEのお値段 1.5兆円は正当か

米IT、空前の「金余り」 6社の手元資金 37兆円

誤算のウィンドウズ8 マイクロソフトに迫る落日

決壊するウィンドウズ帝国 マイクロソフト、迷宮に

富士通・ドコモ・NEC、スマホ半導体の開発断念

クラウド時代 迷う任天堂

ソニー、「エレキ中心主義」が遅らせる復活

ソニー設立趣意書



◆書評◆

今回は書籍ではなく映像情報です。多分書籍にすれば数十巻となるでしょう。
第一世界大戦から 100 年の歴史を俯瞰的に理解しないといけないと、前回書きましたが第 二次世界大戦から今日までの俯瞰する重要な情報が見つかりましたので、ご紹介します。
第一次世界大戦から第二次世界大戦までは約 30 年ですがこの間は依然として世界の覇権は 大英帝国が握っていたと思います。一方アメリカは経済的には英国をはるかに凌駕する規 模になっていましたが、この間大恐慌で塗炭の苦しみを味わっています。このアメリカ発 の大恐慌はある意味第二次世界大戦の原因を作っていったと思います。
前置きが長くなりましたが、NHK BS のドキュメンタリー番組として「オリバーストーンの もう一つのアメリカ史」という十回の番組がありました。これは録画して保存してありま すのでこれを全て観ました。各回が1時間近くの大作ですから全 10 巻は一度には見られま せん。 2―3 回分ずつ分けて観ました。圧巻です。アメリカのルーズベルト大統領の時代か ら現在のオバマ大統領の時代まで俯瞰的に約 70 年間の歴史の流れが理解できます。これを もっと早く見ておけばよかったと思いました。無論これはオリバーストーンという人の視 点からの解釈ですが、映像を駆使した解説は、文字で書かれた歴史書の情報量とは次元が 違います。よくこれだけの映像を探し出したと思いました。文字で書かれた歴史書とは違 い直接感性という脳の中枢に情報が打ち込まれる感じです。
ナチスの台頭に対し西ヨーロッパは極めて不完全な対応することによって結果としてヒト ラーの暴挙を許し、ヨーロッパだけでも 3,000 万人近い犠牲を出し、完全に世界の覇権を アメリカに渡すことになります。この原因は第一次世界大戦によって生まれたソ連という 共産主義の恐怖と反発が原因だったことがわかります。
チャーチルの度重なるアメリカ参戦の要求をルーズベルト大統領は理解しつつも、当時ア メリカ参戦に消極的な国民感情に配慮し、なかなか踏み切れません。そのためにはとんで もない事件が必要とされました。ルーズベルトの巧妙な政治手法によってまんまと日本は 真珠湾攻撃と入っていたことがわかります。ですから、アメリカにとって主たる戦争はヨ ーロッパ大陸であって、太平洋戦争はむしろ二次的な戦争だったと位置づけられています。 スターリンは圧倒的なドイツの軍事攻勢に対抗することができないので、まずナチスに対 する防衛線を国境の西に置くためにポーランド侵攻、フィンランド侵攻、バルト海 3 国の 併合をします。この段階では欧米はヒトラーに共産主義撲滅の期待すらかけています。で すから第二世界大戦の初期は孤立無縁のソ連のスターリンが多大な犠牲を払って祖国防衛 戦争をしたわけです。 凄いのは全ての工業生産力をはるか東に再構築し、その生産力でレニングラードを死守し て反攻に転じますが、その時点でもまだ連合軍はノルマンディーに上陸していません。第 二次世界大戦のヨーロッパでの勝者はソ連のスターリンです。第二次大戦直後、スターリ ンは西ヨーロッパとの共存を模索しますが結果として欧米は共産主義に対する嫌悪感から これを受け入れません。そのためソ連はポーランド、ハンガリー、東ドイツ、チェコスロバキア、ブルガニアと民主政権を倒して鉄のカーテンを構築していったとあります。東ア ジアでは防衛線として朝鮮半島の共産化を進めこれが朝鮮戦争と展開されました。

ルーズベルト大統領の後を継いだトルーマン大統領は悪人として描かれています。彼は台 頭するソ連との冷戦構造の認識から、必要もない原爆投下を指示します。広島と長崎はス ターリンに対する威嚇行動だったのです。そして対立的な行動から冷戦構造を完成させて いきました。このあとを継いだアイゼンハワー大統領も軍人ですから冷戦構造の推進者で す。この後のケネディ大統領が高く評価されています。すでにこの時にはソ連は核を保有 しています。 ベトナム戦争はフランスの植民地からの独立の戦争として始まりましたが、冷戦構造の認 識では、アジア全般への共産主義の拡張として位置づけられます。そして南ベトナムの戦 争とつながります。この泥沼の戦争が意味のないことを理解していたケネディ大統領は撤 退を決意して宣言しますが、ダラスで凶弾に倒れ、ジョンソン大統領の時代となります。 ジョンソン大統領はケネディの決定をひっくり返し、トンキン湾事件をでっち上げ北爆を 拡大し、一時は 50 万ものアメリカ軍を投入し無差別の殺掠を行いますが、結局 4 流国と侮 ったホーチミンを降伏させることができず、高まる国内のベトナム反戦の波に押されて大 統領再選を諦めます。ここにも驕りからの単純な誤解があります。ベトナム人にとってベ トナムから撤退するという選択はありません。最後の1人になっても戦うしかないのです。
この後の歴史で最も重要な働きをしたのはソ連のゴルバチョフです。彼は意味のない冷戦 を止め、軍事予算を国民の生活水準の向上に使うべきだという信念から核廃絶と冷戦終結 をアメリカに持ち掛けますが、当時のレーガン大統領は産軍複合体の保守派の傀儡ですか らまともに核廃絶の提案に乗りません。結局ゴルバチョフは一方的に鉄のカーテンを撤去 してヨーロッパから軍事的脅威をなくします。この上に EU が発展し、東に影響力を広げて います。これに対抗するためプーチンは勢力挽回の行動をしています。
この後の最悪の大統領としてブッシュ親子が描かれています。サダム・フセインのクエー ト侵攻に対し、サウジアラビア国境にイラクが集結しサウジアラビアを侵攻するという画 像処理をした映像でサウジアラビアに基地提供をさせ、イラク攻略を行います。狙いはイ ラクの石油です。イラクの石油利権はそれまでイギリスのものですから当然英国も参戦し ます。さらにイランの脅威から中東の石油を守るために軍事行動を必要としましたが、 9. 11 という絶好の事件が起こり、ブッシュ大統領はオールマイティーの戦時の大統領になり ました、意味のないアフガン侵攻を行い、大量破壊兵器という虚偽の理由で再びイラク進 攻を決行します。英国のブレア首相は石油利権の回復のため参戦します。結果はご存知の 通りです。
アメリカには産軍複合体と石油マフィアで固まったいわゆるネオコンという保守勢力があ り、これがそのあくなき欲望のまま世界を意のままに仕切って来たのです。20 世紀はアメ リカの世紀と言われますがこれが実態です。

ここで重要なことは、日米同盟が強固であると言われた時期は、基本的にアメリカがネオコン主導の政権であった時です。ロンヤスと言われたレーガン大統領と中曽根首相、小泉 首相とブッシュ大統領です。クリントン大統領とオバマ大統領の政権は日米同盟よりも中 国との関係を重視しました。結果としてこれが高度成長による経済力に支えられた人民解 放軍の軍拡、そして近隣諸国に対する伝統的な覇権主義を強めることになります。
長くなりますのでこの辺で筆を止めますが、 ぜひご覧になることをお勧めします。
TSUTAYA で探してみると現在 1 巻から 5 巻まではレンタル可能です。図書館等にあるかもし れません。
下記のサイトでも見ることが出来ます。


http://www.at-douga.com/?tag=%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83




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◆俯瞰 MAIL 0037号(2014年1月20日)
発行元: 一般社団法人 俯瞰工学研究所
発行人:   松島克守
編集長:   松島克守
URL: http://fukan.jp
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※本記事は松島克守氏の許諾を得て、再録したものです。


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