アベノミクスの危うさ


◆このメールマガジンは、松島克守が、東京大学教授、そして(社)俯瞰工学研究所 の代表としてこれまでに名刺交換やメール交換をさせて頂いた方々に送らせて頂いて おります。またこのようなMLはメールボックスのご迷惑と感じられる方もあるかと思 います。ご遠慮なく不要のお申し出を下さるようお願いします。また、内容等につい てもご遠慮なくご意見を頂ければ幸いです。過去の俯瞰メールは俯瞰工学研究所のHP の「俯瞰メールのアーカイブ」にあります。http://www.fukan.jp/ また、ご友人、ご家族に転送して頂くことは大歓迎です。このマガジンは長いので添 付のpdfファイルを保存しておいてiPad等でゆっくりお読み頂くこともできます。



皆様

◆時候ご挨拶◆
梅が満開です。春ですね。桜の蕾も膨らんでいます。もう少しでお彼岸ですから、日 も長くなりました。そして入学、進学、入社、新学期・・・。新年の誓い、決心を既 に諦めた人ももう一度新年度の誓いはいかがですか。

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・アベノミクスの危うさ
・中国の新政権の本格始動
・安土城に行ってきました
・最終案内、ビジネスモデル学会春季大会
・俯瞰古代史 邪馬台国畿内説
・頭のよくなるクッキング13
・デジタル書斎の構築19
・書評 「フェルメール・コネクション」 宇賀神 修 文芸社 2013
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◆アベノミクスの危うさ◆

株価もリーマンショック直前を上回り、円も100円も視野に・・本質的に何も変わっ ていないのに、アベノミクスというマジックは凄いですね。というか市場とか経済が いかに虚構か実感できます。そのアベノミクスですが危うさいっぱいです。先般の予 算委員会、みんなの党の山田太郎参議院議員の予算委員会での質問をご紹介します。 山田太郎さんのメルマガから転載。HPからメルマガ申し込めます。


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この委員会では私は、アベノミクスの有効性について追及するのが目的でした。つ まり、アベノミクスの計画の前提や仮設が本当に根拠のあるものかということです。
アベノミクスでは、緊急経済対策として組まれた平成 24 年度補正予算で 10 兆円の予 算で「GDP2.0%増加、雇用 60 万人創出」というのが売り出し文句です。では、本当 に GDP がこれだけ増えて、雇用が 60 万人も一気に増えるのか?
そこで、この数値を作った内閣府の参事官を呼ぶレク(レクチャー=官庁の国会議員 への説明)要求。

私(山田)「GDP2.0%の内訳、どういう内容ですか?」
参事官「公共事業関係で 1.2%、国の直接支払や…、で民間設備投資に 0.3%」
私(山田)「えー、民間セクターには 0.3%しか波及効果ないんですか?」「では、 この 10 兆円の予算使い切ったら 60 万人の雇用、終わっちゃうかも知れないですね」
参事官「そうなのよ、そこが懸念でね。うーん、…(ボソボソ)」
私(山田)「60 万人の雇用は、産業連関表で計算したんですよね?でもそれ 2001 年度のものではないんですか?」
参事官「いや、いや、2005 年度のもので」
私(山田)「2005 年度の経済構造のものとは随分古いですね。今から 8 年も前、 リーマンショックなんかよりもはるかに前ですね、この頃は景気も良くなってきた 頃ですよね」
参事官「あー、そうくる」「来ると思ったんだよな」「そうなんです。私もそう思 うんですよね。やっぱり、そー来たか!」と素直に白旗。
なぜか、お互い大笑い。笑っている場合ではないのですが。
で、このことを予算委員会で甘利大臣に質問することになりました。つまり、マク ロ経済計算の根拠が希薄だっていうことを答弁で引き出したわけです。
(その後、経済評論家のロバート・フェルドマン氏にも同じ事を聞いたら、米国や 諸外国はもっと新しいものを使って計算するとのこと。はやり日本はマクロ経済政 策の基盤が遅れています)

省庁担当者は、嘘をつくというのが一番まずい。だから、レクでも色々都合が悪い ことは抵抗するがバレてしまえば、とっても素直になります。嘘はついてしまうと 後から問題になってしまうからです。最近わかってきたのは、官僚は、「論理」と 「割り算」に弱いということです。経営者は、なんでも割り算をします。経営では、 「比率」や「単位当たり」というのを効率化の元として計算する癖があるからです。 だから、大きな予算も割り算をしていくと一件当たりの費用がすごい金額だったり、 こんな小さな金額では何もできなかったりおかしなことが発見できます。
次に、同じレクで TPP の「原産地規則」の話を経済産業、外務、農林水産の各省担 当者と合わせてレク。各省から 10 人以上来たので、部屋は 30 人以上でギュウギュウ 詰。廊下までごった返す始末。

私(山田)「で、原産地規則についてはどの省庁が責任を持って進めるのですか?」 と 3 省の担当者に厳しく詰問。

『原産地規則』とは、貿易の関税の計算の一つで、工業品でも農作物でもその製品 の原材料が外国産の場合、何割までが、又はどこまでがその国の製品として認める か、という関税計算では最も大切な計算方法。これが、各貿易交渉、EPA や FTA でグ チャグチャになっているという問題。下手をすると、日本の産業界がこの原産地規 則のあり方でもめて TPP が内部から崩壊するかも知れません。で、TPP 推進の私とし ては、この「原産地規則」を日本政府のどの部署が責任をもってまとめるかを聞い たわけです。

経産省「工業品については、われわれが試案を出していくことになりますが、交渉 は、外務省さんが…。」
外務省「経産省さん、我々は、とりまとめをするのであって、中身の交渉はちょっと」
経産省「『原産地規則』については、…。(経産省の持論を展開)」
外務省「ちょっと待ってください。経産省さんはそう言いますが…」と外務省担当 者は『経産省、黙っていろ、野党議員に色々言うと後で上げ足を取られるぞ』と言 わんばかりの怖い顔で経産省担当者たちを睨む。
私(山田)「農水省さんはどう考えていますか?」
農水省「我々は、TPP 参加は反対と言うか、原産地規則は関係ないと言うか…。」 私(山田)「えー、農産物だって原産地規則あるでしょう。工業品より難しいです よね。だってホットケーキ作ったとして、そのバターやチーズを…」となぜが『原 産地規則』について私が農水省に解説することに。(ビックリ!)
その後、経産省、外務省、農水省で長い間、私の目の前でバトル。
もう予算委員会を明日に控えて、午後7時を回っているのに、この調子で経産大臣、 外務大臣、農水大臣の答弁をまとめられるかしらと心配に。各省庁って縦割りで大 変です! なんだか、これから朝まで徹夜して答弁をまとめるなんて気の毒と思うのですが、 いや『いけない、いけない』目の前の皆に取り込まれる所でした。議員は国民の代 表ですから政府には厳しく当たらなくては…。

ただ当日の予算委員会は、茂木経産大臣が回答したことを、岸田外務大臣も林農水 大臣も「経産大臣の答弁の通りでございます」とかわされてしまいました。縦割り はかくして、経産省の責任で解決か?


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参議院議員 山田太郎


http://taroyamada.jp/


◆中国の新政権の本格始動◆

中国の全人代が終了していよいよ新政権の本格活動が始まりますが、難しい課題が山積で すね。まず経済格差と経済成長のバランスのとり方ですが、はっきり高速成長から安定成 長へと舵を取ることになり7%くらいの成長率を想定しているのは安心できます。ただ環 境汚染の問題はこれを前提にしても重い課題です。日本もかつて四日市喘息、水俣病、イ タイイタイ病、川崎病・・・。ドブのような隅田川や多摩川・・・黄色の洞海湾と中国の 現状と全く同じでしたが全て現在は解決しています。多摩川には昨年は1千万尾を超える アユが遡上しています。この経験こそいま中国に移転すべき知恵と知識です。
日本側にはその気持ちがありますが、中国がメンツに拘らず技術支援を要請すれば大きく 課題解決に向かうと思いますが。魚心と水心がうまくかみ合うといいですが、今は聞き耳 持たないという感じらしいです。しかしこれは是非にも推進すべき日中共同プロジェクト です。
ウイグル地区、チベットと奥地の政情は不安定でこれも政権を不安定にする要因です。加 えて暴走気味の北朝鮮の制御も難しい課題です。流石に中国も国連決議を受けて制裁に同 意して加わらなければなりませんが、北朝鮮は制御できませんので大きなリスクです。な んと 3月 11日で米国、北朝鮮、中国が調印した朝鮮戦争の休戦協定を破棄して戦争状態に 戻しています。マジですか!?
新政権の方向性を予算で見ると、2013 年の軍事予算は、前年実績比 10.7%増の約11兆円 強となり、すでに米国に次ぐ予算規模で、この 10年間で約 3.9倍となり、日本やフィリピ ン、ベトナムなど周辺諸国に脅威を与えています。軍部は予算獲得に成功していますね。
加えて公安関係の予算はこの国防費を上回るとも報道されています。
中国と対立関係にあるインドも軍事予算を 5%増強して約3兆5千億円としています。そう するとパキスタンも軍事費を増やします。ASEAN 諸国も増加でしょう。日本も長く削減気 味の防衛予算を 0.8%増加させましたが約4兆6千億円です。無駄な軍拡が進みますね。経 済学的には有効な需要拡大なのでしょうか。
環境関係は 12%増で、中央・地方政府の合計で約5兆円です。重点課題として位置づけら れています。
海洋局の権限強化と機能の統合が発表されていますがこの予算も相当な額になると思いま すが不明です。
日中関係は一度緩みかけましたが、まだ春は遠い感じですね。新政権の方針もキチッと未 だ決まっていないのでしょう。依然危険な挑発が尖閣の現場で続いているようです。党中 央の黙認を得て軍部が動いていますが国益を考えていませんね。米国に向けたサイバー攻撃も危険な火遊びですね。日本は尖閣の武力衝突より、サイバー攻撃に対する備えを真剣 に進める必要があります。


中国全人代

中国の課題

中国国防予算

中国国防予算

インド国防費

日中の環境関係の連携は

海洋関係

サイバー攻撃

サイバー攻撃

サイバー攻撃


◆安土城に行ってきました◆

信長の夢のあと、安土城に行ってきました。近江八幡の駅から。大手門から直線的に急峻な石の階段が続きます。相当乱暴な建設工事だったらしく、付近の石仏も憚りもなく階段の敷石に使われています。
大手門を入ってすぐの左右は羽柴秀吉と前田利家の屋敷です。信長が一番頼りにしていたのはこの二人だったと云う事がわかります。森蘭丸の屋敷は本丸近くにあります。急峻な石の階段は馬に乗って上るのはきついでしょう。秀吉の屋敷の最初のスペースは厩です。
傾斜地ですから3段の造成になっています。
大手門からの直線の石段の次はジグザグの石段です。頂上には清涼殿を模した本丸とその上に有名な天守閣の跡があります。残っているのは石垣だけです。だからイマジネーションが湧きます。
城の下まで運河を引き船付場があります。そこにセミナリオというキリスト教の学校があります。西洋の最先端技術を学ぶ学校です。そこで育成された学生はのちの徳川幕府のキリシタン禁制で殆ど殉教です。この周辺は城下町です。ここの商人は信長亡き後近江八幡と秀吉の長浜に移ったのでしょう。長浜は次の大河ドラマ、黒田官兵衛で盛り上がっていました。観光で地域起こし凄いですね。商店街が活性化しているとてもいい事例です。
もし信長が天王寺で死ななければ、という先は想像を超えています。一方、裸の王様だった信長は安土城の中に留まるべきだったのでしょう。長い階段を上って往復する時間は60-90分くらいですが、力をもらう時間でしょうか。


安土城


◆最終案内、ビジネスモデル学会春季大会◆

ビジネスモデル学会の春季大会が 3 月 23 日(土)開催されます。ぜひご参加ください。
テーマ: 「エイジレス社会のビジネスモデル」
日時: 2013 年 3 月 23 日(土) 10 時-18 時 交流会 18 時-20 時
場所: 東京大学本郷キャンパス工学部新 2 号館
基調講演、招待講演は
基調講演:「超高齢社会を見据えた Aging in Place の実現
〜柏市・UR都市機構・東京大学の連携による長寿社会のまちづくり〜」
木村 清一 氏 東京大学高齢社会総合研究機構
特別講演:「スマート・エイジング社会とビジネスの役割」
村田裕之 村田アソシエイツ(株)代表取締役
特別講演:「海外に学ぶアクティブシニアのライフスタイルと日本での胎動」
松田智生 三菱総合研究所プラチナ社会研究センター主任研究員
特別講演:「成熟社会の経済に必要な発想の転換」
小野善康 大阪大学社会経済研究所教授(前内閣府経済社会研究所長
(敬称略)
いずれも大会テーマ「エイジレス社会」に沿った価値ある講演ですのでこの 1 日学会に参 加することで、高齢化社会のビジネスモデルが見えてくるでしょう。加えてご自身の人生 設計の構想について認識を深めることができます。そのあと交流会でその続きを楽しみま しょう。スケジュールに書き込んでください。
詳細は学会の HP で見てください。


ビジネスモデル学会の HP


◆俯瞰古代史 邪馬台国畿内説◆

熟年を中心に日本の古代史が人気ありますが、その最大のテーマが邪馬台国でしょう。北 九州説、畿内説、そして日向説もあります。兎も角中国の歴史書に記述がありますから存 在そのものは疑いありません。ただ記述を忠実に辿ると九州の南の海上まで行きかねませ ん。南を誤りとして東に読み替え、瀬戸内海をたどると畿内に届きます。近年奈良の桜井 にある纏向遺跡が卑弥呼の宮殿ではないかという説も興味を引いています。
村井康彦教授の「出雲と大和」(2013 年 1 月)を読みました。
村井先生は 1930 年生まれで今年の 1 月に最新の学説の出版です!村井先生もここまで来る とこれまでの学説に対する変な気配りは必要ありませんから、実に自由闊達な学説の展開 です。先生の史跡の現場調査は凄いです。凄まじい体力です。
結論、魏志倭人伝の記述の、南を東の間違いとして、北九州の海岸から日本海を対馬海流 に乗り、東へ、出雲の国を経て、丹波で上陸して陸路で大和に入ります。大和のど真ん中 が邪馬台国です。そして邪馬台国は出雲族の国です。
この村井説は纏向遺跡のすぐ西にある三輪山麓にある大神神社の主神は大物主神という出 雲の神様であることが出発点です。大神神社には拝殿はありますが本殿はありません。三 輪山が本殿ですから。何故ここに出雲の神が謎解きのカギです。大和朝廷があとから出雲 の神様を祀る必要はあませんから、だから大和朝廷の前に奈良盆地に出雲族がいたのでし ょう。

大和の邪馬台国は出雲族の国で、あとから来た大和朝廷の祖先に大和の国を譲ったのです。 卑弥呼亡き後出雲族の国々はお互いに争い、勢力を弱めていくことを見て南九州の日向に 在った大和朝廷の祖先、神武東征といわれる軍団が、かねて中原といわれていた大和に侵 入したのでしょう。出雲族の内紛を利用して覇権を握っていったのでしょうか。この説な ぜか納得します。国譲りの約束の大規模の神殿建築はなかなか実現しなかったようです。
何故この村井説になったかというと、日本書紀は大和朝廷の正当性を言明するための正史 ですが、その日本書紀の編集者が魏志倭人伝を知らない訳はないのに邪馬台国に一切言及 していなのは、大和朝廷は邪馬台国の系統ではないので言及できない、しかし三輪山には 言及して、国譲りで間接的に先住民族の出雲族の存在は認めているという事です。そして 日本書紀が大和朝廷の正当性を主張するものであれば、出雲風土記は出雲族が神話として、 最大限に自己の存在を主張する書でしょう。
神武東征も実に興味深い話です。以前にも紹介しましたが、日向を立ち、北九州の岡田宮 に 1 年以上滞在して船を建造し、備中にわたり2−3年して備前に移り、兵を募りながら 河内に上陸して敗退し、紀伊半島の南端の熊野に上陸して山を越え、大和平野の南端に拠 点を築き大和朝廷を創始します。 古代史は永遠のロマンですね!



◆頭のよくなるクッキング 13◆

レシピを一つ。鳥の手羽先スープです。冬はよく作ります。手羽先と野菜、香辛料の薬膳 に近いスープです。
鳥の手羽先 10 本、生姜 1 片、ニンニク 1 片、ニンジン 1 本、玉ねぎ 1 個(大なら半分)、 ネギ 1 本(青い部分も使う、半本でも)。
鳥の手羽先はまず沸騰した湯に入れ 1-2 分アクを取り水で洗います。そのあと骨に沿って ナイフを入れます。水 3 リットル位に手羽先を入れ中火にかけ、浮いてくる油とアクをす きます。そのあとすぐ薄く刻んだ野菜を入れます。さらにローリエの葉 1-2 枚とローズマ リー1枝入れると鳥の臭みが消えます。あと粒胡椒 10-20 粒、カルダモン 5-6 粒入れて弱 火で 2-3 時間。最後に采箸で手羽先を崩し 20-30 分くらい煮て金網のザルで濾して出来上 がりです。仕上がり 2 リットルくらいです。塩は入れません。
毎日カップで飲んで、そのカップに塩コショウで味を調えます。実に滋味深いスープで美 味しいです。鍋は毎日火を入れます。夏はこれでは痛みますのであまり作りません。
冷蔵庫に鍋ごと入れてもいいです。鍋全体がゼラチンで固まります、スープがゼラチンで あることを実感するでしょう。

アジアのベスト・レストラン50がシンガポールで発表されましたが、なんと 1、2位は東 京の日本人シェフです。1 位は先般ここで紹介した、青山の「成沢」です。2 位は六本木の 「龍吟」です。くしくも発表前に両方とも行きました。シェフが挨拶に来てくれましたが 精気に満ちたいい顔をしています。無論凄い料理です。食する方も格闘技ですか。
このほか 16 位に白金の“カテサンス”、21 位に大阪の淀屋橋の“レストラン・ハジメ”、31 位は赤坂の“アロニア・ド・タカザワ”、33 位に大阪北の新地の“カハラ”、39 位に赤坂の “鮨さいとう”、42 位に神楽坂の“石かわ”、と 8 人の日本人シェフが選ばれています。な ぜか京都のレストランは無いですね。あれだけミシュランの星付きがあるのに。
兎も角凄いですね。東京は文化の爛熟した世界最先端の都市であることを実感します。た だこのクラスのレストランは殆ど予約が取れません。月の初めに次の月の予約を受け付け ますが電話がつながらない。繋がると予約で満杯!例えばアロニア・ド・タカザワは 1 日 2 組 10 人とか小さなお店ですから。
京都と同じで、気になるのは韓国のレストランは 50 位に入っていません。かなりアジアに 展開していますが何故でしょう。


2013 年度アジアのベスト・レストラン50


◆デジタル書斎の構築 19◆

アップルがついに 3 月 5 日、日本で電子書籍ストアをオープンしました。iPhone、iPad で 買えます。夏目漱石、芥川龍之介、宮沢賢治・・・日本の古典は無料です。カフカの変身、 ドストエフスキーのカラマーゾフの兄弟・・・無料です。電子書籍の練習にいかがですか。 私は魯山人の料理関係無料で購入しました。
これで、日系では凸版印刷系の紀伊國屋電子書籍書店、大日本印刷系の honto、そしてアマ ゾン、アップルと電子書籍の流通ルートが完成しました。あとはコンテンツと出版社の対 応です。
これを記念して、(社)俯瞰工学研究所の電子書籍の『クラスター形成による地域新生のデ ザイン2』を期間限定で献本します。実は電子書籍の献本が容易ではありません。今回 pdf で提供します。3 月 17 日まで(社)俯瞰工学研究所の電子書籍の「地域新生のデザイン2」 の下の献本のボタンを押してダウンロードしてください。
見るのは、パソコンではダウンロードした pdf ファイルをアドビの reader で読めます。
アマゾンのキンドルでは、パソコンでダウンロードした pdf をドキュメントに移動する、 アップルの iPad ではパソコンでダウンロードした pdf を iBook に移動するのが良いと思い ます。


アップルが日本電子書籍オープン

アップルが日本電子書籍オープン

アップルが日本電子書籍オープン



◆書評◆
今月のご紹介は、「フェルメール・コネクション」 宇賀神 修 文芸社 2013 です。
この書評では初めて取り上げる小説です。サスペンスミステリーです。著者の宇賀神さん はかって日本 IBM で一緒に仕事をした友人です。彼の定年に合わせて出版された力作です。 宇賀神さんは既に何冊か小説を出版されていますのでプロの小説家です。
人生は沢山の糸が織りなす綾織の帯のようなものでしょうか。その中にずっと長く連なる 一筋の糸が自分でしょう。比較的長く近くに続く糸が家族でしょう。その中でも永く続く 糸がパートナーでしょう。糸の中には金糸や銀糸が混じります。宇賀神さんはそのような 光る糸でしょうか。
彼とは十数年前に一緒に敗戦を体験したビジネス戦線での戦友です。当時私はパソコンの ソフトウェアのマーケッティングの責任者でした。彼は製品企画の技術の責任者でした。製品は OS2、で競合は Windows95 です。技術的には圧倒的な機能の優位性がありましたが敗 戦です。教科書的な敗北です。当時のパソコンの CPU とメモリーでは OS2 はその機能が十 分に発揮できません。もっと単純で低機能のソフトウェアが市場に合っていたのです。ク リステンセンのイノベーションのジレンマの教科書的な事例でした。敗戦と判っていてな おスタッフに深夜、週末の残業、残業手当は付きません、をお願いしていました。敗戦と 判っていている人もお互い口にしませんでした。絶対にあきらめないという同志的な結束 です。ですから今でも当時のスタッフとは戦友としてお付き合いが継続しています。
実は私は当時もう一つの敗戦を覚悟していた製品を担当していました。AIX という個性的な UNIX のソフトウェアです。想定通り結果は二つとも敗戦です。そのあとの終戦処理もあり ました。しかし、この敗戦は貴重な勉強になりました。負け戦を覚悟して全力を尽くすと いう経験は、普通は体験できません。ただ、軍資金は十分支給されていました。
前振りが長くなってしまいました。この小説は、前半は“ダビンチコード”、後半は“00 7”という感じのミステリー、サスペンスアクションの映画を見ているように一気に読ま せます。一晩で読みました。
フェルメールと哲学者のスピノザが同じ時間を生きたという時間的な事実から小説は生ま れ、”真珠の耳飾りの少女“というフェルメールの傑作とスピノザの”エティカ“という著 作が縦糸です。
物語は上野の国立博物館のフェルメール展の会場から始まります。主人公はフェルメール を愛してやまなかった画家の愛妻を失った新聞記者ですが、“真珠の首飾りの少女”の絵の 前で出会った若い女性が重要な準主役です。そして、長崎の旧家の蔵から未発見のフェル メールの絵が発見され、その鑑定のためにオランダからフェルメール研究の専門家のドイ ツ系オランダ人の美女が来日します。そして舞台はオランダのハーグへと移ります。この 美女はボンドガールのようにいきませんが、映画化の時はぜひそんな濃厚な役にしてもら いたいですね。オランダ、ベルギー、そしてドイツと昔旅行したシーンが頭に走馬灯のよ うに現れるので余計に映画を見ているように読んだと思います。
実は“真珠の耳飾りの少女”の複製を私は玄関ホールにかけて毎日見ていますので一層こ の小説にご縁を感じました。
この後の展開?サスペンスミステリーですから、紹介できません。
本書を読んだ後フェルメールの画集をアマゾンで発注し、本棚の奥にあった“エティカ” を机の上に出しました。



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◆俯瞰 MAIL 0023号(2012年11月19日)
発行元: 一般社団法人 俯瞰工学研究所
発行責任者:松島克守
URL: http://fukan.jp
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※本記事は松島克守氏の許諾を得て、再録したものです。


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