世界経済が極めて不透明で不安定ですね
◆このメールマガジンは、松島克守が、東京大学教授、そして(社)俯瞰工学研究所の代表としてこれまでに名刺交換やメール交換をさせて頂いた方々に送らせて頂いております。またこのようなMLはメールボックスのご迷惑と感じられる方もあるかと思います。ご遠慮なく不要のお申し出を下さるようお願いします。また、内容等についてもご遠慮なくご意見を頂ければ幸いです。過去の俯瞰メールは俯瞰工学研究所のHPの「俯瞰メールのアーカイブ」にあります。http://www.fukan.jp/また、ご友人、ご家族に転送して頂くことは大歓迎です。
皆様
◆季節のご挨拶◆
暑い夏です。田の稲はもう穂を付けています。木々の緑も深い色になって夏の終わりを感じさせます。日も短くなりました。一方休み明けの9月は各界で暑い日が続きそうです。
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・世界経済が極めて不透明で不安定ですね
・中国の経済成長の減速も冷静に見ましょう
・日本の底力を出しましょう
・脱原発の議論もやっとまともになりますか
・日本のIT企業の実力はこんなものですか
・頭のよくなるクッキング6
・デジタル書斎の構築12
・書評 : 「日本文化の形成」
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◆世界経済が極めて不透明で不安定ですね◆
世界情勢が先行き極めて不透明で不安定になってきましたね。
欧州の金融危機はまだ揺れていますが、既に域内の消費は収縮してきて、経済に重大
な影響を与えています。特に欧州の自動車販売は落ち込み、ここを主要な市場として
いるフランスのプジョーとドイツのオペルが苦しくなってきました。大規模なリスト
ラになりますがこれは社会、経済に負のスパイラルを持ち込むでしょう。イタリアの
フィアットは北米のクライスラーの収益で何とか息をついています。元気だったドイ
ツ企業も勢いが衰えシーメンスも音を上げています。
この欧州の市場を輸出先にして来た中国企業はこのため経営も悪化してきて、中国の
成長率は8%を切る状態ですが、中国政府は有効な政策が打てません。特にけん引して
きた沿海部の工業地帯が成長を落としています。前回のリーマンショックでは大盤振
る舞いの刺激策で経済の底入れに成功しましたが、まだその後遺症である不動産バブ
ルが残っていますから同じ手は打てませんので、低成長を安定成長として受け入れる
しかないでしょう。これに加えて政権交代の時期が迫っていますので、これも政策の
不透明性になっています。前々回に中国の経営者の話を紹介しましたが、次の政権の
経済政策を見るまでは投資をしないという経営者は多いでしょう。
加えて、米国の大統領選挙もオバマ苦戦の様相で経済政策も思考停止状態です。各種
の経済指数の発表の度に、NY株式も上下に揺れていて、みんな先行き不透明なのでし
ょう。
そして、日本は変な意味で振れが少ないですね。何しろ政府と政界は経済にまったく
能天気というか、無関心でしょうもない政局ゲームに熱中しているだけです。企業は
頑張っていますし、猛暑は消費押し上げで支援してくれています。自民党も、税と社
会保障の一体改革、そして定数是正はして選挙に臨むという最低限の事はするようで
すが、予算編成やTPPはほったらかしです。こんな政局ゲームに熱中していると、
「実行出来ないし、する気もない公約」を掲げて、ポピュリズムという危険な勢力が
政局ゲームに参加して国の根幹が乱れます。ヒトラーもスタートはポピュリズムです
から。
ガス欠寸前の欧州自動車メーカー
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM2504N_V20C12A7000000/
フィアット 欧州事業不振
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120803-00000047-rps-bus_all
PSA プジョー シトロエン、8000名の追加リストラ
http://response.jp/article/2012/07/13/177823.html
シーメンス ペーター・レッシャー社長
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20120731&ng=DGKDZO44351430R30C12A
7FF1000
オバマ苦戦
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2012080502000092.html
◆中国の経済成長の減速も冷静に見ましょう◆
連日のように中国の成長の減速と経済の停滞が報道されていますが、内実は不確実
で、
不透明です。過剰反応的な報道もあります。例えば中国の輸出統計について10日のロ
イターの報道は、「7月の輸出は前年同月比1.0%増加した。伸び率は市場予想の
8.6%を大きく下回り、6月の11.3%から急速に鈍化した」。ともかく絶対額
は1%は増加しています。同じ記事の中で、「台湾当局は7日、7月の輸出が5カ月
連続で減少したと発表した。」とあります。絶対額が減少しています。韓国について
も「韓国政府が1日発表した7月の輸出は前年同月比8.8%減と、約3年ぶりの大
幅な減少を記録した。」とあり大幅に減少しているのです。日本もじわっとこの傾向
が出てきていますね。
一方別の記事では、日本企業の中国戦略について「中国経済は足元減速感が強いもの
の、日本企業は現地の生産拠点増強を計画通り進めており、市場拡大に備えた布石を
凍結する動きは限定的だ。停滞気味の現状の需要環境では、計画している生産能力が
過剰気味となっている企業も目立つが、中国政府による環境・省エネ産業奨励政策や
中間所得層拡大など新たな市場獲得チャンスは大きい。来年以降には再び景気が回復
するとの読みもあり、今のうちに生産能力拡大が必要と判断しているようだ。」とあ
ります。
供給過剰は期待値が大きすぎるのか、ポテンシャルの判断は正しいのかですが、まさ
か日本企業の意思決定の悪さである、なかなか決めないが決めると、撤退や豹変の意
思決定がすぐに出来ないという事でなければいいですが。私は中国のポテンシャルは
13億人ではなく日本のGDPの2.5-3倍だと推測しています。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE87902N20120810
◆日本の底力を出しましょう◆
中国が尖閣で外交カードとして使ってきたレアアース、レアメタルですが、日米欧は
WTOの場で中国の輸出規制に対抗していますが、日本は術開発力でこれに対抗しよう
と
する動きが活発になってきました。頑張ってほしいですね。必要は発明の母といいま
すが日本本来の公正な競争の姿です。
最近の記事から。
・脱レアアース開発加速 車向けなどハイテク素材 パナソニックや日立、中国依存
を軽減
ハイテク製品に欠かせない希少金属のレアアース(希土類)の使用を抑える技術開
発が加速してきた。パナソニックは省エネ・長寿命型蛍光灯の光源に使う量を減らす
ことに成功。日立製作所も微小磁石向けの代替材料を開発した。世界のレアアースの
供給は中国が約9割を握る。中国側の出荷規制で、1年で価格が10倍以上になった希
少金属もある。日本の各社は「脱レアアース」技術の実用化を急ぎ、調達難やコスト
増を招く「中国リスク」の回避を目指す。パナソニックは三菱化学、産業技術総合研
究所などと共同で、高性能蛍光灯に使うレアアースのユーロピウムとテルビウムを減
らしても従来通り光らせる技術を開発。性能を落とさずに使用量を2割削減した。
2011年度中に5割、13年度までに約8割低減する。発光ダイオード(LED)や薄型
ディスプレーにも応用できる。(日経新聞 8月10日)
・レアアース消費、2年で半減狙う 経産省が技術開発支援
経済産業省は海外からのレアアース(希土類)の調達量を減らす技術開発を支援す
る。レアアースを使わずに済む部材や廃棄した家電からレアアースを回収する技術の
研究開発費を補助する。レアアースのうち中国が産出量の9割超を占める「ジスプロ
シウム」の国内需要は、支援策の実施により2年後までに今の半分程度に抑えられる
とみている。(日本経済新聞 8月10日)
・脱レアアース加速 中国からの輸入、昨年3割減 磁石など代替、使用量縮小
取引価格も伸び悩む
ハイブリッド自動車(HV)や省エネ家電などに使うレアアース(希土類)の需要
が鈍化している。日本の昨年の中国からのレアアース輸入量は前年比3割・・・
(2012/6/1付)日本経済新聞
・レアアース輸入が急減 使用削減技術進む、中国産7割減
レアアース(希土類)の輸入が急減している。1-4月の中国からの輸入量は前年
同期比約7割減少。日本企業が在庫を確保しているのに加え、・・・
(2012/6/14 13:42)日本経済新聞 電子版
・日立、レアアース使わない省エネモーター開発
日立製作所は11日、レアアース(希土類)を使わない省エネ型の産業用モーターを
開発したと発表した。工場やビルの送風機、ポンプなどに使う中型の・・・
(2012/4/12 0:15)日本経済新聞 電子版
・エコカー、脱レアアース加速 三菱電が新モーター
三菱電機など大手電機・電子部品各社が電気自動車などに使う次世代モーターの開
発で脱レアアース(希土類)を加速する。三菱電機はレアアースの使用・・・
(2012/1/1 2:07)日本経済新聞 電子版
・文科省、レアアースしのぐ材料開発へ 産官学で研究所
文部科学省はハイテク製品に欠かせないレアアース(希土類)をしのぐ材料の開発
に乗り出す。2012年度に産学官の一線が集う研究所を全国4カ所に・・・
(2011/9/5 2:03)日本経済新聞 電子版
◆日本のIT企業の実力はこんなものですか◆
東証のシステムがまた障害でダウンです。2005年以来既に7回目です。これが日本の
IT企業の技術力ですか。証券取引のシステムは絶対にダウンしてはいけないシステム
です。配電網と同様に、サイバーテロの標的で、敵国の経済活動を混乱させる戦術の
主要な目標です。これが年1度のペースでダウンです。このIT企業の経営者は社会に
何の謝罪もしていませんし、責任も取っていません。
確か2005年の障害のころ、あるパーティーで当時東証の理事長であった西室さんと立
ち話でこの話題を話しました。「世界一のシステムを構築して世界に売る事を目指せ
と」と言っているとおっしゃっていましたが私は「サッカーのワールドカップのチー
ムの様に、日本のITの達人の選抜チームを作ってやらないといけないのでは」と言っ
た記憶があります。冗談に「いっそニューヨーク証券取引所のシステムを買ってしま
ったほうが良いのでは」とも言いました。まもなくして東証のシステム部門の方が大
学にこられて、その時どんなシステムを開発中か説明してくれましたが、従来と同じ
様な話で、開発はいつもの企業ですから歯止めを感じませんでした。
前回もクラウドコンピューティングの障害について書きましたが、システム設計の才
能は日本人には無いのでしょうか?日本の行政や企業の生産性が低いのは、メー
カー、
ユーザ含めてICT関係者の大いなる責任だと思います。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDC0700L_X00C12A8EA2000/(日経電子版会員の方はリンク可)
◆脱原発の議論もやっとまともになりますか◆
政府が示したエネルギー政策の選択肢は、30年時点の原発依存度を「0%」「15%」
「20-25%」とする3案を示し公聴会を開いた結果、民意は脱原発が強く首相はその
対応に苦慮しています。そもそもこの議論の設定が各界の議論を混乱させているので
はないでしょうか。原発容認か原発無しかの2元的議論に行きがちです。これでは合
意は得られません。安全神話が崩れた今、経済への影響から原発容認をする議論は、
本来トレードオフにならない、国民の安全と経済効果をトレードオフにするという議
論にならない議論です。原発反対のデモに参加する鳩山さん、これを支持する菅さん
も見るに堪えられませんが、8月10日の枝野さんの話はやっと真面な議論の土俵が提
示されたのではないでしょうか。
まず、原発の新設が無く、40年の寿命を守れば、2050年には原発はすべて停止しま
す。
0%です。前倒しもあります。この間、節電の推進、再生エネルギーのインフラ整備と
技術革新による発電コストの低減により経済合理性がある発電を行います。この間は
相対的に安全な既設の原発で発電をします。この過程の進捗で2030年という通過点が
見えます。2030年の数字を固定すると議論が難しくなります。そしてこの数字を0%
に無理にすると経済合理性の無い再生エネルギー、特に太陽光発電を推進して割高の
電気料金を設定することになり、結局買い取り価格の見直し等の二次的な問題が出て
くるでしょう。イノベーションは予測できませんが、再生エネルギーのコストは想像
以上に下がると思います。ここは日本の技術力、かつて公害を完全になくした底力が
出てくると思います。
これは甘い、2030年の目標でこのイノベーションを強制するのだという意見もあるで
しょうが、それを含め2050年の完全脱原発を終点に置いた議論で国民的合意を形成し
たというのが、私のずっと前からの考えです。熱い議論もいいですが、遡及点を共通
認識していくのが必要だと思いますがいかがでしょう。震災前の原発依存度は24%で
した。この点と2050年のゼロの点に線を引くと2030年は12%くらいでしょうか。13
日の日経新聞の記事では経済団体は全て0%、15%に反対だそうですがこれも再生
エネルギーのコスト削減やこのイノベーションに関わる産業創出に何の考慮もしてい
ないと思います。かつての公害防止の努力が、現在世界トップレベルの環境技術を生
み、新たに産業を創出した事を学ぶべきではないでしょうか。
「経団連は中長期のエネルギー政策について、33の業界団体や地方経済団体を対象に
緊急調査を実施した。政府が示した2030年時点の原発依存度を「0%」「15%」
「20-25%」とする3つの選択肢に対しては、「0%」「15%」を「望ましい」と答
える団体は一つもなかった。・・・」日経新聞 8月13日
原発ゼロか一定維持か
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD180HG_Z10C12A6TY6000/
電力コストからの経済界の反対
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS0704D_X00C12A8EE8000/(日経電子版会員の方はリンク可)
枝野大臣の発言
http://www.asahi.com/politics/update/0809/TKY201208090288.html
経済団体は原発0に反対
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20120813&ng=DGKDASFS1200L_S2A810C
1NN1000(日経電子版会員の方はリンク可)
再生エネルギーの可能性は予測を超える
http://wired.jp/2012/08/13/renewable-energy-predictions-wrong/
◆頭のよくなるクッキング6◆
今回は栄養学のほうで。頭のよくなるクッキング3で動物性脂肪の摂取を控えるため
に肉と乳製品を取らないという事を書きまして、3月から実行していますが、その結
果動物性タンパク質は魚から取ることになります。毎日ほぼ魚を食しています。改め
てその魚の栄養について情報を収集・分析して知識の整理をしました。
魚は良質の蛋白源であることは自明ですが、とりわけ期待されているのが「血液サラ
サラ効果」のEPAとDHAです。これは植物性脂肪の必須のオメガ3脂肪酸のα-リノレ
ン酸に対応する脂肪酸です。
まずEPAとDHAはどう違うのかですが、
「実は、EPAは、脳血液関門といわれる、脳への入り口を通り抜ける事ができませ
ん。
しかし、DHAにはそれが可能で、脳神経を活性化し、記憶力の向上などの効果があり
ます。血小板凝集抑制効果EPAは、血小板凝集抑制効果が非常に高く、心筋梗塞や、
虚血性心疾患の予防効果が非常に高いといえます。DHAも、効果は持っていますが、
EPAほど高くはありません。」とあります。
ではそのEPAとDHAはどの魚種にあるのかを調べてみました。
多くは頭や内臓、皮にありますが殆ど捨てられていますから、加食部の含有量で比較
した情報が日本食品脂溶成分表というものにあるようですが、それを引用しているニ
ッスイのサイトで見てみました。圧倒的に多いのは本マグロのトロですが、これはあ
まり口に入りませんね。赤身になるとガックリ下がります。EPAとDHAの多い魚は(加
食部100gに含まれるmg)、
マイワシ EPA1381 DHA1136 計2517
本マグロ(トロ) EPA1288 DHA2877 計4165
サバ EPA1214 DHA1781 計2995
マダイ EPA1085 DHA1830 計2915
ブリ EPA 899 DHA1785 計2684
サンマ EPA 844 DHA1398 計2242
サケ EPA 492 DHA 820 計1312
アジ EPA 408 DHA 748 計1156
です。あとの魚種、カレイ(計412)、ヒラメ(計284)、マグロの赤身(計
142)・・
はかなり落ちます。背の青い魚を食せ、と言われますがこのデータをみるともう少し
精密な話になります。マグロは水銀やダイオキシンなど汚染物質の蓄積が多い事と、
赤身の数字では無理して食する必要はありませんね。マイワシ、サバ、マダイ、ブリ
がお勧めになります。マダイは青魚では有りませんが良い数字ですね。サンマは内臓
を食べる人が多いのでその場合には上位になるでしょう。
これからレシピを考えると、イワシの刺身、塩焼き、サバのムニエル、しめサバ、タ
イの刺身、タイのポアレ、タイめし、ブリの刺身、塩焼き、照り焼き、ブリ大根、サ
ンマの塩焼き、サケのムニエル、ポアレはどうでしょう。サケはEPAやDHAは相対的に
少ないのですが、赤色のアスタキサンチンはニンジンなどの緑黄色野菜が多く含むベ
ータカロチンと同じカロチノイド系色素の一つで、サケ以外でもタイやキンメダイ、
カニの甲羅にも含まれますが、サケほど多く含む魚はないとあります。アスタキサン
チンは活性酸素を除去し、動脈硬化を防ぎ毒性の強い一重項酸素の酸化反応には、ビ
タミンEやベータカロチンより格段に強い抗酸化力を発揮するとあります。ベニサケ
の切り身一切れと同じ抗酸化力を得るには、ビタミンEの豊富なアーモンドを1.1キ
ロ
グラムも食べる必要があるともあります。時鮭、紅鮭の生がお勧めです、天然ですか
ら。そしてアラスカ産のサーモン。
DHAとEPAは熱には比較的強いようですが、煮ると煮汁に栄養分が出ますからその場合
はそれを食さないと摂取量が減ります。サバの味噌煮はポピュラーですが煮汁に失わ
れることと、その煮汁は塩分が多い味噌ですから困りますね。ムニエルという料理は
粉をはたいて焼くため栄養分を逃がしません。ポアレは塩コショウして、皮目をパリ
ッと焼き、身のほうで火をとおす料理法ですが、皮を黒く焦がさないことです。いず
れもノンスティックのフライパンが良いですね。ただ、テフロンのノンスティックは
必ず中火で、高温にすると有毒物質が出ることが確認されていますので。これからノ
ンスティックのフライパンを買う方はテフロンでなくセラミックコーティングのほう
がいいでしょう。煮魚は頭付きであれば皮と頭のDHAとEPAが取れますし、皮も食べら
れます。黒く焦げた魚の皮はベンツピレンという発がん物質が知られていますので通
常は食しません。
別の視点は養殖魚と天然魚の事があります。結論から言えば養殖魚は避け出来るだけ
新鮮な天然魚を食するという事になります。冷凍はDHAとEPAを減少させるとあります
し、サケの養殖は汚染が問題で、養殖のサケはあまり多量に摂るなというレポートも
あります。アラスカ州はサケの養殖が禁止されているそうですので天然ものです。
最後に、魚の塩引き、いわゆる干物は酸化した脂肪酸に加え、塩分の問題があり、さ
らにカビのリスクがあります。カビの毒素のアフラトキシンは強力な発がん物質とし
て知られています。このアフラトキシンが含まれる可能性があるとしてピーナッツ、
ピーナッツバターを避けよというレポートもあります。
ネガティブな話が色々ありますが押し並べて僅かな可能性ですからあまり気にしない
事です。しかし、毒は毒、リスクを認識しておくことは万事に必須です。
EPAとDHAの違い
http://www.epa-wiki.com/epa/chigai.htm
日本食品脂溶成分表
http://www.nissui.co.jp/sarasara/life/index.html
サケの赤色
http://www.white-family.or.jp/healthy-island/htm/repoto/repo-to228.htm
養殖のサケ
http://gigazine.net/news/20110111_toxins_in_farmed_salmon/
http://www.food.maruha-nichiro.co.jp/salmon/fishery/09.html
ムニエルの作り方
http://www.felicimme.net/recipe/cook/022.html
ポアレの作り方
http://www.asahi.com/food/recipe/%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%81%AE%E3%83%9D%E3%83%
AF%E3%83%AC.html
テフロンフライパンの有害性
http://www.nstimes.info/09-2005/teflon.html
アフラトキシンの発がん性につて
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/kabi/kabi2-1.html
http://www.mycotoxin.or.jp/FSJ.pdf
◆デジタル書斎の構築12◆
iPhoneの4Sに搭載されているSiriは凄いですよ。前から気になっていましたが、遊
んでいる時間がなくて、試してみませんでしたが使ってみると凄いです。iPhone4S
をiOS5.1にアップデートして、ホーム画面で「設定」⇒「一般」⇒「Siri」の順にタ
ップしてSiriをオンにします。ホームボタンを少し長押しするとSiriが起動してマイ
クのアイコンが出てきて「ご用件は何でしょう?」と表示されますので、そのまま話
しかけます。
試してみましたが、「メールを読む」というと、何通来ているか表示されメールを読
む画面に行きます。「松島さんにメールを書く」と言うとメール入力の画面になり件
名と本文を聞いてきます!!「渋谷の今日の天気は」というと週間の天気を表示しま
す。「今日の予定は」には今日は予定ありません、と答えました。「夕方水やりを覚
えて置いて」というとリマインダーを作成しその時間にアラーム音が出ます。「xxx
さんの連絡先」というと連絡帳の情報を表示します。「メモを取って」にはメモ帳が
開き音声認識で入力できます。この辺はほとんど問題なくこなせますが「xxxxの株価
は」はxxxxの部分の認識が間違えやすいですね。iPhoneの中の音楽も「xxxxのzzzを
聞きたい」はやはりxxxxやzzzzの認識が難しいことがあります。
ともかく凄い音声認識能力と会話能力です。この能力とGPS、地図情報を組み合わせ
ればカーナビは全く必要ありません。早晩カーナビという市場は崩壊すると思いま
す。
これだけの非特定話者の識別技術は驚異的です。Windows7に組み込まれている音声
認識機能は個別の学習をすると口述筆記に十分使えますが、Siriの能力はこれを遥か
に超えています。Siriの応用はこれからイノベーションの目の一つになるともいま
す。
「もうずっと前から使ってる!」失礼しました。
別の話題。
アップルが消費者には言わない10の本音(マーケットウォッチ2012年 8月 8日)は
面白いですよ。詳細は元のサイトで見てください。其の10の本音は。
1.「われわれの顧客は疲弊してきている」
2.「そのアプリには注意すべし」
3.「われわれは邪魔をしている」
4.「より多くの時間をわが社の製品と過ごすことになるだろう」
5.「わが社には大変革をもたらし得る次の製品が必要である」
6.「iPhoneはiPadと比べても価格設定が高すぎる」
7.「穏やかな売り込み手法にだまされるな」
9.「生涯にわたってわが社の製品を使うことになる」
10.「たとえヘマをしてもわが社のファンは気にしない」
Siriについて
http://www.apple.com/jp/iphone/features/siri-faq.html
◆書評◆
今月のご紹介は、
「日本文化の形成」 宮本常一 (講談社学術文庫 2005)です。
2012年の5月で16版ですから学術書としてはベストセラーではないでしょうか。民俗
学の碩学として有名で、多くの著者があり書評も多く公開されています。関連図書
として次の2冊も合わせて紹介しておきます。残念ながら故人です。
「山に生きる人々」 宮本常一 河出文庫 2011、原本は未来社 1964
「忘れられた日本人」 宮本常一 岩波文庫 1984
この本との出会いは、前回の清水精一の「サンカとともに 大地に生きる」の流れ
で、「山に生きる人々」という題からさらにサンカの情報が得られると思い手にして
みると、そこに宮本常一の大きな民俗学の世界がありました。民俗学の巨星である柳
田国男、折口信夫に続きそれを乗り越える学究です。この本もその学求の過程の執念
さから人間力が磨かれる一冊です。
表題の「日本文化の形成」は遺稿の出版ですが、著者のすべての研究はこのテーマ
を、
実証的に、すなわち民俗学と歴史学とりわけ古事記と日本書紀、さらにこれに関連す
る中国の史書・文献の俯瞰的な統合を目指して来たと確信しました。大変残念なこと
に未完で終わっています。我々にとっても非常に残念な結果でこの続きを読みたいと
いう強い気持になります。その長く、忍耐強くかつ壮絶な学究の過程を知るのが、関
連図書の2冊です。むろんこれ以外にも求道の道を記した、「民俗学の旅」(文芸春
秋 1978 )などもあります。
半世紀以上をフィールドスタディーの旅を行い、この徹底的な情報収集と分析から、
単なる民話や民具の収集を超える日本民族史ともいうべき「宮本民俗学」の構築を目
指してきましたが、その究極の目標は「日本文化の形成」の解明であったと私は確信
します。すなわち、「我々日本人はどこから来たの、そしてこれからどこに行くの」
という事の追及です。
これは私が「俯瞰塾古代史」として探究しているテーマでもあります。我々日本人の
現在の立ち位置は過去の集大成ですから、これから日本人はいかに生きるべきかの思
考や議論は日本人の、日本という社会の成り立ちの正確な認識なしにありえません。
「いま・ここ」の前後には過去と未来があります。「過去と未来を行き来するように
心を開いて考えたり感じたりする訓練は、何よりも私たちの、いま・ここ、で生きる
力を豊かにするものです」と大江健三郎は言っています。
ややもすると歴史学は社会の統治機構の時系列な構造変化を重視し、また民俗学は伝
承の収集とそれからの生活のイマジネーションのという認識を私は持ってきました。
統治機構としての国家の変遷や今後の展望ではなく、生活者の社会構造の変化とこれ
からの在り方がこれからの日本を論ずるには必要です。現在お手伝いしている小宮山
宏先生の「プラチナ構想」のイニシアティブもその一つです。ここではこれから少子
高齢化した社会の生活者の在り方、モデルの設計を追求しています。
身近にいた長男の宮本千晴氏が証言していますが、宮本常一は古事記、日本書紀、万
葉集、風土記等の古代史の文献を、本が真っ赤になるまで朱筆を入れる格闘の結果の
深い知識を持ち、万葉集はほぼ全歌をそらんじていたのではないか、と解説者の網野
善彦氏が述べています。校定者の渡部武氏は、「宮本先生の博覧強記ぶりさながら歩
く図書館」と感嘆しています様に、学究の鬼であったようです。
内容は膨大ですので、読んでいただくしかありませんが、宮本常一がほぼ結論付けて
いる二つの仮説があります。ひとつは東日本と西日本は明らかに異なる文化圏が基底
にあることです。これについては、西日本では村全体に関する事が多く伝承されてい
る事に対して、東日本では家によってそれぞれの伝承がなされている、という指摘が
あります。また農業社会についても、西日本は大きな地主のいることは少なく、名主
も小作人を含めて適任者が就任していたとあります。そして寄り合いで小作も含め村
全体の合意で意思決定しているのに対して、東日本は、大地主の家父長的な社会で、
名主も決まった家しか就任できないという対比があり、東日本は、畿内勢力の植民地
的に成立、形成されたという仮説を感じさせます。婚姻についても明治中期以前に、
親の言いなりに結婚したのは東日本が多く、自分の意思で決めた割合は西日本が多い
と言っています。
そしてもう一つの仮説は、稲作の農耕社会の平地民と、狩猟、漁労、焼畑農業の山岳
民の二重構造がごく最近まで継続していたという事です。関連図書に膨大な聞き取り
調査が有りますが、山中の畑作民、狩猟・漁労、箕作り、タタラの製鉄の民、杣人
(そまびと)と呼ばれる木を切り出す民や木地師と呼ばれる木工の食器を深山で制作
する民は、交易で平地の農耕民と交流があるものの、山伝いに独自の道筋により広く
日本中を移動していた事を確認しています。例えば秋田の狩猟民のマタギは冬には長
野県まで移動し、近畿山中の狩猟民は山口県まで行動半径が広がっていたともありま
す。これらの非定住の民は前回のサンカに繋がりを感じさせます。山岳地帯にすむ理
由があり、そこでしか住めない理由もあります。
そして断言していませんが、限りなく弥生文化と縄文文化をこの二重構造に投影させ
ている事を感じさせる論考です。
この宮本常一も清水精一の影響かもしれませんが「乞食」に興味を持ち「忘れられた
日本人」の中の「土佐源氏」で、元「馬喰(ばくろう)」で盲目になった80歳を超
えた乞食から彼の長い人生を聞き取り、底辺の日本人の生活を赤裸々に紹介していま
す。そこには現在では考えられない自由で大らかな男女関係が描かれています。描か
れている庶民の暮らしは食べ物さえ満足に無いような物質的にはとても貧しいのです
が、明るく逞しく生きている姿が印象に残ります。
最後に、宮本常一は百姓の家に生まれ、自身も農業を営みその高度の専門家でもあり
ますので、農業技術指導を広く行い多くの顕彰を受けています。その関係で戦後の農
地解放にも関係していますが、興味深い記述がありました。占領軍が指令した農地解
放の骨子はそれまでに農林省が用意していたもので、占領軍の独自の内容ではないと
いう下りです。
俯瞰古代史
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◆俯瞰 MAIL 0019号(2012年7月16日)
発行元: 一般社団法人 俯瞰工学研究所
発行責任者:松島克守
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※本記事は松島克守氏の許諾を得て、再録したものです。
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