新興国の経済が足踏み


◆このメールマガジンは、松島克守が、東京大学教授、そして(社)俯瞰工学研究所の代表としてこれまでに名刺交換やメール交換をさせて頂いた方々に送らせて頂いております。またこのようなMLはメールボックスのご迷惑と感じられる方もあるかと思います。ご遠慮なく不要のお申し出を下さるようお願いします。また、内容等についてもご遠慮なくご意見を頂ければ幸いです。過去の俯瞰メールは俯瞰工学研究所のHPの「俯瞰メールのアーカイブ」にあります。http://www.fukan.jp/また、ご友人、ご家族に転送して頂くことは大歓迎です。



皆様

◆季節のご挨拶◆
梅雨の末期の豪雨で被害が出ています。地球的には水資源は枯渇していますが、台風、豪雨という水資源は制御不可能です。先般の竜巻といい基本的に地球温暖化の影響とすると事態は深刻に感じられます。

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・新興国の経済が足踏み
・予想が外れた3年前の認識
・日本をダメにする日本人の所作
・プラチナ構想ハンドブックの電子版
・日経BP社のITJapan2012で講演しました
・頭のよくなるクッキング5
・デジタル書斎の構築11
・書評 : 「サンカとともに 大地に生きる」
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◆新興国の経済が足踏み◆

中国の経済成長が足踏みしています。メディアで報道されている中国政府の発表よりもさらに減速しているのではないかという見方が強まっています。リーマンショック後はインフラ関係の投資、国営企業への融資、自動車・家電販売への補助金等の経済成長策をとり成長を維持してきましたが、欧州危機による輸出停滞で民間の設備投資、消費が落ち込み経済成長が鈍ってきました。不動産は依然バブル状態にありますので景気刺激策も緊縮策も取り難く、手詰まりでしょうから、この低成長は続くと見られています。


インドの経済成長はさらに酷く落ち込んでいます。インドはともかく政治が「決めない」政治で、かつ汚職が酷いようです。日本企業でも工場用地取得にあからさまに賄賂を要求されるケースがあります。外資小売り大手のインド進出も未だ阻まれていて、消費も伸び悩んでいます。


石油と資源に強く依存する、ロシア経済はその原油と資源価格の低落で元気がありません。成長率4%以下です。プーチンが極東ロシアの産業開発に力を入れてくると思いますが先日のロシア首相の国後島訪問を見ると日ロの経済関係も簡単に進まないようですね。


BRICsのB、ブラジルも経済が最近減速しています。調整期になっているのでしょうか。政府のテコ入れで自動車はもっているものの家電や家具の落ち込みが大きいとのことです。資源価格の低落が効いているのでしょう。


欧州危機は新興国の資源輸出や製品輸出を収縮させ、一方シェールガスの開発は原油価格の暴落を招いています。


世界経済を牽引する希望のBRICsは今、牽引力を失っています。この新興国の新需要に期待した日本の復活戦略も一時足踏みです。加えて米国経済がかなり弱含みで、実態が懸念されていますが、秋の大統領選までは議論は活発でも有効で強力な政策は出ないでしょう。


中国経済
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20120714&ng=DGKDZO43739950U2A710C1EA1000
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20120713-OYT1T00594.htm
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M6XBQ86TTDSK01.html
http://www.asahi.com/business/news/reuters/RTR201207110111.html


インドの経済成長
http://www.asahi.com/business/update/0531/TKY201205310282.html
http://diamond.jp/articles/print/20467


ロシアの経済成長
http://www.emeye.jp/disp/RUS/2012/0329/stockname_0329_013/0/
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPTK815948220120704


ブラジルの経済成長
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2012/06/post-2590.php
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM12058_S2A710C1000000/


アメリカ経済
http://www.zaikei.co.jp/article/20120709/107827.html
http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/urgency/report120704.pdf


◆予想を外れた3年前の認識◆

実は3年前はこの新興国の成長の波が、中国、ブラジル、インドそしてロシアとある時間差をもって重なり空前の大波が世界経済に好況をもたらすと人に言っていましたが見事に外れました。その理由はまず、ユーロ危機に関する情報収集・分析が出来ていなかった事です。特に南欧は殆ど意識していませんでした。思えばギリシャのオリンピックからおかしくなっていたのでしょう。しかし、国が不正な会計報告をするようでは根幹が腐っていますね。ここはメルケルが主張するようにきちっと出直すべきでしょう。スペインも絵に描いたような不動産バブルの後遺症です。解っているようで判っていないという自分を反省しています。ブラジルも情報分析が出来ていませんから見えません。メキシコだと言われても殆ど情報分析できていません。しかしグローバル経済は完全に一体として影響を与えます。


ただ、今後の世界経済の牽引力が新興国であることには変わりありません。中国を含め時々調整期が入ることを想定して投資や戦略を考える必要はあります。


◆日本をダメにする日本人の所作◆

「身内を大切にする、かばう」という日本人の所作が日本をダメにしているという感じがしています。まず、節電の要の機器である、スマートメーターについて、東京電力が独自の仕様を止めて国際標準の仕様にしたという報道があります。「手下」である関連企業しか応札できない入札をもまだ考えていたのかという驚きです。しかも通信網も自前で。こうした傘下の企業の保護のコストが日本の産業に、世界的に見て割高なインフラを押し付け、結果として産業の空洞化を推進しています。電力以外も道路、交通、水・・・共通しています。製造業のサプライチェーンもこれがあり、国内生産のコストを上げています。


幸いに、ついに「発送電分離」が実現します。配電システムが公共インフラとして公開され、電力の小売りが全面的に自由化されます。再生エネルギーの事業も障害が無くなります。無論副次的な懸念は沢山ありますが大きな進歩です。これまで日本のすべての規制緩和は経団連に陣取った東京電力が最大の抵抗勢力でした。今回フクシマは悲劇ですが、東電の解体は日本の国の未来を変えます。維新です。


大津のいじめ事件の学校と教育委員会の対応も日本人的な悪さが際立ちますね。なにをかばっているのか解りませんが、いじめと自殺の因果関係「見落とした」?これまでのいじめ事件から学んでいたことは、いかに教育者、教育行政が責任を回避するのかの手管だけだったのでしょうか。誰をかばっているのか。さすがに政府も何もしない訳にはいかなくなり、要請があった?という事で文部科学省の職員を市に派遣し、警察も刑事事件として捜査ですが、学生の頃法律の初歩として学んだ「未必の故意」という言葉を思い出しました。


「大津市で昨年10月、公立中2年の男子生徒(当時13)が自殺した問題で、市教育委員会は10日、生徒を対象にしたアンケートは2回実施していたことを明らかにし、2回目の回答に「自殺の練習と言って首を絞める」「葬式ごっこ」との記述があったと発表した。


 市教委によると、2回目のアンケートは昨年11月上旬に実施。結果について学校から昨年12月に文書で報告を受けていたが、これらの記述を「見落としていた」と説明。


 十分な調査をしていなかったと認め、謝罪した。」日経新聞7月11日


発送電分離
http://www.nikkei.com/paper/


◆プラチナ構想ハンドブックの電子版◆

「プラチナ構想ハンドブック」は日経BP社から、1月に出版しましたが、その電子版を出版しました。


日本の電子書籍の普及は業界の調整というか、黒船騒ぎの議論で遅れていますが、この秋にはアマゾンがキンドルを日本市場に投入し、アップルも日本語書籍の配信を始めると予想されますので、いやいやながらも日本の業界も腰を上げたという状況になり、出版に漕ぎつけました。電子書籍の電子書店への取り次ぎ網が出来ました。凸版印刷系と大日本印刷系の二つです。日本的ですね。凸版系は紀伊国屋が大手書店です。


大日本系は丸善が大手書店です。電子版の威力は翻訳すれば、アマゾンとアップルを介して、世界中に直接書籍を販売できる可能性です。これは実現すれば画期的、革命的です。ここでも日本人は国内市場を専守防衛です。この機会に世界に雄飛するような発想が出来ないのでしょうか。「アップルになれなかったソニー」というコピーがありますが意味深いですね。


プラチナ構想ハンドブック電子版は、書籍版の1部-3部を分冊する形をとっております。第1部が7月6日に発売され、2部、3部が今月中に発売予定です。各500円(税込)です。書籍ではモノクロだった画像もカラー画像に置き換えました。これも電子書籍の利点です。多色刷りのコストが掛かりません。


紀伊國屋書店のサイトをはじめ順次他サイトへも配信していきます。


■下記の手順にて電子書籍のダウンロード(購入)ができます。
<PCの場合>
(1)紀伊國屋書店の電子書籍 にアクセス
  http://bookweb.kinokuniya.co.jp/indexp.html
(2)プラチナ構想ハンドブックの本を検索します
(3)電子版購入のボタンをクリックします
(4)「会員登録」「クレジットカード情報」を入力します
(5)Kinoppy(ヴューワー)をダウンロードします
(6)Kinoppyの中にある「書棚」に購入の書籍が表示されます。
<iPhone, iPadの場合>
(1)Google等で紀伊國屋書店のwebに行きます
(2)Kinoppy(ヴューワー)をダウンロードします。
(3)会員登録して購入するとKinoppyの書棚に収納されます。


◆日経BP社のITJapan2012で講演しました◆

久しぶり、日経BP社のITJapan2012で7月5日講演しました。聴衆は約1000人です。テーマは「甦れ!日本の製造業」です。日本の製造業の衰退の要因の私の仮説を述べた後、復活のための4つの提言をしました。


1.イノベーションの本質を理解すること。「イノベーションはバリューシフトである。」


2.ネット時代に「同期」すること。スマートフォンにビジネスモデルをリンクさせること。


3.すでに起きたパラダイムシフトは、インターネットの普及と現在のモバイル化である。この先に起きるパラダイムシフトは何かを見抜く事。


4. 自社の基幹系情報システムの革新をはかること。顧客価値を創造する情報システムを構築する事。


講演資料は(社)俯瞰工学研究所のサイトの「松島教授講演資料」に置いてあります。
http://www.fukan.jp/%E6%9D%BE%E5%B3%B6%E6%95%99%E6%8E%88%E8%AC%9B%E6%BC%94%E8%B3%87%E6%96%99/ http://itpro.nikkeibp.co.jp/ev/itex/itj12/


◆頭のよくなるクッキング5◆

栄養学の様な話がこの所続きましたが、今回は原点に戻って料理について書きます。ある日の夕食です。メニューは。メバチマグロの中華風刺身、カサゴの大根スープ、ホウレン草のお浸し、オクラの味噌汁、玄米ご飯、です。


まず時間がかかる玄米ご飯からです。カップ2を水で洗いザルで水切りして、圧力鍋に入れ1.3倍の水を加えて約30分おいて、加圧時間20分です。これは4-5回分ですが、当日食べない分は小分けにして冷凍庫です。水はミネラル水か浄水器の水が良いでしょう。その間、カサゴの大根スープを作ります。10年以上前に香港の料理として雑誌の記事で紹介されていた料理の自己流版です、魚は出来るだけ天然魚を丸ごと食べるようにしています。頭やアラの滋養をとりたいためです。丸ごと魚では、この大根スープの他イタリアンのクアパッツァも作ります。魚はメバルでも鰈でも小型の鯛でもいいですが底魚は汚染物質が気になりますのであまり使いません。ワタと鱗を魚屋で取ってもらったものを、背骨に達するまで背骨に沿って切り込みを入れ斜めにも切れ目を入れます。それに塩コショウをしっかり振って15-20分置き、紙タオルでふき取って、テフロンのフライパンに多めの油を入れて両面を焼きます。我がキッチンでは熱に強い品種改良された紅花油です。多めの油とフライパンの端の円弧を利用して腹や背びれ頭も焼きますが、焦がさない事です。後で煮ますから火を通す必要はありません。黒く焦げた魚の皮はよく知られた強力な発がん物質です。


大根は太めの千本に切ります。煮込む鍋に大根を半分くらいならして入れてその上に焼いて油を紙タオルで拭った魚を置き、其の上に残りの大根を入れます。これに鳥スープをヒタヒタに入れます。ここでは水と市販の顆粒状の鳥スープを大目に入れました。煮立ったら丁寧にアクを取、中弱火IHで6くらい、1時間ほど煮て、味を塩と胡椒で整えます。


ホウレン草のお浸しは、水で洗ったホウレン草を沸騰した鍋で30秒ほど湯がき、ザルに上げ水で粗熱を取り、根元を揃えてざっと水を絞り、適当に切り器に盛ります。ここにオメガ3のエゴマ油を回しかけ、自家製のだし汁をヒタヒタに入れ、上からジャコをタップリかけます。塩味はジャコです。ここは市販の出汁の水で割ったものでもいいでしょうし、トッピングはサクラエビも美味しいです。


自家製の出汁は、麦茶を冷やすガラスの容器に昆布を15-20センチ、干し椎茸5-6個、あれば干した貝柱3-4個にミネラル水か浄水器の水を入れ冷蔵庫で一晩おき、濾した水出しの出汁をいったん沸騰させ容器に入れ冷えたら冷蔵庫に保存しています。濾した昆布やシイタケ、貝柱は適当に。昆布以外は刻んでオカラに入れることが多いです。


中華風刺身では、マグロ以外の鯛や勘八、ブリ、サワラ何でもいいですが薄目に切ります。これをカイワレ大根や大根のつまなどを敷いた皿に並べます。サラダです。この野菜が美味しいです。


中華ダレですが、これは30年ほど前に赤坂にあった海皇という中華料理屋でヒットした中華刺身の簡略版です。海皇という店は今も場所を変えて赤坂にありますが、別の経営です。そしてこの刺身はメニューにあります。ただ海皇の中華刺身のタレはネットで元の経営者から買えます。以下は自作のレシピです。


ネギ、生姜、ニンニクを刻んだものを小さなフライパンに入れ、熱に強い油、ここでは品種改良の紅花油をヒタヒタに入れ、弱火で黒く焦がさないように加熱して油に味と香りを付けます。これを濾して冷ましておきます。ドレッシングを作るガラスの容器に醤油を入れ、少量の黒酢、隠し味程度の砂糖、それに顆粒の鳥スープを入れて、容器を振って溶かします。それに香りづけした油を入れます。さらに生の油を入れ醤油の黒い部分が全体の4分1くらいまで入れます。オリジナルはピーナツ油です。ただ前回書きましたがピーナッツ油はあえて食する油でない為使いませんが香りが良いですね。これを振って混ぜて刺身の上から適当に掛けます。この中華刺身タレは時間があるとき作っておきます。


出汁やタレを予め用意しておいてもここまで1時間半は立ち、8時くらいでしょうか。その間は、赤ワインを飲みながらリラックスして料理していますから余分なコトはすべて頭から消えています。


味噌汁ですが、難しい事はありません。最近は、ダシは極力天然の素材を使うようにしています。例えば飛魚のダシです。飛魚(アゴ)の干物を買い、オーブンで少し焼いてミキサーで粉砕して使います。ただダシの力としては圧倒的に鰹節と昆布ですね。


日本料理と西洋料理の差異はこれです。これが和食の神髄です。蟹もエビもアラも良いダシが出ます。例外は貝です。浅利、蛤のダシは別格です。またタイのアラで取ったダシも別格ですね。塩分の関係で味噌を控えめにしますが、味噌の味がボケます。塩分が少ない味噌も少しずつ出回っています。


後は食卓に並べて、食べるだけですが、もうワイン必要ありませんね。玄米ご飯には擦った黒ゴマをタップリかけます。頭がよくなるか?ストレスがなくなる分善いのではないでしょうか。


◆デジタル書斎の構築11◆

最近の衝撃的なニュース、クラウドコンピューティングデータ消失。
「『データの消失があった5698件のお客様のうち、数百件を除く共有サーバーのデータは、残念ながらデータの復旧自体が不可能ということが分かりました。本当に申し訳なく思っております』――。ファーストサーバーの社長室の村竹昌人室長は、混乱の続く25日夜、こう語った。5万以上の顧客を抱え、うち8割が法人・官公庁関連というファーストサーバーの大規模障害は、依然として被害の全容がつかめないままでいる。」日経新聞6月26日


さらにその前にも。
「6月7日の早朝から十数時間にわたって複数の銀行や事業会社で発生したシステム障害が、いずれも富士通のデータセンター「館林システムセンター」で起きた電源設備故障に起因していたことが分かった。同センターでは6月7日午前5時57分に、無停電電源装置(UPS)が1台故障。障害回避策が機能せず、同センターの7%に相当する範囲で電力の供給が絶たれた。この影響で、同センターを利用する東京スター銀行の全てのATM、サークルKサンクス子会社でりそな銀行などとATMを共同運用するゼロネットワークスの一部ATMが午後9時まで停止した。また、ソニー銀行の全システムが同日午後1時まで停止した。ニフティのクラウドサービス「ニフティクラウド」の管理ポータルや一部の顧客用サーバーもダウンしたため、同サービスを利用するスクウェア・エニックスのオンラインゲームなども終日停止した。」
日経コンピュータ 2012年7月5日号P.8


これでやっぱりクラウドコンピューティングは危険だ、という短絡的な思考が心配です。2例とも「人災」です。ファーストサーバーの方は「なぜ、外部にバックアップをとっておかなかったのか。「おっしゃっているような一般的なバックアップというのは、我々のような低価格の料金で提供するのは難しい。サーバー内の別のディスクでとることを、我々はバックアップと考えています」、一方 約款には「利用者がバックアップを怠ったことで受けた損害についてファーストサーバーは何ら責任を負わない」という免責条項があるといいます。安いだけでこの業者と契約した企業の情報システム責任者は余りにも不勉強で無責任です。契約書を見落とした?


富士通のケースでは、
「「館林システムセンター」で起きた電源設備故障に起因していたことが分かった。同センターでは6月7日午前5時57分に、無停電電源装置(UPS)が1台故障。障害回避策が機能せず、同センターの7%に相当する範囲で電力の供給が絶たれた。」システム設計のミスです。技術力の問題ではないでしょうか。この会社は似たような障害を東京証券取引所のシステムでも起こしています。経営陣は誰も責任とりません。悲しいですね、SEは。


海外でもクラウドコンピューティングは障害があります。例えばアマゾンです。ただ障害のレベルが違いますし、クライアントのデータを消失していません。米国のクラウドの設備を見た方がいいでしょう。下記URL


ただこれだからクラウドコンピューティングは危険だという発想は止めてください。このデジタル書斎で紹介しているサービスは全てクラウドコンピューティングです。この利便性は何にも代えがたいものがあります。デジタル書斎としては、自宅のパソコンに元データをキチッと管理して置くことが対策ですが、むしろ自宅パソコンのデータバックアップの方がずさんで、クラウドに預けて置いたデータの方が安全で、パソコンデータのバックアップにもなります。


ファーストサーバーの障害
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2600L_W2A620C1000000/
富士通の障害
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20120702/406757/
アマゾンの障害
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20110421/359696/
マイクロソフトのデータセンター
http://www.youtube.com/watch?v=PPnoKb9fTkA
http://www.youtube.com/watch?v=Rnvya5ZgEvc
Googleのデータセンター
http://www.youtube.com/watch?v=zRwPSFpLX8I
http://www.flixxy.com/google-container-data-center.htm
Appleのデータセンター
http://gigazine.net/news/20120327-apple-data-center-maiden/


◆書評◆ 今月のご紹介は、 「サンカとともに 大地に生きる」 清水精一 河出書房新社 2012)です。


復刻版で実は古い本で原本は1934年の出版です。原本には「サンカとともに」はありません。求道の自伝です。圧倒的な迫力はあります。素封家の出身で、京都大学で河上肇に経済学と社会主義を学び、西田幾太郎に哲学を学び実業界に入りながら、全てを捨て人間とは何かを悟るべく、生涯求道を追求した自伝です。悟りの境地まで到達しています。名文ですが読めない漢字、意味が解らない単語が多くて、こんな本はあまりありません。例えば「愚禿」読めますか。


旧山手通りに、昨年暮れに開業した蔦屋書店は趣味的な面白い本が満杯です。いわばロングテールの本がジャンルごとに部屋を分けて公開されていて、立ち読みを誘う設えです。必要な本が判っていればアマゾンで注文すれば事済みますが、どんな本が世にあるのかわからないのですから、この蔦屋は知の迷宮の探検の価値あります。時間を忘れて彷徨する人でいっぱいです。その中で日本の古代史や世界の習俗に関する書籍を集めた部屋があり、そこに行くたびに気になっていたコーナーがありました。サンカ、山窩という言葉が付いた書籍の集合です。サンカという非定住民族の存在はずっと昔から知っていましたが、マタギもその一つかなという程度の知識でした。なぜ興味があったかですが、日本の古代史にみる、渡来の弥生人に追われ、山に生きる古代縄文人は何処に行ったのか気になっていました。その影を山窩に投影していました。その書棚で気になる一冊が今月の本です。


山窩の定義ははっきりしていないようですが、身分制度外の非定住民族で(穢多非人は身分制度内)、諸説がありますが清水精一さんは、山窩には山を根拠にしてきた系統と河海を根拠にしてきた系統があると言っていいます。別の説では工人系と川漁系という説がありますとしています。いずれも農業ではなく自然の幸を基本とした生業です。実際は色々な理由でこの集団に合流していた人達もいます。工人系は製鉄のタタラや漆器の木地師もこの系統でしょう。資源が無くなれば別の土地に移動していきますから非定住民族です。芸能集団もあります。よく山深い集落に歌舞伎や人形劇の伝統芸能が伝承されている例がありますが、山の中で芸能が生まれたのではなく、都会で生まれた芸能集団が定住の基地として封建支配の届かない山奥に根拠を構え、此処から全国に興業の旅に出たのでしょう。


彼は世を捨てた後、約3年間臨済宗天竜寺で修行の生活を送り、そのあと若狭、丹波、山城の重なる深山に2年間、自給自足の独居生活を送り、山を下りてからは比叡山で21日間の断食を行った後大阪の百軒長屋という貧民街に1年を過ごした後、大阪の蜜柑山に居た乞食の集団に入り約3年半を過ごしました。彼によると乞食は山窩の一つです。この本の凄い部分はこの蜜柑山での生活の描写です。中にいた者しか解らない事実です。


これによると乞食の集団にはチャンと呼ばれる頭領と代議士と呼ばれる幹部グループがあって、基本的には代議士会が決めそれをチャンが承認するという事です。掟も有り規律が保たれている原始的な共産社会です。規律は厳しく一番重い刑は極刑です。姦通罪はこれに当たります。この点は貧民街よりずっと規律がとれています。むしろ貧民街はモラルが乱れていると嘆いています。


乞食の集団では稼ぎは全てチャンの妻に出し、それを全員で公平に分配するとのことです。この本で見る限りグループ内は本当に信頼関係に結ばれ、とらわれない自然人の集団ですね。自然を信じ楽しむゆとりある生活です。大人も子供たちも自然人です。


非定住ですからトイレというものを使わないのでこれを作って使わせるのに苦労しています。また地面に直接寝て地熱で冬寝る人や、寒い時はみんな素っ裸になって固まってお互いの体温で暖を取って寝るとか、地面に穴を掘り油紙を敷いて湯を入れそれで生まれた赤子の産湯にするとか、赤子を湯ではなく川の水で洗うとか、自然人の生活の知恵の一端がまだそこにあります。姦通はご法度ですが、離婚は自由です。死別も有ります。身内の結婚ですから相手は限られます、従姉も有ります。兄嫁、弟の嫁も有ります。年齢関係なく年上、年下もあります。結果は父親の違う子供を女性は持ち、母系家族です。平安時代の貴族も母系家族ですよね。生活能力は性差がありません。年齢も。


何故乞食になったか彼はみんなに聞いていますが、一番多いのは代々乞食だからです。子供は生まれた時から乞食ですから何の迷いも有りませんし、自分で稼げますから自立しています。一方、教育も戸籍もないので抜けだしたくても抜けけられません。痛い話を一つ、「乞食を三日やると止められない」という話がありますが実は「乞食を三日やるとその苦しみは忘れない」が真実でした。


彼の初めての物乞いは、チャンの娘に連れられて行きます。5年以上の修行を積んだ彼も地べたに土下座して黙々と頭を垂れる事への躊躇いと心の動揺がありました。銅貨を投げてよこすのですが、モノを人に与えるに何という事だという気持ちが出てきたようです。一日の物乞いで彼は10銭5厘の稼ぎ、横の娘は1円60銭です。「乞食に技巧はあるか」と娘に聞くと「頭の下げようが足りないからだ」言われ、改めて行き交う人の心には自分の傲慢がそのまま映っているに違いないと悟るのです。「どうしたら頭が下がるか」と聞くと「下げようと思っている間は下がらないよ。今に自然に下げられるよ。」です。実は技巧はあるのですが。帰ると「お前、ずいぶん稼ぎが少ないね!」チャンの妻から言われ、稼ぎ?モノを貰うのではないのか、と思いますが乞食は職業なので稼ぎが評価です。この稼ぎをあてに毎日食料を売りに来る業者がいるといいうのも驚きです。


出稼ぎの旅で故郷の高槻で稼ぐことになりました。自宅もある、友人も歩いている、叔母の家もある、そこでの物乞いに対する、葛藤のシーンも凄さがあります。幸いすれ違った友人も気が付きませんでした。


かなり時間が経ってから、ついと従姉に見つけられ、後を付けられて居場所が知れてしまいます。弟が来て家に戻れという、危険な場所にもかかわらず、ついに夜、母親が1人で来ます。「達者でよかったね」が最初の言葉でした。一緒に帰ってくれと頼みますが、「今家に帰ればこの乞食の人たちを救済できない」と言って残ります。母の危篤を知らされ家に戻りますが間に合いません。葬式が終わり帰ろうとすると父親が「乞食の中に帰るのか」と言い、母からの伝言として「1日も早くあの大勢の乞食が人間らしくくれるように私もくれぐれ頼んでおったと言ってくれ」です。ここで母を「全理解者」として得たことを認識し、なんと恵まれている自分であることに泪します。


その後仲間を引き連れ、苦労しながら生業の道に仲間を導き、ロバート・オーエンのユートピアの様な共産社会を創って行きますが、この過程で胸を打つシーンが幾つかあります。野菜の弁当もその一つです。また元会津藩士で当時の大阪市長という「侍」の支援も有りました。全て戦前の話しですから今となっては既にこのような山窩というコミュニティーはありませんが、求道の過程の凄さから人間力が磨かれる一冊です。



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◆俯瞰 MAIL 0019号(2012年7月16日)
発行元: 一般社団法人 俯瞰工学研究所
発行責任者:松島克守
URL: http://fukan.jp
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※本記事は松島克守氏の許諾を得て、再録したものです。


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