インドに行ってきました
俯瞰工学研究所の松島克守のメルマガです。第12号を送らせていただきます。
◆このメールマガジンは、松島克守が、東京大学教授、そして(社)俯瞰工学研究所の代表としてこれまでに名刺交換やメール交換をさせて頂いた方々に送らせていただいております。またこのようなMLはメールボックスのご迷惑と感じられる方もあるかと思います。ご遠慮なく不要のお申し出をくださるようお願いします。また、内容等についてもご遠慮なくご意見をいただければ幸いです。
皆様
◆季節のご挨拶◆
年末も近くなり、改めて時の過ぎる速さを何かヒヤッと感じます。色々言われますが、フクシマが冷温停止に漕ぎ着けたという事をホッと、受け止めたいと思います。この状態に至るまでの、関係各位、取分け消防、自衛隊、東電の現場関係者のご尽力に心から御礼申し上げたいと思います。
今月の季語は、「坂の上の雲」でしょうか。日本海海戦とトラファルガー海戦、両国の運命を決める海戦でした。あの秋山参謀でも平常心を失いかけたとしたら、勉強になります。なぜ松山かも興味がありますが。ともあれ情報収集の重要性を改めて認識させられました。次のご挨拶は新年になります。よいお年をお迎えください。
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・インドに行ってきました
・金正日総書記の死亡
・プラチナ構想ハンドブック出版します
・「知の構造化の技法と応用」出版しました
・デジタル書斎の構築4
・書評 : 「知の構造化の技法と応用」
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◆インドに行ってきました◆
インドに3年ぶりに行ってきました。パスポートをチェックしないといけませんが、既に1995年以来10回以上行っています。今回はデリーとバンガロールの企業訪問でインドに関する情報・知識を更新し、理解をさらに深めることが出来ました。自動車会社が2社、ITが2社、電子部品1社、コンシューマ1社、産業機械1社、そしてJETROと地下鉄工事現場です。このうちIT1社と産業機械はインド企業です。
先ず驚きました。この3年ですごい変化です。2都市とも飛行場が新しくなって、最先端のイメージです。街は相変わらずの喧騒ですが、高架の鉄道の開通、一部地下鉄が開通して新型車両が走っています。街の自動車も新型が大部分。デリーではグルガオンというインドとは思えないような街も開発され、多くのビルが立ち並び賑やかです。グルガオン (Gurgaon) は、デリーの南西部に隣接する町でデリーからムンバイに通じる道筋にあり、外国企業のオフィスとショッピングモールが集まっています。日本人も多く住んでいます。
バンガロールの奇跡
本当に素朴で田舎の鉄道駅の様だった、バンガロールの空港は最先端の空港に生まれ変わりました。街の近くにあった空港は郊外に移転して広大になり、そこに向けて高速道路や鉄道の建設が進んでいます。奇跡は中身です。1995年に最初に行った時の人口は確か数十万人でしたが、今は数百万人です!なぜなら、当時数百人だったインドIBMは12万人で、結果として全IBMの社員の四分の一はインド人です。又、当時千数百人だったInfosysは14万人のITサービス企業になりましたが、これでもインドでは二番手です。このInfosysのキャンパスを訪問してきました。25,000人のエンジニアが働いています。
平均年齢が26歳ですので文字どおり大学のキャンパスとそっくりです。ここが米国だといわれればそのまま信じられる風景です。塀の外の世界とは全く違う別世界です。さらにバンガロールから南西146km、車で3時間ほど南の位置にあるマイソールにはさらに巨大な教育施設があるという事でした。ただ、キャンパス見学だけでは許されず、「イノベーションマネージメント」の講演をしてきました。その時の資料を俯瞰工学研究所のサイトに載せておきましょう。
因みに、インドIT企業の上位6社はサティヤム・コンピュータ・サービス、ウィプロ、インフォシス・テクノロジーズ、TCS:タタ・コンサルタンシー・サービシズ、コグニザント、HCLテクノロジーズです。このほとんどがバンガロールに巨大な拠点を持っています。IT産業はインドのGDPの4%弱にあたる約二百億ドルに達しているという。
IT人財の供給がその推進力です。IIT等の最高水準の大学から、年間約14万人が産業界に供給されています。日本は?1000-人あればというくらいです。大学の情報系の入学定員を調べたことがあります。
米国のIT企業で拠点をバンガロールに持っていない企業の名前をあげられません。日本のIT企業は此処でもかなり控えめです。探せばあるでしょう。慎み深い日本文化でしょうか? 加えて、トヨタを始めとした製造業も大展開ですから、奇跡的な発展をしているわけです。
追い着かないインフラと資源
というインドの奇跡的な成長に、それが必要としているインフラが追いついていません。街中大渋滞で、クラクションの大合唱です。企業活動にとって深刻なのは、1日10回は有るという停電です。ITはUPSが必須です。工場は自家発電が必須です。もっと深刻なのは水です。取り分け北部は砂漠気候で雨が少ないのでこれまでも大量の地下水を汲み上げて、農業と工業を賄ってきましたが、水は電力のように簡単に作れません。有限の地球、というパラダイムに掛かります。ですからインドは持続的成長が難しいですね。電力は作れます。石炭はありますが、砂が多い低品位炭ですので、輸入炭を混ぜています。
ここは技術イノベーションで解決すべく、日本技術が出番ですが、しかし炭酸ガスは出ます。自動車販売は急成長ですが、石油価格は軽く100ドルを超えました。車を安くしてもガソリンや軽油で走らせる事は限界が来ます。電気自動車になりますか。
再生可能エネルギーと原発
となると、生活、産業、自動車、全て電力のいうエネルギーインフラの増強が必須になります。従ってエネルギー関係の設備投資ビジネスは好調です。再生可能エネルギーとして、太陽、風、水はありますが。海洋性、地熱は少ないでしょう。バイオマス?長く牛の糞も燃料に活用されていますね。結果的に原発が重要な選択枝になります。
此れが大議論です。ヨーロッパもそうですが、インドも特に僻地というわけで無く、人が住んでいるそばに原発を作ります。多くの議論は安全性で、疑問がある上に、原発の運用、事故管理は日本より弱いと人々は見ています。フクシマの経験をここで生かしてほしいですね。一方、企業のインド展開の戦略検討に、原発の所在地を確認した方がいいですね。
インドでは日本人は皆さん元気
インドで今回印象的だったのは、現地展開の先陣を担う日本人の方々が全て凄く元気が良く、戦略的に前向きなことです。インド展開という戦略的なプロジェクトだからでしょうか、戦略的な人材が展開されていると認識しました。日本本国で活躍して頂いて、日本を何とかしてください!とお願いしたい方ばかりです。やはり今の日本の組織は、日本人の本来のDNAを棄損させていると確信させられました。テレビでも紹介された、デリーの地下鉄を仕上げて、今バンガロールの地下鉄建設の総大将は日本人女性の阿部さんが代表です。此処に大量に草食系の日本人男性をインターンシップに送り込むプロジェクトをやりたくなりました。
インドの駐在の日本人が元気なのは、タイまでは本国のご指導が密で、インドは手が回らないというかよくも悪くも権限委譲が進んでいるのでしょうか。決めない、権限委譲しないのが日本式経営の神髄です。
なぜインドか
インドの力は、人です、知識です。英語を話せる、読める、書ける人材です。製造業の集積も他の新興国とは違います。ともあれ、航空機も、兵器も、自動車も、鉄鋼も自力で生産してきました。他の新興国より製造業の人材とスキルが蓄積されていますので、製造業の立ち上げ、現地調達は相対的に短期間かもしれません。パソコンとネットワークが設備投資のIT産業は、いち早く規模で世界一になりました。
インドの課題はいくつもありますが、最大は、先に述べた水とエネルギーです。社会的には職業のカースト制度も有ると複数の方が言います。ご存知のように、伝統的な職業はその独占的な職業階級のカーストがあります。日本はカースト制度が有りませんが、別の何かが社会を硬直化させています。ここインドでは明示的なカーストが組織の硬直性になっているようです。幸運な事に、ITを担当するカーストは存在しなかった?
カースト制度を超えてIT産業に才能が集積したのではないかというのは私の仮説でしょうか。
トヨタのインド人スタッフは皆さん日本語が上手
インドのトヨタでは、インド人の管理職がほとんど日本語を話せるのに驚きました。理由を伺うと極めて単純明快な答えでした。語学の習得に才能がない日本人に英語を教育するより、語学の才能にたけたインド人に日本語を教えた方がずっと効率がいい、才能は生かして使う。という事でまず日本語教育のスクールを作りそこで日本語教育をしたという。確かに、日本人で知識やスキルがあって、英語を話せる人材は希少でかつ既に払底している。現地側が日本語を理解できれば、英語は出来なくても知識とスキルがある日本人ならまだまだ海外に送る事が出来る。戦略的ですね。因みにどこでもやっているように、採用したインド人の技術・技能教育のインスティチュートも無論ある。トヨタの強さは教育力ですね。
インドから東京
成田から早朝のバスで帰宅しましたが、道路と街が5S状態ですね。空も澄んで青々しています。デリーの空は塵埃で、もやが掛かり朝陽や夕陽が不思議な美しさを出します。
バンガロールは、空はきれいですが、空気は排気ガスで大変です。道路も清掃という概念がないのかと思います。国中5Sの国は日本と北欧、スイスくらいでしょうか。少なくとも東京はレーンを守り譲り合って運転しています。鉄道も整列乗車です。これが日本の資源、力であると思います。政治だけは新興国と同じですね。何とかしないといけません。声を上げましょう。街のクラクションよりも政治家、とりわけ元閣僚の不規則発言はクラクション以上にどうしようもない騒音です。
注記 5S:整理、整頓、整列、清潔、躾 の頭文字のS
◆金正日総書記の死亡◆
突然の死の報道ですが、年齢が69歳?と意外と若いのが意外でした。あまり健康的な生活を送ってきていないようですね。後継といわれる金正恩氏もかなり肥満気味で健康に気を付けた方がよさそうです。
ともあれ北朝鮮に関しては課題山積ですし、隣国でかつ核保有国ですので、日本と韓国は一気に緊張が高まりました。想定されるシナリオはいくつもありますが、中長期には民主化し、朝鮮統一に動くと思います。ただ、ドイツ再統一後の東ドイツ再興の苦難と西ドイツの苦労を見ているだけに、感情論だけで再統一は出来ないでしょう。今勢いのある韓国も西ドイツの様な経済力はありません。民主化、非核化を条件に徐々に経済の再建を周囲が支援して、時間を掛けて統一がされると思いますが、一時的な混乱がなければ幸いです。中国は中国型の経済発展モデルを指導し、独立した同盟国として維持したいと思います。統一への力、共産党支配の経済発展、そして韓国は大統領の選挙で政権交代です。全ての人が冷静な議論と行動をすることが極めて重要です。しかし日本人も無関心でいられる事ではありません。
それにしても、ゴルバチョフとの素早い交渉で東ドイツを取り返したコール首相、苦労をしながら東ドイツを再建しつつ、結果として欧州の覇者?になったドイツ国民の力を改めて再認識します。しかもその政治リーダーは東ドイツ出身の女性のメルケル、日本にはメルケルはいないのでしょうか。最近の若者が草食系になったのではなく、当時の日本の政治家も草食系だった事が判ります。いま?ご本人はドジョウといっていますが肉食系ではないでしょう。
◆「プラチナ構想ハンドブック」出版します◆
関係者のご協力で、プラチナ構想ハンドブックの編集を完了しました。1月23日、日経BP社から発刊されます。プラチナ構想ネットワークの小宮山宏会長の基調論文「プラチナ構想とは」、その提案の前提となる三つのパラダイム「爆発する知識」、「有限の地球」、「高齢化する社会」の三つの解説論文、そしてプラチナ構想を展開する7本の解説論文と、既にプラチナ構想と同じ視点と方向の活動を展開している各地域の行動の9本の報告論文からなります。
編集を終えてみて改めて、単著の書籍と違い多数の専門家が一つの概念を、それぞれの高度な専門家として、展開していくプロセスはまさに集合知の形成であり、社会の課題を解決するために、複数の専門領域に散在する知識を構造化するプロセスである、と改めて認識しました。どんなに優れた人材や天才をもってしても、現在の複雑系の社会に必要な知識を提示することはできません。その意味でこのプラチナ構想ハンドブックの編纂のプロジェクトは、知の構造化の威力を示すものと認識されることを期待しています。プラチナ構想ハンドブックは、紙による書籍に加え、豊富な参考資料を付加し、かつ、適時改訂していく電子書籍としても出版を予定しています。さらに多くの人が編集に参加できるサイトとしてとしても情報発信します。
プラチナ構想は極めて広範囲で多様な知識の複合体ですから、通常の書籍のように、単なる文章の記述と図表の表現ではきわめて不十分です。多くのプレゼンテーションの資料や、関連する動画など、紙の本では収容できないコンテンツがあり、その情報量も相当大きなものになります。さらに、社会や技術そしてプラチナ構想ネットワークの実態は相当な速度で変化していきますが、紙の書籍では、それに対応した時間軸で改訂していくことはできません。電子書籍であればこれはかなり容易で、新しいバージョンとして適時配布することが可能になります。日本における電子書籍の流通の現状は、Amazonという黒船を迎えて、現在業界がざわついていますが、結果はすでに決まっているので、比較的近い時期に配布できると思います。すなわち、Amazon を含め、整備されたすべての電子書籍のルートで配布したいと考えています。
加えて、プラチナ構想ハンドブックは、これまでにないWEB メディアとして設計しました。基本は、情報の蓄積、分類、検索を、ICT をベースにして構築し、そして、情報要素の相互がサイトの内外の情報と、ハイパーテキストとしてネットワーク構造を持つ、WEB サイトとして情報発信を行います。したがって、読み方、視方(みかた)、見え方、そして理解はその人によることになります。
プラチナ構想ハンドブックの情報発信は一方向的ではく、読む人、編集する人、自分の情報を発信する人の交流と議論の場も用意します。そして主体的なプラチナ構想ネットワークの会員は、プラチナハンドブックの編集に参画することが期待されます。その継続的な参画によって、プラチナ構想ネットワークが広がれば広がるほど、プラチナ構想ハンドブックは質も量も進化していくでしょう。このWEB サイトにはその仕組みが用意されています。
別の視点では、プラチナ構想ハンドブックは、プラチナ構想を実践しようとする人にとっては必要な知識を得る専門図書館であり、関係する専門家や識者と出会う場所であり、志を同じくする同志との出会いの場であることを目指しています。ぜひ、お読み頂いて、今後の行動のご参考にしていただければ幸いです。
プラチナ構想ハンドブックのサイトは、12月28日オープンの予定です。今回はまだ情報発信の機能だけですが、次のステップで参加型にしていきます。オンラインでの編集参加も大歓迎です。既に機能は組み込んでありますが、支援系スタッフの整備が出来ていませんのでその部分は公開していません。ともあれ見てください、そしてコメントを下さい。そして本もぜひお読みください。
http://www.platinum-handbook.jp
[目次]
提言 プラチナ構想
第1部 21世紀のパラダイム
爆発する知識
有限の地球
高齢化する社会
第2部 日本が今目指すべきこと
坂の上を目指した時代
エネルギーと資源の自給率を上げる
持続可能なエネルギーシナリオを実現する
リサイクルで資源の枯渇に対処する
環境を保全し農林水産業を再生する
創造型需要の新産業を指向する
新産業をイノベーションで創成する
第3部 現場からの報告
プラチナ社会のモビリティ
創造的ビジネスをめざしたスマート林業の展開を
低炭素時代の建築ZEB
学校からはじめる確実なエコが、やがて大きなムーブメントへ
救急現場からみた日本の医療
留萌市の医療ネットワーク
活力ある高齢化社会のための食と健康
ICT による地域経済の活性化プロジェクト
プラチナ構想スクールの実施
◆「知の構造化の技法と応用」出版しました◆
この10年ほど展開してきた、学術知識の構造化の研究の成果を俯瞰工学研究所から出版しました。学術書は商業的に成り立ちにくいので出版が伸びてしまいました。実はこの課題を解決するため、俯瞰工学研究所を出版社にしました。ただ、単なる従来型の出版社ではなく、電子書籍を見据えた出版社にしました。この「知の構造化の技法と応用」は紙の書籍と電子書籍の二つのメディアとして出版しました。東販、日販という既成の流通ルートは扱ってもらえませんので、紙の書籍は、書店には並びませんがAmazonで販売しています。ですから、ネットでお買いください。内容は本メールの「書評」を参考にしてください。
電子書籍はAppleから発売の予定です。現在電子書籍の書式がほぼ完全に確定しましたので、今後急速に開設される電子書店からも販売します。また、この後も、「クラスターによる地域経済活性化(仮題)」、「製造業の俯瞰(仮題)」、「今、そして未来」、「俯瞰経営学」などの出版を企画しています。
出したい本を出したい時に出せる体制を、(社)俯瞰工学研究所で作った訳です。売れそうな本を企画して出版する訳ではないので、ビジネスにはなりませんね。出版のご相談に乗ります。紙の書籍を作らないで電子書籍だけですと、かなり低コストで出版できます。電子書籍の時代になり、だれでも出版社を始められますが、実際やってみるとかなり大変でした。まず、ISBNの発番するライセンスの取得、Amazonとの販売契約、Appleとの契約、その他電子書店との契約等です。しかし、自分で出版社を持つのは夢でしたが今リアルになりました。編集、校正は、もっと大変です。コストを回収できるくらい売れると、持続できますがともかく出版事業を始めました。
◆デジタル書斎の構築4◆
デジタル書斎の成果の一つを紹介します。先般インドに行きましたが、行く前にたまった雑誌から興味を引いた記事を切り分け、すでに紹介した、端をカッターで切りそろえて、スキャナーのS-1500で読み込ませpdf化したものを、iPadに移しiBookで読むようにして持参しました。GEの戦略、エコ企業100、日本を救う中小企業100、世界が見たNIPPON、ジョブス天才の軌跡、TPPアメリカの本音、TPP論争の不毛、瀕死のアメリカは復活できるか、HTML5って何?、Google+は終わった、物欲と脳、才能とは、サイバー戦略、中国のスパイ戦略、・・・等31本です。殆ど往きのフライトで読み終わりました。
何しろ、適度に拡大すると、すごくするすると読めます。前回の海外出張も同じでした。隙間時間がきわめて有効活用できます。購読の雑誌が多くて読み切れずいくつか中止しましたが、この調子になって再度購読雑誌を増やそうかなと思うようになりました。情報収集能力がかなり強化されました。この中でお薦めの記事?GEの戦略(CourierJapan)、エコ企業100(News Week)、日本を救う中小企業100(News Week)ですね。
クラウドに電子書斎の書庫を置くために、Dropboxと Evernoteが有効というか必須という話は既に話しましたが、Web情報の収集にInstapaperというソフトウェアが役立ちます。
特に外でiPhoneでWebを見ているとき、面白そうだけどちょっと長いから後で読みたい時、URLをメールで自分に送っておくのも良いですが、iPhone のSafariにInstapaperに送るを、設定しておいて、これに置くと、クラウドのInstapaperに収納され、あとでパソコンでもiPadでも、無論iPhoneでもInstapaperで読めますので、先に述べた、隙間時間をうまく使えます。Instapaperは無料のアプリです。パソコンでWebを見ているときには、ブラウザーに組み込んだEvernoteで、ページ全体をクリップする、を使えますが、一旦Instapaperに置き、読んであまり価値がなければ、捨てて、保存する価値があるものは、Evernoteを含めしかるべきところに保存すればいいと思います。不必要なものをため込むとデジタル書斎といえどもごちゃごちゃになり、肝心なものが出にくくなります。
何事も捨てる勇気!が肝要です。SafariにInstapaperに送るを、設定するのはちょっと解り難いと思いますが、ネットに親切なアドバイスが出ています。
iPhone4からiPhone4Sに代えましたがあまり変化を感じません。むしろ使用環境のWiFi環境に大きく依存します。WiFi環境がいいところにこれから人が集まるでしょう、陽だまりに人が集まるように。以外にインドがダメでした。中国もロシアも。freeの良質のWiFiを提供することはこれから重要なことだと思いますが、までうるさくIDやPWを聞く無料WiFiと称するものがありますが、かえって煩わしくて困ることがあります。直に、電車の中に無料WiFiが提供されるでしょう。
pdfファイルをiBookに収容
http://www.atmarkit.co.jp/fwin2k/iphonetouch/05pdfvw/05pdfvw_02.html
InstapaperのiPhone設定
http://www.juno-e.com/iphone/2009/03/iphone-instapaper.html
◆書評◆
今月のご紹介は、「知の構造化の技法と応用」松島克守 他(社)俯瞰工学研究所 2011
本書は、東京大学の俯瞰工学研究室(松島研究室)において展開された学術知識の構造化の研究成果の発表です。
学術論文の引用ネットワーク分析の技法の解説と、それを応用して社会がソリューションを必要としている、環境学、老人学、教育学、エネルギー、太陽電池などの分野の俯瞰マップを作成して、その解説をしてあります。これを踏まえて、自身の立ち位置の確認、政策、企業活動、創業などを議論し、計画してください。
内容は目次で見た方が解り易いでしょう。自書ですのでコメント無しにします。第3章、第4章だけでも面白いでしょう。第2章は技法を説明していますがあまり易しくありません。第5章は意欲に満ちていますが、内容はかなり専門的です。老人学、教育学は殆ど今まで公開していませんので興味深いと思います。本邦初公開の図表も多く、視る方の知力と洞察力に十分応えるものと思います。電子書籍としても出版されます。易しい本ではありませんが、カラ―の豊富な俯瞰マップが興味と連想を誘うでしょう。
巻頭言 小宮山宏 前東大総長
第1章 知の構造化とは
1-1 俯瞰工学からの展開
1-2 情報科学による知の構造化
1-3 知の構造化の応用
第2章 ネットワーク分析と引用分析よる学術俯瞰
2-1 関係の表現法としてのネットワーク
2-2 ネットワーク分析の基礎技術
2-3 引用分析の基礎技術と評価
2-4 知の構造化への応用技術
2-5 まとめ
第3章 知の構造化プロジェクト:学術俯瞰マップ
3-1 サステイナビリティー学の俯瞰マップ
3-2 エネルギー学の俯瞰マップ
3-3 ジェロントロジー(老人学)の俯瞰マップ
3-4 教育学の俯瞰マップ
3-5 経営学の俯瞰マップ
3-6 まとめ
第4章 知の構造化プロジェクト:テクノロジーロードマップ
4-1 なぜ今、技術ロードマップが必要か?
4-2 技術ロードマップとは
4-3 技術ロードマップの具体例
4-4 技術ロードマップの機能
4-5 既存のロードマップ作成手法
4-6 知の構造化による技術ロードマップ作成
4-7 太陽電池の俯瞰マップ
4-8 知の構造化による太陽電池のロードマップの作成と評価
4-9 まとめ
第5章 新興学術分野の早期発見手法
5-1 イノベーションの萌芽を発見する
5-2 新興学術分野の早期発見手法
5-3 漸進的イノベーションと急進的イノベーションの事例
5-4 ハブ論文のネットワーク中での位置づけ
5-5 まとめ
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下記まで webmaster@fukan.jp
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◆俯瞰 MAIL 0012号(2011年12月24日)
発行元: 一般社団法人 俯瞰工学研究所
発行責任者:松島克守
URL: http://fukan.jp
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※本記事は松島克守氏の許諾を得て、再録したものです。
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