第10回 インド人にとっての結婚


 今回は、インド人にとっての結婚観について、現時点で私がインド人から聞いた範囲内でわかってきたことを整理してご紹介しようと思います。


 一言で要約しますと、インドにとって、結婚というのは個人と個人との関係というよりは、家族と家族の結婚という位置づけが非常に強いということのようです。例えば、結婚に至る経緯について、正確な統計があるのかよくわかりませんが、インド人によると、いまだに見合い結婚がほとんどであり、恋愛結婚はごく少数とのことです。


 インドで恋愛結婚はないのかとインド人に聞くと、昔から見ると増えてきているかもしれないが、まだまだ圧倒的に少なく、例えば農村部にいけばいくほど恋愛結婚はほとんどないとのことでした。特に農村部では、いまだに10代中ごろに親が結婚相手の家族と話をつけ、本人がまだ自律的な判断を下せる年齢に達する前に、事実上結婚させていることが多いとのことでした。


 当事務所のシディキさんにもう少し突っ込んで話を聞いたところ、これでも昔から見ると相当アメリカナイズされてきたとのことです。すなわち、昔は、女性の親が見合い話を持ってくるとその女性は、その見合い話を断ることすら許されていなかったが、近年は、女性側が見合いを断ることはできるようになってきたとのことです。唯一、大学のキャンパスだけは、恋愛結婚の場となってきているという興味深いことも言っていました。ただ、この話からも見て取れるように、日本の現状と比べると未だに相当家族中心の結婚形態をとっていることがわかります。日本においても、数十年前は、見合い結婚の比率が高かったと聞きますが、その当時よりももっと家族結婚の位置づけが強いような気がします。


 そういわれて街中を見ていると、確かに男女のカップルが道を歩いている光景はほとんど見かけません。むしろ、男性は男性同士でたむろし、女性は女性同士で集まって歩いている、あたかも、男子校と女子校に別れて行動しているように見えます。インド人から聞いたことをもとに想像してみると、家族中心主義の結婚が当たり前のインドでは、カップルで歩くということ自体が社会的タブーとみなされているのかもしれません。もしくは、カップルになったところで結婚に至ることはできないからカップルになろうとしないと考えているのかもしれません。そのどちらも正しいような気がします。


 これらの点については、インドにとっての家族とは何かという点と密接にかかわるような気がしますので、次回その点について触れてみたいと思います。


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