第23回 地域の体温を上げる、観光キーパーソン集会の勧め


 週に一度の割合で、講演やイベント出席など地方出張をしておりますが、地域の観光関係者との直接対話をしています。その中で、程度の差はありますが、どの地域でも、地域の中の官民の幹部の仲が良くなかったり、若手などの様々な取組に無関心であったりすることも多く、まずは、地域の中の連携が最も重要だなと思います。逆に、感服するような取組を見聞きすることも多いわけですが、往々にして、地域から評価されていなかったりすることも。


 その意見交換の中で、課題解決に向け、お互いにいろいろなアイデアや提案や抱負を語りますが、この機会を単発のものにしないで、次のステップとして何をするかとなると、「キーパーソン集会」が効果的ではないかと思います。外部と地域のキーパーソンが交流し、連携していくことで、地域の将来への期待が高まり、頑張ってみようかということになる。地域の価値を再認識し、地域の体温を上げ、地域の中に化学反応を起こしていく集会です。地域版デフレ脱却です。


経済産業省のキーパーソン地域活性化研究会
 ここでキーパーソンとは、有識者や肩書きではなく、国と地域を想い、利他的に構想、行動する人で、企画力、実践力、影響力を持つ実践装備力の高い人のことです。経済産業省地域経済グループ(地域G)で、平成22年度に始めた「キーパーソン地域活性化研究会」は、地域活性化の中核を担うキーパーソン(KP)を各地域に試験的に派遣し、地域に化学反応を起こそうという事業で、今年度は、「キーパーソン地域活性化推進会議」という名前に変わりましたが、今年で3年目になります。


 

 藤崎慎一さんの成田・三ヶ日のロケツーリズム、三宅曜子さんの沖縄紅茶、今村まゆみさん御嶽山の観光誘客、榎田竜路さん等のチームでの全国中小企業の広域連携と情報運用戦略などが平成21年度の報告書には掲載されています。この報告書の中では、かなり具体的成果を出すことが求められていました。


(参考)KP研究会報告書
http://www.kyushu.meti.go.jp/focus/keyperson/keyparson_h22fy.pdf


 

九州でのKP集会
 九州経産局の進め方は、少しやり方が異なります。これは、一昨年の平成21年1月6日に開催された博多KP集会のインパクトが大きく、KP集会という手法で進めてきたからです。


 外部からの派遣したカリスマ的なKPから大きな刺激を受けながら、現場で優れた地域活性化の取組を行っている自薦他薦の地域の担い手KPのネットワーク化を図り、地域全体及び産学官といった各種各層の連携基盤の形成をねらうものです。


 地域KPとは、「若者、馬鹿者、よそ者」で、実践の中から実績を上げ、地域リーダーまたはその候補になっている人というイメージです。組織の中で革新を求め、行動するが故に、地域や組織の中で、若干にらまれているような場合も結構あります。


(参考)DNDつながり力で地域活性
第5,6回博多KP集会など2回に分けてDND連載に報告しました。
http://dndi.jp/25-takimoto/takimoto_5.php


 博多KP集会をきっかけに、筑後市での健康福祉介護、志布志の農商工連携、霧島観光、聖福寺での茶壺道中記念クールジャパンセミナー、有田のクールジャパン、離島振興、日田・熊本のソーシャルビジネス、薩摩仙台の地域活性化、九州の食、人吉の食と観光など約20回のKP集会が連続して、相互に関連しながら、行われてきました。


 これらを実際に進めてきたのが、現在局総務課の松田一也課長で、このDNDにも当初から「産学官連携道場」のリンクがあります。今後の課題は、全国KPの発掘・選定、具体的成果に結びつけていくためのフォロー態勢です。


○九州経産局
過去の開催記録です。
http://www.kyushu.meti.go.jp/focus/keyperson/index.html


観光KP集会を
 今後、観光分野でのKP集会を今後実施していきたいと思っています。24年10月には、酒蔵ツーリズムの創造(懇親会のみですが)、12月東北復興支援ツーリズム・ワークショップなど横断的テーマでKP集会的会合を開催しましたが、冒頭で述べたとおり、今後は地域での開催を企画しています。また、霞ヶ関レベル、地方局レベルでの府省連携も進めて行きたいと思います。


 能登は、2月28日で開催が決まっております。そのほか、知多(4月)、佐渡、松山、高山、伊豆、蒲郡、いちき串木野、指宿、天草など関係者と話をしています。能登では、六本木農園・いいね!JAPAN(ソーシャルアワード大賞)の古田秘馬さんやKP研究会のメンバーだったトム・ヴィンセントさんの基調講演に加え、地産地消文化情報誌「能登」の編集長、地域活性化に熱心な蔵元「宗玄」の社長、グリーンツーリズムが評価されている「春蘭の里」の社長などをお呼びしています。


 今年は、20回を目標に進めていきたいと思っておりました。この度の補正予算で、「官民協働した魅力ある観光地の再建・強化」事業が15.7億円予算化されましたので、その中に折り込んで各地域ベースで開催することを呼びかけていけば、もっと多彩な運動にしていけるのではないかと期待しています。


  本事業は、観光地の魅力となり得る資源を見直し、地方公共団体、事業実施主体、旅行会社、交通事業者、旅行メディア等の総力を結集し、確実な商品化と情報発信を行い、魅力ある観光地づくりを推進するものです。


他のシンポジウム等と何が異なるか
 じゃあ、具体的に普通のシンポジウムやセミナーとどう違うのか、ということでまとめてみました。


 第一に、全員参加型を目指した「集会」であること。自薦他薦のキーパーソンということで、意識の高い、実践者を集め、ショートスピーチや懇親会の一分間スピーチも併せて、できるだけたくさんの参加者に話をしてもらいます。その際の開放的で楽しげな雰囲気を作る議事の進め方も重要。もちろん、懇親会は必須。


 第二に、各KP集会が単発ではなく、重層的に蓄積型のネットワーク形成になるようにすることです。その後、地元にフォローする態勢を作っていくことと具体的な成果を出し、地域の本気度を高めていくことが大事です。


 九州では、各集会を繋ぐ常連メンバーの存在も大きいと思います。九州志士の会(分野を越えた士業の会)が支えてくれています。


 第三に、欲張り過ぎではありますが、汗をかいている若者・馬鹿者・よそ者を次世代地域リーダーとして発掘・紹介し、育成する場を醸成することです。


 キーパーソン集会という名前は、地元主催の場合には、誰がキーパーソンかということで、使いづらいという意見があります。地域主体で開催する場合は、確かにそうでしょうね。ただ、単なる一方方向のセミナーではない、志を持った集会だということを期待させるものであってほしいものです。


 また、facebookで、「キーパーソンFB」という公開グループを作っています。九州を中心に約960人を越えるメンバーが参加しています。ご関心のある方は申請してください。


 (以上は、個人としての見解であり、属する組織とは関係ありません。)



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