第2回 TEDxEarthquake9.0
あれから一ヶ月半が経ち、九州にあっても震災と原発事故で落ち着かない日々が続きます。私自身は、3.11を東京での会議の最中に迎え、中断してからは、目を覆うばかりの津波の被害にテレビに釘付けになっていました。夜になって3時間半、道に迷いながら帰宅。普段は九州にいる自分にとって、この震災体験を共有できたのはある意味で貴重なことでした。
「未来は、予想できないが、創造することはできる。」
この国難を通じて、日本をどう変えていくのか、日本人の心構えと絆をもう一度取り戻し、日本復興再生に向けて、これまでできなかったことを実現していくということ。それが震災で犠牲になった方々への一番大事なお弔いではないかと思います。
TEDxEarthquake9.0
それから一ヶ月後の4月10日、グラミン・クリエイティブ・ラボ(GCL)@九州大学のエグゼクティブ・ディレクターの岡田昌治教授の企画制作によるTEDxEarthquake9.0というトーク・イベントに参加してきました。
岡田先生は、ちょっと俳優のような風貌。グラミン銀行創立者で、ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス教授の提唱するソーシャルビジネス(SB)に心酔されている熱血漢。ユヌス教授の「ソーシャル・ビジネス革命」の監訳もされています。
GCL@九州大学は、ユヌス教授のSBを世界中に広め、それを支援する企業GCL(ユヌスとハンツ・ライツが創始者で、本部は、ドイツ)の協力により、九州大学内に設立された教育、研究、普及及び広報の拠点です。
また、TED(Technology Entertainment Design)は、ideas worth spreading を合い言葉にした世界の著名人の年に一度の講演会ですが、TEDxは、世界各地域で個別のイベントとして開催されています。
トークは、13時から18時まで、ユヌス教授のビデオメッセージをはじめ、産学官、NPO、アーティスト等30人がカメラに向かって、入れ替わり立ち替わり約10分程度、世界に東日本の震災からの復興に向けたメッセージを世界に向けて発信するというものです。
私は、マクロ経済や産業への影響について話をしました。内閣府の試算では、今年度の実質GDPは、0.2〜0.5%の押下げ。民間のシンクタンクの試算平均では、今年のGDPは、前半は落ちるものの、後半から復興需要でプラスになり、第4四半期で5.6%、通年で0.4%、来年には2.7%のプラスになる。影響について過小評価ではないかとは思うが、それを割り引いても日本経済は意外に強い、大丈夫という個人的印象を話しました。そして、被災犠牲者への冥福を祈り、奇跡の復興を確信していると。
その他、震災復興支援のプラットフォームsinsai.infoによる被災危機情報のマッピングやグーグルによる道路の被災情報のマッピングなどITの活用による被災地支援、社会福祉ボランティアからは心に寄り添うケア、被災した東北の酒蔵の支援、ケニア・キベラの子供たちの泣きながらの祈りの歌、「奥州薩慈」の尺八演奏、SBとハイチ復興、SBと日本復興、そして最後は、ふるさと合唱。
同時に豪州、広東、シンガポールでも聴衆が集まり、トークを聞いていて、彼らからもスカイプでライブメッセージを交換。また、会議中にスタッフがツイッターやフェイスブックで重要なメッセージを受送信していく。世界につなげていくTEDxの仕組みに痛く関心しました。
http://www.ted.com/tedx/events/2496
復興に向けSBの手法を活かそうというのが今回の基調となるテーマでした。ユヌスのいうSBは、利潤の追求ではなく、社会的課題の解決を目的とし、株主や投資家への配当はなく、利益を生み出しながら、自立・持続させていくビジネスです。被災者を犠牲者扱いするべきでなく、彼らの能力を活かす復興事業をSBとして立ち上げていこうという主張が印象的でした。
終了後の懇親会の中で、福岡のキーマンが民間ボランティアやNPO・市民の支援活動をつなぎ、オール福岡として息の長い取り組みとして現地の復興がなるまで続けようという「つながる・震災プロジェクト福岡」構想が提案されました。
今週、初会合が予定されていますが、岡田教授からは、このTEDxEarthquake9.0の一週間後に開催した「SB・ワークショップ」のグループワークから生まれた、SBとしての6つの被災者自立復興支援策についての紹介もあるとか。
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