第18回 東北へ行こう〜東北観光博やっています
東北ぜんぶが博覧会場だ
現在、東北観光博を開催中です。博覧会ではなくて、東北28ゾーンを博覧会場に見立てて、「こころを結び、出会いをつくる」をテーマとした東北観光のキャンペーンで、2013年3月末まで開催しています。
http://www.visitjapan-tohoku.org/
その仕組みは、ゾーンの入り口に「旅のサロン」を設けて、地域観光案内人のみなさんが旅のパートナーとして、観光客の要望にお応えします。そして、「東北パスポート」。東北パスポート加盟店の割引も受けられ、訪問地でのスタンプがたまるといろいろな特典が獲得できます。そして、行く先々の「旅の駅」でも案内人がお待ちしています。そして、最新情報を発信する東北観光博のポータルサイトも運営しています。先日、自治体や協賛企業から様々な特典が発表されました。
http://www.mlit.go.jp/kankocho/news04_000044.html
夏は、東北の祭りのピーク。東北観光の勝負所です。
そして、「観光で節電」。有給休暇を3日余分に取って、2泊3日で東北に行けば、復興支援と10%の家庭の節電が同時達成できるというのが基本コンセプトです。
阿蘇からのメッセージ
東北観光博は、九州の「阿蘇ゆるっと博」をモデルに設計したと聞きました。その仕掛人である(財)阿蘇地域振興デザインセンターの坂本英俊事務局長(昨年度まで)の東北観光博への応援メッセージを紹介します。
「多くの観光客が訪れる阿蘇。しかし、8年前は、地元商店街や農村集落にまで足を運ぶ人はほとんどありませんでした。それが今、地域に人々が集まり始めています。
地域に誇りを持ち、地域を学ぶことから誕生したおもてなしや商品、これらは訪れるお客様に喜ばれ、褒められ、評価され、育ちはじめています。地域の変化は、そこに暮らす人々の心の変化がもたらすのです。」
阿蘇神社の門前町は、かつて「消えゆく灯」といわれましたが、8年間で驚くほどのにぎわいができ、農村集落でも湧水や渓流の竹籠で野菜や芋を洗うといった農村の暮らしを体験する、滞在型観光への変化が生まれているそうです。そして、阿蘇カルデラの自然と阿蘇の歴史文化に囲まれ、各地域がつながることで小さな地域の魅力が阿蘇全体の大きな魅力を形作っています。
東北のふるさとには、縄文から続く日本の原風景があります。阿蘇の例のように自分の町や地域をもっと好きになって、その好きなところをうまく伝えることが大事です。これが東北観光関係者に向けた東北観光博のメッセージです。
東北観光のイノベーションのきっかけに〜今後の盛り上げについて
東北観光博を単なるキャンペーンに終わらせてはいけないと思っています。関係者が密接に接している現在、新しい仕組みを導入していく好機であり、東北のつながり力を高め、より魅力的な観光地や観光資源になるように磨きをかけ、東北の観光に新しい展望を開いていくきっかけを作ることが重要です。
第一に、東北の中の広域連携を強化し、つながり力を強くすること、そして、観光地の地域経営を強化することです。そのため、まずは、ゾーン間の相互訪問を行おうと提案しています。さらに、観光キーパーソン集会や地域リーダーの交流会を行っていくことです。
私も4月にfacebookに「東北へ行こう」というグループを立ち上げ、参加者も3000人以上となりました。今後、キーパーソンの交流、マッチングの仕組みを組み込みたいと思っています。
JTB総研は、観光地マネージメント研究会や日本生産性本部の観光地経営フォーラムなど、意欲的な大学も巻き込んで、東北で観光地経営のモデル的な取組みを始めたいと思います。
第二に、観光サービスの経営革新や観光資源に磨きをかけるような新しい取組みをモデル的に東北に持ってくることです。例えば、内藤耕さんの「いい旅館を作ろうプロジェクト」として、若手の後継者、経営者を集めた研修会を行うことを内藤耕さんと相談しているところです。また、先日、東北日本酒の会を開き、大盛況でしたが、東北の酒蔵観光も是非進めていきたいプロジェクトです。
第三に、持続可能な方法での東北全体の観光戦略、仕組みづくり、推進体制が強化されるきっかけになることが期待されます。ちょうど九州でも九州観光博を打ち出しながら、インバウンド誘致を抜本的に強化しようという連携基盤を作っていこうという議論が始まっています。東北観光博の経験と九州の構想をぶつけ合うことは面白い試みだと思います。
そして、一番大切なことは、関係者が東北観光博をやってよかった、この仕組みを何らかの形で継続していこうという気になることです。たった一年でできることではありませんので、継続的、持続可能な取組みにしていくことが重要です。
被災地へのボランティアツアーや学習体験観光
かつて前例のない津波による被災地を訪れることは、日本人にとって防災上貴重な体験です。被災地の人々の痛みを共に感じ、復興を祈り、自分にできる小さなことでも協力するということは、被災地の人々を癒し、勇気づけ、ひいては所得と雇用をもたらすことにもなります。先日行った岩手県では、2泊3日で平泉などの観光を組み合わせたバスツアーで、累計2000人が参加したそうです。一方、宿泊施設が被災してないとか、受け入れ体制が不十分と行った問題もあるようです。
物見遊山と思われて顰蹙を買ってはいけないからと遠慮する方々、企業も多いのですが、むしろ積極的に訪問してもらおうと、観光庁が中心となって、観光とは違った切り口から「東北・北関東訪問運動」を展開しています。その一つとして、この7月から「訪問de応援!!」を開始しました。これは、復興庁連携プロジェクト「助け合いジャパン」(公益社団法人助け合いジャパンのウェブサイト)において、かなりきついボランティア活動から観光と併せた交流までさまざまなツアーと現地の「お越し下さい」という声を発信していくというものです。
http://www.visitjapan-tohoku.org/
(参考)陸前高田市戸羽市長メッセージ:全国の皆様へメッセージ
http://www.youtube.com/watch?v=BZhxMB-rhho
今後、被災地で起業した社会的企業や中小企業に対する自立支援型ボランティア観光は、注目される動きになるでしょう。これは、またの機会にご報告したいと思います。
(以上は、個人としての見解であり、属する組織とは関係ありません。)
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