第56回「どう見ていますか?」の巻


 私が現在勤務している経済産業研究所では、ランチタイムにBBLセミナー(Brown BagLunchの略で、各自サンドイッチでも買って来て、食べながら勉強しましょうという趣旨。田中伸男前IEA事務局長が、かつて当研究所副所長だった際、ご自身のワシントン勤務時代の経験を踏まえて始めたもの。)と称するセミナーを年に約60回開催しています。私はかなり以前からこのセミナーのファンで、関心のあるテーマについて時間の都合が許せば、なるだけ参加するようにし、益するところ大だったのですが、約2年前に現職に就いてからは、ほぼ全てに参加してきました。多方面のことを学ぶことができ、改めてその有益さを実感しているところです。(ただ、好天の日々に、連日このセミナーがある場合には、お にぎりじゃなくて外でランチしたいなあと思うことがあるのは事実ですけれど。)


 さて、我田引水の前置きが長くなってしまいましたが、先日のBBLセミナーで、Pew  Research Center という米国の調査機関(スピーカーのBruce Stokes氏は、シンクタン クであると共にファクトタンク(Fact Tank)であると紹介されてました)が3月末に行 った世界39ヶ国についての調査の概要につき、聴講する機会がありました。この調査は、 Global Economic Attitudes と称するもので、各国の国民が自国の経済状況等についてど う見ているかを調査するもの。当日の講演では、リーマンショック前の2007年の調査結果 と比べたりしながら、3月末に行った調査結果について話して頂きました(調査結果は、過 去のものも含め、 www.pewglobal.orgに掲載されていますので、ご関心のある方はどうぞ)。


 私が最も驚いたのは、貧困に関する調査結果。具体的には、食料を買うことができなかっ た(Could not afford food)と答えた国民の割合のデータなのですが、米国が24%だ ったこと。世界一のGDPを有する米国の国民の4分の1が食料を買えないという状況に陥 ったというのは信じられない思いでした。ちなみに、日本はこの数値は最も低く、2%です が、低いとは言っても50人に1人の割合で、そのような日本人がいらっしゃることは、や はりショックでした。


 次に、“経済の現況をどう見ているか?”という問いに話題を移します。良いと答えた国民 の割合が最も多かったのは中国(88%)。日本は27%でしたが、1年前の調査では7%だっ たらしく、それが1年で2007年調査並み(28%)に戻っているのは良いサインだし、今(6 月)調べたら、この数値はもっと良くなっているかもとStokes氏。私は、1年で20%上昇 していることを嬉しく思う一方、リーマンショック前ですら28%の国民しか経済の現況が 良いと思っていないということにつき、デフレ下で日本人の経済の見方が悲観的になって きていたのだなあと改めて感じました。我が国と対照的な印象を持ったのはドイツで、75% の国民が良いと思っている由。成長率は0.1%程度と低いものの、失業率がとても低いのが、 そういう結果につながっているのではとStokes氏。けれども、欧州で国民が経済が良いと 思っているのはドイツだけで、英国は15%、フランスは9%、スペインは4%でした。


 最後に、将来に対する見立てについて。まず、“1年後の経済をどう見るか?”という問い に対する答えでは、日本はだいぶ上昇傾向となり、改善するが40%、変わらないが47%、 悪化するが11%という結果でした。一方、“1年後の自分自身の経済状況をどう見るか?” という問いに対しては、改善するが12%、変わらないが65%、悪化するが21%という結果。 えっ、私自身ですか?私は、アベノミクスにより1年後の日本経済が改善しており、そし て、2年間の時限措置の給与10%カットが今年度末で予定通り終了し、1年後の私の経済状 況が改善していることを堅く信じております。


 過去の調査も含めて、そのレポートやデータは、www.pewglobal.orgにありますので、ご関心のある方は覗いてみられたらと思います。



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