第23回 「やまとだましい」の巻


 ワールドカップ開幕から1週間。"タマシイレボリューション"というテーマソングのアップビートで始まり、現地中継に切り替わるとブブゼラの音が聞こえてくるというリズムになじんで来ました。本番直前の試合で、イングランド戦を除き、得点を取るぞという気迫のようなものを感じ取れず、やや悲観的な思いを持ちつつ応援したカメルーン戦でしたが、松井選手のピッタリのクロスボールを受けた本田選手の冷静なシュートで先制し、相手の攻撃を全員で良く守って、素晴らしい勝利を挙げてくれました。まさに、ヤマトダマシイを奮い立たせるような頑張りで、第2戦以降も楽しみです。


 そこで、本日は、やまとだましいのふるさと、大和の国、奈良県のお話です。6月最初の土曜日に、産学官連携推進会議が京都で行われましたが、前日に関西入りし、近畿経済産業局離任以来初めて奈良県に足を伸ばしました。以前、このコラムで、東京大学産学連携本部に地方自治体の職員の方を研修生として受け入れていること(TLF;テクノロジー・リエゾン・フェロー制度)を御紹介しましたが、昨年度、奈良県庁の方がこのTLFに参加されていた関係で、かつて近畿経済産業局在勤時に親しくさせて頂いた方との御縁が復活し、今回、お会いすることができました。その方とは、小島義己奈良県産業・雇用振興部次長兼農林部次長です。


 好天の夏を思わせる陽気の下、奈良公園の一画にできたばかりのレストラン(知事自ら誘致に努められた由)でランチを御一緒しつつ、じっくりとお話を伺いました。特に、大和魂を込めて御説明頂いたのが、"古都奈良の新世紀植物機能活用技術の開発"というテーマの下に、奈良県の産学官で取り組んでこられた事業についてでした。関係者の方々の多くが近畿局在勤時にお世話になった方々で、それぞれの方との思い出が呼び戻されましたが、そういう方々の地道な努力の成果として当日御説明頂いた製品は、大和万葉一茶(お茶です)、葛の葉そうめん、青汁プラス大和野菜(飲料用粉末)、葛リキュールといったものでした。試供品を頂戴したので、朝食時にお茶を、昼食時にそうめんを、夕食時にリキュールを頂きましたが、いずれもグッドでした。特に、リキュールは、飲む時に杉の香りがして、また、きれいなピンク色をしている上に桜の花が入れてあり、味覚・嗅覚・視覚が同時にくすぐられる優れもの。実は、頂いた資料に、女性向けと書いてあったので、家内に進呈するつもりだったのですが、ほぼ全量、私が飲んでしまいました。ちなみに、産学官連携推進会議の際に奈良県のブースを覗いたら、大和トウキという生薬の元となる植物の根っことそれから作った東大寺薬湯「天真」という入浴剤を見せて頂きましたが、薬湯という文字が大きく書かれたパッケージと太い根っことを見ていると、いかにも効能がありそうな感じでした。


 ところで、先ほどのリキュールに戻りますと、瓶に、まるごと吉野と書いてある傍らにやたがらすとあるのです。まるごと吉野は、まさに、葛、杉、桜と奈良県吉野の名物が用いられているからだろうとすぐに思いましたが、やたがらすの方はなぜなのだろうとほろ酔いの頭で思ってしまいました。私としては、やたがらすというと、和歌山県の熊野神宮にまつわる伝説の鳥だと思っていたのです。それで今回、このコラムを書くにあたり調べてみたら、やたがらすは、熊野の地から大和の地に向かう神武天皇一行が吉野で道に迷われた際に遣わされ、天皇一行を導いた鳥なんですね。それで、このレボリューショナリーなリキュールの製造元の株式会社北岡本店という吉野の企業の商標にもなっていることを知りました。そして、もちろん、やたがらすと言えば、日本サッカー代表のシンボルマーク。さあ、奮い立つぞ、大和魂!



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