第18回 「7丁目の夕日」の巻
私のオフィスは、文京区本郷7丁目の東京大学本郷キャンパス内にあります。東側に窓があり、毎朝オフィスに入ってブラインドを開けると、少しずつ伸びて行っている東京スカイツリーが目に飛び込んできます。先月には、東京タワーの高さを追い越したらしいですが、周りに高い建物が見えないせいか、ずいぶん高く感じます。50年前に、東京タワーが建設されているとき、人々はどんな思いで伸びゆくタワーを見ていたのでしょうか?
先週金曜夜に、会合が終わって帰宅したら、「ALWAYS 三丁目の夕日」という映画をTV放映していました。かつて一度見て、良い映画だなと思った記憶があるので、最後の30分ほどでしたが、スイッチをつけました。堤真一扮する小企業社長、その奥さん役の薬師丸ひろ子も良いですが、堀北真希が演じる青森からこの企業に働きに来ている少女が最も印象的です。年末に、社長夫妻から、青森に帰省するための切符を贈られた少女が、「自分は口減らしだと言って送り出された身であり、上京してから親に手紙を書いても、親からは何の便りも無い。自分が帰ったって親は喜ばない。」と言って、帰省予定の当日にその切符を社長夫妻に返します。自室に戻って泣いている少女のところに、薬師丸ひろ子が、じゃなくて奥さんがやってきて、手紙の束を見せながら、「実は、毎週、青森のお母さんからは手紙を頂いていて、ちゃんとやっているか心配していらっしゃる。里心がつかないように、厳しい言葉で送り出したし、手紙のことも黙っていてくれと言われていたのだが、娘に会いたくない親がいるわけ無いでしょ。」と言うシーン。前回見たときもそうだったと思いますが、酒が入っていた金曜日はなおさら、涙腺がゆるみ通しで仕方なかったです。そこで、社長が運転するオート三輪の助手席に少女を乗せ、荷台に奥さんと息子が乗って、駅まで飛ばしていき、無事、少女は汽車に間に合います。走り出した汽車と並行して走る社長一家の車から教えられ、少女は、窓から顔を出して大きな夕日をバックにした完成したばかりの東京タワーを嬉しそうに見つめます。ラストは、車を止めて社長一家がその景色を見つめているシーンで、「この夕日は、明日も明後日も50年後も綺麗だよ。」という息子の言葉が心に残ります。
そう、その50年後に今はあるわけですが、夕日は今でもとても美しいですね。50年前は、日本が高度成長期にあって、国全体が伸び盛りという雰囲気と、東京タワーが高く高く伸びてゆくさまを重ね合わせていた人々が多かったのではないかと推察するところ、スカイツリーが伸びてゆくさまを見つめる50年後の我々の思いとは異なっていたでしょうが、綺麗な夕日に恵まれていることは今でも変わりありません。50年前の日本国民と同じように、変わらぬ大自然に感謝しつつ、各のできることを真面目に行っていくことを続けていけば良いのだと、夕日の中に立つスカイツリーを見つめては思う日々です。
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