第12回 「太陽光がいっぱい」の巻
冷え込みが強くなってきました。特に快晴の朝は、放射冷却がびんびんに効いていますが、それでも朝からお日様が輝いているというのは、多少の寒さの強まりを補って大いに余りあるものだと感じます。かつてカナダの首都オタワ(当時の外務省データでは、世界で2番目に寒い首都とされていました)に在勤時、隣家のフランス人に、「オタワの冬ってほんと寒いですよね。」と言ったら、「寒いけど、たいていお日様が拝めるから、パリよりずっと良い。」と言われたことがあります。確かに、留学時代のクリスマスの頃、軽いあこがれを持ってパリに行ったら、ずっと曇ってるし、石造りの建物は昼でもしんしんと寒いし、イブなんて賑わいの東京とは全く違って早仕舞いのお店ばかりで、ほうほうの体で南に抜けました。マルセイユに着くと、快晴ですっきり。青い地中海。ニーノ・ロータの甘い音楽、アラン・ドロン扮する貧しい青年、裕福な友人を海上で亡き者にして、策を講じて彼の恋人を奪うのに成功しかけるが・・・。これは御存じ、「太陽がいっぱい」。
東京大学では、東京大学との産学連携に関心をお持ちの産業界の方々と東京大学産学連携協議会(ご入会ご希望の企業におかれては、kyogikai@ducr.u-tokyo.ac.jp宛御連絡下さい。会費無料です。)というプラットホーム的組織を持っており、その活動の一つとして、協議会会員を対象とした科学技術交流フォーラムというものを行っています。先日の第17回フォーラムは、「太陽光エネルギー利用の未来」〜大規模太陽光発電システムに向けた技術開発の現状と展望〜 がテーマでした。東京大学から6名、産業界から3名、計9名の講演が行われました。まず、太陽光エネルギーの位置づけの話に始まり、CIS系薄膜太陽電池、集光型太陽電池及び量子ドット太陽電池へと話が続き、休憩を挟んで蓄電池の話に移り、エネルギー・ハーベスティング(周りの環境からエネルギーを回収して、電力に変換)のための蓄電池開発、大型蓄電池のための材料開発と続き、さらに、システム全体の話となって、システムインテグレーターの役割と戦略、グリッド連系と太陽光発電システム及びスマートグリッドと続きまして、最後に、太陽光エネルギー利用の未来で締めとなりました。まさに、「太陽光がいっぱい」の充実したフォーラムでした。
フォーラムの後の交流会では、今回の企画の中核を務められた、中野義昭東京大学先端科学技術研究センター副所長・教授と茂木源人大学院工学系研究科准教授とが高校時代の同級生で、片や電気系の出身、片や資源系の出身であるが、30年ぶりくらいに会ったら、同じような問題意識で研究をやっていることが分かり、今回の企画作りが始まったという話が紹介され、中野教授が「是非、産学とも努力して縦割りを乗り越え、俯瞰的に太陽光エネルギー利用の問題をとらえながら、一致協力して取り組んでゆきましょう。」と呼びかけておられたのが印象に残りました。今回のフォーラムを契機として、太陽光エネルギー利用に関するイノベーションが続々と生まれてくることを期待してやみません。
それでは、本年最後のコラム、交流会での私の乾杯御挨拶にて締めたいと思います。「本日のフォーラムで、太陽光エネルギー利用は、日本にとり重要な分野であり、また世界をより良くするために日本が活躍できる、夢と希望に満ちたものであることを再確認できた。事業仕分けとか、最近の安保・外交等の報道とか、暗い気持ちになることが続いたが、これからは、"いつも心に太陽光を"でゆきたいと思います。」 皆様、佳いお年を。
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