第53回 「なるほど、日本の素敵な製品」
−デザイン戦略と知財事例集を発刊しました


「本邦初!20の優れものデザイン戦略集」

 特許庁は、今回はじめて標記デザイン戦略にかかる事例集を発刊しました。(株)ユニチャームの超立体マスクからトヨタ自動車(株)のiQまで、デザイン戦略に優れた20の知財事例をあつめ、分析したものです。以下、その巻頭言から引用します。なお、入手ご希望の方はこちらからどうぞ。


 また、この冊子を題材に、日本知財学会デザイン・ブランド戦略分科会の研究会にて、講演を企画しています。次回研究会(日程は追って日本知財学会HPにてお知らせします)で冊子を配布する予定ですので、皆様是非ご参加ください。


「事例集刊行に当たって」

 Design−この言葉ほど、グローバル化した現代のキーワードとして重要になったものはない、といえます。中国、インドをはじめとする新興国市場が急速に経済発展していますが、そこで売れている商品は、外見もスマートで、デザインに相当注力していることが見て取れます。また国内では少子高齢化をはじめとして消費環境が急速に変化して、何が"売れる商品"であるか、どういう商品を消費者が手に取ってくれるのか、ますます難しい問題となっており、開発現場は頭を抱えています。かつて日本製品は、技術力とその美しさで市場を席巻してきた歴史があります。しかし、現在のこれら難題を克服するためには、見直すべきは、我が国の強みであった技術力、伝統文化、感性、そして、特に重要なのが、たゆまぬ創意工夫をモノづくりに融合する「デザイン」ではないでしょうか。


 我が特許庁は、デザインの知的財産保護の中核を担う意匠制度をはじめとする知財制度を維持するのがその役目ですが、上述の問題意識から、最近ではデザインやブランドを我が国企業の競争力の源泉としてこれまで以上に有効活用できるよう、知的財産の視点から見たデザイン・ブランド戦略の策定を進めようとしております。


 どんなに優れた技術も、それが顧客の手に届かなければ意味がありません。"商品"として人から選ばれるデザイン、それは、イノベーションを目に見える形で具体化した人間の英知の結晶です。そして、その成功の背景には、企業のビジネス戦略に裏打ちされた知財保護戦略があります。


 この事例集は、デザイン活用で成功を収めている企業のご協力を得て、新製品の開発プロセスと意匠権を中心とする知的財産制度がどのように有効に活用されているかの事例を丁寧に拾い集め、専門家の皆さまの力もお借りしながら、先進的な企業の商品開発、知的財産保護戦略のポイントを紐解いたものです。


 これから新たなデザイン戦略への取り組みを始めようとされている企業の方だけでなく、既に取り組みを進めていらっしゃる企業の皆さまにとっても、この事例集が、デザイン、そして意匠制度の更なる有効活用のきっかけとなり、グローバルに発揮できる競争力を得ることとなるよう願っております。


 それでは、ニューヨーク・ロックフェラーセンターのクリスマスツリーの写真を見ながら、今回はお別れします。




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