第8回 尾張名古屋は産学連携!


 七夕の7月7日に、名古屋に伺いました。東海テレビ製作の「名古屋の嫁入り物語」というテレビシリーズが好きでした。当初は単発ドラマのつもりだったそうですが、反響が大きく、1989年から約10年間、10作品が製作されました。
 名古屋では「娘が3人いると家が傾く」と言われる位、お嫁さん側が結婚費用を使うのは有名です。このドラマでは、そんな名古屋の父親の心意気を、故植木等さんが熱演されていました。今観ても感涙ものです。嫁入り役の娘は毎回同じという訳にはいかず、かとうかずこ、大場久美子、川島なおみ、石野真子、水野真紀といった、当時の旬な女優さんがヒロイン役を務められました(そういえば、最近、川島なおみさんの披露宴を週刊誌で見ましたが・・・)。


 毎回、話がそれて恐縮ですが、名古屋というのは、特殊な文化圏だと思います。東京と大阪の中間にありながら、双方に染まらずに、どっこい独自の価値観を築いておられますよね。名古屋の友人によると、東京で売っている「天むす」を「天むす」として認めないとのこと。本場の「天むす」は、天ぷらのしっぽが、カーブを描き、おむすびの真ん中から下に届いているそうです。つまり、大振りのエビの天ぷらが使われて、はじめ「天むす」が名乗れるそうです。
 最近、東京でも隠れた人気の、「あんかけスパゲティ」も、意見は分かれますが、私的には、オロナミンCとミルクを混ぜた、オロナミンミルクと同じ位のヒットです。普段は質素倹約ですが、やる時はやるぞ!ということですよね。


 やっと、本論ですが、その名古屋地区の大学が本気で取組む二大プロジェクトの紹介です。まずは、名古屋大学の「グリーンビークル材料研究開発拠点(仮称)」です。自動車業界は、家電産業と並んで、我が国産業競争力の象徴です。この分野での産学連携は我が国にとり、本丸でありますが、実際には難しい面もあります。と申しますのは、トヨタ自動車1社の研究開発費は、年間9,588億円(2008年度)、これに対し、経済産業省の研究開発費(科学技術関係経費)は5,316億円(2009年度当初予算ベース)です。つまり、トヨタ1社で1省庁の1.8倍の研究開発費が使用されております。結果、優先度の高い技術開発は自社単独で実施することが原則となるでしょう。


 更に、凄まじい競争がライバル会社間で繰り広げられております。ある自動車企業が国の共同研究に参加したという情報だけでも、ある種のメッセージになることとなり、これがネックで参加を見合わせたケースも耳にしたことがございます。自動車会社との本格的な産学連携や共同研究が、他の分野と比べても難しい点が多い理由は以上の通りです。


 しかし、 名古屋大学 宮田隆司理事・副総長で産学官連携推進本部長がおっしゃるには、以下の通りです。「名古屋は日本で一番元気な街だったが、今は、激変している。反面、海外に行くと、名古屋と言えば、自動車なので、名古屋大学においては、トヨタなど自動車メーカーと大々的な共同プロジェクトがたくさん動いているんでしょ、と聞かれることが多い。今回、対外的にこれぞというプロジェクトを立ち上げたい。これは、平野眞一前総長の時代からの懸案事項であった。流石の自動車企業も、先の先の製品開発にはリスクが高く、大学と共同で行うことも戦略に入ってきたのではないか。」


 このため、「グリーンビークル材料研究開発拠点」は、「人に優しい」、「環境に優しい」未来自動車の実現のため、擦り合わせ研究による産学連携エコプロセス「名古屋システム」を実現するプロジェクト。これまでも、名古屋大学では、未来社会のあるべき姿から現在の最重要研究開発項目を決定する「バックキャストテクノロジー研究所」などの実績がございます。工学は実学ですので、世の中を変えてなんぼの学問だと思います。本事業が、新たな日本の産学連携モデルになることを強く期待!



名古屋大学工学研究科附属 材料バックキャストテクノロジー研究センター



 次に、名城大学の「LED共同研究センター」です。名城大学は、(株)エルシード、創光科学(株)などLEDに関する大学発ベンチャー企業が産まれたように、LEDに関しては先進的な研究開発を実施されています。今回、白色LEDに特化し、超省エネルギー、超高演色性、長寿命、低コストを実現できる究極の光源実現のための技術開発拠点を整備される計画です。


 名古屋は日本一元気な街だったが、今は日本一元気が無い街になっていると、名古屋の方から伺いました。しかし、日本を支える産業集積地名古屋が、産学連携により、新たなステージに進まれることにより、次は、世界で一番元気な街になられることを確信しております。

平成21年度「産業技術研究開発施設整備費補助金」の交付先の公募結果について



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