第50回 福島の放射能汚染風評被害対策



 福島県二本松市で国の暫定安全基準値である1kg当り500ベクレルを越える米が収穫された。しかも、その水田の放射線量は3000ベクレルであり、農水省が稲作をしてもよいとする基準の5000ベクレルよりもはるかに低いレベルの水田で起こったことである。


 この結果は、福島県産の農産物に図り知れない程に深刻な影響を与えるものである。前回(49回)でも述べたように、現在の国の安全基準は極めて危険極まりないものであり、暫定的に定められたものである。しかしながら、この数値を決めた当局やその数値を報道するマスコミも国民もいつの間にか暫定という言葉を忘れ、世界にも類例のない高レベルの放射線量を安全基準にし始めている。


 チェルノブイリの原発事故で被災国となったベラルーシの子供達の内部被曝は長年の経験から、日常的に食する野菜や小麦、果物や牛乳や肉類が50ベクレル内外であっても起っていたという事実である。原発事故から半年以上も過ぎ、EM等による放射能対策が明らかとなった今日、国は暫定基準を改めて、食物に関しての安全基準は、検出限界値以下に変更すべきである。



 表1に示されるように6000ベクレルを越える放射線量を示す本宮市のキュウリの場合、EMを使用した結果はND、すなわち、検出限界値以下となっている。小松菜は放射性セシウムをよく吸収することで知られているが、この場合も2781ベクレル、すなわち二本松市の水田の3000ベクレルとほぼ同レベルの放射線量であっても検出限界値以下となっている。


 表1の結果はもとより、これまで30件以上のEM栽培圃場の調査が行なわれているが、いずれも検出限界値以下または、不検出となっている。具体的には、作付前に10a当り100LのEM活性液に5〜10%のEM3号(光合成細菌)を混和し、10〜20倍にうすめ圃場全体にくまなく散布する。潅水する場合は、常にEM活性液が500倍になるように併用する。


 2回目の作付けからは、EM3号を加える必要はないが、品質向上や病害虫対策を考えると加える方がより効果的である。無農薬栽培を目指すのであれば、作付当初から5〜7日に1回EM活性液を50倍にし、それにEMスーパーセラC(セラミックスパウダー)を1000〜2000倍になるように混和し、葉面散布を徹底すれば病害虫の抑制はもとより、生長も著しく、品質も際立ったものとなる。


 8月下旬に、茨城県の北部で収穫された早場米は、1kg当り52ベクレルであったが、マスコミは国の安全基準値の約10分の1以下として安全性を強調したが、この場合の水田の土壌の放射線量は1000ベクレルで、二本松市の3000ベクレルの3分の1である。常識的に考えると二本松市の3000ベクレルの水田で500ベクレルを越える放射線量の米が収穫された場合、1000ベクレルの水田なら、その3分の1、すなわち170ベクレル内外になるものと推定されるが茨城の場合は更に、その3分の1以下である。


 それらの差異は受け止め方によっては、かなり深刻な状況とつながっており、30年ぐらいで解決し得ないものとなる。すなわち、放射性セシウムは、カリウムと類似の性質を持ち、作物に吸収され易い原素である。カリウムは、窒素やリンと並んで作物の3大栄養素であるN.P.KのKである。カリウムやマグネシウム等々の陽イオンを持つ原素は、通常は土壌の粘土のマイナスイオンと結合し、安定的な状況を保っている。


 このような原素を作物が吸収する場合、作物は根から有機酸や様々な酵素を出してイオン交換的に吸収する系が中心となる。それに対し、水耕栽培のように土壌の粘土のようなマイナスイオンを有する場がない場合は、イオンの形として、水溶液中に存在するため、作物は量的な制限を加えない限り、カリウムを吸収し続けることになる。


 すなわち、茨城の水田では放射性セシウムがある程度、土壌のマイナスイオンと結合していたのに対し、二本松の場合は放射性セシウムのかなりの量がイオンとして水田の水に存在していたことになる。その差異は、茨城の土壌はプラスイオンを吸着する余力があったのに対し、二本松の土壌には、その余力がなく、イオンのまま水田の水の中に存在していたことになる。


 土壌のプラスイオンの吸着阻害は、土壌の酸性化である。化学肥料や農薬や除草剤の大半のものが強力な酸化剤である。そのため、酸性化し易すい土壌には、アルカリ性の石灰を施用することは、土壌改良のイロハである。栽培の基本から考えると茨城も二本松も同じ手法となっているため、茨城を基準にすると、二本松は150〜160ベクレル、二本松を基準にすると茨城は170ベクレル付近に納まるべきである。しかしながら、現実には3倍以上の開きがある。


 この差異はまぎれもなく、放射性物質が作り出した活性酸素の違いである。福島の場合、大半の水源地が放射性物質のレベルの高い山々であり、茨城の場合は河川が水源となっており、水質の放射能の汚染レベルも低いという条件下にある。したがって二本松に限らず、福島の場合は山々の放射能対策を実行しない限り、今回の二本松のような状況は今後も続くものとして、理解する必要がある。


EMを施用するとなぜセシウム137が吸収されないのか


 EMは、すでに明らかなように放射性物質を消滅する力を有しており、すでに福島県内には多数の実績がある。このメカニズムについては、様々な推測がなされているが、定説はこれからの課題である。とは言って、も表1に示されるように6000ベクレル以上の放射能汚染土壌でEMを活用するとセシウム137は検出限界値以下である。この場合、土壌中のセシウム137は消滅した訳ではなく、残ったままである。


 これまで、本DNDのシリーズで何回となく述べたがEMには強い抗酸化作用があり、同時に非イオン化作用を併せ持っている。土壌が酸性化し、ホウレンソウが作れなくなった場合、EMを使い続けると酸性土壌は、1作程度で中性化が進み、石灰を施用しなくてもホウレンソウは正常に育つようになる。この場合は酸性の原因である水素イオンをEMの中の光合成細菌が基質(エサ)として使う場合と、EMが作り出した有機酸が最終的にマイナスの水酸イオンを作り、水素イオン中和するためである。


 このレベルだとセシウム137の土壌吸着の促進作用はあっても、水溶性のイオンとなっているセシウム137を、作物に吸収させないようにするための理論的裏付けにはなりえないものである。イオン化した水溶性のセシウムを作物に吸収させないためには、セシウムが非イオンの金属に戻る以外に方法はないが、EMを施用すると、このような現象が起るのである。


 宮城県の石巻市で、EMを施用し、全く除塩を行なわなかった水田では、塩害は全く発生せず流入したヘドロや塩分が肥料化したと思われるレベルの成果を得たが、この場合もEMによる非イオン化作用が現れ、塩分が化学反応を起こさなかったという側面がある。


 以上の背景から、EMを徹底して活用すると作物の放射性セシウムの吸収を完全に抑制することが可能となる。福島県における根本的な風評被害対策は、EMを十分に施用し、すべての農産物の放射線量を検出限界値以下にする以外に方法はないのである。


 すでに述べたようにEMの安全性、コスト、環境や、健康に対応するプラス効果は使う量とともに累積的な効果を発揮し、河川や海も浄化し、水産資源を高レベルに復活させる力も持っている。全く信用できない国の安全基準をもとに、福島産の農作物は安全だ風評被害は不当だと叫んでも、問題は解決しないのである。



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