第219回 イタリアで出版された「農業におけるEM」



今月の始めに、イタリアで出版された「農業におけるEM」が送られてきた。この本は、ある意味では世界基準であり、私も寄稿し、農業の本質について説明したが、多くの人に読んでもらいたいため、その内容を紹介するとともに、著者のヴァンニ・フィコラ(Vannni Ficola)氏からの御礼状に感謝したい。


(Vannni Ficola)氏からの御礼状


2025年6月20日 ペルージャ(イタリア)

比嘉教授
EMの無限の可能性に対するたゆまぬ研究、そして私に生きる意味を与えてくださった深遠な教えに、心より感謝申し上げます。
EM技術と、先生が説かれる哲学的な原理を広めることは、私と妻にとって人生の唯一の目的となりました。
私の著書へのご寄稿は、言葉では表せないほどの光栄であり、心から感謝しております。
私の夢は、イタリアのEM農場に併設する形で、サラブリモデルに基づいた学校を設立し、EMと土壌の再生型農法を一体的に教えることです。
何千年もの文化遺産を持ち、質の高い農業に根ざしたイタリアが、ヨーロッパにおけるEM技術の普及の中心地となることを願っています。
私の夢であるその学校が実現した際には、もしご都合がつきましたら、ぜひご来訪のうえ、開所をご祝辞いただければと存じます。

深い感謝とともに、
ヴァンニ・フィコラ


以下、2025年2月に執筆した寄稿

EMによる農業の天職化
はじめに
競争原理に立脚した農業は、化学肥料と農薬と大型機械の活用で、人類の食糧生産の問題は解決したという判断も一つの答えである。一方、化学肥料や農薬等による生態系の破壊はもとより、大型機械による表土の流亡や土壌生態系の破壊は次第に深刻になり、水系の汚染や塩類集積による砂漠化や農地の荒廃等、解決困難な多様な問題を生み出している。

有機農業は、それらの諸問題の対策として重要であるが、この効率の悪さを根本から解決しない限り、真の解決策にはなることは不可能である。今や、EMは世界中で使われるようになり、従来の有機農業の限界を突破し、あらゆる環境汚染対策や生態系の復活や保全にも活用されるようになってきた。

イタリアでもこのような革新的な本が出版されるようになり、大変に喜ばしいことであり、農業生産を通して新しい国造りが始まった歴史的壮挙である。


i.なぜEMという名前がついたのか

    有用な微生物は、学術的にはBeneficial Organismsという言葉が一般的で、Effective Microorganismsという表現は使われないのが通例である。EMの最も特徴的なことは下記の通りである。


(※イタリアで出版された書籍「農業におけるEM」(表紙と裏表紙)


  1. 自然界では絶対あり得ない好気性菌と嫌気性菌が共生的に存在していることである。
  2. 当初は、2000余種の有用と思われる微生物のうち、安全性が確認された5科10属81種でスタートした。
  3. 最終的には嫌気性の光合成細菌と好気的な性質の強い乳酸菌や酵母等の発酵菌を、糖蜜を原料に、塩を0.1~0.5%添加し密封し、pHを3.5以下の酸性状態に保ち、ガスが完全に抜けると完成である。そのEM活性液を有機物と併用し続けると、自然界の有用な微生物が深層まで活性化し、土壌は膨軟になり、より多様な微生物が高密度に増殖し、有害な微生物は抑制される。
  4. 塩はEMの変質防止やエネルギーの変換に効果がある。農薬や肥料の代替的に活用する場合は、海水と同じ3~3.5%にする。塩分が1%以上になると完全密封する必要はなく、海水は海洋深層水なみに活性化する。
  5. 乳酸菌や酵母に塩を加えて、腐敗菌の活動をおさえると、EMの主役的機能を果たす光合成細菌が安定的に保護され、EMの効果が明確に発現するようになる。
  6. 光合成細菌は、EMの万能性の中心的役割を発し、半導体、超伝導、トンネル効果等、様々な量子力学的性質をもっている。そのため、EMは農業の結界技術はもとより、工学や医学、環境、土木建築等々あらゆる分野で活用されている。
  7. EMを粘土に混和し還元状態で加熱すると、1200℃以上になってもその情報は失われず、再現することが可能である。
  8. EMを使い続けて、ある一定水準に達すると、土壌中の有害な化学物質はすべて消滅し、最終的には放射線の吸収抑制や、内部被曝を排除したり、放射能の消滅効果が認められるようになる。この事実は、福島の原発事故被災地で広く活用され、ベラルーシの国立放射線生物学研究所で再確認され、国際学会でも発表し、査読論文として掲載されたのである。
    [ Journal of Environmental Radioactivity Vol. 192, Dec 2018, Page491-497]
    [ Journal of Condensed Matter Nuclear Science 29 (2019) 230-237]
  9. この放射能に対する成果は、EMによる原子の転換が行われたことを意味し、その応用例として、塩の肥料化が普及し始めている。この技術は、かつて疑似科学の代表とされていたケルブランの原子転換説が正しいということを意味するものである。
  10. このような万能的な性質は、従来の微生物学では明らかにすることは困難である。同時に、EMは自然界や人体にとっても極めて安全で蘇生的に作用し、有害な作用は全くないことから、Beneficial という言葉と明確に区別するため、Effective という言葉を意識的に使っており、単なる微生物の応用とは根本的に異なるものである。
  11. EMの効果の発現は、環境中のEMの密度を常に高めることにあり、管理技術次第である。従って、すべては、それを使った人の責任であり、応用は無限である。
  12. EMをバイオ炭と併用し、その密度を高め、結界を強化すると、テラ・プレタ化した様な土壌を簡単に作ることが可能である。日本やスイス等の有機農業における微生物数や品質のコンテストにおいて、EMは常にトップを占めており、その効果は管理次第で永続的となる。
  13. 塩は収穫後や植付前に除草剤的に使うことも可能である。果樹園等は、EMコンポストと塩を半々に混和したものを表層に10a当たり100~500㎏(状況によって増施)程度散布すると、除草効果もあり、土壌も膨軟になり化学肥料は全く不要となる。
  14. 機械を使う場合は深耕せず、表層の5~10㎝を攪拌し作付する。EMの密度が高くなると、機械による圧密もすぐに改善されるため、大規模農場でもエネルギーコストを抑え大幅な改善が可能である。
  15. 悪臭を発する有機物には、塩とEMを1%くらい混和して散布すると極めて効果的である。すでに出来上がったEMコンポストと新しい材料を半々に混ぜ、EMを散布すると、堆肥化のスピードが更に早くなる。
  16. 1~2週に1回、煙霧器で10a当たり1LのEM活性液を散布する。EMの情報は煙に乗せると農薬以上の効果がある。


ii.EMの小史
    様々な幸運が幸いして1980年にEMは完成し、1982年から(公財)自然農法研究センターの協力を得て、日本国内の自然農法への普及が始まった。EMを使い続けると、年々効果が高まることも明らかとなり、そのポイントとなった石垣農場(Ishigaki, Okinawa Japan)での結果を1986年、米国のサンタクルーズ(CA, USA)で行われた国際有機農業運動連盟(IFOAM)の国際会議で発表した。

    多くの国々から導入の希望が寄せられ、タイ国のサラブリ県に自然農法のセンターが完成し、1989年、IFOAMの協力を得てEMと自然農法による国際会議がタイ国のコンケン大学で開催された。その成果をアジア・太平洋地域に広げるため、APNAN (Asia Pacific Natural Agriculture Network) が結成された。その後、タイのサラブリセンターを中心に、タイ国はもとより、IFOAMの共同歩調的協力を得て、EMはアジア・太平洋(北中南米)に普及されるようになったのである。特にコスタリカにあるEARTH大学は、EM製造工場やカリキュラムを作り、中南米のEMの普及に多大に貢献し、EM研究機構(EMRO)から長年にわたって専門の教授を派遣し、今の体制が完成したのである。

    ヨーロッパには、1995年にフランスで開かれたEMと自然農法国際会議を機会に、オランダやドイツを中心に広がり、1999年の南アフリカでの会議を機にアフリカ地域にEMの大々的な普及が始まり、ほぼ全世界に広まる体制が出来上がったのである。私は、1992年、これまでのEMの成果を踏まえ、「地球を救う大変革」という本を出版し、ベストセラーとなり10余の国々に翻訳され、EMの世界普及に加速がついたのである。
    これでメデタシ、メデタシになるはずだったが、日本土壌肥料学会が反EM団体から500万円の支援を得て、EMに否定的な見解を出しブレーキがかかったのである。極めて非常識な事件であるが、専門の学会から否定されると、学者生命はおしまいである。更に、それに悪乗りした、大阪大学理学部の菊池教授を中心に、EMはエセ科学であるという猛反対があり、EMを潰すために、わざわざ「エセ科学学会」を立ち上げたのである。

    2011年、東日本大震災が発生し、東北の太平洋沿岸は大津波に被災した。福島県では原子力発電所の事故も発生し、放射能汚染が大々的に広がったのである。私は、これまでの中東や米国での塩害対策にEMは顕著な効果があり、ベラルーシの放射能汚染対策でも明確な効果を確認していたことから、EMによる塩害や放射能被害対策の情報を出し続けたのである。事故の半年後に、その情報を「シントロピー【蘇生】の法則~EMによる国づくり~」という本にして全国会議員にも配ったが、反応はほとんどなく、放射能汚染対策に試験予定であったEMは、農水省の反対で中止になり、残された道はEMボランティアのみであった。このボランティアに寄せられた協力金(国内および海外)は1億円を超え、2017年にはEMによる放射能吸収抑制、2018年にはEMによる放射能消滅効果を科学的に証明し、前述したように国際学会でも認められたのである。

    その後、激しさを増していたEMバッシングはまたたく間に消え、インドのシッキム州のEMによる全州有機農業化もFAO(国際連合食糧農業機関)のコンテストのグランプリに輝き、FAOは今やEMを積極的に進めるようになってきた。タイ、インド、韓国をはじめ、アジア諸国では公的機関がEMを国策的に広げており、AIの時代に入った今日、EMの普及は全世界に着実に広まっている。



iii.人間の理から自然の理へ
    狩猟時代は常に飢えの危機に晒され、争いの原点を抱えた人類は、天から与えられた唯一の仕事である農業ができるようになり、人類の発展の道が開かれたのである。農業でより多くの食糧を得るため、様々な工夫を重ね、工業化へと発展し、多くの技術革新を実現し現在に至っている。

    AIの時代に突入し、人類は神技的 (or神業的)なことが出来るようになったが、その根底にある人間の理を改めない限り、未来は多くの難問で自滅する構造となっている。この究極の象徴的な人間の理は、競争原理を前提に、常に損得と勝ち負けに価値判断の基準があり、この人間の理は競争原理の自己矛盾によって必ず滅亡する構造となっている。

    それに対し、自然の理(天の理)は、すべての存在を許容し、すべてにエネルギーと役割を与え、すべてがつながり全体として大きな生命体的として機能する万能性を有している。すなわち、この量子力学的な仕組みは、潜在的に人類の欲するすべてのものを過不足なく与える力を持っている。この自然の無限大の力を、自然の理に従って正しく善循環的に管理すると、人類の抱えるすべての問題を安全で快適、低コストで高品質で善循環的持続可能な理想郷を作ることが可能となる。

    地球に生命が発生して30億年、その間に地球に生成されたDNAやDNA様物質は無限的に増大し、DNAやその分解物で海を形成しており、量子力学的に個が全体であり、全体が個であるという姿になっている。この構造は、ある意味で超々スーパーAIとも言えるもので、量子力学の分野をすべて支配しており、生物の意志とも一致しており、祈りによる効果の裏付けにもなっている。

    EM技術のエネルギー整流結界法は、これまでの農法では、あり得ない成果を上げることも可能となってきた。いずれも、EMの持つ量子力学的性質(半導体、超伝導、トンネル効果等々)を集約し、生産的エネルギーに変換する技術である。長年にわたって重ね効果的(EMを年中使い続け年々EMの密度が高まる管理法)にEMを使うと、環境や人間の健康にとって超々スーパー的な成果が現われるようになってくる。



iv.EMで農業を行う人の心得

    私はEMを人類の共有財産にするため、「地球を救う大変革」と言う本を執筆し、内容はすべて公開し、EMで得られた収入は、すべてEM普及活動に使うように仕組みを作ったのである。その母体がEM研究機構であり、長年にわたって私の収入で支えてきたいきさつがある。

    EMの研究開発には様々な天の計らいがあり、いつしかEMは私が天から預かったものと考えるようになり、いかなる苦難もEMで解決できるという確信が持てるようになったのである。

    従って、EMを使う人の心得は大変に重要となり、とくに農業を行う人は、以下のことをDNAにしっかりと記憶させ、至福の人生モデルを作るべきである。すでに述べたように、自己責任と社会貢献認識を前提に、安全で快適、低コストで高品質の実現を目指し、あらゆる動植物廃棄物や有機廃棄物をEMの増殖源として徹底して使い、農業生産の場をホログラフィ的(立体的)な生命体に育てることが究極である。

    すなわち、栽培空間を空気や水の如くEMで充満させ、エネルギーを集約するための結界を作り、バイオ炭を使うと不耕起や連続栽培が容易となる。その結果、品質や収益も大幅に向上し、環境全体が蘇生化するのである。このような農業を続けることによって、農業をしている人がより健康になり、EMによる環境保全効果も格段に増大し、自然生態系が積極的に保全され、生物多様性を守る自然資源的存在となる。

    当然のことながら、その生産物は医食同源的となり、人々の健康を守り、医療費の大幅な削減はもとより、健康に関する社会的コストを根底から改善することも容易となる。このような農業の持つ天職的役割は、人生の意義をより高め、より豊かにし、社会を良くする仕組みの基本であり、地球を救う大変革の原点につながるものである。







記事一覧へ