アブダビから-１、日本人学校へ


　ソウルから17日に帰国して、あわただしく数日を過ごし、22日のお昼にUnited Arab Emirates（UAE）のAbu Dhabiに来ました。Festival of Thinkersという会議に参加するのです。ノーベル賞受賞者も15人ほどでしょうか、3日間ほど開催されます。私はDubai空港には何回かきましたが、飛行場の外に出るのは初めて。日本側はAsian Pacific UniversityのCassim学長のお世話です。

　21日の夕方、羽田から関西空港に、ラウンジで今回ご一緒に出席するNassrine Azimiさんと合流し、夜中12時ちょっと前の便で出発。彼女は広島にあるUNITAR 所長、もともとはイランの方ですが、スイスで教育を受け、教養豊かな知的な国際人です。私も彼女が広島に就任した頃、3年前のことですが、セミナーに行きましたが（ブログ　２００４年１０月２１日）、そのときは、ちょうど台風が近づいている真っ最中でした。新潟の中越地震があった日です。

　そんなこともあって、久し振りの彼女とはいろいろ話が弾みました。そして今回のパネルのことから、すぐにMITのMiyagawa教授をメールで紹介しました。Miyagawas先生はMITのOpen Course Wareを作った最初のチームの方であり、最近ではVisualizing Culturesという素晴らしいプログラムを、「敗北を抱きしめて　（参考１．２．３）」（Pulitzer Prizes受賞）を著わしたJohn Dowers教授と開設されているかたです。Miyagawa-Azimiさんお二人の共同作業から何か素晴らしいものが生まれるような予感がします。わき道にそれますが、Miyagawa教授はこの１年、日本におられるので、先日、政策大学院へお招きして武蔵学園の中学、高校生を何人か呼んで、お話いただいたのです。どんないきさつなのか、いずれの機会にご紹介しましょう（ブログ　２００５年１月４日）。

　さてDubai飛行場に到着して、AzimiさんとAbu Dhabiへ車で90分ほど、始めは砂漠の中にニョキニョキと新しい建造物が建っている、やたらと活気溢れるDubai。「何がなんでもお金」といった風情です。世界のクレーンの60％がこの街にきているのだとか。市外を抜けて砂漠の中のハイウエイをひたすら走り、Abu Dhabiに近づくにつれて木と緑が多くなり、それなりに南カリフォルニアに似た光景もあって、気が休まる感じがしました。これは先代のAbu Dhabi首長ザイードZayed大帝が「砂漠を緑に、国土を緑に」と、自ずから先頭に立って、植樹、緑化運動をされたからということでした。立派なことですね。

　午後早くAbu Dhabiに到着。ホテルはEmirates Palace（このサイトはお勧め）という、宮殿のようなとてつもなく大きな建て物で、きれいなPrivate beachもあります。今年の初めでしょうか、安倍総理以下、財界の大勢が宿泊したところでした。そのときの逸話もいくつか聞きましたよ。3日滞在しましたが、結局どこに何があるのかさっぱり分かりませんでしたね。ホテルの中を歩くのだけで疲れました。




写真１、２：Emirates Palaceのホールと天井（こんなのがいくつもある）


写真３：Cassimさん、石倉さんと（石倉さんのブログ記事１．２）。


写真４：主催者側をまとめているHCT(Higher College of Technology)のVice Chancellor Dr Tayeb A Kamaliさん、石倉さん。

　波多野大使のお誘いで、午後には日本人学校へ行きました。幼稚園から中学3年生までで、全部で５０−60人ほどの生徒さんでしょうか、吉崎校長先生をはじめ日本からの先生、現地の方たちもお手伝い、皆さんご苦労様。幼稚園では、波多野大使のお考えもあって４人ほどの現地の子供も入っていました。各クラスで現地の子供を増やす方向のようですが、現地のご両親にも日本の学校の規律や、みなが同じものを食べる給食など、とてもいい経験と喜ばれているようです。このような小さなことが親善、交流、相互理解の元になるでしょう。

　皆さんに30分ほどお話をしました。１０人ほどのお母さんたちもこられました。みなさんご苦労様ですね。3歳児から中学3年までに話をするのはとても難しいです。でも、私が昔Los Angelesにいた頃に、日本人学校（これは補習校で土曜日だけ）が整備され始め、何年かして「帰国子女入学制度」ができた頃から見ると、ここの日本人学校の有様はとても恵まれていること、これからのグローバル時代に、人にできない経験がとても役に立つだろうこと、グロ−バル時代の子供たちへの期待などを話しました。たくさん質問がありました。


写真５：アブダビの日本人学校で。

　「今までどこの学校がよかったですか？」。これは難問ですね。そこで、去年ナイロビのKiberaスラム（参考１）の学校を訪問したときの話をしました。このスラムの子供たち、おうちにはトイレもない、台所もない、電気もない、汚い、狭い、ひしめき合って生活している、必死に毎日を生きている。どの教室も生徒でいっぱい、学校まで歩いて1時間ほどもあるでしょう。でも、みんな目が輝いている、一生懸命に生き生きと勉強している、先生も自信に溢れている。この学校は1−8年生までケニアで一番の成績なのです。「人生で一番感動したひととき、この国の将来をここに見た」、と記帳してきたことをお話しました。いつか、誰かが、私のこの記帳を見れくれると嬉しいですね、いつのことでしょうか。お便りを待っています。

　日本人学校では生徒からたくさんの素晴らしい質問がありました。嬉しかったです。年長の生徒の悩みは、当然ですが進路への迷いが多いのです。中学3年生、とても優秀な子ですが、自分の将来についてとても迷っている、日本の大学へ行くのか、どんな目標を持てばいいのか、などなどでした。日本の子供たちも、親御さんも一番悩むところでしょうね。特にここは全日制の日本人学校ですから、International Schoolではないだけに、そのための悩みもあります。

　もう一人は、エジプトからきているやはり中学3年生の女の子。日本語も、アラビア語（正しい言い方か？）も、自在にこなすのですが、これからどうしたらいいか迷っているのです。どうしても日本へ行くという明確な理由、目標がないのであれば、これからの世界を考えると、英語圏、あるいは英語を主体とする学校を目指したほうがいいのではいかな、とお話しました。

　しかし、子供たちの目を見ていると、大きな可能性を抱えながら、日本と外国との間で不安とも戦っているのでしょう。感動します。一人ひとりが大きな将来、夢をつかんで欲しいです。


写真６：波多野大使公邸で、大使、日本人学校の幼稚園の副園長の余語麻里亜（ヨゴマリア、日本の名前です、ご家族にはお医者さんが多いとか）さん。


写真７：　Nobel Museum館長のLindqvist教授（次回に説明あります）ご夫妻、石倉さん。


写真８：　Nobel化学賞の「変人」、いまは誰でも使っている遺伝子増幅法PCRを発明したKary Mullisさんとご同伴の方、光の本などを書いたりしている「Physicist and Author」のDr J Barbourさん。

　大使公邸で夕食を頂き、夜は、会議のレセプションで旧友、新しい知己を得る、素晴らしいひと時でした。