イノベーション、日刊工業新聞の記事



 「成長には創造的破壊が必要」という見出しで日刊工業新聞(2006/10/30(月))に私とのインタービュー記事が出ています。そこでは、まず、「イノベーション25戦略会議座長(内閣特別顧問) 黒川清氏」として、以下のような記事です。

 「2025年の社会に向けた長期戦略指針「イノベーション25」を策定する「イノベーション25戦略会議」がスタートした。技術だけでなく一般社会のさまざまな仕組みの革新をイノベーションと位置づけ、生活者の視点と20年後という長期スパンを特徴とする。」

 「社会の活性化の基本は人だとする安倍晋三首相の方針を受け、黒川清座長(内閣特別顧問)は「従来の仕組みを変えようとするディスラプター(粉砕者)がもっとも大事だ」と強調する。そんな人を認めて応援する、日本社会の革新について聞いた。(山本佳世子さん)」で始まります。

山本――イノベーションの日本語訳はこれまで「技術革新」といわれていました。

黒川――「イノベーションは研究開発や製造プロセスだけでなく、組織やサービス、マーケティングなどあらゆる社会の仕組みの革新を指す。カンバン方式やセル方式など製造ラインのイノベーションだけではない。社会ではサービスの比重が高まり、組織ではなく人と人のネットワークで動きだすケースが増えている。モノではない。『それを使って何をするか』だ」

山本――企業も皆、変わろうと苦しんでいますが・・・。

黒川――「どんな社会も成長してくると保守的になり、安住してしまう。成長するには内部から新しくする(イノべート)創造的破壊が必要だ。それはいったん力を持った組織や人には難しく、担い手はマイノリテイー(少数派)の中からしか現れない。日本は米国と違って変わった人を許容してこなかったが、全体の5%程度の人が担い手になるようにしたい」

山本――高市早苗イノベーシン担当相が言う「生活者視点」が新鮮です。

黒川――「社会に、生活にとってよいという理念と情熱を持って、アイデアを実社会の仕組みにつなげるには、この視点が大切だ。例えば宅配便や引っ越しビジネスがそうだった。その考えが正しいから、周囲の圧力や規制にかかわらず社会に浸透した。また、内容の魅力に加え、使いやすさを高めて普及させないとイノベーションにはならない。インターネットは技術的につなげられるだけでなく、アクセス料を劇的に下げるビジネスモデルができてこそ広がった」

山本――すでに多様なイノベーションの報告書がありますが?

黒川――「内閣府の総合科学技術会議や日本学術会議、さらに日本経団連で議論され、各省庁での取りまとめもある。5年、10年先の社会のあり方にフォーカスしたこれらも大事だ。時間がないこともあり、戦略会議ではこれらを議論のたたき台にする。しかし考えるのは、20年後に日本が創造的破壊をし続ける社会になっているか、ということだ。2月の最初のとりまとめでは、そのために人が大切だと明確に打ち出す。20年後を予想するのが目的ではない。目指すのは、次から次へと何かが生まれてくる社会に変えることだ」

 以上ですが、いかがでしょうか?新聞などの論調でも、イノベーションとは単に技術革新ではなくて、外からの圧力ではなく、内から変革していく組織、企業、そして社会の構造改革であり、結局は人である、ということになりますね。そして、生活者(今の時代、日本だけではいけませんよ!アジアであり、世界の生活者です!)の視点です。そして、会社などの強さ、つまり、「コアコンピテンス」をしっかり認識して、国際競争と協調なのです。そして「リーダー」の崇高ともいえる「理念」「確信」です。野中郁次郎先生の言われる「Phronesis」のある人です。これがなければ誰もついてきません。社会を変えるほどのことにはなりません。だからイノベーションとはいわないでしょうね。この点は、「イノベーション」満載のhttp://dndi.jp/のDNDメールマガジン「2006/10/25」を見てください。