第8回 「近畿知財戦略本部って面白い!」の巻

 いよいよ、ワールドカップが始まります。それにちなみまして、本日は、関西の知財イレブンを軸に書こうと思います。関西の知財イレブンとは、近畿知財戦略本部の11人の本部員のことです。経済産業省・特許庁では、きめ細かく知的財産関連施策を推進していくため、昨年度より、各地域ブロックごとに戦略本部を設けることとしたのですが、我が近畿知財戦略本部は、全国の先陣を切って(昨年の義経で改めて有名になった宇治川の合戦のようです)本部を立ち上げ、昨年5月に第1回本部会合を開いて近畿知財戦略推進計画をとりまとめ、以来、精力的に関西における知的財産関連施策を進めて参りました。

 さて、この関西知財イレブンですが、当局自ら積極的に本部を牽引していくという覚悟で、当局の福水健文局長が本部長、私が副本部長という形で入っておりまして、この2名を除いた9名の方々は、中小企業代表が2名、大企業代表が1名、弁護士、弁理士、公認会計士の代表が各1名、大学から1名、(社)発明協会から1名、(独)中小企業基盤整備機構から1名となっております。それでは、以下、イレブンの御紹介を。

 まず、中小企業代表のお一方目は、(株)ナベルの南部邦男代表取締役です。同社は鶏卵の自動選別包装システムの分野で国内の7割以上のシェアを有しており、先般のコラムで御紹介した「元気なモノ作り中小企業300社」の本にも掲載されております。中小企業代表のお二方目は、(株)広瀬製作所の広瀬恭子代表取締役です。同社はミシンにとっての最重要部品と言える工業用全回転フック(かま)の世界シェア7割を有しております。大企業からは三洋電機(株)の吉年(’よどし’とお読みします)慶一執行役員です。

 次に、いわゆる士業の世界からは、栗原良扶(’よしお’とお読みします)大阪弁護士会知的財産委員会委員長、矢野寿一郎日本弁理士会近畿支部長、佐伯剛(’ごう’とお読みします)日本公認会計士協会近畿会会長のお三方です。  大学からは、大阪工業大学大学院知的財産研究科の山名美加助教授です。余談になりますが、山名助教授の御家系をずっと辿っていくと、応仁の乱の西陣の将、山名宗全にぶつかるそうで、今更ながらに関西の奥深さを感じさせられました。  更に、領木新一郎(社)発明協会大阪支部支部長と(独)中小企業基盤整備機構の大町精志郎理事・近畿支部長とが加わって頂いて、これで関西知財イレブンとなります。

 このイレブンを下支えするために、本部の下にワーキンググループを設けていまして、イレブンの属しておられる組織の中から、イレブンに御指名頂いた方々に参加して頂いています。そして、当局の特許室が事務局となり、関西の中小企業の方々の知的財産の保護・活用に焦点を当てて、精力的に活動してきました。具体的な活動については、本部のHP http://www.kansai.meti.go.jp/kip-net/index.html を御参照頂ければと思います。

 私は、本部会合では、議事の司会役を務めていますが、中身のある良い議論が行われていると思いますし、本当に良いイレブンに御参集頂いたと感謝しております。議論の口火を切って下さるのは、たいてい、佐伯本部員です。先日の会合でもそうでしたが、議論が一段落して御意見が止まった時など、私がイレブンの皆様をぐるっと見渡していて佐伯本部員に目が合うと、ぱっと御発言なさいます。ディフェンスを振り切って前線に飛び出すストライカーという感じでしょうか。

 広瀬本部員には、毎回、地に足のついたバランスの取れた御意見をたくさん頂いております。先日も、当局の取組みについてお褒めの言葉を頂戴する一方、日々の事業活動の中で悩みを深くされている海外模倣品への対応についての御意見を頂き、当局としても、本省等とさらに連携を緊密化して、その面での取組みを強化しようと考えております。ドイツにて、中田英寿や中村俊輔といった選手が広瀬本部員のような地に足のついたバランスの取れたプレーをしてくれれば、一次リーグを突破できるかもと期待しています。

 南部本部員には、本部会合への御参画に加え、近畿知財戦略推進計画に基づく具体的な施策展開に当たり、大変な御協力を頂いております。4月18日の発明の日記念行事の際には、20年前に特許侵害の訴状が届き、事業の危機に瀕されて以来の御自身の体験を踏まえ、「特許で泣いて、特許で儲ける」〜泣く前からの知財戦略〜という演題で基調講演をして頂くとともに、その後の「知財を活かした経営」を考えるパネルディスカッションの際にもお残り頂き、フロアから議論に参加して頂きました。フロアからの質疑応答になった際、関東からわざわざ参加された方が、当日の記念行事について、「まさに中小企業のために役立てようという意図が明確に伝わる内容で絶賛に値する。大阪まで来て良かった。」とまで発言して頂けたことは、中小企業の知的財産の保護・活用に焦点を置いてきている私どもにとり、何よりも嬉しいことでしたが、これも、南部本部員に帰するところ大であったと思っています。

 吉年本部員には、中小企業に焦点を当てた議論を行っている関係上、ともすれば居心地の良くない感じをお持ちになることもあるかもしれませんが、本部の趣旨を十分に御理解頂いていて、いつも冷静に有益な御意見を頂いております。

 山名本部員には、イレブンの中で唯一、ワーキンググループ委員も務めて頂いております。教鞭を取っておられる大阪工業大学大学院知的財産研究科は、関西で唯一の知的財産専門の大学院ですが、山名本部員の御尽力もあって、同大学院の院生の方を中小企業に派遣して知的財産関連の仕事に従事させるという、知的財産インターンシップを昨年12月から始めることができました。前回は、大阪工業大学の他、帝塚山大学が参加されましたが、大学・企業の双方から好評だったので、引き続き行っていくこととしています。

 領木本部員には、現在のお立場からの具体的提案から、(社)大阪工業会会長等を歴任された御経験も踏まえたより広い視野からの御意見まで幅広く頂いております。

 栗原本部員と矢野本部員は、それぞれの組織内での異動により今年度から新たにイレブンに加わって頂きました。最後に、大町本部員は、中小企業の方々にとってとても頼りがいのある(独)中小企業基盤整備機構の関西代表であり、当局とは緊密な連携を取って頂いていまして、この本部のみならず、毎週1回はお会いしているような印象です。

 さて、今回の締めは、先程御紹介した知的財産インターンシップに参画された(株)レザックの柳本忠二社長です。同社は、抜型関連の各種加工機及びその総合システムを製造し、国内シェア6〜7割を占めている企業で、(株)ナベルの稿で御紹介した本に同社も掲載されております。また、昨夏、天皇・皇后両陛下が関西にお見えになった際に、御視察に行かれた企業です。私は、3月に同社に伺い、発明が好きでたまらないというエネルギッシュな柳本社長とお会いしましたが、お会いしたお部屋にびっくり。取得して来られた特許証(大半が社長御自身の取得)がずらりと壁に飾られているのですが、毎年取得しておられるので、歴代の特許庁長官の名前が一目瞭然なのです。本当に、近畿知財戦略本部って面白い!