第14回 新健康フロンティアとイノベーション25


 皆さん。年の瀬をどのようにお過ごしでしょうか?

 私は、年末の最後にあたって、今週は、相次いで新健康フロンティアとイノベーション25のシナリオに関する委員会に出席してきました。新健康フロンティアでは、私は人間活動の拡張に関する分科会に参加し、2015年までのシナリオと実現方策に関して議論を行いました。ここでは、システム改善や制度改革が大きなテーマになりそうです。 また、イノベーション25に関して財団法人未来工学研究所で2025年までの国民医療の夢の姿とそのロードマップ作成という難しい注文に関して議論をしてきました(勿論、私が出ているのは、ある意味下請けの分科会ですので、最終結論は黒川先生にお聞きください。どちらも、黒川座長です)。

 以前のコラムでも書きましたが、2025年までの予測は大変困難です。我々は、どうなっているのでしょうか?アルツハイマーやがんの根治療法、HIVの根治?あるいは、在宅医療の実現?正直、言うのは簡単ですが、外れても文句を言われても困るといいたくなる予想が出てきます。

 誤解を恐れずにいえば、過去25年に起こったITでの大変動が医療の上でも起こるのではないかと思っています。25年前には、黒川先生の言われるようにヤフー・グーグル・SNSなどの出現は当然予想できず(ソフト面での変化にあたりますね)、今のように個人用のPCが普及したり、そのスペックがかつてのスパコンの100倍以上になるなどというハード面の変化ですら、予測できなかったのではないかと思います。

 そのような大変動がこれから20年の間に起きるのでないかという予想をしています。例えば、MRIを利用した先端に磁気を装着したカテーテルで完全ナビゲーションのカテーテル・システムはまもなく米国で実現しそうです(このシステムを使えば、カテ名人と私のようなカテの素?が同じ技量でPTCAができますし、遠隔でも可能ですので、過疎地域でもカテさえ挿入できれば都会と同じ医療を受けれます)。あるいは、もっと進めば完全ロボット操作型血管内視鏡なども実現可能です。

 また、在宅医療(あるいは在宅医療管理システムというべきですか?)も本格的に普及するかと思います。病院にはよほどの重症でない限りいかず、遠隔診断し、薬剤が郵送され、投与後のバイオ・データが病院に送られ、結果を判定し、治療を継続する。病院から在宅へという根本的なパラダイム・シフトが起きるのではないでしょうか?(現在の在宅医療は、医療経済上の問題で推進されていますが、私が考えているのは、もっと積極的な在宅管理です)。端的に言えば、医師を必要としない医療システムの構築です。

 何故必要か?これから2050年までに人口が高齢・減少してきますと(政府の発表では8800万人に減少します。しかも、認知症の割合は、65歳以上の30%ぐらいに増えるでしょう)、多くの過疎地域が生まれてきます。そうなると、医師がいない地域ばかりになってきますので、必然的に社会的なシステム変革が必須になります。その解決策が、在宅管理で、よほどのことがない限り自宅で治療するという方向性が出ると信じています。

 実際に萌芽的な試みは出てきています。私の関係しているベンチャーでは、携帯電話を利用し、自分の健康情報を携帯のサーバー上にマイ・カルテを置き、必要な医療情報を自分の受診した医療機関に見せるシステムを作っています。なかなか電子カルテは普及しませんが、自分で持てば安全で、有意義だと思いませんか?

 皆さん、2025年の夢の時代をどう思われますか?初夢代わりにいかがですか?
 では、良いお年を!

大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学教授
知的財産戦略本部 本部員
アンジェスMG社取締役
森下竜一