第11回 大学発ベンチャーの「論点」


 今回は、緊急提言第二号になりました。先日のDNDニュースで出口編集長のお怒り?が伝わってきました。まるで、大魔神のような変化です(古いですかね)。事の発端は、読売新聞の「論点」の誤解です。

 で、このことについて、私のブログで書きましたら、出口さんから提言にも書いて欲しいといわれ、急遽の登板です(ついでに、ブログの宣伝もしますね。 http://blog.m3.com/を見てください)。以下は、その抜粋です。

 読売新聞は11月8日付朝刊で、北海道大学大学院教授、浜田康行氏の「論点」を紙面で掲載しました。浜田先生は、大学発ベンチャーの問題点を指摘されたのですが、その前提の事実認識に若干の危うさがありました(詳しくは、http://dndi.jp/を見てください)。

 大学発ベンチャーが1500社を超え、いよいよ数より質という状況になってきているのは、事実ですし、課題が多いのも事実です。しかし、大学発ベンチャーの課題といわれている人材、営業販路、などの問題は、別に大学発ベンチャーに限りません。日本の大半を占める中小企業でも同様で、むしろ中小企業のほうが問題は大きいと思います。

 大学発ベンチャーのこれらの問題を解決させる方策を考えることこそ、日本の中小企業に対する新しい処方箋を書くことにつながるでしょう。その意味で、大学発ベンチャーの自立支援は、まさに日本経済再生の処方箋作りだといえます。

 1500社という数字に意味はありません。私は、政府の統計は水増しどころか、むしろ一所懸命絞ってこの数字だと思っていますが、たとえ1000でも1200でも構わないと思っています。数字としての1500に意味があるのでなく、この起業の少なかった日本で1500もの新規起業があったということが重要なのです。

 定点観測?にこだわる日本人なのか、このような数字の延びにこだわる方が多いですが、今後大学発ベンチャーの数が増えていくことは重要ではありません。所詮、会社ですから、つぶれるものもでます。そうではなく、何社が新しくできていって、新陳代謝がおきているか、これこそが日本経済の健全性を示す指標だと思います。

 最も、経済産業省や文部科学省から良く調査の実態を聞きますが、いい加減どころか大変な作業です。

 出口さんがその実態を述べられていますので、引用します。「アンケートで集計される大学発ベンチャー数は、重複も含めて3000社以上に上ります。それを現場で、この膨大な収集作業と分類、さらに精査、確認、そして最終の認定作業にどれだけの神経と労力を酷使しているか、そこのところを個人的によく見て知っているから、安易な「水増し」、あるいは「数合わせ」の批判は、中傷であり揶揄である、と断じざるをえないし、見過ごせない。」

 私も、阪大の例を見る限り、調査の数より実態のほうが多いという印象をもっています。調査に出ていないベンチャーを指摘するのが、簡単なぐらいです(北海道では、全て大学が把握できているのでしょうかね?それでは、まさに官製ベンチャーしかないように思いますが???自由に活動していれば、大学の知らない大学発ベンチャーが一杯できるはずなんですが??)。

 このような問題点を指摘するのは、簡単です。そうではなく、日本経済固有の問題点の解消につながる処方箋を大学発ベンチャーの問題を通じて論議し、解決策を試す!これこそが、大学発ベンチャーを振興し、イノベーションへつながる道だと思います。

 政府統計では、1500社全社合計で売上高2000億円、雇用者数1万6000人という数字が出ています。快挙だと思いませんか?

 実際、周りの方をみていますと、大学発ベンチャーの肩書きや関わっている方の多いことを肌で感じます。イノベーションの主役の登場も、いよいよ日本でもあと一息と思います。

 私自身は、以前から何度も述べているように、大学発ベンチャーの最大の意義はイノベーションの担い手としての研究開発費の投入です。年間200億円以上の研究開発費が大学発ベンチャーから投じられています。

 一般企業の研究開発費の売り上げに占める割合を皆さんご存知ですか?全企業平均では、わずか3.1%です。200億円の研究開発費は、売上高6000億円の企業の誕生と同じ経済効果を持ちます。

 たかだか3年で、売上高6000億の企業が作れますか? まさに、快挙だと思いませんか?

大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学教授
知的財産戦略本部 本部員
アンジェスMG社取締役
森下竜一