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第3回 特許王国日本
●日本の特許出願数はアメリカの2倍
長期の不況に喘いでいた日本ではあるが、特許出願の数に関しては添付の表(グラフ-A)に示されるように相変わらず世界一といえる。先進10カ国の2002年の特許出願の合計は約82万件であるが、この内日本の特許出願数は何と39万件で、ほぼ50%に当たる出願を行なっている。アメリカは18万件で日本の半分以下に過ぎない。勿論、特許一件一件の内容、価値はアメリカは何といっても基本技術を有しているので、まだかなりの差があるが、日本が長期不況の中でこの数を維持していることは驚異といってもよい。
何より重要なのは日本の特許発明は一部の超エリートの研究者の発明だけでなく、一般従業員や工場現場からも発明が出されていることで、そのため数が多いのである。つまり、日本独特の企業全体を挙げて行なう改善運動の一環として特許発明がある。そして、これは企業全体の労働者の質の改善、働くことへの意欲の向上、欠陥商品の少なさにつながっている。
アメリカに住まないとアメリカの一般労働者の質の悪さは理解できないかもしれない。日本の製品の質やサービスが良いのは、この様な労働者の意識、質の高さにある。アメリカには世界各国からエリート高級研究員が集まっているだけに、彼らの質の高さは当然に日本よりはるかに高いが、一般労働者の労働に対する意欲は低く、従って発明の数は少なく、製品の質も未だに悪い。アメリカが色々な分野で世界に自主規制を要求し、産業を保護しているにも係らず、アメリカ製品の多く(特に自動車)に見られるように質が向上しないのはそのためとも言える。
●日本とアメリカでは違う特許の必要性
次に、アメリカにおける各国企業の特許取得数を見ると、IBMの特許が圧倒的に多く、10年近くNo. 1の座を保っている。しかし、その前は日本の企業がトップだったのである。今でもトップ20社(グラフ-B)を見ると、その内10社つまり半分は日本企業である。
アメリカにおける日本経済のウェートは10数%前後だろうから、これは恐るべき高いシェアといえる。この様な背景からアメリカ政府は特許による独占については独禁法の適用を緩和する政策を10数年前位から取り始めた。そこでIBMがここ10年間に非常な勢いで特許を取り始めたわけである。つまり、日本の特許攻勢のためアメリカ企業にも特許に目覚めたのである。
しかし、これだけ特許の数が多い日本であるが、これを訴訟戦略にはほとんど用いてこなかった。あくまで従業員の改善マインドの向上やアメリカ企業に訴訟された場合の対抗手段として特許を取ってきたわけである。
その日本も長期の経済不況から特許で収入を得ることを余儀なくされている。それでもまだまだ日本企業はアメリカ企業から特許収入を得るところまで達してはいないが、いずれはその様な日が来ることは間違いないだろう。
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