第8回 台湾における産学官連携の取り組み
今年に入り、台湾の産学官連携への高まりを強く感じました。 毎年恒例の産業界同士の交流会とは別に産学連携に関する視察、交流会、展示会およびフォーラムが矢継ぎ早に行われました。中華経済研究院日本センターがきめ細かい世話役でした。
先ず2005年台北国際発明技術交易展覧会における国際技術移転説明会に招聘され、9月30日、10月1日、TLOとしては日本大学TLOと弊社キャンパスクリエイトが日本から出展しました。そのほか東京都中小企業振興公社が支援する中小企業5社ほどとNTT関連会社が出展いたしました。新技術に対する関心は高く、質問、問い合わせを多くいただきました。 10数校の大学ブースも出展していました。一番大きく活発に展示していたのは工業技術研究院でした。ここは技術移転では実績が多く、バイオ、半導体関連では日本企業との共同研究も数多く実績があります。金額的にもしっかりした価格を決めています。また、研究者が移転先に就職したり、研究成果をもってスピンアウトし起業するケースが多く見られるのも特徴です。
日本においては11月6日〜9日「通信産業訪日団」が亜東関係協会交流委員会主催により(独)情報通信研究機構、NTTDocomo、武蔵野研究開発センター、電気通信大学、NHKを訪問し情報交換を行いました。
その後11月27日〜12月2日「台日協業プロジェクト2005」として(財)資訊工業策進会主催による相互理解が進む日本の産学連携体制研究をテーマとして、台湾の大学教授達が大学側から見た日本における産業界の対応や日本の大学の取り組みを現場で見ることにより台湾の産学連携を成功裏に進めていこうとするものです。九州、東京を視察しています。
そして、12月9日台北市にて「日台産学協力フォーラム」が開催されました。台湾においては、「台日技術合作研討会」となっています。主催は亜東関係協会科技交流委員会です。
12月8日は新竹地区にある工業技術研究院を詳細に見学いたしました。技術移転の数は昨年度約700件、共同研究は1,000件を超えています。特許に関して台湾はPCT、パリ条約いずれにも参加していないために、特許のライセンスに関しては慎重な取り組みが必要です。
「日台産学協力フォーラム」は中華経済研究院にて開催されました。基調講演は「台湾の産学協力関係の現況」を洪台湾経済研究院院長が行いました。内容については、台湾は産業発展の過渡期にあり、高級人材の多くは学界に集結しています。
また研究開発費の多くは政府が支援しています。1992年〜2001年を産学前期、2002年〜2005年を産学建設期、2005年以降を産学流動期としています。いずれの時期には人材育成が含まれて居ます。研究開発費は2004年以降も行うものの、2005年以降には実績産出期と位置づけています。2005年からは政府の経済部、教育部、国科会の部会を越えた政策の分担を統合した産学連携計画の取り決めが開始されました。 産学連携政策には「仲介者媒介」が大きく扱われています。しかしその存在と活動状況はよく見えませんでした。台湾の現段階における産学連携の問題として、 ・ 産学双方の認知度に大きな差異 ・ 産学間の意思疎通プラットフォームが欠乏 ・ 教授が産業界との関係を失っている ・ 研究成果の商品化が困難 ・ 学術界の誘因不足 ・ 教授昇級制度の硬化 ・ 学術界研究組織の規模不足 があげられています、日本の問題点と重なるところが多いです。
日本からの講演者は荒磯北大教授、江頭同大講師、北野産業技術総合研究所国際部門次長、キャンパスクリエイト社安田でした。講演後講演者によるパネルディスカッションが行われました。会場からの質問では、日本における政府からの助成金に関するもの、大学内にある知財本部とTLOの関係と役割分担に関するものなどが多く出されました。企業からは産学連携により早急に新製品開発が行われ、業績を早く上げたいという希望が多く寄せられました。 小生の回答では、知財本部とTLOに関するもの、日米比較および工業技術研究院による技術移転と大学研究室による技術移転には違いがあることを分理解することが必要です。大学は研究と教育が使命です。大学には毎年若い学生が沢山入ってきます。産学連携の成果は新製品開発だけではなく、産業界の種々の問題点解決のアドバイスを大学研究室から得ることが出来ます、しかし時間はかかります。また大学研究者、学生が企業研究者と交流することにより、双方の教育効果が得られることです。などでした。
尚中国科技園協会が入居しているということで、「コラボ産学官」に関するものもありました。台湾、日本両国とも産学官連携を推進していく上で、同じような悩みや不足しているところで共通点が多く今後の情報交換や交流が必要であることが良く理解できました。
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