思いつき原発対策による全国的電力不足問題

旧吉田茂国際基金監事 北澤 仁氏
2011/06/15

 電力問題はどうやら日本経済の浮沈を左右する大変な問題となってきました。次期政権の問題もさることながら6月中にそれこそ目途をつけるべき超党派で取り組むべき緊急重大問題です。この件については東電の福島原発第一の放射能事故の解決が当面の緊急問題であるものの、それより上位の日本経済全体の基盤的中期課題まで拘束し、日本の得意とする製造業の潜在能力まで世界に疑問を持たせる最重要課題です。菅政権の官邸は現在東電福島第一原発対策、周辺住民の避難対策、避難地区に対する補償問題、巨額補償に伴う東京電力の経営スキーム、東電管轄地域の夏季節電対策、地震危険地域にある中電浜岡原発停止要請等あくまでも緊急個別の現象面対策に特化し、長中期的課題である自然エネルギー開発、あるべき電力体制改革については念仏を唱えているだけです。

 福島第一原発の放射能漏れ問題でも、国は国策民営会社での未曾有の超過酷事故でありながら、テロ、戦争と同じく国民を守る責任は国にあるとの認識薄く、東電現場の超人的努力に乗っかるばかりで現場は疲労困憊であることを知りながらマスコミも含め専ら今までのことを検証することに熱心で、自衛隊等本格関与も含めた国の責任ある早期収束に向けては傍観するのみです。また巨額賠償額を確保するためとはいいながら首都圏の国民生活、産業の基盤たる電力供給責任のある民間電力会社に長期にわたって過酷経営を押し付け、「国民負担を極小にする」と出来もしない国民迎合スキームを発表し、市場からは全く評価されないにも拘らず更に民間同士の金融債権放棄を強要しようとする官房長官の異常さ、全く経済のイロハを理解しない民主党政権首脳の無能有害ぶりを象徴しています。案の定この夏の電力不足は関東地方だけであったものが浜岡原発停止により日本製造業の大拠点である中部地方にも広がり、更に全国の定期点検休止中の原発の再稼働不安から北電、関電、九電等全国の電力会社に電力不足、相互電力融通不可が蔓延しつつあります。中長期の課題とは別にいち早く東電の柏崎始め全国の点検休止中の原発を新安全基準のもと国の責任で順次稼働開始させるべきです。このことは東電の巨大補償金確保の為にも必要なことです。

 そもそも国民生活の基盤たる電力等エネルギー問題は歴史的にも構造的にも全電力トータルの問題として扱う問題で電事連ベース、電中研ベースでの検討も合わせ行うのが基本で専門部署である経済産業省が司令塔でやるべきでしたが経済の現場を知らない菅政権官邸が政治主導、官僚不信の見せ場とばかりやったためモグラたたきとなり大失政の已む無きとなりました。少なくとも短期的には再生復興を目指す日本経済に成長限界の壁を作ったことは否めません。大きくは日本国の国際的信用、更には成長政策、復興資金の確保、財政再建、金融、福祉、雇用、技術開発等すべての政策に縮小均衡の罠をはめることとなります。これらの事象はすでに株式市場全般に重く波及しており中でも東電の株式は極端で10分の1、その他電力も2分の1等となり日本国の基盤である電力会社が投機の対象、好ましからざる外資の影響大となりかねない国家、経済の安全保障の問題に直結する非常事態です。

 今回の全国的電力不足は菅首相の個人的資質のみならず、まさに民主党政権の現場との繋がりがない虚弱な体質からからくるもので、菅退陣後の巷間言われる民主党中心の大連立政権では糊塗するのみで何ら解決されず、やはり問題ありといえども長年の国政経営に経験と責任がある自民党中心の大連立か、総選挙による自民党責任政権の確立が焦眉の急と思われます。

 民主党には問題のトロイカとは絶縁し、中堅若手で自民党中心の大連立に入って国政経営のなんたるかを勉強するかもう一度野党となって政党の体をなしていない現状を体制整備し捲土重来を期すことを期待したい。以上

 平成23年6月11日 東日本大震災発生より3ケ月

 亡くなられた被災者の御冥福と被災地の早からん復興を祈って。

 北澤 仁(旧吉田茂国際基金監事)











sponsored by